✈ KFIR-C2 (クフィル) イスラエル空軍戦闘機 概要 Part-1
 
● 過去・・・劇場公開で観た新谷カヲル氏のAREA88に登場した戦闘機です。エリア88地区外人部隊の義勇兵空軍基地の司令官(サキ・バシタール)が所有していたカナード翼装備のデルタ機でした。地上近くの低空侵入飛行においても、抜群の安定性を有していた機体だと言われています。このクフィル戦闘機は、フランスのデルタ戦闘機ミラージュ5を基本とし、イスラエルが開発した超音速戦闘機です。

● 搭載エンジンをアタ―9Cから、アメリカのGE-J79に換装してパワーアップを図っています。更に操縦装置にフライバイワイヤを採用する等、当時としては最新の技術を取り入れた優れた性能を有する機体だった様ですね。J-79エンジンと言えば・・・古くはF-104スターファイターに装備する為に開発されたハイパー出力のエンジンです。このJ-79を二基搭載したのがファントムです。よって、性能の信頼性を折り紙付きですので・・・此れをクフィルに搭載すれば性能も向上する訳です。

● このJ-79エンジンの自衛隊基地での評判なんですが、3000メートル級の滑走路において、ファントムに搭載したJ-79エンジン一基でも充分離陸できる程の出力が有ったそうです。よって、イスラエル空軍がこのエンジンを採用した理由も頷けるかと思います。こういうデルタ翼に装備された水平カナード翼の配置から、空力的に見て取れる役割なんですが・・・。こういった形状のスパンが短く翼弦の長い鋭角形状翼の主翼の場合、ロール軸の反応は大変良いのですが・・・ピッチ軸における昇降舵の動きは、反応が鈍く操縦桿の操作に、パイロットが気づく位のもたつきと言うか遅れが有るそうです。

● デルタ翼には目立った水平尾翼が無いので、無尾翼機と分類されるんですが、見方を変えると主翼と水平尾翼が一体化してしまったのがこの無尾翼と言われる鋭角形状の主翼を持つデルタ翼機だと解ります。主翼に強い後退角を持たせた戦闘機も有りますが、こういう戦闘機の場合・・・後退角度が大きい分、機体の重心位置が胴体後方に下がる訳ですが・・・こうなると、テールモーメントが短くなる分、水平尾翼は巨大になります。主翼ほどは大きくありませんが、他の戦闘機に比べれば遥かに大きい水平尾翼となります。

● ところが・・・胴体後部にはエンジンを内蔵しなければ成りませんので、今度はこの巨大な水平尾翼を何処の後部胴体に頑丈に取り付けるのか・・・と言う点で、不具合が生じます。強い後退角の主翼は、直進安定性能に大きく貢献するんですが・・・尾翼も巨大に成る為ピッチ軸を安定させる為には、水平尾翼はどんどん大きくしなければ成りません(笑)・・・。そして!とうとう・・・主翼の後縁側と水平尾翼の前縁が重なってしまう事態と成りました・・・。強度に問題が残ってしまったデザイナーさんが、有る時気づいてしまいました・・・。別々にしないで一体化してしまえば、強い後退角を持った三角形の主翼は捻じれに強い構造に出来る・・・。よって水平尾翼は晴れて後退角の大きい主翼と一体化する事になりました。よって尾翼付きの機体の主翼は、平均翼弦の前縁から33%位置が一応の重心位置・・・無尾翼機の場合は、平均翼弦の前縁から25%が一応の重心位置の目安となります。
 
● では・・・無尾翼機の場合・・・どうして重心位置が25%に変化するのでしょうか・・・。要するに前縁から75%までが主翼・・・残りの25%が水平尾翼の扱いに成るからでした・・・。一体化してんだもの・・・水平尾翼が動いてもデカい主翼毎反応するんだから、ピッチ軸の反応が鈍くなるのも解って頂けるかと(笑)・・・。この鈍さを解消させるのが、主翼の前縁付近に装備された水平カナード翼と成ります・・・。ご存知!重心位置よりも機首側に位置する水平尾翼は、重心より後方の水平尾翼とは、空力の反応が逆に成ります。

● 水平尾翼の揚げ舵の操作は、水平カナードの場合は下げ舵の動き・・・。水平尾翼の下げ舵の場合は、カナードならば揚げ舵の動き・・・。このカナードの動きは変化させると高迎角の低速飛行も可能に成るので・・・水平カナードを装備したデルタ翼機はピッチ軸の反応がすこぶる良くなるのです・・・。ただし・・・人為的に自由にパイロット自身が、この位置の水平カナードを操作しようとしても・・・重心位置に近過ぎて余計にピッチ軸の操作が難しく成ります。よって・・・フライバイワイヤを装備して、コンピュータに寄る電気信号でパイロットが操作する昇降舵に連動させて、細かく制御した方が操縦は楽に成ります。

● 模型機装備する場合は、動力搭載機でもスロープにおける無動力のグライダーでも、スティック優先型のピッチ軸に対応させたジャイロを装備して、エレベータとミキシングする事をお勧めします。過去・・・フランスのダッソー社のラファール戦闘機の飛行動画を観ました。着陸後にエプロンに駐機する際・・・パイロットが機体を制止する時ブレーキを踏んだんですが・・・機首が一瞬沈む動きにカナード翼が反応したのを覚えています。要するに・・・ピッチ軸に反応する様に設定しておけば、通常飛行において自動操縦に切り替えれば、ピッチ軸の細かい自律安定は、水平カナードが細かく調整してくれるので・・・パイロット自身の精神面でのストレスが軽減される役目も担っていると実感しました。