● 霧ヶ峰式(鷹号)の製作  Part-2

● 主翼の組み立てに入ります。今回はリブ組治具を使わずに組み立てますが、材料取りに必要ですのでリブ組治具用の型紙に一部工法を追加して説明いたします。通常の市販バルサの定尺は、80×900mmです。そこで、幅80mm方向内で正確な材料取りと組み立てが出来る工作方法を用います。

● 本機の後縁材は断面寸法から計算すれば、幅6mm高さ7mm必要です。こういう断面寸法の角材はホームセンターの工作材料売り場にも存在しません。たとえ木村バルサに発注しても、厚さ6mm、7mmの定尺シートは割高になります。このシートを900mm近い棒材に加工するのも骨が要ります。

● ホームセンターでバラ買いせずにまとめて100本購入した6×6mmのバルサの棒材に、幅6mmに加工された1mmバルサを積層して後縁材に必要な断面寸法6×7mmを作ります。

● 後縁材をなるべく直線で仕上げる為に、アングル材を抱き合わせて接着硬化させます。前縁材はF3Aスタント機でよく使われたダブルエッジ構造となります。実際に組み上げないと文章説明だけでは解らないと思いますので、実際の作業工程の中で詳しく説明いたします。前縁材の一発仕様よりは、プランクし易く確実に仕上がります。

● 断面寸法5×5mmのメインスパーを作ります。支柱付きの古典機なので、実機の主翼構造はかなり簡素化され軽量になっています。本機もこれに習い主翼構造を簡素化し、支柱をお飾り扱いではなく重要な強度部品として製作いたします。2×5mmヒノキと3×5mmバルサを積層して5mm角を作ります。

● 型紙よりバルサにトレースした座標に部材を接着します。画像は前縁材と後縁材です。部品単体だと材質が木材ですので木目によっては、湾曲したり反りが入ったりします。

● これが一機分の部材です。型紙の両面を使い、座標をとります。メインスパーは対面で座標をとれば左右の翼の座標になります。型紙を片面だけでトレースすると右翼か左翼が二枚できてしまいます。ヘリコプタータイプの回転翼ならばこれも有りなんですが、固定翼ならば左右対称の翼が必要です。

● 今回の機体はリブ組治具を使いませんので、部材自体に治具能力を持たせる必要があります。部材を平面材から立体にするとある意味硬性が生まれ、反りや歪みを軽減するのでそれなりに正確だと思われる組み立てが可能になります。この工法で30機作れと言われたら絶対にやりません。神経の使い方が半端ではない。

● 生産コストにはこの神経性ストレス分も含まれるのが普通です。このストレスを軽減するのがリブ組治具を初めとする省力化治具です。EZの完成機を治具無しでコピーしてみましょう。ネット普及後、無許可でやったつわものモデラーがいましたが、一機目の胴体に二機目の主翼が勘合出来ないのでは、EZの量産は不可能です。それほど、EZの省力化治具は完成度が高く、優れていたという事です。EPPシートでEZに挑戦したモデラー諸氏、省力化治具の存在を知りませんでしたね。パートのおばちゃん達がニコニコしながら飛行機組んでたのが印象的です。尚、EZ構造は誰でもコピーして売却可能なんですが、RZ工法を勝手にコピーして機体を量産し販売すると警察沙汰になりますので注意しましょう。

● 翼端のテンプレートから部材を作図し、材料取りに入ります。今までの機体製作の中でも類を見ない製作難易度を誇ります。個人的にですが。

● 見た目簡単そうですが、かなりの難易度があります。自作派モデラーなら解ってもらえるでしょう。既に完成しているのに、勿体ぶって感動的な文面をと思っている人へ。実はリアルにこの画像でフリーズしてます。今日で四日目です。

● 翼端の工作方法で煮詰まってしまったので、久しぶりに地球一周の波乗り修行をやってみました。世の中の模型業界は日進月歩なんですが、バルサで飛行機自作するモデラーさんはやっぱり昔となんら変化の無いオーソドックススタイルを貫いています。私としては嬉しい限りです。製作工程は万国共通なので質問すれば当たり前の返事が戻ってきます。ただ、そこには、モデラー自身の模型歴を垣間見れますし、工作技術もさることながら個人の見解も聞けます。


● 今回の機体の難関とは、メインスパーよりも後方の翼端が前に出ています。基本、翼端の先端にはメインスパー先端が来るのですが、今回の鷹号ではその法則が当てはまりません。パイロンを有するパラソルウィングに近い鷹号が着陸で最も怖い、グランドループに入りラリアット攻撃を仕掛ける割合は皆無に等しいのですが、スロープサイトの着陸で一番壊し難い方法は稜線の草むらにピンポイントで降ろすか、斜面の角度に合わせてナイフエッジに近い傾きでの着陸しかありません。

● 斜面は急角度でもあくまでも水平飛行での着陸を試みるとグランドループは確実に起きてしまいます。翼端がリブにべた付けだったら、斜面接触の衝撃でもげ取れる事態になります。強力な接着剤を使っても必ずもげます。もげた翼端は後縁材を襲います。エルロン付きなら後縁材と他のリブももぎ取ります。結果、主翼は修理不能なまでに壊れます。初心者さんほど、お仲間さんの前ではメーカーの欠陥であると断言します。

● 翼端は実機とは違う配置となりました。実機鷹号は主翼下面に平行、上面は立体の下反角ですが、本機は下面上反角です。よって翼端材の仕上げには画像の方法を用いました。リブに直角に定規を当てて隙間が消えたら翼端ブロックは翼型になります。

● 苦労した甲斐がありました。難関二つクリアです。今回はキャップレスなので主翼の上面リブが凸凹しています。プランクする面としない面が沢山ありますので、サンドペーパー掛けには要注意です。

● メインスパー後方の細い溝はカンザシを差し込む空間です。前縁側をプランクした状態でテストフライヤー氏にお渡ししますので、こういう状態です。自分で作る時は先にカンザシを組み込んでからプランクするので、メインスパーにクリップで挟んで固定が出来ますが、お渡しする時はプランク済みなのでクリップが使えません。そこで溝加工にしてあります。

● 大きな切り抜き空間はサーボコネクタの収納場所になります。大型機ならばパイロンが太いのでパイロン支柱に収納できますが、今回は中型機なのでパイロンは薄く狭いです。そこで主翼側に空間を設けました。主翼を取り付けると完全に隠れますので、見た目は悪くありません。

● 12mmのバルサのリブに設けられた孔は、主翼側の支柱の台座です。本機の主翼は実機鷹号と同じく頑丈な構造の内部構造を止め、支柱による硬性を高める構造にしました。その為には支柱の台座を頑丈にする事が大切です。エポキシを充分使ってナイロンの台座を固定します。

● 主翼上面のプランクをする為の準備です。このアングル材はホームセンターでは購入不可能な材質です。定尺4mで購入し自分でカットしました。材質は7075T-6、ファントムのメインストラット内部の台座で使用される滅茶苦茶硬いアルミ合金です。厚さは3mmのアングル型ですが、確実に直角が出ています。4mでシャーレー機一機分位の値段がします。ほぼ狂いませんので、主翼の組み立てに使っています。

● 今回はモデラーさんの要望でリブ組の拘束治具を使わず主翼を組みましたが、案の定若干の狂いが生じました。部材に治具能力を与えても、材料の厚みの僅かな寸法誤差が出て来ます。市販の2mmバルサの寸法公差はプラスマイナス0,2mm程度なんですが、3枚重ねるとマイナス公差で0,6mmプラス公差で0,6mm。必要寸法の溝を6mmで開けたらマイナス公差ではブカブカ、プラス公差ではギチギチです。レーザーカットで3mmシートから部品を取った場合、この寸法公差に対応したプログラムならキット価格は今の3倍位になります。現在の市販価格のキットを組んで上記と同じ場面に遭遇したら、寸法公差による狂いですので諦めて下さい。自分で加工して組むしかありません。

● カンザシ受けの溝についての説明です。海外輸入の完成機に過去多く見られた飛行中のバンザイ現象ですが、メインスパー後方のリブ間の隔壁が確実にリブに固定されていない場合にこのバンザイ現象が起きます。完成機ですのでプランクも被覆も済んでいます。あとは付属のカンザシに接着剤を塗って差し込んで下さいと明記してあります。さて、上記の手抜きがあった場合、密閉された主翼内部はどうなっているかといえば、リブ間の隔壁はカンザシと確実に接着されてはいるのですが、リブには接着されていません。

● 離陸の時の主翼下面に掛かる引っ張り応力と主翼上面に掛かる圧縮応力は、主翼の構成が完璧な時のみ発揮されますが、半固定の主翼内部構造では座屈による内部破壊が進行しています。着陸の時の下向きに掛かる重力や、宙返りに掛かるオーバーGで、主翼の内部構造は限界を迎えます。確実に接着するならばこの状態でお客さんに渡して組み立ててもらうのが一番なのです。これが半完成キットという物です。

● 第三の難関、支柱アッセンブリの製作です。最終的にこの加工に至るまでにかなりの考察を行いました。その過程は困難を極めました。画像を見れば一目瞭然ですね。大きいパーツは角度が浅い。主翼に自律安定能力を与えるために、上反角4度を付けました。上反角の分角度が浅いペグになってしまいました。胴体側と同じ寸法では支柱結合パーツの結束と脱着が不可能なのです。それで泣く泣くパーツが大きくなりました。

● ペグの厚みは約1,5mmで仕上げます。支柱の先端にはキーパーやロッドアジャスターを使いますので、市販のラダーホーン程度の厚みにしないと上手く取り付いてくれません。材料は何処のホームセンターでも入手可能なナイロン製の角材です。粘りと快削性を持ち合わせていますので、細目の薄いレザーソーと粗目のペーパー、彫刻刀があれば加工出来ます。

● 胴体側面にはこの様な角度で取り付きます。主翼側のペグの角度は上反角4度分も含めると159度、胴体側は115度となりました。こういうタイプの支柱取り付けパーツの位置は任意の位置が効きません。取り付ける位置が決定したら、機体の原寸正面図を作図してペグの角度と支柱の長さを求めます。支柱製作にもOK模型の昔ながらのプラパーツが沢山出て来ます。巷ではミテクレが悪いだの、扱いが難しいだの不評ばかりが聞こえて来ますが、こういう使い方が出来る見本だと思って下さい。軽量にある程度の正確さと頑丈なパーツの使い道です。(Part-3に続く)