✈ Wild-boar Ⅱ型 (SSG) パッシング競技対応機 Part-3
  
● ある程度出来上がると・・・何の変哲も無い普通のラジコン飛行機なんですけどね。内部構造体が、普通のラジコン飛行機のバルサキットと言うよりも、胴体だけならまるで船舶構造ですもんね。競技用のラジコンヨットは、船体がグラスファイバー製が今の主流ですけど、石政のブルーソニック(船体は強化プラスチック)の600・900が販売される以前までは、船舶の愛好家さん達はベニヤで船体を組んでいました。竜骨と呼ばれるキールフレーム材を基準にして・・・。模型飛行機に応用すると・・・外皮はまるで船舶の貼り方と同じなんですよねえ。中学の科学クラブで、ベニヤを技術室の糸鋸盤で切り出してヨットを作ったんですが、その時に湧いた不思議な感覚がありました・・・。其の時の感覚が、この飛行機転用の船舶構造です。

● ラジコン技術誌に飛行艇を自作された個人のモデラー氏の製作記事が掲載されていました。その構造体もキールフレームの船舶構造体が基本でしたね。飛行艇なので胴体自体が浮力を持って水面に浮かばなくては成りません。このモデラーさん・・・物凄く頭の中がグローバル・・・。キールフレームに平行に胴枠を組み込んだら、胴枠毎に発泡スチロールのブロックを埋め込み・・・其れを綺麗に削り出し、飛行艇の形状にしました。その上からグラスシートを積層して外皮をひたすら削って仕上げて・・・後はウレタン塗装の工程を踏んで完成です。たとえ・・・マイクログラスに小穴が開いていて浸水したとしても、内部の発泡スチロールの構造体が浮力と成るので沈没しません。所謂、邪道な構造なので作れないモデラーからは、ひがみ半分で受け入れられません(笑)・・・。ただですなあ・・・二枚側板のラジコン機って、胴枠をキチンと接着出来なかったら・・・胴体は左右のどちらかにズレて組み上がってしまいます。其れが原因でヨー軸にクセが残ると調整のしようが無いんですよ。だったら船舶構造の方が組立て易い事になるんですなあ・・・。
  
● 主翼の前縁には角棒のダボピンを取り付けます。何故に丸ピンにしないのか・・・高級バルサキットって大概丸ピンなんですけどね・・・この勘合ピンが最大の難物って言うモデラーさんも多いです。本機の場合・・・細かい調整に対応出来る様に、ダボピンの上部基準線のみ決定していますので、下部の調整だけ出来れば確実に取り付ける事が可能です。よって樹脂棒をコの字に削りだして、3mmのビスを締め込んで固定・・・。この部品が機首側の下部から覗くと、まだ削りが足りません。小学生が工作の授業で使うレベルの彫刻刀で、普通に削れますので細かく調整して樹脂材の出っ張りが無く成るまで調整しましょう・・・。ラジコン飛行機のダボピンが、全機こういう構造ならもっと作り易くなるんですがねえ・・・。自作モデラーが馬鹿みたいに増える筈(笑)・・・。
  
● 本機の主翼はアウターウィングのみ捻じり下げが付いています。よって・・・エルロンにも捻じり下げを付けないと翼型に沿いません。捻じり下げのエルロンを作る為には、幅40mmの空間で捻じり下げを付けたリブ組みをしなければ成りません。問題はリブ組みが出来たとして、フィルムだけのスケルトンで機体を振り回すアクロバットに耐えられるかと言う点です。ハッキリ言って長さが400mm越えの場合は難しい・・・。其処で全面プランクのリブ組み構造としました。要するに捻じれ易いリブ組み構造のエルロン材の両面にプランクシートを貼り込んで、構造体ごと捻じる方法を使いました。

● 幅40mmのエルロン材を棒材を組み合わせて作ろうとすると・・・必ず湾曲したり反り上がったりするので、ムクの40mm幅の後縁材を肉抜きして使います。此れなら反りも湾曲も有りませんので作業が楽です。糸鋸盤で長孔を抜いて、スロット溝を切り出し2mmバルサをリブにして組み込みます。此れに1,5mmのバルサシートを両面貼れば、正規の厚みのエルロン材の完成です。見た目はムクのエルロン材・・・。捻じり下げ1,5度が付いています。ムクのエルロン材ではこんな芸当は不可能なんですけどね。
  
● 被覆工程に入りました。何時もの通りに形紙を作ってフィルムシートを裁断して行きます。インナーウィングの翼中央付近は翼弦長が最大350mm程に成ります。フィルムの定尺は幅が600mmですので、長方形に裁断したら、前縁側か後縁側のどちらかで寸法が足らなく成ります。その為には合わせ取りが必要に成るので、本機専用の形紙を作りました。フラップとエルロンの接する翼端同士の間隔は、可能な限りせまくしたいんですが・・・上反角が邪魔して寄せられません。よって一部固定の後縁を作って、動翼同士の干渉を防ぎました。

● 実はこの構造・・・デメリットもあるんですなあ・・・。継ぎ目を無くした一枚のフィルムで貼り込んだ方が、後々の経年変化による継ぎ目のフィルムの粘着力が落ちて、剥がれて来る事が有ります。この場合はもう一度アイロンで熱を加えれば、粘着物が生き返ってもう一度貼り込む場合も有れば、剥がれが大きく成ると細かい埃が粘着物を邪魔して接着力が落ちる場合があります。其れを防ぐのであれば、シームレス・・・継ぎ目を無くせば良いのです。
  
● 再三・・・他の機種の製作記事でも紹介してますが、決してフィルムの裁断において・・・テーパー比の大きい主翼の場合、(B)の裁断はしない方が良いです。フィルムには裏と表が有るんですが・・・アイロンを当てられるのは表面のみです。裏面は顔料が塗ってありますので、裏紙(透明のフィルム)を剥がして、顔料が塗って有る面が貼り込む面です。よって同じ方向で四面分のフィルムを裁断してしまうと、最悪・・・二面分は寸法足らずで貼れなくなる場合があります。

● 貼り込む主翼の形状を何度も見返して・・・(A)の手順で裁断しましょう。画像は水平尾翼の寸法ですが、主翼の場合は縦二列の寸法が多いので、形紙の裏と表を使って左右もしくは上下で対称に成る様にフィルムを裁断して下さいね。小さい台形の形紙を作って、実際に小片のフィルムを切り出して見比べてみて下さい。私の言ってる事が解ると思います。
  
● 同じサイズの胴体なのに、白いと膨張して見え・・・青いと細くて締まって見えます。此れは飛行機を飛ばす環境・・・スロープサイトのその日の天候と密接に関係しますので、カバーリングの色調が大変重要に成って来ます。まあ・・・ベテランさんでもポカってミスする時が有るのは、このカバーリングの色調の選定ミス・・・。空の大気の状態、霞や霧やと色々と当日の天候がコロコロ変わってしまうのがスロープサイトです。霧で霞んでいる時に投げ込むと、最悪雲に突っ込んで視界没・・・。お仲間さんは逃げまどいます。だから・・・何度も言います。お山での初心者さんは、絶対ベテラン振らないで下さいね。誰も馬鹿にはしませんから・・・。大観峰の場合・・・お山に登るとラジコンメンバーだけじゃ無いんです。どんな天候の時でも無防備な観光客が必ずいますから・・・。
 
● 本機のラダーはテグスワイヤーの両引きです。ラダーホーンはテトラ(丹菊モデルクラフト)製です。この手のホーンは通常において画像の様な使い方は出来ません。使える様にする為の内部構造体が必要です。その作り方は此れから記載するエルロンホーンの記述の中に出て来ます。
 
● 当工房のエルロンサーボの搭載状況ですが、翼が厚くて深さに余裕が在る時のサーボは縦積みにし、深さに余裕が無い時は横積みで取り付けています。縦積みにする場合はサーボの出力軸が下を向きますので、ロータリーの回転とピッチングの回転で動翼が動く事に成ります。ですから動翼側のアジャスターは、画像のままではピンを抉る動きに成り・・・アジャスターピンに無理な荷重が掛かって、何れは破損する危険性もゼロではありません。画像の様にサーボホーンの動きと、エルロンホーンの動きがピッチング方向の回転で一致しているなら問題は有りませんが、サーボ側が縦積みでロータリーの動きの場合は、エルロンホーン側はボールリンクアジャスターにした方が無理なくガタ無く動きます。
  
● 画像は自作のエルロンホーンです。裏側に裏打のビスの固定板が要りません。その代わりに成るのが3mmビス対応の金属ワッシャです。ホーンはOK模型のロングヒット商品プラパーツツリー(現在¥700位?)のラダーホーン四個を使いました。裏側に更を作って、自己欽定型ナイロン封入ナットで締め込むと自分では緩んで来ません。令和の現在・・・此れと同型の動翼ホーンが正式にOK模型から発売されています。信頼性なら此方が遥かに上ですので、其方を購入して下さいね。
  
● OK模型が発売した同型のホーンですけど、この機体を作ったのがそれ以前5年以上前です。よって当時にはこの手のホーンが無かったので自作しました。画像に見えるギザ山のパイプは、OK模型のフレキシブルロッドの中芯パイプです。テトラからも同型のフレキシブルロッドは販売されていますが、中芯の材質が違うのでバルサとの接着の相性があまり良くありません・・・。OK模型の場合は、同社の瞬間接着剤OKボンド(BW=低粘度)との相性が抜群です。このパイプをエルロン材の中に埋め込みます。

● テトラのラダーホーン・加藤無線のラダーホーン・OK模型のラダーホーン・・・どれも同じ様に裏打ちのビスの固定板が付いています。昨今の模型に見られるベニヤ製のホーンを動翼に接着剤で直付けするのが流行していますが、ガッチリ固定するという点では、この三社のミテクレの悪いと評判の取り付け方が一番信頼性が有ります。当工房の裏打ちの処理は、自分の責任において行っていますので、手抜きで作るとその信頼性はほぼゼロに近く成ります。このホーンの裏打ちは、あくまでも見た目のミテクレの領域ですので、ご自分の機体に採用する時は自己責任でお願いしますね。
  
● 私が飛行機の撮影の為に屋外に出ると、必ず飼い猫が見に来ます。飼い猫にとってはマグロのカリカリの飯のタネともなる模型飛行機なので、爪で引っ掻いたり・・・縄張り争いの喧嘩を吹っ掛けるような事はしません。その辺が賢いかなあ・・・。ただ・・・ネコの本能とも言うのか・・・サガとも言うのか、ちょっとよそ見をしている間に目の前の物体が形を変えると、途端に戦闘モード・・・。あれ?・・・さっきと形が変わったぞおおおお!・・・という認識は在りそうですが、単純に裏返ってるとの認識は在りません。ネコにとっては恐ろしい状況と言えます。

● この状態が飛行中に起きた場合・・・意図して機体を背面にしたのではなく・・・操縦ミスやら、電波トラブルでこういった状態に愛機が成ってしまったら、今度は猫以上の知能を持った人間様でもお手上げ状態・・・。ネコ以上に混乱します。決して猫以下の行動をとらない様にお願いします。初心者さんが、馬鹿にされたくない一心で、今の自分の操縦技術に似つかわしくない機体を持って、サイトにやって来ます。操縦中にネコも驚く状況に成って、自分ではコントロール不能に成った場合・・・片意地張らずにお山のベテランフライヤーに助けを求めて下さいね。ベテランさんだって貴方と同じ初心者を経験しています。だから初心者の貴方が助けを求めれば、必ず助けてくれます。そうやって皆さん!上達して行くのですから・・・。
  
● 本機の名称はワイルドボアですが、此れはイノシシの事を指します。ワイルドボアとは鼻息が荒い・・・とか、息が粗い・・・の意味なのですが、ワイルドとはちょい悪の意味も有るので、バッドとはちょこっと意味が違います。バッドボアなら死に際の虫の息と然程変わらない意味なんですが、ワイルドボアとは制御には相当の覚悟が必要・・・という意味があります。元々が形容詞なので、名詞ではありません。アメリカ本土にはイノシシはいませんしね・・・。ただ・・・ワイルドボアーズというアメフトのチームは有りますよ。猪突猛進!アメフトチームにはピッタリの名前ですね(笑)・・・。このワイルドボアシリーズ、猪突型スロープグライダーの後継機種はまだまだ続きます。

● 画像左側の小型のワイルドボアは、フリーの飛行機ではありません。プラモデルと同じ・・・バルサから削りだしたソリッドモデルです。主に塗装やラインの位置決めに使います。カスタム屋さんなら、自分が担当したお客さんの飛行機を、後世に残す為・・・この様な小型のソリッドモデルとして残す人は多いです。嵩張るサイズではありませんしね。綺麗にお化粧して応接間に展示するのも良いと思います。