◎ 小学生・中学生対応の模型工作

● 数年前に同級生で現在小学校の科学クラブを担当している教諭と、同窓会で現在の科学クラブについて話をしていました。彼は小中学時代の私を知っています。模型工作にどっぷり嵌っていた時代を知っています。当時の科学クラブではゴム巻きのライトプレーンや、木材を削ってヨットや船舶を作り、ゴム巻きスクリューで走らせていました。

● 小学校時代にゴム巻き飛行機に興味を持った子供は、中学生になるともっと高度な模型飛行機にステップアップします。それは私だけではありませんでした。平成22年の夏・・・お寺の若き住職さんに、運営している学童保育の児童達に模型工作の教室を頼まれました。バルサとスチレンを組み合わせたスパン450mmのフリーのグライダーを各自作り、広い体育館で飛行会を行いました。

● 模型飛行機の製作には、当時、通園していた小学生は全員参加してくれました。限られた時間の中で切る・削る・接着する・の工程を小学生に分散し、流れ作業を行いました。同級生の教諭が言ってたのですが、「カッターナイフや有機接着剤なんか使わせたら、PTAの父兄達が騒ぎ出し問題に成る!。」との事。よって、手が汚れない・・・服が汚れない・・・もので科学をするのだそうです。差し詰め・・・テレビゲームの攻略法とカードゲームをやっているとの事。

● 世の中には頭を使っての仕事・・・もあれば、手を使って物を作る仕事・・・もあります。工業高校に入って、初めて工具を触った子供達が多いとは、工業高校の先生の弁・・・。ドライバーの持ち方・プライヤーの握り方から教えないと、木工や金属加工の刃物は触らせられないと事。それよりも・・・ドリルが回転・・・丸鋸が回転・・・で、ビビる生徒が続出・・・とは・・・。

● 私たちの時代は農家の子供は農作業に必要な道具の一つである鎌の研磨や、耕運機の操作が普通に出来ましたし、漁師の子供は漁具の修理や扱い方、伝馬船の漕ぎ方も当たり前に出来ました。子供の頃から両親の手伝いをしながら、大人の扱う道具の安全な使い方を知っていました。

● 学童保育の子供達に、正しいカッターナイフの握り方と切り方、風通しの良い場所での有機接着剤の使い方を指導しながらの模型飛行機の製作でした。男の子も女の子も・・・物を作る楽しさと・・・そして・・・作った自分の模型飛行機がちゃんと飛ぶ姿を見て楽しそうでした。熊本からはグライダーインストラクターの羽山さんも講師として参加してくれました。

● かつての学童保育の子供達も現在は中学生です。男子は身長も伸び体格は既に私と変わりません。女子は物凄く大人びて・・・女の色気まで漂わせています。そういった学童達が、模型教室を終えた私の元に今でも訪ねてきます。彼らの中の数人の男子と女子は、模型教室を通して物造りの世界を目指しています。頭で考えて其れを自分の手で形にする・・・。分野は様々・・・。パテシエだったり、自動車の整備工だったり・・・、そして・・・講師の羽山さんに質問攻めにしていた男の子は、中学生ながら航空業界を目指しています。必ず・・・誰かは・・・。と思って続けた模型教室ですが、確実に実を結んだ様です。

◎ 機体のコンセプトを決める

● どんな形状の飛行機や模型を作るのか・・・。まずはイラストを何枚も書いてデザインを決めます。自動車や船舶模型は、部屋の中やお風呂でも遊べるサイズの模型が、今の時代は別売りのユニットを購入すれば、自分のデザインした模型に組み込める様になりました。ところが、屋外で飛ばして楽しむ空物ラジコンを初心者がいきなり自作するのは・・・やはり・・・難しい。

● まず・・・イラストを何枚も書きます。この段階ならば航空力学とは無縁の知識でもかまいません。とにかく自由な発想が大事です。どんな形状にするのか・・・、どういう飛行能力をもった機体にするのか・・・、サイズはどれ位に仕上げるか・・・等。基本的に大手メーカーの飛行機キットを沢山作って、実際に飛ばしてきた玄人モデラー程、飛行データと構造データを沢山持っています。そういう知識は、何も専門大学での学業が必要な訳ではありません。模型として楽しむレベルならば、専門の模型雑誌等を熟読しても良いと思いますが、まずは基本から学習して自分で形にする事をお勧めします。

◎ 機体のアウトラインと形状を作図する

● 一通りの知識が身に着いたら、作りたい機体のアウトラインを作図してみましょう。飛ばすのが目的でなくても良いですよ。置物として楽しむのも一つの方法です。最初から飛ばす物を作るとなるとかなり作るのが難しくなります。しかし、置物として構造を組立て、その後の飛ばす機体に応用すれば良いのです。

● アウトラインが決まったら、同じモーメントを使って紙飛行機を作って飛ばしてみます。基本的に主翼に捻じれが無くニュートラル状態で手投げして、急降下するなら機首側が重い、投げて急上昇(宙返り)した後、頭上げを繰り返しながら前方飛行し降下してくるなら、機首側が軽いです。所謂、失速を繰り返しながら降下するピッチング状態です。水平に手投げして、僅かに機首を下げて滑空しながら降下すると、本来の重心の吊りあいの取れた状態です。その時の吊りあい具合を翼下に指を入れて測ってみましょう。作図したデザインの完全な縮尺の紙飛行機ならば、拡大して実際にラジコン化する機体の重心位置も、だいたい同じ位置となります。

● 因みに大手メーカーのラジコングライダーを製作し、グランド等で手投げテストをした場合・・・数秒間の水平姿勢を保ちながら降下し、地面近くで滑空姿勢のまま水平姿勢が延びて着陸すると、若干ですが後ろ重心となります。エレベーターの引き起こし操作なしでこの現象が起きる場合、これが通常の上空飛行の場合、向かい風に合うと失速し易くなります。手投げ後に僅かに機首を下げ地面に機首から接地したら重心がピッタリ合致した状態です。

● 上記画像の機体はデルタ(三角)翼と呼ばれています。大きな主翼と翼端にはそれぞれ垂直尾翼が付いているタイプです。しかし、主翼の一部と化した胴体の中心に垂直尾翼を配置しても同じです。しかし、この場合は、翼端の垂直尾翼よりもかなり大きな面積が必要になります。主翼の翼弦に対してのサイズですので、大きくなるのです。画像の機体は無動力で飛ばす機体ですので、主翼の形状に比例した遅めの速度しか出ませんので、このサイズの垂直尾翼が必要です。しかし、巡行速度が同デザインの機体よりも速く飛べる様に推進装置を搭載すると、尾翼のサイズはもっと小さく出来ます。よって・・・着陸する為の進入スピードも無動力機よりは速くなります。

● デルタ翼の場合は通常の水平尾翼付きの飛行機とは形状がちがいます。しかし、水平尾翼は主翼の中に埋もれているだけで、普通に存在しています。要するに・・・主翼の後縁と水平尾翼の前縁が接しているので、構造上複雑なので一枚翼にしたのがデルタ翼の形状となりました。フランスのミラージュ戦闘機がこのタイプなんですが、アメリカのトムキャット戦闘機を見れば理解できますよ。

● トムキャットは可変翼システムを搭載した艦載機なんですが、空母に駐機する場合と戦闘空域に素早く移動する場合は、主翼を後退させてデルタ翼となります。空母からカタパルト発進する時と戦闘空域での空中戦では主翼を展開して通常の水平尾翼付きの形状に戻ります。

◎ 縮小サイズの模型を作る

● 私の場合は、まずイラストから縮小図面を書いてみます。搭載メカも縮小して図面に書き入れます。三面図を描くと機体の大まかなプロフィールが決定しますが、角胴体にする場合と丸胴体にする場合は、搭載メカの容積が変化しますので搭載メカの位置毎の詳細な胴枠形状の作図も必要になります。

● プラモデルを組める小中学生ならば、画像の様なプラモデルの完成形は目にした事がある筈です。この機体は木製なんですが、1/10で作図したイラスト図面から製作しました。このソリッドモデルを10倍に拡大すると、本来の機体サイズに戻ります。まずは画像の様に小型の模型を作ってみましょう。飛べる飛ばないは、その後の問題です。寸法を変えずに紙飛行機を作って飛ばしながら、この機体デザインの重心位置を探します。そこで得られた重心位置は、航空力学の専門書に記載された重心位置の算出方法と合致するでしょう。卓上の推論だけで理解しても、実際にそれらを形に出来なければ頭に入りません。

● コンセプトから始まり基本的な小型模型の製作と、紙飛行機等の飛行テストの先に画像の様な完全完成のラジコン機が完成します。この完成した機体の構造内部には、縮小図面で記載していた搭載メカとリンケージの配置場所が当初決定した位置に納められています。

● 初めてラジコン飛行機を自作されるモデラーさんには、若干難しい作業とは思いますが、好きこそ物の上手なれ!の言葉通り・・・経験を積めばその先に未来は開けてきます。私自身・・・小学生でラジコン飛行機に憑りつかれ・・・、ゴム巻きのライトプレーン・コントロールライン(CL機=Uコン機)を経て、ラジコンの世界に入りました。その過程には模型業界での専門知識の修得期間も含まれています。

● こういう仕事って・・・都会ではかなり普通なんですが、田舎でやってると「遊んで稼ぐ道楽者」というやっかみタップリのレッテルを貼られて地元の長老達に嫌がらせされたりするんですが、産業ラジコン界からの依頼も少なくありません。都会では飛行機が完成しても、テスト飛行をする場所がありません。しかしながら・・・田舎だと、これが可能だったりします。専門部品の調達等、都会ならば模型店に直接出向いて購入できますが、田舎では通販に頼るしか方法がありません。そこで、当工房の機体を構成する専門材料は通販ですが、細かい部品の調達には地元の金属加工業社とホームセンターで購入可能な材料で自作する方法を採用しました。

● 技術と知識が無いと・・・これすら解らず、飛行機製作なんて出来ないのが当たり前です。「好きこそ物の上手なれ」・・・疑問が湧いたら、専門分野に飛び込んで知識と技術を得る。大人の私が子供の頃、自分で悟った事を一つ一つ経験していたら、現在の仕事に行き着きました。まだまだ日進月歩・・・空間線量計測ラジコン機の製作の為にと自分で除染現場を丸三年経験したり、段々畑の農薬撒きヘリコプターの為にと、農家さんに弟子入りしたり・・・。必要な知識はまず自分で修得する。その先に未来は存在しています。それは、子供の頃の何でも興味を持つという自然の現象から始まっています。小学生のお子様を持つお父さん・お母さんへ・・・、何かを作ろうとしている子供の行為に制限を付けないで下さい。一応作らせて、扱いを制限するのが良いと思いますよ。完成した物を与えるよりも、作らせて完成させる物を与えると、子供はその経験を色んな場面で活かしていきます。

◎ 原寸の図面を作成する

● 機体製作の準備が出来ましたので、いよいよ原寸大の製図に入ります。文房具専門店で購入可能な1mm方眼紙(700×1000)を使用します。主翼は左右分割で作図しますので、スパン(翼長)が最大1800mmの機体ならばこの用紙で作図可能なんですが、胴体が1000mmを越える場合は、用紙を継ぎ足します。

● 縮小図面が1/10ならば、縮小1mmは原寸10mmとなります。縮小図面の機体の側面図には胴体に中心線を入れ、機体の上面図には機首方向から尾翼先端まで中心線を曳きます。正面図は原寸大の作図後に、胴体のアウトラインに合わせて胴枠を作図します。上記でも述べましたが、搭載メカのサイズに合わせて胴枠の形状を決定しないと、メカが所定の場所に収まりきれない場合が出てきます。

● 画像はエンジン搭載の機体を無動力グライダーに改造する為の、原寸図から原寸図に変更しています。こういう技術も自作の機体を多く手掛けると、普通に作図出来る様になります。本項目の記載を見ている大人のモデラーさんには、こんなの子供が見ても解らないよ~・・・って思っているでしょうけど・・・。興味を持った子供たちは、色々と自分で考察を始めます。私自身がそうでしたから・・・。

● 仮に海外メーカーのインチ表記の原寸図面があったとします。この図面から機体を複製する場合・・・、知識が乏しいモデラーならばインチ表示なので製作を諦めるか・・・、インチ定規と格闘しながら複製を目指すだろうと思います。しかし、場数をこなしたモデラーならば、インチ原寸図をミリ原寸図に変更する事ぐらい朝飯前なんです。

● なにも複雑に考える必要なんてないですよ。インチ表記の原寸図から実寸をミリ定規で採れば良いのです。国内市販の材料寸法に合わせて、ミリ原寸図を作図します。ただし・・・指定の複合材質や金属部品の調達は、国内の材料で賄える様に仕様変更します。

● 原寸図面から更に部品用の図面を作成します。この図面は厚紙を貼り込んで型紙として切り抜きます。スチレンペーパー・バルサ・ベニヤ・プラスチック板・・・等、どんな材質でも共通して使えますので、正確に切り抜きます。この型紙は、完成品がその後に破損した場合も、材料取りの基準となりますし、量産する場合の治具ともなります。

● 世の中のモデラーさんは、完成品ならばネットオークションで現金化できる!って、心躍らせるんでしょうけどね、もしも・・・この型紙一式分がオークションに出たら・・・、完成ラジコン飛行機の数十倍の値段が付くって事実・・・知らないんだろうなあ・・・。まあ、購入するのは同業者ですけどね。

● 別に型紙なんか必要ないから早く作りたい!って考えでは、現物合わせの付け焼刃作業と変わりません。部品は切り出してみたものの・・・、ありゃ?合わないぞ?・・・。って場合に、無理やり結合させたら一通り完成後にバラケてしまった。なんてあり得る事態です。型紙の段階で仮組して修正を加えて・・・といった工程を挟むと部品取りの失敗が無くなりますので、最終的に組めなくて頓挫する事にはなりません。

● 型紙を使って材料を切り出します。画像は既にプロトタイプ機がテスト飛行を終えたので、量産する為に5機分加工しています。どんな模型でも型紙を使うと、その後の二機目・三機目の製作が容易になります。この型紙製作なんですが、私が元メーカーの人間だからという理由だけではありません。

● 大手メーカーの開発部には、これまで製作して販売した全ての機体の詳細な型紙を保管しています。ただし、私の様なケント紙の型紙ではなく・・・、厚さ1mm程度の合板ベニヤ等で切り出し保管されています。そこには昭和40年代に販売されたバルサキットの型紙さえ、丁寧に専用箱に入れて保管されています。この型紙の材質なんですが、昭和から平成に掛けて現存している飛行機メーカーなら、世界各国共通しています。最近なら、パソコンで作図してデータをディスクに保管し、必要な時にレーザーカット。の手法もあるのですが、デジタルの泣き所であるデータの消失という事態は、アナログ手法の型紙には起きませんので、大事に保管すれば何十年でも存在できます。

● 通常のラジコン飛行機は軽量木材であるバルサ材で構成されていますが、本機はバルサの代わりにスチレンペーパーを使って翼型を形成しました。通常ならば、このサイズの機体の翼型には厚さ2~3mmのバルサを使いますが、同じサイズですが厚さ5mmのスチレンペーパーを使っても強度は変わりません。バルサの様な木目が無い分加工がし易いのが特徴です。

● 水平尾翼の無い無尾翼機の扱いなので、尾翼付きの機体よりも主翼の面積を大きく採ってあるのが、三角翼と言われる無尾翼機の特長なんですが、この無尾翼と言われる主翼の中に水平尾翼の役割を持った部分も存在しています。よって、水平尾翼の無い無尾翼という考え方はしない方が良いと思いますよ。

● こういう形態の飛行機の重心位置なんですが、水平尾翼の付いた飛行機の場合は主翼の平均翼弦の前縁から33%位置にあると言われています。しかし、このデルタ翼(三角)の場合は、平均翼弦の前縁から25%位置に重心を設定してあります。難しく考えないで、平均翼弦の前縁から75%が主翼、残りの後縁側25%が水平尾翼と覚えて下さい。

● 通常形態の水平尾翼の付いた飛行機なんですが、主翼の重心位置から機首側と機尾側の長さの比率が1:2の場合、その機体に必要な尾翼の大きさで水平尾翼と垂直尾翼が構成されています。近代ジェット戦闘機の様に、機首側が主翼の位置よりも極端に長い場合は、その比率が変わり尾翼のサイズが大きくなります。今回のデルタ機は、重心位置からの比率から、近代戦闘機タイプですので、垂直尾翼を大きく設定してあります。

● 主翼の翼端に付いていますので、それでも小さくは成っています。つまり・・・翼弦に合わせた垂直尾翼のサイズって事です。主翼の中央に一枚だけ垂直尾翼を付ける場合は、その面積はもっと大きくなります。「実機のジェット戦闘機の垂直尾翼って、然程大きくないと思うんですが、矛盾してませんか~・・・。」という文面のメールを、知識先行型のモデラーさんから貰うんですが・・・。

● 無動力で飛ばすデルタグライダーの巡行速度と、ジェット戦闘機のデルタ機の巡行速度では比較対象出来ない位に実機の方が速いです。速度に見合った垂直尾翼のサイズなので、風圧に対するサイズで構成されています。模型飛行機はどんなに頑張っても音速・亜音速の領域のスピードは出せません。機体重量
と機体サイズに合わせた垂直尾翼のサイズとなります。

● 実機戦闘機は巡航速度でも亜音速の領域ですので、風圧は模型飛行機の比ではありません。当然、主翼も尾翼も小さくなります。ただし、航空母艦への着艦を必要とする戦闘機の場合は、見て解る位に垂直尾翼の大きい飛行機が多いと思いませんか。減速しても方向安定性(ヨー軸)を失わない様にする為に、垂直尾翼が比較的大きい機体が搭載される様ですね。

● 紙飛行機の重心位置は合ってる筈なのに・・・、機体が真っ直ぐ飛びません。投げても投げてもお尻を振ってきりもみ状態で地面にゴツン!。水平尾翼もちゃんと調整したのに、スピードが遅くなるとバランスが崩れる・・・。こういう飛行機は垂直尾翼の面積が足りません。無尾翼タイプよりも胴体の真ん中に一本タイプの垂直尾翼の紙飛行機ならば、長くて低い垂直尾翼よりも然程長くなくても高く設定すると、良く効きます。F-16(ファイティング・ファルコン)の垂直尾翼は、機体サイズから見れば然程大きいとは感じませんが、高さが他の戦闘機よりもあります。実機のスケール機を模型で作る場合は、実機よりも垂直尾翼のサイズを大きくすると安定して飛ばす事ができます。

◎ パワーユニット(推進装置)の決め方

● パワーユニットとは、飛行機に搭載するエンジン・モーターの事を指します。自作飛行機を作る場合、無動力機ならば走る翼型で推進力と揚力の増大を狙いますが、最初から動力を搭載する機体ならば、コンセプトに合わせた出力を選ぶと、本来の性能が完璧に得られる飛行機が完成します。

● 例えば・・・、手持ちのエンジン・モーターを生かしたいとか、スパン(翼長)1200mmの飛行機を作りたいとか、余ったラジコンメカを使って飛行機を作りたいとか・・・色々と自作の機体を作りたいモデラーは多いと思います。自作の模型飛行機をコンセプト通りに作れる技術は、大手メーカーの飛行機キットを沢山組んだモデラーほど、完成の成功比率が高いです。

● 機体フォルムのデザインは自分自身で決定出来るんですが、機体構造は実機だろうが小型の模型だろうが・・・、一連の基本的な構造を無視して作ると、構造的に弱かったり重心が合わなかったり・・・空力的に飛ばない飛行機に成ったりと散々です。自作飛行機を最初の一機目から確実に飛ばしたかったら、大手メーカーの飛行機キットを沢山作ってみましょう。

● 大手メーカーの販売キットのメリットなんですが、指定通りに組み上げて指定通りのパワーユニットを使ったら、必ず飛びますよっという保証が付いています。知識先行型の初心者モデラーさんほど、大手メーカーのキットを図面通りに製作したがりません。必ず何処か改造したがります。その理由なんですが、お仲間の掲示板で人目を引く様な一品に仕上げると、褒めてもらえるからです。しかし・・・知識先行型なので技術が伴っていません。せっかく・・・きちんと作れば必ず良く飛ぶ大手メーカーの飛行機を、性能を落とした危ない飛行機にしてしまいます。

● 自作飛行機はメーカーに欲しい飛行機が無いから、自作して自分だけの一品を作りたいてモデラーが殆どだと思います。自作モデラーさんは世界中レベルで見ると、星の数ほど沢山おられます。皆さんそれぞれ独自の考察した知識と技術で機体を自作しています。しかし、知識が乏しかったり技術が自信が持てなかった分野は、他人の考察を参考に実際に組立てて自分でも自信を持って作れるって踏んだら、自分の考察として堂々と発表してもなんの差支えもありません。「それって、●●さんの真似ですねえ。」と掲示板やメールに書き込んで来るモデラーさんは、自分では考察できないネット物知り博士です。他人の間違った考察だって、自分で検証しないのだから、その信憑性が判断出来ません。正しいと自己判断して掲示板に自信満々で書き込んだら・・・、お仲間さんに突っ込まれて・・・返答出来ません。自分で考察して発表しているモデラーさんの書き込みには、重みがあるんですよ。苦労して導き出した過程が感じられます。

● 大手メーカーの販売するキット画像は、完成させて被覆仕上げの状態にしてあるんですが、画像の隅に主要諸元が必ず記載してあります。(全長)(翼長)(全備重量)(主翼面積)(動力ユニットのサイズ)(搭載メカのチャンネル数)等ですが、もっと専門的になると(主翼の翼型)(翼面荷重)が記載される場合もあります。

● 翼面荷重の数値は、その飛行機がグライダー系なのか動力機なのか?の判断をするのに大変役立ちます。基本的に主翼の面積の数字よりも翼面荷重の数字が何倍も少なかった場合、サーマルグライダーに近くなります。逆に翼面積の数字と翼面荷重の数字が然程変わらないと、動力搭載機という事になります。

● 翼面荷重の数値の求め方は、記載された全備重量を主翼面積で割れば数値が出て来ます。この数値は、100㎠辺りの主翼の面積が受け持つ重さとなります。(機体の全備重量)÷(翼面積)=(翼面荷重)で表します。このメーカー発表の機体諸元のデータを沢山集めて下さい。因みに翼型なんですが、パワーソースのサイズや、どんな機体にしたいのか等のコンセプトで変化します。例えば・・・自律安定性重視の練習機なのか、アクロバットの出来る機体にするのか・・・等となります。


● 画像左の翼型は下面が平らなフラットボトム翼です。飛行機は安定性重視の古典スケール機や、滞空競技に用いる小型グライダーに適しています。右の画像の翼は上面・下面とも膨らんでいますが、上面の方のアールが大きく湾曲した半対称翼と言います。主にアクロバットを行う為の機体に使用します。画像はどれも無動力機なんですが、動力機も基本的には同じ事が言えます。

● なんで飛行機は浮き上がるんですか?の問いに、小学生レベルで答えましょう。左の翼型は上面が湾曲していますが、下面は平らです。飛行機の進行方向は、翼型の左側方向です。左側から空気が流れて来ます。下面は平らなので空気がスムーズに流れるんですが、上面は膨らんでいる分速く空気が流れます。この時に翼型の上面と下面では気圧の差が生まれます。上面の遥か上方は翼の下面と圧力は同じなんですが、翼の膨らんだ部分の気圧は変化します。よって圧力を正常に戻そうと翼に吸い上げ効果が生まれ、主翼を持ち上げようとします。これが揚力です。小学生に今の説明じゃあ解る筈がない!。って思うでしょうね。ところがですね・・・、興味を持った小学生はネットの博士みたいにうろ覚えなんかしないんですよ。自分で実験して試します。もっと深く知りたい子供は、科学クラブ経由で質問してきますよ。

● その応用で右の翼型の説明です。上面・下面とも湾曲してますが、上下で差が付いています。上下方向に持ち上げ効果が働くので、飛行機は上向き宙返りも下向き宙返りもできるんです。左の翼は上面のみしか湾曲してませんので、上向き宙返りは出来ますが、下向き宙返りは出来ません。よって・・・フラットボトムのエルロン搭載機で、背面飛行をしても・・・引き起こしての宙返りは不可能です。    (Part-2に続く)