◎ 小学生・中学生対応の模型工作(Part-2)

● パート(1)で記載した模型工作の為の手引き書なんですが、やっぱり・・・反論するメールが来ちゃいましたねえ・・・。この方・・・の言い分・・・大人でも理解不能なのに、子供が理解できる訳が無い!・・・はい!その通りです。間違っておりません。貴方の主張は100%正しいです。・・・メールの主さんなんですが、ラジコン飛行機には全く興味がありません。興味の無い大人に向けて配信している記事ではありません。興味を持った大人と子供に向けて配信している記事ですよ。・・・って、彼の主張を数行で片づけてしまうと・・・更なる反論メールでメールボックスが溢れますが、模型作りたい症候群の大人と子供からの質問メールの方が圧倒的に多いので続けて記載します。

● 未成年者からの質問で一番多いのは・・・、玩具店で買えるトイラジコンではなく、大人達が飛ばしている様な飛行機が作りたいけど、どうしたら良いですか。???、一つの疑問が・・・、これだけネットが普及してるのに・・・。質問メールのお子さんは、関東方面にお住まいです。九州の田舎のホームページなんか頼らず、地元のラジコンページにアクセスすれば問題解決は早い筈なんですが・・・。

● 理由は簡単です。専用飛行場を持った、ラジコン飛行機を扱う模型店が彼の近くに存在しません。更に・・・リンクしている大人の運営するページには、子供が理解出来そうな記事が一つもありません。明らかに成人向け・・・。子供が理解できないのではなく・・・未成年者を寄せ付けない空気の壁が存在しています。だから、大人に馬鹿にされない飛行機を自分で作って、飛ばせる様に一人で練習してから、飛行場に行きたい・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どないしたら・・・ええねん・・・。

● 航空法改正以前のラジコン初心者の大人と同じ考え方です。しかし・・・大人はそれを実行してトラブルに成りますが・・・、この子供さんは私のページを隈なく読み倒し、トラブル回避の方法と作って飛ばせる技術の両方を望みました。質問メールの内容は、然程長文ではありませんでしたが、ラジコン飛行機への想いがたくさん詰まった内容でした。室内ゲームにはまった子供が多い中、貴重な存在の子供達です。ただし・・・上手に成るまで一人で練習は、やっぱり危険なので、注意させていただきました。

● こういう親御さんが関わっていない未成年者にアドバイスする時は、まずは親と相談を薦めます。それが全面バックアップだろうが、お小遣いの範囲だろうが、科学模型レベルの空物ラジコンには、大人だろうが子供だろうが事故が起きる最悪のシナリオの可能性があります。この辺を毎回詳しく返信させてもらっています。せっかくの子供の興味を削いでしまうかもしれません。しかし・・・・・後日、この子供の親御さんからメールが来ました。自分が同年代の頃・・・やりたくても出来なかった模型製作だから、子供にはやらせてみたいとの事・・・。お住まいの地元から、知っている範囲の専用飛行場を持った模型クラブを紹介しましたが、あれから一年です。子供だけの筈が・・・お父さんも始めてしまいました。昭和の模型業界で言われていた「ミイラ取りがミイラ。」。ですが、親子が共通した趣味で楽しめる・・・理想のラジコンライフだと思いますよ。

◎ 飛行機を組立てる

● いよいよ・・・組立て行程に入ります。反論メールは100%大人から来るんですが、お子さんを持ったお父さんでもラジコンに興味の無い人が殆どです。題材として初心者の子供では絶対に組めない飛行機ばかりを選んで掲載しています。最終的な模型製作レベル・・・人によっては通過点レベルの模型を紹介しています。

● 現在の掲載記事のレベルは、中学生以上だったら理解可能・・・・と言われる、(ラジコン技術誌)です。大人の趣味の世界を親が見ても安全な書物として認識してもらえる雑誌です。いや・・・大事に保管できる書物のレベルは、月刊雑誌のレベルからならトップクラスです。私でさえ・・・昭和40年代の記事を読み直して飛行機を設計しています。

● ここからは、更に小学生には理解出来ないレベルの記事が並びますが、この理解できない小学生のレベルとは、ラジコンに興味の無かった幼少期を送った現在の大人と子供には、興味が湧かないので理解出来ない記事です。興味のある大人と子供のモデラーさん、じっくり読んで下さい。

● 義務教育の九年間に学校で習う内容は、大人になって就職する色々な職業の基本中の基本を学びます。2進法はコンピュータの基礎、二次元方程式はドラフター使用の製図書きには欠かせません。物の吊り合いは航空機設計の基本です。飛行機を前から見たら、左右対称同じ形をしています。ジェット旅客機の主翼に吊下げられたエンジンポットの位置は、左右同じ所に配置しないと左右のバランスは取れません。主翼の取り付け角が左右で違っていたら、飛行中・・・左右のバランスが崩れます。

● 空中を飛行する飛翔体は、全てに共通する三つの方向安定が存在します。ピッチング軸・ローリング軸・ヨーイング軸の三つが吊り合って初めて飛行物体は安定します。前進しないと飛べない飛行機も空中停止の出来るヘリコプターも、この三軸が安定しないと安定性を欠きます。飛べる飛行機を作る基本は、この三軸の吊り合いを計算しながら構造を組立てる工作が必要になります。

● ただ単に構造を左右対称に作れば良いという訳ではありません。左右の重さを同じにする(左右対称の材質)事が必要です。主翼の場合は、胴体から翼端側に行けば行くほど主翼に掛かる荷重が大きくなります。主翼の左右の材質が違うと、左右の安定性が悪くなる他に、強度も変わるので主翼の強度にも影響します。折れる事は避けられても・・・捻じれてしまうと振動現象(フラッター)が起きて、結局は主翼の破損・・・、飛行中に主翼の片方を失った機体は、きりもみ状態で墜落するしかありません。

● 主翼の左右を同じ材質で構成する製作方法は、ラジコン飛行機を製作する上で大変重要な技術です。例えば、船舶・自動車を木材で作る場合も、左右の材質を対称で作ると歪みの出ないメリットがあります。今後・・・応用編として、プロップボート(プロペラ推進)・プロップカート(プロペラ推進)の模型も紹介しますが、飛行機の製作と同じ技術が必要になりますので、興味のある小学生と中学生は、勉学の支障の出ない範囲で閲覧を続けて下さい。

● 主翼の材質を同じ強度にする一つの方法として、10枚以上のシートバルサをセットで購入して下さい。それが偶数枚でも奇数枚でも、1枚目と二枚目は同じ材質になっています。大手のキットメーカーは、自社工場での製材でも、専門業者からの入庫品でも角材から製材された数十枚綴りのシートを購入します。角材から製材されたシートは、木材の年輪に沿った製材をしますので、シートの製材の順番を製材前の角材の状態と同じ状態にしてあります。ですから、この順番を変えない様に選別する必要がありますので覚えておいて下さい。

● 当工房の考え方として、昭和の時代ではラジコン飛行機を扱う模型店に出向くしか、バルサ材を購入する方法はありませんでした。現在は、模型店に行かずとも・・・ホームセンターでバルサ材を扱う店舗もあります。そういう利便性を考慮して、機体の構造製作記事を掲載しています。

● 実は業界事項なので一般的には知られていませんが、バルサ材の輸入ルートと製材方法で販売する業者さんによっては値段が大きく変化します。安く購入するには製材される前の角材をコンテナ一杯分個人購入すれば、ホームセンターの製材されたシートバルサよりも遥かに安くなります。しかし、シートに製材する為に専門業者に発注が必要です。実はこっちの方が大変割高だったりします。購入方法と製材方法を計算したら・・・結局なんですが、個人のモデラーさんは模型店で購入するか、専門業者さんに大量発注するか・・・どちらかを選択するしかありません。少量ならばホームセンターで購入した方が便利なのは、これが理由です。ちなみに・・・バルサの専門加工業者さんは、バルサのシートや棒材の単品購入は、梱包送料等で割高になりますので、お薦めしません。

● 上記で紹介した十数枚の組バルサを二枚使います。一枚目のシートを画像の様に木目の方向を変えずに裏返します。この状態のシートを左右の主翼に使うと、左右の重さと強度が同じになります。この左右分けのシートから左右の主翼の部品を採る時も、同じ場所からそれぞれ部品を切り出すと比重は左右均等となります。量産する時と同じで、偶数枚のシートを重ねて糸鋸盤等で加工したら、一枚目を右翼・二枚目を左翼・それぞれの部品として使用します。

● ホームセンターで購入できるシートバルサは(80×600)が多いのですが、厚みによっては2枚組となっています。小型機やプロップボートを作るのに手頃なサイズですので、テスト飛行の際・・・現場で破損した時に、車の中に入れておくと大変便利だと思います。

● 上記左の画像は、主翼下面の材料をシートバルサに直接作図したものです。シート三枚の内、両端が柾目(木目に直角)の二枚組シートバルサ・真ん中が板目(木目に平行)の単品バルサです。この板目のシートは湾曲した年輪と平行にスライスしたシートですので、80mm幅シートの場合左右が同じ材質となりますので、左右分けと同じ方法で部品が採れます。

● この単品のシートバルサを業界ではバラ材と言いますが、上部が湾曲した胴体の場合はバルサシートに水分を加えて湾曲させてから使用します。豆知識として持っておけば何かと役立つ事なんですが、バルサ機のキットを購入したら側板材となるバルサのシートを見て下さい。木目に直角に製材されたシートは、一方が硬くてもう一方が柔らかい材質なんですが、主翼の取り付け面には硬い面を使用しています。この加工方法を無視したレーザーキットには要注意です。個人でレーザーカットを購入し、昭和のバルサキットをコピーして販売しているモデラーがいるのですが、上記の材料法則を無視した複製品が多いので注意して下さい。

● 面倒臭い事やってるなあ~って言われそうですが・・・、模型業界に入るまでの普通のモデラーだった時代は、材質の均等配置・・・なんか無視して、自作飛行機を作っていました。生地完成した後・・・何故か胴体が曲がってる・・・主翼が捻じれてる・・・、原因が解りませんでした。キットを説明書通りに組んでも何処かに不具合が出ます。絶対!キットの材料が悪い!って思ってました。しかし・・・模型業界の門を叩いて・・・開発部で最初から知識をおさらいして行くと・・・、何処で自分が失敗したのかが見えて来ました。と、同時にお客さんからのキットに対する不満事項が、自分が経験してきた事と似ていましたので、それらを改善する構造を目指して開発を続けて来ました。しかし・・・メーカーの開発部では、コスト面と新型工作法に慣れないお客さんからの新たなる苦情もあるだろうと予想されましたので、此処が限界・・・。メーカーでは決して扱わないだろう(キットでは普及しない)構造を、個人工房だから出来る利便性を最大に発揮して紹介しています。

● 模型飛行機も実機も、上から見たら左右が対称に成っているのが普通です。大手メーカーのバルサキットも個人工房の一品模型も、飛ばす事を前提にすれば上記で掲載した工作上の基本ルールを守れば狂いの出難い機体を組み上げる事ができます。三菱でライセンス生産されたファントムだって、基本ルールで機体の構造は構成されています。アメリカのUS・TO(技術指令書)も三菱のJ・TOにも左右対称の部品を使えと表記してあります。板金修理が私の仕事でしたが、主翼の左右の同じ個所の部品交換には、リベット一本から左右対称の指示がありましたので・・・かなりシビアな修理を要求されていました。それが当たり前の構造なので、模型メーカーで自分の間違いに気づくのも早かったし、改善するのも早かったです。

● 主翼の形状の説明です。左の機体の主翼は翼端に行くに従って、翼弦が短く翼厚が薄くなるテーパー翼と言います。右の機体の主翼は翼端までリブの翼弦が同じ、矩形翼(単形翼)と言います。矩形翼のメリットは、主翼の構造を平行・直角で正確に配置して組み立てれば完成します。上から見たら完全なる長方形です。捻じり下げ等の複雑な調整が要りません。

● テーパー翼はジェット戦闘機や旅客機で使用されていますが、胴体から延びる主翼は、胴体から翼端側に延びれば延びる程・・・荷重が大きくなります。よって矩形翼タイプでは内部構造の補強が嵩み・・・結果的に主翼全体が重くなってしまいます。テーパー翼は、矩形翼では難しかった内部補強の軽減をしつつ、翼を長くする事ができます。

● ただし・・・メリットばかりではありません。前に進む飛行機は常に空気を切り裂いて飛んでいます。主翼は切り裂く空気の流れを利用して飛んでいます。翼の前縁から後縁まで空気が流れるんですが、胴体側の翼弦に比べ翼端側は翼弦が短いので、気流が早く剥離します。主翼に捻じり下げを付けずに飛行した場合、上空飛行ではあまり感じませんが減速して着陸態勢に入ると、横安定を操作する主翼のエルロンが効き難くなります。大きく動かしても反応が遅いので、着陸時の左右の姿勢制御がし難くなります。捻じり下げの付いた主翼は、後縁側のラインを見ると翼の付け根よりも翼端側が上に位置している状態を言います。ネット物知り博士諸氏にこの説明をしたら・・・「それって主翼が捻じり上がってるじゃあないですかあああああ。」って言ってましたが、無知なまんまで飛行機を作るから・・・まともに飛びません。

● 後縁が上がるって事は前縁が下がるって事なんですが、博士達に主翼に捻じり下げを付けるとどうなるか聞いてみたら・・・「翼端失速が無くなりますので、飛行機が安定して飛びます!。」って言ってました。・・・・・・・・・・???・・・・・・・。テーパー翼は第二次大戦中の各国の戦闘機には、当たり前に付けてありました。空中戦において・・・着陸において・・・、機体を減速すると失速するんですが、主翼に捻じり下げを付けると失速する姿勢を遅らせる効果が期待できます。

● ジェット旅客機が着陸する際に、大きく機首を上げます。これは主翼の付け根に付いているフラップを下げ、主翼に捻じり上げを意図的に付け大迎角状態を作り出しますが、スピードは減速し揚力も極端に減るので徐々に高度が下がります。この時に主翼の翼端側は捻じり下げが付いていますので、減速して高度は下がっていますがまだ失速限界には達していませんので、エルロンはまだ反応出来・・・左右の安定性をコントロール可能になります。スピードが遅い割にはエンジンを噴かしたまま減速出来るので、滑走路の接地する寸前まで、主翼の横安定は確保されています。