● Rindy-reg(レギュラー尾翼タイプ)製作記事


● 根強く製作依頼の入るハンドランチグライダー(RINDY)の製作記事です。キットの要望も多いのですが、大手メーカーのキット価格にするには1000機単位の在庫を持たなければ無理ですので、今後もキット化はありません。一からの製作記事はキットが存在しませんので必要無いとお叱りメールも過去ありました。しかし、壊しても壊しても修理して再生しているモデラーさんもおられますので、修理の為の構造組み立て説明書だとご理解下さい。

● 今回は(Rindy-reg)の製作記事となります。(Rindy-T)は既に存在していますのでそちらの記事をご覧下さい。尚、T尾翼リンディは、主翼翼弦を170mm~200mmまでとして、尾翼付き胴体のみのセットで販売しました。お手持ちのハンドランチグライダーで胴体が使用不可でも、主翼が残っていてかつ翼弦が200mmまでなら乗せ換え可能の設定で製作しました。しかし、レギュラー尾翼の場合は、主翼の翼型と水平尾翼の位置関係で飛行性能にばらつきが予想されますので、ワンメイク仕様としています。

● 主翼は二段上反角(ポリへドラル)翼を採用しています。内翼中心の上反角は大手メーカーの機種と然程変わりませんが、外翼の上反角は大手メーカーの機体よりも浅めの上反角設定としてあります。私達、昭和のグランドサーマルフライヤーの機体と平成のハンドランチフライヤーの考え方の違いもあるのですが、ショックコードやウインチで機体を上昇させたら、なるべく機体のバンク角を浅くして旋回しサーマルを探します。弱いサーマルにも確実に乗れる様に、最
大限の主翼面積を得られる様にバンクを抑えて飛行させていました。

● あまりきつい上反角は直進性と自律安定性には貢献しますが、上反角がきつい分投影面積が減りますので弱いサーマルには乗せ難くなります。SALで使用している機体に極端な上反角が付けてないのはそれが理由です。基本的に外翼上反角は最大15度程度で良いと思います。世の中の右へ習えの機体ではありません。どちらかと言えば昭和のグランドサーマル・グライダーの位置付けですので、ご自分で改造されるのは自由ですがオリジナルリンディよりも滞空性能は悪くなりますので、クレーム等は御受け出来ません。メーカー製のオーバーコントロール(スティック・ばった打ち)が出来る機体ではありません。一度上空に上がれば流れる様な滑空と、なるべく高度を落とさず旋回しその旋回中にサーマルに乗る事が出来る設定です。サーマルハントはSALにはかないませんが、気負いの要らない機体です。無風に近いそよ風程度の土手スロープでも丘スロープでも飛ばせます。


● リンディの主翼治具を探したんですが見つかりません。あれこれ悩んでやっと思い出しました。熊本の同業者に貸し出したのは、私が除染現場派遣の為に福島に出向する前の月でした。電話してみたら現在避難所生活との事。倉庫が倒壊して工作室諸共潰れたそうなので、新たに作る事にしました。

● スポイラー搭載のハンドランチグライダー、アリカワスペシャルの治具とEP-GANBA低翼機(試作)の治具盤を改造します。改造と言ってもビス止めの桁を裏表付け替えるだけです。アリカワスペシャルはストレートウイングのハンドランチグライダーなので、胴体をセミスケールで作るとどんな実機スケール機にも化けられる汎用性を持っています。

● 単純に治具盤を裏返しにしています。長さは900mm・幅は400mmあります。当工房には概ねこのサイズの治具盤が200枚あり、二枚結合して幅を800mmにしたり、長さを1800mmにしたりしながら大型グライダーから小型電動機まで製作しています。機体の最大スパンは4000mmまでです。これ以上の大きさは工作室での使い回しが難しくなりますので、要望されてもお断りしています。

● リンディの主翼には二種類の上反角が着いています。画像は内翼と外翼の結合部のテーパーリブの作図をしています。後縁材を二枚重ねると直方体の部材となります。仮に一枚だけなら作図した面が斜めになるので正確な寸法が出ません。二枚重ねて釘で固定して糸鋸盤で切り出します。大手のメーカーさんも概ね同じ作業工程になります。実はこういう斜めのレーザーカットは照射面が斜めになりますので、レーザーの照射方向が逃げる様で正確な寸法が出ないそうです。

● このテーパーリブの切り出しにはデメリットがあります。材料の40%は捨てる部材となります。切り出したら最後、どの部品の加工も出来ません。唯一使えるとしたら粉々にしてパテにします。


● このリブ材で5機分です。まだ特殊リブの作図が残っています。画像左は2mmバルサの10枚重ねで一括り、約20mmですので適度に抵抗が入りミシン加工が楽です。


● リブ組の治具を作りますので、テンプレートを作図します。これを治具台に0,3mmのシャープペンシルでトレースしますが、基準となるラインを一本入れてから作図すると楽です。


● このトレースしたラインを元に治具に必要な部品を取り付けていきます。実は当工房の量産機は全てこの様な治具上でリブ組されています。キットでも昔から色々な手法で治具を作っていましたが、当工房の量産機の特長は一機目の左主翼と10機目の右主翼が完全に左右対称で仕上がる様に、治具の精度を上げて組んでいます。

● 基本的には左右の主翼を組む場合は、必ず二枚組の材料を使用します。バルサにはバラ(1枚単体のシート)と組(二枚組のシート)の二種類の法則を使って材料取りをします。胴体の場合は単体の部品が多いので、バラのシートを使います。垂直尾翼が胴体の中心にある場合もバラのバルサで材料取りしますが、双ラダーの場合は組みバルサを使います。

● 主翼や水平尾翼の様に胴体の中心ラインから左右に長く伸びている場合は、必ず左右対称に成る様に各部材を配置する為に必ず同じ材質の組バルサを使用します。水平尾翼ではあまり解らないのですが、主翼でははっきりと左右の重さが違ってきます。そこで、リブ材は10枚重ねで切り出しました。同じ材質の900ミリバルサから寸法切して重ね、ミシン加工しています。上から順に二枚ずつ取って左右の主翼の同じ位置に使用すれば、左右の重さは変わりません。あとは接着剤の微小な重さの違いです。材質を左右対称で使いますので、捻じれる方向も左右対称になります。修正も左右対称なので大変作業が楽になるのです。

● 上記の組み方は自作をされるモデラー用です。大手メーカーのキットは当たり前の事ですので安心して組んで下さい。ただしネット上では、個人がバルサキットから勝手にバルサ部品からトレースして複製した粗悪キットも混じっています。多分、彼らにはバラ材と組材の概念がありません。そういう複製品のバルサキットを掴まない様にしましょう。


● 3×10のヒノキ棒と5×10のバルサ棒を組み合わせて治具の部品を作ります。ハンドランチグライダーと言えどもリブ枚数が片翼15枚を越えてくると、部品の数は200個近く切り出し一つ一つ指定個所に接着しなければなりません。ただ、一回作ってきちんと保管しておけば、再度使う事が出来ます。リンディの記事の上にある、アーリーバードの治具は約7年前に作りましたが、厚手の布団圧縮袋に入れて空気を抜いて保管しておきました。保管状態は7年前のまま良好です。


● 主翼の部品は着々と出来上がっていますが、治具の部品はとりあえず此処まで。幅15mmに切り出す作業はキットメーカーさんと同じで09:00以降でないと作業が出来ません。かなり音の大きい機械での寸切り加工の為、夜中の作業は出来ません。当工房は一戸建て住宅なんですが、周りは一戸建てだらけです。家の間隔は開いていますが、所謂ベッドタウンなので夜中の機械作業はご法度なのです。


● 治具に必要な部品を切り出しました。これを一つずつ治具座標に取り付けていきます。接着には瞬間剤を使います。


● リブを固定するはめ合いの間隔は、抜き差し具合によって決まります。広過ぎると正確な取り付けが難しくなり、狭すぎると組みあがった主翼のリブ組部材が治具から外れ難くなります。本機のリブ材は2mmですが、はめ合いをきっちり設定してしまうとリブの材質によってはプラスマイナス0,2mmの寸法公差で調整が難しくなります。そこで、材質を一つに限定し、組みバルサ100枚でリンディの専用材料とし、材質をメディアムの角材一本から100枚のシートに限定しました。一本の角材ならば製材されるシートの厚みは均一化されますし、比重も同じです。治具部材の間隔も一つに限定できます。

● まず同じ材質のバルサでシム材を作りセロハンテープを二三枚貼り付けて厚みを少しだけ増やします。このシム材を基準にして間隔を決めます。実際のリブ材は固くなく緩くなくはめ込む事が出来、組みあがった骨組みは治具盤から外し易くなります。工作精度も勿論あがります。


● 一番面倒臭い部品の取り付けが済みました。ここからは実際に部材をはめ込みながら、細かい調整をしていきます。治具は一度組みあがったら、経年変化で劣化するか部品が壊れるまで半永久的に使えますので、なるべく確実に納得いくまで調整を繰り返します。最終的にはもっとメリハリのついた派手な治具になりますよ(笑)。


● 三週間前に発注した木村バルサから卸し立ての材料が届きました。(3×20枚・2×40枚・1,5×60枚と2mmベニヤ)これだけで総額3万円弱。一般のモデラーさんがショップで買う方が安いと思いますよ。このバルサ材は卸し立てというプレミアムがついたバルサシートです。南米エクアドルからコンテナで運ばれたバルサの角材を、製材してシートに仕上げた出来立てホヤホヤのバルサシートです。今回は軽量ハンドランチグライダーを多数製作しますので、木目の素直なメディアムバルサで全て統一したので、材質分と材料加工代でランクが二つ位上がり、割高となりました。


● 一本の角材からメディアムとして採れる部分はかなり少ないので、加工職人からすれば大変難しい選別作業です。2枚括りから20枚括りまで、あらゆる角材のメディアム帯のみをシートに仕上げてあります。一本の角材断面は85×80~200mm位ですが、その角材から製材するメディアム帯は角材の真ん中付近です。木目断面と相談しながらの製材加工なので、職人さんの腕の見せ所でもあります。カスタム工房では材質指定をするのが一般的です。機体の完成価格が高額になるのも当たり前なんですよ。

● 材料に段差をつけていますが、全て偶数枚の組バルサです。こういう指定をするとバラ材は省いてありますので、やはりコストは上がります。実は材質の中で最も扱い易くて単品高額になるのが、メディアムバルサです。その代わり全てが中間材質なので加工し易く、比較的軽量に仕上がるメリットもあります。


● 早速3mmメディアムを刻んでスパー材を作ってみました。流石2ランクアップの材質です。カッターで切り出すと必ず反りが入っていた3mmシートなんですが、切り出しても直線を保っています。バルサの角材をシートから加工する場合は、板厚の5倍の幅辺りでも反る場合は当たり前に起こります。今回の材料は木目がかなり素直な性格でした。

● ここからは今までの法則が通用しません。たとえレーザーカットで加工しても、型抜きしたらいきなり反りかえる場合もあります。OK模型の開発部時代の室長が、試作機を製作する時のスパー材はミシン(糸鋸盤)で切り出せ。と言っていました。カッター加工の場合、木目に平行に材料を切ろうとすると、棒材が細くなれば成るほど反りが出やすくなる。何故なら、繊維に平行に切っているから、内部繊維の大小に影響され易くなるのだそうです。じゃあどう加工するのか?、チップの付いた鋸刃で繊維を荒らしながら切ると,反り難いとの事。まさにその通りでした。それ以来、どんなにレーザーカットに頼っても、バルサムクの主翼のスパー材を加工する時は、糸鋸盤で切り出しています。幅が10mm以下でも反った事がありません。


● 画像は接写で撮ったのでほぼ実寸大です。切り口が荒いだけで湾曲してる様に見えますが、あとは専用のサンドホルダーで直線加工します。メディアムバルサは硬過ぎず柔らか過ぎずの材質です。ミシン加工もかなり楽です。とにかく鋸刃が長持ちします。ちなみに鋸刃の耐久性のレベルでいけば、アルミ材、ベニヤ、バルサの場合、一番鋸刃の消耗が激しいのはベニヤです。この積層木材は表面の木目は当てになりません。積層内部芯材はラワン材を格子状に接着していますので、熱を加えて切削しようとすると、接着溶剤も一部摩擦で溶ける様です。溶剤が溶けると鋸刃に絡み易くなり、結果的に抵抗が増え折れやすくなります。
  (Part-2に続く)