Spitfire-SSG 製作へ向けてのデータ収集 Part-1
          
● Ange-SSGの内部構造体で使用したスチレン材なんですが、その軽量さとある程度の丈夫さと・・・更に着陸時においてのショックの吸収性能があまりにも良かったので、今度はスピットファイアに使ってみる事にしましょう。キャノピーは過去に製作した飛燕のモノを流用するんですが、形状の一部が似ていましたので最初から兼用できる形状で木型を作成・・・古巣のOK模型の工場長に頼んで、型押し成形してもらいました。
 
● まずは全体を把握する目的でプラモデルを組立ててみましょう。飛燕を製作した時も同様なんですが、まずはプラモデルを組んでから・・・原寸図を引き、詳細を決定して行きました。今回もスチレンリブを使いますが、Angeの時は、ベース板の両面にリブ材を貼り込んだんですが、今回はリブ型其の物を切り出して通常のリブ組を行います。主翼の構造は、どちらかと言えば(NV-01)と同じ様な組み立て構造と成るでしょう。
 
● 飛燕(TONY)のキャノピーです。マスキングテープを貼り込んだ所が(Tony-SSG)に使用した範囲です。水滴型キャノピーの前方に小窓がありますが、たったこの程度の小窓のお陰で前方下部の視界が良くなります。顔をキャノピーに擦り付けながら機体の側方確認をしなくても、目線を移動するだけで側方の確認が出来る工夫ですね。こういうキャノピーの形状って言うのは、パイロット自身の歴戦の不具合の改善要求から産まれるのは・・・大戦中も現在も同じです。開発された機体にパイロットが無理矢理状況を合わせるって事でも無いんですよ。ファントムのキャノピー内部には、後方確認用の両サイドにバックミラーが改善提案により装備されましたから・・・。
 
● 飛燕のキャノピーの形状と、スピットファイアのキャノピー形状は似ています。其処で!どの道・・・完全スケールの状態では、無動力スロープ機としては飛ばし難い部類の機体フォルムなので・・・初めからセミスケール設定機としました。この時にキャノピー本体が両機に使える様に同じく、セミスケールキャノピーにしたので汎用性が上がった訳です。飛んでる姿は両機とも完全スケール機に見えますよ(笑)・・・。

● この飛燕もスピットファイアも・・・元々は、無動力のフルサイズスロープグライダーとして仕様変更された模型です。主翼がひょろ長いとか・・・胴体が単純な四角形だとか・・・そういったカテゴリーのプロフィール機ではありません。発想は(Ange-SSG)と同じで、元々が10ccのグローエンジンの推力により・・・正確な規定演技を熟せるF3Aスタント機を、無動力で飛ばす強風用スロープスタント機にするには、同改造すれば良いのか?・・・というコンセプトを、今度は大戦スケール機に置き換えた所から始まりました。

● 昭和50年代に一度・・・このスロープスタントグライダーのブームがやって来てます。当時の平尾台の若きモデラー(現在の仙人クラスのオールサンデーズ)の皆様と、築城基地の隊員組織の基地ラジコンクラブが吹上峠に持ち込んだ機体は多種多彩・・・。当時のF3A機・・・パイロン機・・・複葉機(ピッツスペシャルやらフォッカ等)・・・当時のモデラ―のお頭は実に考え方が柔軟でしたねえ・・・。取り敢えず、動力機なので推力無しで谷底に放り込むには、強風吹き荒れる気象条件じゃないと無理だろう!って事を全員知ってましたから、当然なんですが冬場に集まる事が習わしと成っていました。何でも投げ込んで取り敢えず飛ばしてみる・・・。上手く風に乗らない時は、皆で現地で考察会・・・。次回は皆さん其々持ち込んだ動力機を改良して再度集う・・・。この考察会が時代を越えても続いているのが、平尾台の冬場に行われるスロープ競技大会の礎なんです。

● 現在の平尾台のスロープ競技は、レーシング機とスケール機が大半を占めていますが・・・中にはオリジナルグライダーで出場するモデラーも少数ですが居ます。まあ・・・そういうモデラーさんは大変貴重な存在とも言えますね。当時もスロープスタントが流行ると・・・各大手メーカーが参入・・・。無動力のスロープスタント機を開発しバルサキット化しました。よって…現在のレーシング主流の状況みたいな、メーカーのバルサ製最強グライダーによるワンメイク競技に成ってしまった時代があります。皆が同機種なので操縦の得手不得手で勝敗の順位が決定してしまう・・・。ある意味面白みの無いスピード競技が流行してしまい・・・勝てないモデラーは大会自体を拒否し・・・毎年・・・上位入賞者は同じメンツ・・・って時期も有ったかなァ・・・。

● 特殊素材のレーシンググライダーが、F3Aカテゴリーみたいに世界大会の開催レベルを牽引してくれた事は、ラジコングライダー愛好者にとっては良い事かもしれませんが・・・、そのお陰で、レーシング以外はスロープサイトでは邪魔者扱いされるのも困ったもので・・・。微風ならば競技用ハンドランチ・・・強風ならばレーシング・・・以外は認めない!って固執した考え方を多くの新規参入のグライダー愛好家に勘違いさせたのが、抑々のトラブルの原因・・・。もっと自由な発想を持たなければ・・・模型業界自体が面白く無くなる要因にもなるんですなあ・・・。十年ほど前のラジ技の編集長が、毎月の編集が面白く無いって嘆いてましたからねえ・・・。かろうじて・・・今のラジコン技術に救いを与えているモデラーが居るとしたら・・・(いなか工房のモデラーさん)が放つ、鳥型飛行物体の連投記事くらいでしょうか・・・。この鳥師匠・・・羽ばたき機への挑戦を開始してるみたいですよ。動画サイトみたいな如何にもメカニカルな鳥ロボットみたいんじゃなくて、ホント!普通に自然に飛んでる鳥と見間違うみたいな鳥型飛行物体の開発に勤しんでおられる・・・二十一世紀のリタイヤ組さんですね・・・。
          
● まずは実機の三面図から、何処をデフォルメして行くかを決定します。実物機の胴体のモーメントと、大手メーカーから市販されている模型機の胴体モーメントを見比べて下さい。実機の重心位置を基準とした機首側の寸法(スピンナーの先端まで)と、水平尾翼の重心位置までの距離を測ると機首側を1とした場合・・・尾翼側は2,8~3,0に成っています。要するに・・・模型機よりも比率的に尾翼が小さく見えるのは、模型機よりもテールモーメントが長く成っているからです。

● 実機の場合は・・・戦闘に必要な兵器を沢山装備するので、消耗しない鉄の塊が搭載されてます。機銃の台座やエンジンのクランクケースは大変な重量物ですので、この比率でも充分重心が合います。更に・・・テールモーメントを長く設定すると。必然的に尾翼は小さく出来るので、取り外しての分解整備時も大きな重機を必要としなくなります。大戦機には自動操縦装置などまだ発明されていない時代ですので、なるべく機体自体の自律安定を良くしてパイロットの負担に成らない様にしてあります。ただ・・・軽量化もしなければやっぱりテールヘビーに成ります。其処で兵装をなるべく重心付近に集中させて、後部胴体はほぼガラン胴とする事で、敵の機銃の小穴位は貫通させても機体本体に大きな被弾をさせない構造に成っている様です。

● 次に模型機にする場合・・・此れがマニアの自作のカスタムの場合なら、完全スケールにして多くの構造体を犠牲にしながら作る事も出来るんですが・・・此れが万人向けの量産機と成る場合・・・。自作モデラー以上の操縦レベルのモデラーに対応させるべく・・・自律安定性を持ったセミスケール設定で機体を再設計します。パイロットが搭乗すれば、パイロット自身の天然ジャイロで機体の水平姿勢は保てますが、模型機の場合は地上から見上げて操縦するので・・・三軸が自律安定出来る様に模型機を作らなければ操縦が難しくなります。此処が実物機と模型機の違いです。

● 実機のエンジンの重量と模型機のグローエンジンやブラシレスモーターの重量比を比べてみても・・・ハッキリ言って模型用のパワーソースの方が軽量です。よって・・・スケールダウンした場合・・・テールモーメントが其のままならば重心は中々合いません。要するに・・・テールヘビーとなります。よって!・・・後部胴体を軽量化する為に、構造を手抜きすると・・・軽くなった分重心は合わせ易く成りますが、今度は後部胴体の構造が弱くなりますので・・・ちょっとした衝撃にも構造が耐えられず破損します。これを打開する為の胴体のセミスケール化が必要に成る訳です。実機の胴体比率は1対3が普通ですが、機首方向を少し伸ばして尾翼側の胴体を倍くらい縮めると、模型機の比率は1対2,2位に成れば重心は合わせ易く成ります。その代り・・・テールモーメントが短くなった分、尾翼の面積を大きく作ります。

● スロープグライダーにする場合は頼みの模型エンジンも搭載しませんので、更に重心が合わせ辛くなります。よって比率を1対2くらいの設定にして、尾翼面積を更に大きく作り・・・主翼の翼型を薄い半対称に交換します。実機らしい飛びを模型エンジンで実現するなら完全対称翼の方が良いのですが、スロープグライダーの場合は推力が有りませんので、沈下ベクトルが浅い翼型を使って走らせながら揚力を稼ぎます。こういう形状の機体は、軽量なハンドランチ機みたいなフワフワ飛行は絶対無理です。エレベータダウンを積極的にガンガン使って、機体を走らせないと満足には飛びません!。よって初心者さんが飛びつきそうなカテゴリーなんですが、初心者には大変操縦し辛い機種と成ります。軽量HLGみたいに指先で摘まんで、ヒラリ!と投げても・・・飛びません。翼面荷重はHLGの4倍以上大きいので、初速を着けて揚力増大を与える為、スロープに対して下向き30度位で力一杯放り込まないと・・・浮き上がりません・・・。後は機速を殺さない様に常に走らせて飛ばさないと、スピードが出過ぎてアップで機体を吊ると・・・減速して墜落してしまいますよ。風速はHLGには禁断の条件・・・風速10メートル以上必要です。
          
● 主翼の上反角は実機と同じ位の設定の方が飛ばし易く成ります。水平尾翼は画像から言えば、もう少しスパンが延びます。よって垂直尾翼も高くなります。スロープ設定機の場合は全体的に大きく成りますが・・・胴体の側面積が実機のままだと物凄く大きく見えてしまいますので、胴体の側面も太らせて作れば目立たなくなります。飛行サイトに口煩い完全スケールのマニアが居ても、セミスケールで飛ばし易くした!って言い張れば良いですよ(笑)・・・。キャンキャン煩い吠えるポメラニアンにはスロープ設定のスピットファイアは作れないし・・・飛ばせませんので・・・。多分・・・完全スケールのスピットを持って来ても、セミスケールのスピットファイア程の高性能な飛びはしませんから・・・。
 
● このスピットファイアは昭和50年代のF3A世界大会にも、模型設定に変更したセミスケール機で出場する海外選手が居たくらいですから・・・基本的な飛行性能は大変良いと思います。完全スケールの設定で作ると・・・兵装が無い分主翼自体の重心より後部は、必要強度で作るとかなり重く成ります。よってグローエンジンの他・・・主要なメカは全てメインストラットギヤの支柱位置よりも機首側に全て詰め込んでも重心は合わないでしょうね・・・。胴体は燃料タンクで一杯なので、主翼のメインスパーと前縁の間にエレベータサーボもラダーサーボも入れて・・・って、リンケージが・・・大変複雑に成りますなあ・・・。