🔧 フライバイ・ワイヤシステム 実物機と模型機の融合

● フライバイ・ワイヤシステムとは・・・簡単に言えば、電気信号を受信して・・・其れを各種機器に伝えて動かす。何でもないシステムです。ただ・・・この世の中・・・模型世界や通信世界では既に使われている技術なんですが、今から40年前までは・・・まだまだ全てがフライバイ・ワイヤだった訳でも無い時代でしたね。

● 昭和57年の4月・・・私は自衛官として航空機整備員5年目に突入・・・。その年度初めに三菱小牧工場へ短期研修に派遣されました。その小牧工場の心臓部である開発部への入室を許可された訳ですが、担当官に連れられて見て廻るハイテクの数々・・・。当時・・・まだまだ巷の民間世界には存在すらしなかったハイテク機器の未来を、見せつけられて驚いていた時代でした。この時代の航空機は、当時の最先端と言われていたコンピュータを搭載した軍用機だった訳ですが、更にその上を行くハイテク装備の軍用機も開発され・・・既に岐阜の航空実験団ではテストが繰り返されていました。

● 最近の模型関係のブログを観ていたら、岐阜基地の航空ミュージアムの記事を見つけました。当時はまだまだ実験段階だった航空機の数々が、既に実戦稼働を終えてモニュメントに成ってるのを観て・・・除隊してもう30年以上に成った自分自身を振り返っていました。当時の小牧工場で未来の操縦システムとして研究開発されていたフライバイ・ワイヤシステムは・・・現在では民間航空機も当たり前に装備している装置です。

● 平たく言えば・・・パイロットの股の間に有った操縦桿が、コクピット右端の肘置きコンソールに移動した・・・。ってだけなんですが。まあ・・・ラジコンプロポのmode2タイプの右側スティック(エルロンとエレベータ)が、グリップタイプの操縦桿で着いていると思えば良いんじゃないですかねえ・・・。スロットルレバーはコクピットの左側・・・足元のつま先側にはラダーペダル・・・。真ん中には大型液晶タッチパネルの火器管制システムが鎮座してます。まるでアニメ世界の人型戦闘モービルみたい・・・。マクロスのバルキリーのコクピットに近い・・・。

● 実は・・・このコクピットの操縦形態・・・。もう既に身近な建設重機にも備わってまして、パワーショベル(通称ユンボ)のコクピットは、移動クローラーの各種操縦レバーとサイドコンソールに備わったジョイスティックに分かれてます。よってオペレータの搭乗スペースは大変居住性が良く成ったとも言えますね。バケットを操作するアームも含めた可動アームの操縦は、サイドコンソールに備えられた操縦桿でやってるんですが、操作した感覚は大変良い。園芸用のスコップを操作するみたいで、実に扱い易い感覚です。これもフライバイワイヤ・・・。医療機器の世界でも活躍してるでしょ?・・・。ロボットアームに寄る手術・・・。専門医が患者さんの手術を遠隔操作できる技術ですよ・・・。

● 実はですねえ・・・。このフライバイ・ワイヤシステムを未来のF3Aスタント機に組み込もうと本気で取り組んでいたメーカーの社長さんがいました。昭和60年代初頭に・・・。加藤無線株式会社(MK)の加藤昌弘社長です。ポンプ付きYSエンジン(山田精機)にジェネレータ(発電装置)を組み込んで、電磁アクチェ―タを操作し・・・油圧システムで各種動翼を作動させるシステムを本気で開発しようと目論んでいました。社長から直接聞いてたから事実ですよ。

● 油圧駆動にすると何が便利なのか・・・簡単に言えば、プッシュロッドに寄る直線的なリンケージが要らなくなるって事ですよ。サーボから伝達する動翼までのリンケージは、ガタ無く直線で配置すればサーボトルク其のままの状態で動翼まで伝達されますが、飛行機の構造やら運搬の便利さを追求した分解構造では、このリンケージに制約が課せられる・・・。しかし・・・配管チューブなら、その制約が一切無くなるので、ある意味全く新しいリンケージ革命が起こります。そういった航空業界のハイテク技術をいち早く模型機に応用しようとしていたのが、ワンマン社長と一部の人から揶揄されていた人物です。でも・・・当時のF3Aのモデラーさん達が挙ってMKの新製品を購入していたのは、その完成度が桁違いだったからですよ。平成生まれの若きスチレン世代のモデラ―には、到底受け入れられないでしょうね。安かろう・・・悪かろう・・・の製品なんて一つも無いんだから・・・。その代り・・・お手頃価格のハイテク装置が一つも存在しない高価格の高級品でしたしね。60クラスENG専用の可変ピッチシステムなんか、一式3万円台・・・。一つ一つのパーツを、時間を掛けて社長自身で組立てていました。別の言い方なら、他の社員にも触らせない製品でしたね・・・。更に・・・社長が操縦テクニックのレベルを認めたモデラーにしか販売しないって言う頑固さも持っていました。ネット普及後のモデラー相手なら・・・一桁チャンネルで大いに悪口言われてたかもなあ・・・。でも、扱うモデラーを限定したから、テクニックを持たないモデラー自身が招く、人身事故やら物損事故が絶対起きなかったとも言えるんですよねえ。

● この小牧工場への短期研修出向には、其れに至るまでの経緯がありました。研修に出向く半年前・・・昭和56年の秋の総合演習における、板金修理班の演目が決まりました。被弾機修復・・・???・・・。実戦想定の演習なのに、現役戦闘機をワザと被弾させるんかあ?・・・。いやいや・・・国税の塊をワザと壊したりなんかしたら、国民が許さない・・・。そこで!既に用廃に成って宮崎の山中の用廃機置き場に山積みになっていた(F-86Fセイバー)の後部胴体を陸自の演習場に運び、機関砲と戦車砲の弾丸で胴体の横っ腹を穴だらけにして・・・内部で炸裂した弾は、内側から外に向けて破裂・・・。築城基地にトレーラーで運ばれて、第三格納庫に運ばれて来た時・・・修理分隊一同・・・呆れました。いやはや・・・此処まで潰さんでもいいやろうに・・・。しかし!一人だけ息巻いて張り切ってる人がいます。幼少期を大戦中に過ごした班長でした。目ん玉ギラギラ・・・もうやる気満々!。

● 早速、上官を集めて段取り会議・・・。当時の基地にはファントム部隊の304飛行隊の他に、ハチロク部隊の6飛行隊、そしてコブラマーク(T-2)部隊の飛行教導隊(仮想敵機アグレッサー)がいました。それらの上級士官とパイロット達が・・・此れは無理やろなァ・・・の諦めにも似た囁きを聞きながら、パイロットが言ってんだから無理かなァ・・・って21歳の私自身だってそう思ってたんですが・・・。48時間ぶっ通しで行われる演習中の36時間で見事に修復・・・。若き私達でもフラフラに成る位の突貫作業でしたが・・・昭和一桁の根性を見せつけられた思いでした。最初は呆れていたパイロット達も激励に来るし・・・だんだんと修復される機体を、調理班や衛生隊の上官達まで見に来るし・・・何時の間にか基地全体を巻き込んだイベントみたいな騒ぎに成りました。

● こうなると・・・是が非でも誰しもが参加したくなって来る(笑)・・・。調理班は整備格納庫に出張して簡易の食堂を設営・・・普段の食堂でも出て来ない高級食材高カロリーのグルメ尽くしを振舞い始めるし、衛生隊は救急キットを持ち込んで何時でも栄養注射出来る様に待機してるし・・・でもその注射器ってのがお馬さんか牛さんにでも射つんかい!って位にぶっ太い容量だし・・・、衛生隊の婦長さんは誰かに射ちたくて、「疲れてない?・・・気分悪くない?・・・。」ってしつこく聞いて来るし、無理矢理腕を掴んで脈を測ったりおでこに手を当てて熱を測ったり・・・もう野戦病院みたいな雰囲気・・・。その内・・・この婦長さんは、自分が上官である権力を無理矢理振りかざし・・・強制的に栄養注射を射つと言い出した!・・・。

● こんなぶっ太い注射なんか誰だって嫌ですよ。三棟繋がった整備格納庫に入庫していたファントムまで、私達二十代の班員は逃げ廻って隠れました。こんな高身長の私でもファントムなら隠れる場所が有るんですなあ・・・。一番見つかり難いのが、インテークの奥・・・。途中で少しカーブしてるので腹ばいに成ると見つからない(笑)・・・。婦長さんは誰でも良いから射ちたいらしい・・・。演習なんだから!って、頼んでも無いのに無理矢理かい!・・・。でも結局捕まるんだなあ・・・。昭和一桁の号令一発で・・・。全員投降・・・婦長さんはニコニコしながら「好い子ねえ・・・。」って腕を掴んでブスッ!・・・。それらの一部始終を被弾機修復・・・何でも食べ放題の食事風景・・・栄養注射に怯える私達の歪んだ顔つきまで、肩に担いだビデオカメラで撮影していたテレビクルーがいました。彼らは三菱小牧工場の広報スタッフ・・・。年明けて・・・短期研修に三菱へ出向したメンバーは、演習中に婦長さんの生贄にされた三名!・・・。直属の上長と私と同期の三人が招かれました。オマケなんですが・・・出向時の往路は、基地に定期便としてやって来るC-1輸送機に大型貨物と一緒に搭乗し、埼玉県の入間基地経由で小牧基地までのフライトでした。

● 因みに・・・この輸送機の座席ってのが・・・民間旅客機みたいに進行方向に向いてるシートじゃ無いんだなあ・・・。通勤電車の両端にあるベンチみたいなシート・・・。シートって言うよりも、肉抜きされた鉄板を人体工学でお尻がすっぽり嵌るって感じの簡易型だし・・・あくまでも人員搬送はオマケだからって言わんばかりの待遇・・・。私の目の前にはコンテナに載せられた木箱が括られて反対側の同期の顔も見えないし・・・離陸する時の身体が横に傾く不思議な感覚・・・今でも長崎市内のちんちん電車に乗ると思い出します。もっとバラシてやろうか!。操縦室と荷物室の間は、安っぽいカーテンのみ・・・。トイレは機体前方の端っこ・・・。これまたロッカーみたいに狭くて、やっぱりカーテンしか無い・・・。此処で疑問が湧いて来た!。昔は軍用機は男の居場所・・・。ところが今は女性のパイロットもいる・・・。東北震災時に仙台空港の瓦礫撤去を急いだ自衛隊が、撤去後に救援物資を運んだC-1輸送機のパイロットは、ポニーテールの女性パイロットだった。着陸進入の左旋回中に後ろを振り向ける程の余裕の操縦画像をテレビで観たんだが・・・、はて?・・・今のC-1輸送機のトイレってどうなったんだろうと思う私は・・・不思議ちゃんでしょうか(笑)・・・。

● 研修中の開発棟で(CCV-T2)の実寸サイズのモックアップを見ました。その時の担当さんがフライバイ・ワイヤシステムの説明をしたんですが・・・。イマイチちんぷんかんぷんの上長に対して、この担当さんはこう例えて言いました。「簡単に言うとですねえ~・・・。ラジコンの送信機を無線から有線に変えて、飛行機のコンピュータと接続して動翼を操舵するんです・・・。言い換えれば、模型機のラジコンプロポで、実物の飛行機を操縦すると思って下さい!。操縦桿は油圧駆動で荷重が軽減されてるとはいえ、やっぱり重いんですよ。突発的な危機が起きた場合・・・パイロットの反応は早いけど機体の動きが着いて行かない・・・。そういう操作の挙動の遅れを改善する目的が有ります。ラジコンの操縦って機体の動翼が受ける風圧に寄る空気抵抗の重さって指に感じないでしょう?。此れを改善すればパイロットの負担は極力軽減出来ますから・・・。」・・・担当官の言われた通りですね。私は駄目元で、フライバイワイヤの資料を貰えるか聞いてみたら、後日所長と相談してから、と言われました。研修も終り・・・宿泊先を出る時に名古屋駅まで見送る担当さんが、私に渡してくれたのは・・・入隊4年目の私のレベルに見合った内容以上の資料を貰いました。その資料は門外不出・・・。墓場まで持って行くつもりです。私のページを見れば、所々に・・・当時の資料の内容が応用された記事として掲載されていますよ。

● そもそも・・・何故フライバイワイヤシステムは開発されたのか・・・。其れは現在の航空機・船舶・車両・建設重機等・・・見れば直ぐ解る事・・・。オートパイロット・・・つまり、自動操縦への移行をし易くする為です。操縦桿の動きを電気信号に変換して、動翼を動かすって事は、ジャイロ(姿勢制御装置)を起動させれば・・・航空機は自分で姿勢を維持出来る・・・。例えば軍用機に例えるならば、戦闘空域までの通常飛行は自動操縦に任せて、作戦行動域ではパイロット自身が操縦する。作戦終了時に戦闘空域を出た時点で自動操縦に再び戻し・・・安全に帰還させる・・・。

● 此れを民間旅客機に置き換えれば・・・飛行機自体に異常が起きた場合、飛行機の搭載コンピュータには自己修復能力にも限界がある訳で・・・そういう場合は、パイロットと協力して安全に目的地への帰投を遂行する・・・って事ですなあ。最近何かとお騒がせな、車両の自動運転機能ですが・・・。全てを車両に組み込まれた人工知能(AI)に任せるのは、大変危険である!といった見解を示す知識人も多いです。車両走行時において・・・複数の人間もしくは動物の理解し難い道路の横断等に対して、合理的判断と言うか倫理を(AI)に覚えさせるのに、経験を積めば積むほど・・・安全運転してくれるのかというと・・・そうでも無い・・・。不意な人間や動物の横断に対して、その後の大事故を瞬時に判断した場合・・・ブレーキを踏んでも止まれなかった場合はどう判断するのか・・・。多分・・・歩行者の人命尊重ならば、回避行動の為に車両を電柱等に無理矢理ぶつけて急停止・・・もしくは、ルールを無視った人間が悪いと判断すれば、そのまま歩行者を跳ねる危険性も有る・・・。現実に物損事故やら人身事故が世界各地で起きている現実・・・。

● 人工知能をもっと進化させる為に、あとどれ位の人命が犠牲に成るのか・・・。車両の自動運転って技術は、ドライバーの運転補正をさせるに留めておいた方が、今の時代はまだまだ安全って事ですね。何故に世界中で競争してまで自動操縦の開発に拘るのか・・・。だから見切り発車的なトラブルが次から次からと露見する・・・。地元でも起きてるんですが、横断歩道を老人が渡ってる・・・普通なら車両は停まる筈だが、ノーブレーキで横断歩道に侵入・・・。歩行中の老人を車両運転の老人が跳ねる・・・。目撃した状況では、横断歩道を渡っていた老人は、道の真ん中で止まった・・・。しかし・・・奥方を載せたハイクラスのセダンを運転していたご老体は、躊躇無しに通過・・・。周りのクルマはちゃんと停止してるのに・・・。まあ・・・ね。ハイクラスとは言っても、バンパー周りは傷だらけ・・・。何回、何かにぶつけてる証拠も残ってるんだが・・・。多分・・・人を跳ねても普通に運転して通過・・・。通報されて警察に捕まっても、・・・鹿かイノシシを跳ねたって言い訳するのは目に見えてるしなあ・・・。まあ・・・地元の道路に鹿もイノシシも出没した事は無いんだが・・・。