ANTARESーⅠ型 山本昇氏オリジナル設定機 Part-2
  
● 本機のスタビライザーにも中央フィレットが付きます。厚みのあるバルサの一発貼り込みが早いだろ!ってお考えのモデラー諸氏も居られるかと・・・。本機の図面をお持ちのモデラーさんは、固定ラダー付近を上面図から見て下さいね。要するに画像中央の先貼り込み部材の役割・・・二本のシャフトの前後はテーパーなんですなあ・・・。よって、まず・・・テーパー面をシャフト付近を含めて平面に戻す必要が有るんです。其れが済めば一発貼り込みが可能ですが、此のフィレットも積層構造としました。その方が軸受けパイプの穴開けが楽だったんですよねえ。
  
● さあ!何が出来るんでしょうなあ・・・。多分、同じ物を作ってるモデラーは、私の知る限りまだ出現していませんなあ・・・。ネット上を見て回ると、ありゃ~・・・かなり複雑な治具を組んでるモデラーさん多数・・・。まるで実機戦闘機の胴体の組み立て治具ですなあ・・・。多分、構造や機能を完全に理解出来てんのは、作ったご本人のみでしょうなあ・・・。画像を観ても、私自身・・・構造を完全に理解出来ませんでした。しかし・・・世の中、上には上のモデラーさんが沢山居られますなあ・・・。
  
● まずは胴枠毎の側板込みの寸法で幅と高さを計測します。高さは胴体側面図から採寸します。其処から正式な形紙を作図して切り出します。此れは胴体の組み立て治具です。其れも胴体の中心軸を正確に直線に出す・・・ってだけに特化したラジコン初心者さんにも理解可能な単純な構造の治具です。神様みたいなモデラーさんの複雑治具には敵いませんなあ・・・。しかしながら、この治具ならアンタレスの量産は可能ですよ。別の言い方ならば・・・上から見て同形状だけど、側面形状の違うセミスケール機やらオリジナルデザイン機にも使えるので汎用性は無限大ですなあ・・・。
  
● 其々幅と角度の違う治具板です。左は機首先端の胴枠・・・中央は主翼前縁の胴枠付近・・・右が主翼後縁の胴枠付近・・・。何故に角度が違うのかというと、本機アンタレスの側板が画く胴体の湾曲度合いが胴枠毎に違うからです。何かこの治具板で気づいた事はありませんか?・・・。中心にある抜けてる溝は何?・・・最初に載せた画像のレール・・・。此れを軸にこの治具板はスライドします。よってスライドさせれば圧着も可能なんですよ。バルサの側板の厚みは3mm基準でも2,7mm~3,3mmと材質によって厚さが変化します。この治具板が完全固定だったら、厚い3mmバルサの胴体は入らない・・・薄い3mmバルサの胴体はブカブカで胴枠が圧着出来ません。基本的に側板の厚みが変わっても、胴体の湾曲度合いは変化しないので、治具板がスライドできるという所がこの治具の強みです。
  
● 二枚側板構造の胴体の泣き所・・・胴体の中心軸を完全無欠の直線にするのは難しい・・・。其れはキットを作ってるモデラー諸氏なら誰もが思う事・・・。治具を作る事自体が難しい・・・ってか?。何も木材を切り抜いて作らんでも好いんじゃないですかねえ~。5mmのスチレンシートを三枚積層すればバルサの15mmよりは汎用性がありますよ。木材は糸鋸盤が必用ですけど、スチレンシートならカッターナイフとサンドホルダーで加工出来ますよ。要は失敗を恐れず何度もトライすれば、何れは自分にとって一番使い易いオリジナルな治具が作れます。
  
● 胴体側板の機首側が湾曲しています。これはガルモデルのキットの応用です。原寸図面をお持ちなら図面の端っこに必ず記載してますよ。湾曲させる手順が・・・。しかし・・・誰が見たって心配になる位に、主翼前縁側の胴枠がひ弱に見えますなあ・・・。いやいや、此のままならひ弱其の物なんですが、此れから見るも無残な形状に変化して頑丈に成りますよ。多分、普通のモデラーなら無駄な構造って思うくらいの・・・。ただですなあ、本機の作られた時代ってのが、令和の新時代なら可能な事が、昭和50年代の中期では不可能だったからです。だから山本さんは当時としては、多分誰もやらない構造で本機を製作しました。
  
● 一番重要な胴枠を大きく繰り抜く羽目に成ったのは、このアナログな機構を収める為です。山本さんのオリジナル機では画像のユニットを収めるので、胴枠本体は大きく抜き取る必要が有ったんですが、本機の場合はエルロンサーボのスライド機構を別の構造に変えるので、結果的に胴枠自体が強化されていきます。見るも無残とは・・・山本さんの如何にもってビジュアルが無くなるからですよ。ただし、山本さんのオリジナル機とアナログ機構の度合いは同じですよ。
  
● 昭和40年代から50年代のラジコン技術誌には、山本さんみたいな自作モデラーさんの製作記事がワンサカ掲載されました。エルロンサーボをスライドさせてフラッペロンにしたりエレボンにしたり・・・更にV型尾翼のラダベータに使ったりと、そらもう色んな機械式ミキシング機構のオンパレードでしたなあ・・・。ただ、本機で使う樹脂アングルのレール機構は、当時はまだ製造されていませんでしたのでその存在すら確認出来ませんでした。何故、今回使おうと思ったのか・・・このJRのサーボケースの材質と樹脂製アングルの材質同士の相性が良く、滑り易いって事が解ったからです。実は以前にもこの樹脂アングルを使って、別機種のレールとして既に組み込んであるので本機にも採用しました。
  
● 胴体下部のプランクを行っています。片側ずつ貼り込む方法なんですが、仕上がると違和感がありません。左右対称にってのが当り前だって思ってるモデラーには違和感だらけでしょうなあ・・・。でもですなあ、フィルムで被覆してしまうと普通に成るんですなあ・・・。違和感無いですよバルサの継ぎ目なんて見えないので(笑)・・・。このアンタレス、当時としてはかなり未来的なデザインでした。にも関わらず、胴体下部はクラシカルなセコンダリーの胴体みたいですなあ・・・。今思うと不思議なんですが、其れでも令和の時代に沿う形状です。
  
● 少しずつ形に成っています。プランクシートの貼り込みが進むと達成感が出て来ます。胴体コクピット付近のラインと主翼付近の切り替えライン・・・ガルモデルのキットを作り倒した人ならお馴染みですね。平成のラジコンブームの頂点の頃、アンタレスの話題でネット上が盛り上がってましたが、なんとなく的外れな会話でしたね・・・。機首にブラシレス搭載してグランドで飛ばすとか、何故主翼にサーボを入れなかったのかとか、その方がフラッペロンは作り易いとか・・・って、その時代には無かったんですよ。平成には当り前の機能を搭載したプロポ自体が・・・。
  
● 主翼後縁付近の補助胴枠の取り付けです。胴体下部の切り替えは補助胴枠の直ぐ後ろの胴枠です。よって後部胴体のプランクは補助胴枠まで貼り込みます。この補助胴枠は傾斜させて取り付けますが、傾斜角度が決まっていますので専用の治具を作ってその角度に合わせて補助胴枠を接着しています。この治具は横にスライドすれば外れますので、完全に接着が完了してから抜き取れば良いです。
  
● 主翼後部を固定するビスの台座を作ります。PVC樹脂のブロックを加工して段差を付けます。この段差はベニヤの台座の板厚分です。此れを補助胴枠の下部にはめ込み三方向で接着します。尚、樹脂ブロックは段付け周りを荒らした状態で、ピッタリ寸法に加工したベニヤ台座の孔にエポキシ接着剤で固定します。結構大袈裟な台座に見えますが、この樹脂ブロックは、厚みが増せば増すほどねじ山の強度が上がります。
  
● このアンタレスの胴体には三次曲面がありません。山本さんは構造を簡素化する目的で、三次曲面の無い胴体フォルムにしました。え?可笑しいぞ!胴体上部の側面図ではカーブしてるじゃないか!。三次曲面が有るじゃないかあああああ!・・・ってご指摘も在りますが、プランクシートで構成する三次曲面が無いので作り易いって事ですよ。キャノピーは市販の汎用キャノピーです。主翼上面は粗直線でプランクシートを貼り込むので取り付け易いって事です。後部胴体の上部は全て半円なんですなあ・・。だからプランクシートは湾曲させれば貼り込めます。

  
● 胴体はまだ完成していませんが、先に主翼を組まなければ胴体の次の工程へは進めません。リブ組み治具を使って主翼を組んでいます。本機の主翼はメインスパーが直線配置・・・上反角は下面のみ・・・上面は上反角が付かない構成と成っています。要するにある意味作り難いんですなあ・・・。定盤の上では絶対に組めんのですよ。もし、定盤の上で組みたい時は・・・取り付けるリブは傾けなければなりません。しかし、下面のみの上反角を治具台に細工していれば、リブは定盤に対して直角に取り付ければ良いのですよ。其方の方が組立て易いでしょ?。
  
● アンタレスの主翼は抜き面のあるプランクで構成されています。中央付近でシート幅は100mmを越えるので、定尺80mmのシートは継ぎ足しが必要に成ります。このプランクシートの継ぎ足しなんですが、足らない部分を適当に継ぐと荷重が一点集中する場合があります。この荷重を上手く分散させるには、継ぎ足す部分も重要に成ります。尚、定尺シートの小口は必ずしも直線とは限らないので、定規を当ててカッターナイフを使って切り直す事も必要です。
  
● プランクシートを貼り込むのに定盤治具は使わないのか?・・・。プランクシートの貼り込みに関して、上下にシートを貼る場合・・・下面から貼るのがセオリーなんですが、私は定盤治具を使いません。長年飛行機を作ってると、片面をプランクする場合はメインスパーと前縁が湾曲しない様に厚みのあるアルミアングル材で固定します。接着には木工白ボンドを多用しますが、木工ボンドは水で希釈出来るんですが、ビニール系溶剤を含んでいるので気温が高いと乾燥硬化時間が早まります。エアコン等で湿度管理を行い常温で硬化させた方が反りが入らないので主翼が湾曲し難くなります。
  
● 当工房の機体のプランクシートの場合、小口の割れを防ぐ目的で木目の方向を変える処置をしています。翼型によってはカーブがきついものもあります。貼り込むプランクシートによってはソフト系の柔らかいシートも使います。問題は此処からなんですが、被覆のフィルムを貼り込む場合、プランクシートの端をアイロンの先で押さえて確実に接着しようとして失敗・・・。木目に沿ってパリッと割れた事があります。こうなると、もう、修復が利かないんですなあ・・・。此れを防ぐ意味も有るんです。小口を強制的に拘束して割れを防ぐ小ネタの一つです。俺はそんなポカはやんねえ!って思ってる人にも、何時かこの状況は必ず訪れますよ。
  
● 本機はグライダーに在りが左右分割のツーピース翼ではありません。平成のラジコンブームには、ラジメカの小型軽量に呼応するかの如くグライダーもバラバラに分解できる様に成りました。アンタレスの主翼スパンなら当然の如くツーピース翼が平成の時代は当り前でしたね。ところが本機の場合・・・スパンは1850mmなのにワンピース翼です。今の時代なら受け入れ難い仕様でしょうなあ。でもですなあ・・・昭和50年代中期においてもガルモデルの製品には、(エルフ)なるスパン1200mmのツーピース翼仕様機もキットとして販売されていました。しかし、ツーピース翼の泣き所であるカンザシユニットがこの小型機であるエルフには致命的でしたなあ・・・強風コンディションでないとスロープでは満足に飛ばせなかった事実もあるんです。で!本機はワンピース翼・・・。この時代のこのクラスにしては軽量機に仕上がりました。
  
● 左右の主翼を結合する為の治具の製作です。本機の主翼は翼下面のみに上反角が付き、上面は0度な特殊設定です。其れに僅かな捻り下げまで入っています。よって、其れ等の設定を治具台となるアングル材で調整していきます。其の為に専用ブラケットを使ってアングル材が宙に浮いてるんです。定盤レベルの工作台をお持ちでない人には無用の長物でしょうけど、持ってるとこういった調整治具が作れます。

● もし、欲しいと思ってる人は・・・自分で作りましょう。ホームセンターで材料を揃えるのも一つの方法では有るんですが・・・誰にも真似出来ない位の木製定盤を作るなら、木工家具屋の製造所に出向いて材料を切り出してもらうと良いでしょう。ただし!材料費をケチったり値切ったりすると追い返されますよ(笑)・・・。定盤になる木材は、ラワンの棒材を集成してシナベニヤで挟んだ(ランバーコア)が良いでしょう。厚みは15~20mm・・・。サブロク板(900×1800mm)・ヨンパチ板(1200×2400mm)から全ての部材を賄って枠付きの定盤が作れるでしょう。この定盤の奥行きは450mmです。大概の大型グライダーの片翼分は組める治具台です。

● 木工所の良い所は材料を注文してから専用重機で加工してくれます。定尺材料の寸法大割が出来るパネルソーやら細い棒材を極めて直線状態で切り出せる昇降盤をもっていますので、其れ等の重機を駆使して部材を切り出してくれます。まあ・・・正式図面を書かないとバカにされるうううう・・ボッタくられるうううう・・・ってお考えなら諦めて下さい。私は好い加減なマンガレベルのイラストに寸法を記入しても指定された部材が揃うんですけどね。ホームセンターの部材って素材レベルなので、必ずしも直角と平行が確実な材料って存在しませんよ。でも、木工所なら職人がその場で切り出すのでその辺りはホームセンターよりは正確ですね。私は主にホームセンターで揃えますが、ノギスにメジャーに水平器まで持ち込んで材料を選んでるお馬鹿さんですけどね。幅100mmのランバーコアで枠を作って、ホームセンターの幅広の板を皿ビスで固定ってのが楽で良いかな?。軽トラでも運べるので。
  
● 本機の主翼の最大厚はメインスパー上で20数ミリしかありません。其れほど薄い翼型です。しかし・・・翼面積から伺えるその素性とは、やはり薄い翼の泣き所であるバンザし易い構造である事・・・。よってマイクログラスで補強して・・・って成るんでしょうけど、本機の製作された時代にはまだマイクログラスは販売されておりません。まあ・当時のモデラーの中には、通常積層のグラスマットを薄く剥がして使用したって強者も居たって噂は聞いた事が有りますけど・・・。

● 今回はマイクログラスの補強を使わないカンザシの構造です。製作記事のイラストを見る限り、厚さ5mm分のベニヤを上下のメインスパー内部に挿入し、両面を1mmベニヤで挟んだ構造です。本機の場合は2mmベニヤと3mmベニヤを貼り合わせて5mmとし、内部に溝を設けてピアノ線を封入する構造としました。この処置は、当工房の各種強風用スロープグライダーには必ず組み込んでいるバンザイ防止の安全装備です。

● このカンザシの上下の幅ってホンの10mm程度しか無いんです。よってマイクログラス補強無しでは不安!って思ってる閲覧者は多数おられると思いますが、瞬間接着剤なんか使わずに、二液混合のエポキシをガッツリ使えばその不安は粗解消されます。山本さんのアンタレスがバンザイしないんだから、マイクログラス無しでも充分強度は確保されてるって事ですね。じゃあ、何故ピアノ線なんか入れるんか?って疑問・・・。私的改造なので使う材料が違うから・・・と答えておきましょうか。
  
● 溝の幅は約2mm・・・封入するピアノ線は1,7mmを二本平行に接着したモノ・・・此れをエポキシ接着剤を充填した溝に埋め込みます。埋め込む方法は超簡単!。片面をセロテープで塞いで容器とし、エポキシをヒートガンで熱して水溶液状にしたら流し込んでピアノ線を沈めます。硬化したらカンザシの周囲を切り抜けば、金属内装の特製ベニヤカンザシの出来上がり・・・折れるモンなら折ってみろ!って類の保証付きですよ。一つアドバイス・・・カンザシ状態に成型してから溝を彫る?・・・此れは難しいですなあ・・・。ならば逆転の発想、埋めてから周囲を抜く方が成形し易い・・・。当工房は糸鋸盤がありますからね。無い人はどうすんのおおおおお?って天邪鬼さん・・・。自分で考えてね。お得意のレーザーカットって方法もあるよ(笑)・・・。
  
● 本機の両面補強板は1mmベニヤの在庫が無いので1,5mmベニヤに変更しました。山本さんの機体では、本機の様な中央リブがありません。一つ内側の2番リブは3mmベニヤですが、本機は1番2番リブ共、3mmバルサです。よって重さ的には山本機と変わりませんし、強度面でも同じだと判断・・・。此れも半世紀近い模型歴の経験値ですね。二枚のリブのぶち抜きでこの補強板溝を作って、エポキシでガッツリ接着しますので、言わば主翼の中央付近はエポキシ充填のボックス構造です。昭和のラジコン飛行機には当り前の処置なんですよ。よって、過去一度も飛行中の機体がバンザイしたって経験は無いですなあ・・・。マイクログラスで補強ォォォ?・・・。誰が言い出したんだろう。そんな難しい処置・・・。  
● 本機の主翼の治具台には、アングル材が単純に固定されているのではありません。本機の主翼の設定は、翼上面で0度・・・翼下面のみ上反角が付き、更に捻り下げが0,4度付くというかなりシビアです。この設定を施した治具台です。そのシビアな設定を可能にするのが、アングル棒材を固定するブラケットです。何故、前縁側にもアングル材を置かないのか?・・・って疑問も有るでしょうなあ・・・。実際に使ってると判って来ますが、捻りを入れるも入れないも、メインスパーと後縁材の位置関係が一番重要だって事ですので、前縁直下の支持アングル材は必要無いです。

● 此れには最小限の決まり事が必要に成ります。リブが正確に採寸された相似形である事・・・此れが一番大事です。コピー機で作図してバルサにスプレー糊で張り付けて切り出すのも一つの手法では有るんですが、寸法がコンマ単位で狂うと相似形の必要な捻る翼形状に対応出来なくなります。無理矢理捻ると、その反動は前縁側に波及します。所謂・・・前縁側の形状が波打つ結果に成ります。よって、リブの作図が重要に成るんですなあ・・・。
  
● 主翼下面のプランク後は、再び治具に固定して、今度は主翼上面のプランクを行います。接着剤は木工白ボンド(黄色容器の通常硬化タイプ)を使います。黄色容器の白ボンドは水分量が多いので、硬化に時間が掛かります。広範囲のプランクシートの被覆時には大変使い易い接着剤です。後縁のプランクには上下でアングル材を使用して、直線を出しつつ硬化させます。本機は主翼一杯のフルエルロン設定なので、かなり神経を使う所・・・大袈裟な拘束が普通です。(Part-3に続く)