ANTARES Ⅰ型 山本昇氏オリジナル設定機 Part-3
  
● 平成の便乗組モデラーさんに時代遅れのスポイラーリンケージと言われた構造のご紹介(笑)・・・。サーマル工房が搭載しているスポイラーサーボを主翼に埋め込むリンケージは、サーボがマイクロ化できたから可能に成りました。昭和50年代初期にはまだ、マイクロサーボは存在しません。当時と同じ厚みの主翼内部にサーボが搭載出来ないので、パイプを這わせて翼外からのリンケージが主流だったんですなあ・・・。当時はですなあ・・・キャノピーブレーキなる減速装置も当り前に搭載された時代です。
  
● 主翼後部の固定ビスの台座を作っています。後縁に貼り込んだバルサシートの一部を切り取り、はみ出た接着剤も綺麗に取り去り、2mmベニヤを貼り込みます。ベニヤには予め段付け加工を施しました。この上から3mmバルサを重ねて貼り込みますが、プランクシートとツライチに成るまで斜めに削り込みます。段付けの外側はガイドパイプの径・・・内側の孔は4mmビス用です。
  
● ガイドパイプはホームセンターでも手に入れられる竹柄のビニールパイプです。しかし、4mmビスの頭の直径に合わせて内径を広げた特殊加工品です。このパイプが何故必要なのかは胴体の上部のラインに合わせる為です。まあ・・・こういう加工を面倒臭がるモデラーが増えたので、大手メーカーのグライダーって後部胴体の上面が平面タイプの機種が増えたんですよねえ・・・。
  
● スポイラーの駆動ワイヤーのガイドパイプは、画像の配置です。山本さんの機体では、本機の様なセンターリブがありません。手を抜いたのではなく必要無いからです。ただし、この構造は、二番目の補助リブ付近にパイプを安定させる為のブリッジを取りつけないとパイプが安定しません。ただ・・・この手の工作は二番リブ付近に新たに別の構造体が必要に成るので、今回は当工房オリジナルへと変更しました。
  
● 翼端材は何時もの前後分けです。接着剤にはクイックメンダーを使いました。約5分で硬化が始まり・・・30分でガッチリ固まります。当工房が要望するガッツリ固まり、サクサク削れる接着剤です。このクイックメンダーなる接着剤なんですが・・・ガッツリ固まりサクサク削れる性質を活かせば、別物に使う事も可能ですよ。例えばパイロットの複雑な顔の凹凸なんかもメス型として使える可能性も出て来ました。市販のお人形さんの顔に離型剤を塗って、クイックメンダーを盛り付けて硬化を待ち・・・小一時間後に剥がせばメス型完了。所々に小孔を突いてメルトガンで溶剤を流し込んで固まるのを待ち・・・取り出せばクローンの完成。頭部は作れるが顔の表情がイマイチなあ~ってモデラーには好いかもしれませんなあ。尚、メルトガンの溶剤って半透明だけじゃないんですよ。色付き溶剤もネットで購入できます。
  
● 鼻で笑える小ネタその一・・・リブキャップの取り付けです。ワザワザゲージを作って貼り込んでます。平成の便乗組モデラーさんに言わせると、リブキャップは無用の長物なんだとか・・・。被覆の下手な初心者がやるんだそうですが(笑)・・・。まあ、最近のレーザーキットはキャップレスが主流ですからねえ・・・。昭和のモデラーさんは、リブキャップの絶大なる効果を知ってるだけに、その貼り込みにも拘るんですなあ・・・。被覆はフィルムしか知らない便乗組さんだろうけど、昭和のモデラーさんは絹張りやら和紙張りで塗装仕上げをいとも簡単にやってのけるでしょう!・・・。糊代が広ければ貼り易いって事を知ってるから付けるんですけどね。

● どのみち取り付けるんなら、正確に貼り込みたいですよね。此れならリブキャッツがリブに平行に取り付けられる優れもんですよ。ただし・・・リブ自体が歪んでたら意味無いんですけどね。何故、リブキャップが必要なのか・・・。当工房のHLG以外は全てキャップ付き・・・。絹張りにしろ、紙張りにしろ被覆の下地がフィルム以外の場合は、この生地完成の主翼にハッキリと塗膜が出来るまで、クリアラッカーを刷毛塗りします。上記の被覆材はシンナーを使って此の塗膜を溶かしながら貼り込みます。よって抜き面のある主翼構成の場合、貼り代が広い方が好い訳ですよ。だからリブキャップを付けた方が貼り易いでしょ?。だからフィルムも同じ効果が有るんですよ。枠毎に強力に貼り込めるんで、構造強化に成りますし。
  
● 山本オリジナル機の主翼前縁側丸棒によるピンダウエルから、当工房で多用している角ダウエルに変更しています。本機の主翼の取り付け角は2度なので、其の為のゲージです。この主翼の迎角(取り付け角)って何ぞや?って聞かれた事が有るんですが、何を基準に2度かと言えば・・・胴体の中にある基準線に対して、主翼の翼型の基準線が2度上向いてるって事なので、そのゲージを作ってカイモノとし・・・ダウエルの位置を決めてる最中です。
  
● 迎角を2度付けると画像みたいな隙間が出来ます。何で胴体を翼型に削らんかったの?って思うでしょ!・・・その方が正論みたく思えるんですけどね。其処が山本さんの七不思議的構造なんですなあ・・・。ただ・・・模型飛行機の自作・・・もしくはスケール要素に拘ると、この不思議構造が製作上めっちゃ楽じゃん!って事に落ち着きます。この前縁側の隙間に見える胴枠のラインって既にアール面なんですなあ・・・。この翼下面側の胴体って補強の内張り材を貼り込むのがセオリーなんですが、アール面と成ると補強のストリング材の上に貼れ!って事に成るので、湾曲させた内張りをしなければ成りません。其れって工作上物凄く難しく成るんですなあ・・・。

● よって、後から隙間を埋める湾曲させた材料を貼り込む構造にしたんでしょうなあ・・・。要するに、隙間が有ろうが無かろうが主翼の固定には何ら不具合も無いので、こういった構造に成ってるんですよねえ・・・。まあ、後張りの隙間を埋める部材の役割は、胴体の清流としての役割のみです。作る前に何度も生地の説明文と縮小詳細図面を舐める様に観察してれば見えて来るものもあります。市販のバルサキットを作る時は、開発者のコンセプトを読み解く事も必要です。その謎が解明すれば見えて来るんですよねえ。光明って類が。
  
● 角ダウエルの良い所は基準が作り易い点ですなあ・・・。ピンダウエルの場合は、主翼内部の中にまで補強の類を先入れしておかないと補強できないんですが、平角ダウエルの場合は、台座の補強のみ充分に行っていれば、面と面をビス止めするので構造が簡単です。ひ弱そうに見えてるのは場数の少ない便乗組のモデラーさんだけでしょうなあ。そのお見立てが崩壊する様な先の構造がまだまだ続きますよってにィ~・・・。
  
● 中身を大きく抜いた主翼前縁側の胴枠に、ダウエルを挿入させる・・・。一発で即折れるじゃん!って思うのが普通・・・。だが!、強固な構造体にすれば良いんですなあ・・・。この構造は、昨今のレーザーキットでは見かけないでしょ!。何の為に主翼前縁とキャノピー後部のラインに間隔が有るのか・・・。全ては主翼保持のダウエル挿入胴枠の補強の為ですよ。だったら主翼にサーボを入れれば良いじゃん!・・・って、当時は埋め込めるサーボが無かったんだってえええええ・・・(笑)。
  
● 1,5mmのバルサシートの片面を水で湿らせ、フィルムの芯に巻き付けて充分乾燥させると、適度に湾曲したシートが出来ます。このシートから部材を切り出して取り付ければ良いんですなあ。別に強度は必要無いので胴枠に直接瞬間接着剤で固定しました。ところが其れで終わりじゃないんですなあ・・・。画像では一枚ですが、此の内側にもう一層貼り込むんですなあ・・・。なん為に、そら、フィルムの巻き代を作る為ですよ。
  
● 主翼上部のフィレット成形中です。多分・・・このアンタレスを作ったであろう昭和の偉人的モデラー諸氏、大いに悩んだでしょうなあ・・・。実はラジコン技術誌掲載の本機の図面通りに、このフィレットのラインを引くと・・・多分、この様な形状には成りません。本機の主翼は胴体に埋もれた状態と仮定すると、今度は胴体の形が歪になります。其処で葛藤の末の決断!、目をつむった次第・・・。もし、ラジコン技術誌のラインを実現するには、主翼の位置を10mm程下げれば良いですよ。ただし、サーボスライド機能は廃止です。主翼にサーボを埋め込んで下さいね。
  
● 山本さんのアンタレスの内蔵クランクは羽目殺し状態・・・。今回の機体は胴体下部にアクセスパネルを設けて、リンクの不具合時は交換を可能にしました。前回製作のヴェガ同様に、本機のエレベータリンケージのアジャスターは、ホーン共々樹脂製なのでアジャストピンが折れたら交換しなければ成りません。何故、アジャストピンが金属製じゃないのかって?ピンが金属製だと、今度はホーンの孔が何れ摩耗して甘くなります。此方は交換不可能です。リンケージのアジャストピンが樹脂ならば樹脂ホーンよりも弱いので甘く成れば交換が出来るからです。
  
●本機のエルロン材の工作です。エップラー180のエルロンを幅45mmで作ってますが、ヒンジラインで厚さ7mmしかありません。木村バルサの部品表を観てもピッタリの市販サイズは在りませんでした。よって自作です・・・。アルミの角パイプにアルミのアングル材をクランプで固定して、強固な定盤を作ります。この上でフルプランクエルロンを組立てます。厚さ7mmの定尺バルサを購入して、ひたすらカンナで削るのも一つの方法・・・。でも、あまり流通してないこのサイズは、かなり割高に成るでしょうなあ・・・。ならば手元の材料で組立てた方が安上りでもある・・・。
  
● エルロン材の後縁側の厚みは1mm以下に成りますので、後縁側を斜めに削る必要が在ります。其の為に強固な定盤が必要なのです。所謂治具に固定して組立てるエルロン材です。ムクのエルロン材を作るよりも簡単で、比較的軽量で・・・被覆すれば其の経年変化は遅く成ります。作るのは面倒臭いですが、毎回やってると工程の一つに成るので、面倒臭いが当り前になります。よって面倒臭く無くなるんですなあ・・・。
  
● スポイラー機構の工作です。この構造については山本さんのオリジナル構造を踏襲していますが、自分の私的構造も一部交えて組み込んでいます。構造的にはガルモデルのキットを作っていたモデラーなら、難無く理解できるでしょう。本機はスロープパッシング仕様のコンセプトが考えられますが、この機体製作当時にはまだ、このカテゴリーの競技は一般的では無かったので、其れを見据えたデザインではないかと推察されます。一応半対称翼型なのでアクロバットも出来ますが、どちらかと言えばスピードに載った飛ばし方の方が好いかもしれません。

● 速度が上がるって事は減速装置が重要になります。よってエリア毎の安全な着陸エリアに、ピンポイントで機体を着陸させる為の本機の機能ですので、言わば必要枠・・・。構造が面倒臭くなるからって装着しない行為は命取りとなります。バルサ機だからレーシングよりも遅いだろう考えは捨てた方が良いでしょうなあ・・・。風速12メートルの条件下で、当工房の複製ヴェガ一号機は、レーシングのスティングに勝ってます。速度記録では165キロ出てましたから・・・。(Part-4に続く)