ANTARES Ⅰ型 山本昇氏オリジナル設定機 Part-4
  
● スポイラー駆動用テグスワイヤーのガイドパイプエンドを固定します。山本さんのオリジナル機のサーボユニットは、各種サーボのリンケージが干渉しない様に段差を設けてあります。当工房の複製機の場合は、サーボの固定位置をメカプレートで統一しましたので、サーボマウント側にスペーサーを入れて段差を付けます。よってスポイラーのガイドパイプは主翼に完全固定が原則・・・。此処がフラフラしてると左右のスポイラー板の開き角度が違ってきます。
  
● 世の中・・・あり得ない構造でキャノピーの木型を作って、大失敗してるモデラーさんも居る事をネットで知りました。当工房の木型製作を名指しして・・・もっと簡単に作れるってのが此れです。ですが、真空引きしたらこのハリボテ木型は壊れました。掃除機の吸引力を侮っていましたなあ・・・。そら、壊れて当たり前でしょうなあ・・・。ハリボテ木型ってのは、言わばソフトバルサで組む様なものなので、高熱で縮んで吸引力で破壊して下さいって言ってる様なひ弱な造りです。
  
● 此処までが失敗モデラーさんのハリボテ木型なんですが・・・当工房の樹脂型の工程を見なかったんでしょうなあ。観てればねえ・・・名指しでこき下ろす文句にも重みが出たでしょうし、木型も潰れなかったでしょうし・・・惜しいなあ。此処にもう一層同じ貼り込みを行って、厚さ3mmにします。しかし・・・此れで終わりじゃないんですなあ。もっともっと硬くする必要が有るんですよねえ・・・。其れがバキューム成型用の木型です。
  
● 市販のガラスクロスを短冊切りして、ハリボテ木型に貼り付けて行きます。此れも二層以上は欲しい所・・・。実は此処で紹介している型は、全て一般のモデラーさんが自分で実践できるレベルです。わざわざ硬いバルサを削らなくても、削り易いバルサで作ってポリ樹脂で固めれば良いじゃないか!って思うのが普通なんですよ。ただ・・・真空成型って奴は、素人さんが考えてる以上の玄人レベルの奥深さが在りますので、専門業者が存在できてる訳で・・・。玄人レベルの木型にするには手抜きでは作れないんですよねえ・・・。

● OK模型の成形品の数々・・・全てが木型一個で量産してるんじゃ無いですよ。木型ってのは元の一歩・・・。量産する為の最初の一個って意味ですよ。此処で数個の成形品を造ったら、この成型品に樹脂を流し込んでムクの樹脂型を作ります。樹脂型は10個程度・・・。此れをこんぴ~たあ制御のモールド機にかけて、全て同じサイズに削ります。削り終わったら今度は表面の研磨作業・・・。仕上がった樹脂型で成形品の量産です。サーマル工房だって、木型一個で数千機分のキャノピーは出来ませんよ。データは工房で持っていても、その量産は業者に出さなきゃねえ・・・。
  
● 一応の木型みたいな形状には成ってますが、まだバキュームにはほど遠い状態です。何故なら肉眼では見えない凸凹が在りますので、此れを埋める作業が必要です。まあ、言い換えるなら・・・この状態なら表面処理後に色を付けてもキャノピーとして使う事も出来ますよ。意地でも半透明のキャノピーにしなくても・・・。IM産業の松井さんのコルセア・アクロナイツ(F3A機)シリーズのキャノピーは、全て色付き透けてません・・・。その代わり、中身は伽藍洞なので、メカ搭載はかなり広かったって言ってましたね。
  
● 今度は凸凹処理の工程・・・。エポキシの一種であるクイックメンダーを盛って、パテとして塗り込みます。このメンダー君は5分で効果が始まるので、素早く塗り込む必要が在りますので、何度も小分けにして塗っていきます。半日ほど放置してからサンドペーパー掛けすると・・・肉眼では見えなかった凸凹が見えて来ました。このクイックメンダーはガッツリ固まりサクサク削れるので、当工房では接着剤だけではなくパテとしても使ってます。クルマの修理屋さんでも使ってますしね。
  
● 本機のキャノピーの形状木型から、本来のバキューム木型に作り変えていきます。此れが真空成型の元の作業です。最終工程としてポリ樹脂を塗っていますが、木型の底には切り代と成る3mmベニヤを二層貼り込んで嵩上げしています。此処までやってのハリボテ木型ならば、少々の吸引にはへこたれないでしょう・・・。此処まで作っての当工房への名指し見下し発言ならば、逆にスタンディングオベーションで拍手してあげますよ。まあ、此れでも10回のバキュームが限界ですけど・・・ね!。最後に言っときますが、普通にスーパーハードバルサの木型の方が製作時間は短かったかなあ・・・(笑)・・・。
  
● どうでも好い事の工程ですが・・・。山本さんの製作記事中に胴体の角処理についての記述が無かったので、何で仕上げても被覆が楽な様に角を全て落としました。結局オラカバドライを貼り込むんですが、このフィルムはコシが若干強いので、元々角が有った部位にはクリアラッカーを刷毛塗って塗膜を作り、フィルムの端っこが食い付き易くしておきました。其れとですなあ・・・此方は裏技。画像に見えるスキッドは、5×5mmの棒材なんですが、此処も二層張りです。まず、2×5mmのバルサを貼り込んでから、今度は3×5mmのヒノキ棒を重ね張りしています。その後、角を落とせば手触りも良いですよ。尚、このスキッドは刷毛塗り塗装の予定です。
  
● では被覆作業に入ります。本機の一番貼り難い箇所は、このクロススタビを含む垂直尾翼です。よって形紙を作ってから、左右の面のフィルムを切り出します。切り出す前になるべく無駄なフィルムが残らない様に形紙を動かしながら、切り抜く位置を決めます。フィルムのロール幅は600mmなので、別の形紙(水平尾翼等)も使って合わせ取りという切り抜きを行った方が良いでしょう。
  
● 本機には三次曲面が無いので組立て易いとは、製作者の山本さんの弁・・・。ところがフィルム貼り込みに関しては其れが通用しませんなあ・・・。サクサク貼り込めないのは、例え其れがレーザー加工のバルサキットでも同じ事です。フィルムを貼り込んでいて何時も思う事なんですが、胴体に関してだけならマイクログラスや絹張りの方が楽だよなあ・・・って何時も実感します。その貼り込みに至るまでの下処理分まで入れると、やっぱりフィルムの方が良いんですけどね。
  
● 本機の主翼は貼り分けが難しいです。低温と高温ではフィルムの収縮速度に大きな差を持つオラカバドライだから可能な貼り込みなんです。此れがソラーフィルムやオラカバライトだったら難しいでしょうなあ。特に主翼後縁側の白いフィルムの帯の貼り込みには、細心の注意を払っての貼り込みです。半島面ブルーは後縁の上面の縁でカットして、後縁材を覆う様に白いフィルムを重ね張り、此れをヒンジ取り付け面まで貼り込みます。フィルムの重ね張りの注意点は、空気を抜きながら貼らないとブツが残るんですなあ・・・。だから低温で貼り込めるドライフィルムが楽なんですなあ。気泡が残ったら剥がせるしねえ・・・。
  
● スポイラー板のフィルム貼り込みの基本なんですが、同じ比重のフィルムを両面に貼り込みましょう。此れが片面のみだと常温では平面ですが、室外の湿度や気温によっては反り返る可能性もあり、動きが渋く成ったり引っ掛かって閉まらなく成ったりします。両面にフィルムを貼ると収縮も膨張も同程度なので、その変形度合いは殆ど見られません。本機が製作された昭和50年代よりも、現在の模型用品事情は格段にアップしていますので、其れ等を上手に活用して下さい。
  
● 一応フィルム貼り込みまで完成しました。残るはキャノピーとコクピットの製作です。取り敢えず製作記事は此処で終了です。此処から先は後日・・・。メカ積みやら特殊パーツの製作などやる事山積みですが、昨年7月から交通誘導のバイト中です。現在島原市内に建設中の自動車道バイパス251号線で、嵩上げの為の大型ダンプやら重機の誘導を行っています。取り敢えずバイト期間は3年間です。年金受給に成ったら本格的にキットメーカーに成る予定です。其れまでもページの更新は続けますよ。(令和4年・5月・26日記載)