✈ Lo-100 (1/3,5) 工房オリジナル機 Part-3
 
● 左は大御所の工作室・・・一度は自分で組んではみた物の、あまりの複雑構造なので途中でギブアップ(笑)・・・。当工房に帰って来た時は、あれま・・・組み方間違ってました・・・。結局、修復用に残していた3号機の木パーツで新たに組んだ主翼です。平成ラジコンブームの時代・・・ネット上ではレーザー加工機を誉めちぎるモデラーさんで溢れかえってましたが、其れも一時期の興奮状態だけで・・・、結局の所、その後の状況はやっぱり文句たらたら・・・。

● 何でそうなっちゃったのか・・・。コンピュータに馴れたモデラー諸氏が、自作のラジコン機を大したテストもせずに個人販売しちゃったのが原因・・・。レーザーを使えば誰でもキットは簡単に出来る!って思い込んでたからねえ・・・。あちらこちらで俄かラジコンメーカーが誕生したんだが・・・。バルサキットのノウハウも俄か仕込みだったので、あちらこちらで不良品が続出。その後の掲示板では組めないだの・・・飛ばないだの・・・昭和のブームの便乗組俄かキットメーカーと同じ状況が再来・・・。糸鋸加工・ダイカット加工・レーザー加工・・・どれを取っても、俄か仕込みじゃ駄目なんですよ。大御所さんは其れに気が着いたんですなあ。

● キットを作る・・・自作する・・・は、出来たんだけど・・・。自分が依頼したカスタムのバルサキットは、キット製作側に大変な負担をかける事を・・・。キットにすれば安くつく・・・。ってのが、大概のモデラーさんのお考え・・・。巷の大手メーカーさんの汎用バルサキットは、数千機分の量産を前提したキット価格なんだが、自分だけのカスタムなバルサキットは、たったの三機しか量産しないので材料のコストダウンも、量産の人件費のコストダウンも出来ないんですなあ・・・。レーザー使わんから安く成らん!って思ってる人も居るだろうが・・・。そのレーザー加工のプログラムは一機分の部品を作るのに、一日じゃ出来ませんしねえ。試しに加工して組み立てて・・・の繰り返し・・・。そういう人件費も認めない!って言われたら、多分数千機の量産でも、モデラー諸氏の要求する良心的なキット価格の10倍はするんじゃないかなア・・・。
 
● その後見事に生地完成・・・。幅は狭いけど高い垂直尾翼は、最大高400mm近くにも成ります。ラダーの最大翼厚は30mm・・・。それが翼端では10mmまで傾斜します。大型スケール機なのに・・・尾翼はプロフィール設定。翼型ではありません。軽量ハンドランチ機と同じ一枚板の平板と同じ仕様です。ただ・・・軽量化の為にリブ組してるだけ(笑)・・・。実はこの方が飛ばし易かったりするんですなあ・・・。単なる抵抗板の方が・・・。此れが全て完全対称の垂直尾翼・・・半対称もしくはフラットボトムの翼型をした水平尾翼だったら・・・ピッチ軸やらヨー軸方向に揚力が出捲る事に成るんで、調整が大変難しい・・・。知っておくとラジコンの大御所さんに認めてもらえる事なんですが、飛行機の揚力って主翼だけに発生してる訳じゃ無いんです・・・。胴体の上下やら左右にも、流線形ボディならば揚力は常に発生してます。飛行機の胴体を左右対称に組むってのが基本なのは、左右が違ってたら胴体側面から発生する横方向の揚力のバランスが崩れるので、飛行機が真っ直ぐ飛ばない原因にも成るんです。

● 此れは垂直尾翼にも水平尾翼にも同じ事が言えます。仮にラジコン入門の初心者さんが、揚力尾翼の機体をバルサキットで作った場合・・・その詳しい知識が無いまま適当に作ってしまうと・・・。見た目はキットのパッケージの綺麗な完成状態に見えますが、細かい部分を好い加減に作っているのでクセが出捲ってしまい・・・まともに飛ばない飛行機に成るんです。投げた瞬間・・・もしくは離陸の直後・・・飛行機が墜落して修復不能な壊れ方をした場合、この初心者さんは自分が悪いなんて絶対思いません。何故ならネット上のお仲間掲示板の中では、一通りのアクロバットも出来る上級者として会話しているからです。揚力尾翼の機体は、初心者には扱いし辛いと専門誌で言われているのは、そういう所以があるんです。

● 要するに・・・キットに示された重心位置の表示は、そのキット通りの製作を行った場合のみ有効で、下手に自分でプロっぽく改造してしまうと重心位置のバランスが崩れるんです。よってグロー40クラスのスタント機でも、尾翼を一枚のフラットな板状のリブ組みにした機体は普通に販売されていたでしょう・・・。ブルーエンジェルの40クラスでもフラットな尾翼構成でしたね。揚力尾翼は、機体の姿勢や速度変化でも揚力の変化が起きるので、操縦がし辛くその細かい制御の当て舵を初心者さんは打てません。よって揚力変化の無い(揚力を生まない)一枚板の尾翼の方が操縦し易く成るんです。所謂・・・空気抵抗板の扱いです。
 
● テスト飛行当日の大観峰は強風・・・。多分、サーマル工房が同型同サイズをキット化したとして、モグラユニットを搭載したとしても当工房の機体よりも軽量でしょう・・・。ただし・・・此処まで複雑な翼型も使わないので、購入モデラーも然程苦労して組む事も無いと思います。ただ・・・自律安定の良さ、強風のコンディションでもフラフラしない重厚な飛び・・・更に、速度記録会ならば150キロは出せる仕様なので、スケールクラスのパッシングレースならかなりの好成績・・・善戦するでしょう。ただし!・・・初心者さんには無理かなア・・・。運動性が良い仕様って事は、初心者レベルの自律安定性能は有りませんから・・・。4キロ越えの初心者入門グライダーなんて聞いた事ありませんし・・・。
 
● 本機は完全なスケールダウン設定機ではありません。模型飛行機用に各種モーメントを変更したセミスケール設定機です。スクラッチビルドの日本選手権等の大会が存在したとして、まあ・・・地上審査ではドンケツ確定でしょうなあ・・・。実機の完全なるディティールを知らないモデラーが殆どなので、何処をセミスケール設定したか多分解らないとは思います。しかし・・・審査員ならノギスで測ったり・・・メジャーと電卓でパチパチ・・・各所が実機(Lo-100)とは大幅に違いますから・・・。ただ・・・完全スケールダウンの機体(Lo-100)を作れたとして、多分・・・自作したご本人でさえ飛ばし難いなあ・・・って実感するだろう実機(Lo-100)の諸元は過激です。元々の実機の仕様がアクロバット設定ですからね・・・。初心者入門機ではありません・・・。

● 模型歴が半世紀を越えると・・・色んな事が見えて来ます。海外のグライダーを含む航空機の歴史を見ていると、ハッキリとこの機体は満足に飛ばねえだろう・・・とか、メーカーは絶対にバルサキット化もグラスファイバーの完成機も作らないだろう、歴代の実機メーカーや軍の開発部の試作資料を観てて思います。ナチス時代の軍用グライダーを例に取れば、機首側に鉄の塊を有する機関砲を搭載すれば重心が吊り合うフォルムの機体が有るとすれば、果たしてラジコンメカを全部機首先端に搭載してもテールヘビーが確定する様な飛行機は作りません・・・。機体の強度を無視すれば出来るかも知れませんがねえ・・・。(紅の豚)に登場した敵海賊の飛行艇みたいに、着水の衝撃で後部胴体が崩れ落ちる結果は見えてるからですよ。