✈ NV-01 (Enterprise) シャトル型グライダー Part-3

 
● このNVシリーズの01型は、主翼と翼端バーチカルが全て共通の為・・・市販のキャノピーを自分でチョイスして、製作記事を観ながら自作すると、その完成形はオリジナルな一機に変身してしまうセミオーダー感覚の機体です。自由設定の機体のみならず・・・世界中で開発中の汎用スペースシャトルのデザインにも化ける事が出来るので、言わば・・・その種類は無限大・・・。本機のコクピット側の胴枠の形状も、この市販のキャノピーがOK模型の(DJ-2)に合わせたからであって、他機種のキャノピーならまたその胴枠の形状は変わっていたでしょう。尚・・・画像の時点での機首側コクピットは、主翼側のキールフレームに仮止めの状態です。

● さて・・・後部胴体のラインはどうやって決めたのか・・・。そらもう!・・・現物合わせです(笑)・・・。一応現物合わせですが、ある程度の胴枠のラインは機首側の完成胴枠から採寸し・・・プランク分を周囲から3mmずつ切り取ったのが、主翼側に組み込む胴枠のサイズに成ります。実に単純ですけどね・・・。決して忘れては成らない事が、此れからの画像で出て来ますので・・・必ずその法則を守って作図しましょう。
 
● 此れは主翼の上に組まれた、機首側胴体のラインに沿った主翼に埋まった胴枠の形状です。現物合わせなんですが・・・その胴枠の形状を知る為には、機首先端から胴体の中頃までの見えない胴体のラインは別紙に記載して原寸図を作っておく必要があります。この胴枠の形状を適当に作って組み込んでしまうと、プランクシートを貼り終えた胴体の形状がかなり不自然なラインに成るので、見た目の形状は自分自身も納得できない位の歪度合いに成るでしょう。たとえ・・・お仲間さんに見せても、面と向かっての指摘はしないと思いますが、腹の中では失笑してるかもしれませんね。そういうのが嫌なモデラーさんは、胴体の作図だけは完璧に行い・・・胴枠を作図しましょう。
 
● 此方は別機種の構造です。此方の機体は組み上がった胴体に、主翼の一部を組み込む構造を採用しています。此方の構造を観ながら、上記の構造を見れば解り易いのですが・・・主翼の中に埋まっている胴体の形状と胴枠の形状は、こういう状態であると言う事を踏まえた上で作図せよ!と言う事です。
 
● どちらの胴体も仕上がるとこうなります・・・。実に自然なアウトラインでしょう・・・。造りはどちらも複雑なんですが、其れが実物機のスケールダウン機でも・・・自由設計のオリジナル機でも、この見えないラインを機体の三面図から自分で創造し・・・構造を作り上げると・・・見た目の同じ形状だけでなく、実機同様の強度を有した構造にする事が出来ます。

● 見た目のアウトラインのみを模した、内部ガランドウのFRP成形構造だったり・・・内部にタップリ実の詰まった発砲スチロールコアだったりと・・・市販の量産機なら沢山有りますが、自作のオリジナルな一機を作るのに・・・FRPのオス型メス型を作るのも良いですけど、よっぽどのラジコン馬鹿でないと出来ない高等技術です。発泡スチロールコアの飛行機を丸ごと作ろうと思ったら、もう自作モデラーの域を遥かに超えた金属のメス型の世界・・・。個人のモデラーが簡単に数日の作業で作れる金型でも無いんですよねえ・・・。専門業者に持ち込んで研磨のモールド作業を依頼するだけでも数百万・・・金型の成形だけでも千数百万円・・・。金型は片手で軽々と持てる様な数キロの鉄の塊じゃ無いですよ・・・。チェーンブロックで吊下げて、抽出機にセットする位の重さですしね・・・。脳内なら簡単に創造出来ちゃいますけど、現状はそうとも言い切れません。だったら、構造を一から組んだ方が良い訳でして・・・、ラジコン飛行機の構造が実物機の構造に似ているのは、実物機の構造自体が長年の研究の成果として確立されているからです。不思議でも何でもない構造なんです。
 
● 主翼上に組まれた後部胴体も1,5mmバルサの二層張りです。着陸の種類にも寄りますが・・・激しく地面と接触した場合、最初のダメージは機首先端です。その時の荷重はこの後部胴体に及ぶ訳ですが、果たしてどの程度壊れるかによって・・・修理しようか・・・それとも廃棄処分にしようかと自分で決める事に成るんですが・・・。成らば修復し難い部分をなるべく頑丈にして残し、修理してまた使える様にした方が良い訳ですよ(笑)・・・。此れがですなあ・・・実機だったらどうなるのかって事なんですが・・・。機首先端から墜落した場合、高速回転しているコクピット後部のエンジンが慣性の法則で、機体を壊しながら前方へ移動して来るので、生身のパイロットはミンチ状態で即死する事に成るんですなあ・・・。

● 其れが何処に飛行機を落とすかというパイロット自身の選択と成った場合、なるべくなら海まで運ぶか民家の無い山の中に落とすか・・・多分、余裕が在ればベイルアウト(射出座席)で機体放棄も出来ますが・・・余裕が無ければ機体と運命を共にするしかありません。そういう命の選択を彼らは常に覚悟しながら日々の訓練を行っています。整備員以上にパイロットは地上に居る時は陽気です。彼らが安全に帰投出来る様に整備不良による墜落事故だけは避けなければなりません。私の構造体を大袈裟!って評するモデラーも居るんですがねえ・・・。自分の過失による人身事故やら物損事故なら諦めも着きますが・・・他人の手抜き構造による空中分解等の貰い事故なんて、オペレータは嫌でしょう?・・・。空中分解だけは避けなければ成りませんので、酷評されるのはむしろ!、最高の誉め言葉と解釈しています。
 
● スキッドを取り付けます。2×5mmのヒノキ棒に3×5mmのバルサを貼り込んで硬化させます。このヒノキ棒は常温状態においては、若干の水分を含んでいるので少しずつ力を加えると曲げる事が出来ます。胴体の底部アウトラインに沿わせる程度なら曲げられますので、折れない様に注意しながら作業します。

● アウトラインに沿ったら、今度はスキッドの成形です。胴体と接する面はヒノキなので、エポキシを使って貼り込みます。バルサは成形し易いですが、素地のままでは機体の重みで削れたり凹んだりします。ポリ樹脂の溶剤を3回ほど重ね塗って強度を確保します。表面がガチガチに固まりますので、粗目のサンドペーパーで削って成形し、スポンジペーパー等で仕上げます。此のスキッドにはフィルムは貼りません・・・。表面が硬いので、塗料はフタル酸樹脂塗料(ペンキ)でもニトロセルロース系塗料(ラッカー)でもポリウレタン樹脂塗料でも塗れます。

● ただし・・・無動力のスロープグライダーです。着陸の際は機体重量のほぼ全体をこのスキッドで支えます。どんなに綺麗な機体の外皮処理を行っても塗装面には傷が入ります。むしろ補修のし易さを考えるなら、ラッカー塗料を刷毛塗って・・・剥げたらサンドペーパーで削って再度塗り込むのが良いと思います。自衛隊の車両・船舶・航空機は、ベースの色をウレタン系のポリ樹脂で塗り込んで硬化させています。しかし・・・その塗装面に入れられたナンバーやマーク等はラッカー塗料でした。最高速度がマッハ2,4のファントムは、マイクロ数値の塗装面の厚みでさえ空気抵抗に成るので木口が剥がれます。ラッカー塗料なので修正は楽です。此れがウレタン塗料の日の丸塗装なら・・・プライマー(下塗り)の段階からエポキシ系・・・白地の縁取り・・・真っ赤な日の丸・・・と重ねるのに丸三日は掛かる・・・。剥がれる時はラッカーと同じ位捲れますので、ある意味ラッカーでも良い訳ですよ。硬化時間も重ね塗りの作業も一晩で完了。次の日の朝には格納庫を出て、飛行訓練の再開です。
 
● 左右の翼の結合面をマイクログラスで補強します。左右の主翼は厚さ5mmのスチレンリブに開けられた細長い繰り抜き溝に、クッキージョイントを使って結合しています。内部で左右の主翼が上下にズレない処置をしてあるので、接着結合した後は外皮による一体化の為のグラス塗布となります。
  
● ポリ樹脂が流れるのを防ぐ為のマスキングテープは、余った溶剤がカップの中で硬化を始めたら剥がし取ります。この状態で約10時間の放置です。夜に作業したら翌日の朝には硬化しますが・・・其処から更に10時間ほど放置すると、今度はバルサに染み込んだ溶剤が、バルサの木目の中で完全に硬化します。此処まで来るとグラスの表面はガチガチです。更に粗めのサンドペーパーでもサクサク削れる状態に成ってます。

● 左画像から・・・まずはサンドホルダーの(50番)の粗目で、グラス面の凸凹を取り去ります。しかし・・・グラスの端っこがまだ波打ってる状態でしょう。次の画像はこの50番の粗いサンドペーパーを指に持ち替えて、細かい段差を削り落としています。貼り込んだグラステープの両端を重点的に削り落として行きます。指先で触って段差が感じられなく成ったら、今度はスポンジペーパーに持ち替えて仕上げのサンディング・・・。フィルムを貼る時は、このグラス面に薄くクリアラッカーを刷毛塗っておきましょう。
  
● コクピット付近のキャノピー取り付けの作業です。通常のバルサキットの場合、この成形キャノピーには木部の枠を取り付けて補強するんですが・・・。枠の木口に成形キャノピーを直接貼り込むと、接着剤が硬化に伴い収縮すると枠が変形・・・コクピットとの縁とキャノピー枠の接する面に湾曲した隙間が出た経験は、多くのモデラーが知ってます。飛行場においてお仲間の機体を観て、コクピット周りの綺麗な仕上げに・・・負けた!・・・って落胆した事はありませんか?・・・。

● この本機の枠の工作は、そういう失敗を回避する為の工夫です。実物機の様に胴体の外皮とキャノピーの枠がピッタリと沿う様にするには、枠の下面を胴体の外皮に沿う様に、成形キャノピーをはめ込む枠にすれば良いのです。鉄枠の実機仕様では無いので、ひ弱な木材です。実機よりも太い枠には成りますが、此れならコクピットとキャノピー枠に湾曲した隙間は出ません。フィルムを貼ったら隙間が出来てしまった苦い経験を、少しでも改善したいなら実践してみましょう。成形キャノピー側も切り木口の当りと内側側面での接着に成るので、ある意味頑丈に成るんです。
 
● しかし・・・今度は段付の縁が丸見えで、如何にも素人っぽくてカッコ悪い!って思うんだったら、実機と同じ様に成形キャノピーと枠の隙間にパテを詰めて成形し、銀粉塗料を吹き付けてしまえば良いんですよ。パテの盛り方にもよりますが・・・段差も隙間も無く成れば、どうやって工作したのかお仲間さんから質問攻めに遇うでしょうなあ(笑)・・・。
  
● 銀粉塗料というのは、航空自衛隊の板金業の時代から頻繁に用いた色消しの技術です。下地の色を完全に隠す事が出来ます。鮮やかなブルーインパルスのデザインカラーの上に銀粉の丸塗りで、部隊色に早変わり・・・。ブルーズで使い倒すと最後は用廃機に成ってしまうので、一定期間使ったら程度の良い部隊機とトレードし・・・ブルーズ帰りの(F-86)は部隊で残りの訓練飛行を続け、最期の時を迎えます。

● 金属疲労によるダメージは相当なモノで・・・飛行には何とか耐えるだけの組成は残しているモノの・・・亜音速域での飛行にも塗装面が剥がれるって事は、外皮アルミ板の表面が、塗装の吸着に耐えられないのでボロボロと剥がれる訳ですが・・・。こうなると機体の用廃時期は近く成って来ます。板金塗装で銀粉を剥がすと、白やら赤やらと重ね塗った跡が出て来るんですが、その時初めてブルーズ帰りだったと言う事を知るんです・・・。

● 画像は左から、オラカバライト(クロームメッキ)を貼り込み・・・ベビーパウダーを添加剤としたクリアラッカーを数回重ね塗って塗膜を造り・・・最後は銀粉を塗布して中塗りの完成です。此れがグランドで飛ばす動力機ならウレタンで下地を作る所ですが、本機は無動力のグライダーですので燃料に侵される事もありません。ラッカー塗料でも良い訳ですよ。傷が入った場合の修正がやり易いですしね・・・。
  
● 此方は上塗り塗装です。銀粉塗料に重ねる発色の良い塗料は、実に鮮やかになります。銀粉の上に重ねると・・・下地が暗いのでくすむんじゃないかって思われがちですが、結果はこう成るんです。よって部隊色の銀粉丸塗りのハチロクが、ブルーズに成ると青空に映える原色が観るもの全ての人にも、ハッキリと解るでしょ?・・・。銀粉色は万能色と言われる所以は其処に有るんですなあ・・・。此れはウレタン系の塗料でも同じですよ。
  
● 本機の仕上げについてですが・・・、ヨシオカモデルファクトリーがドイツのメーカーから輸入している各種オラカバフィルムを使って下地を作りました。主翼のイエローカラーはラッカー塗料の吹き付けです。その縁取りに使ったブルーは、裏側に糊の付いたシールを貼り込んでます。フィルムの場合もシールの場合も同様なんですが、貼り木口にクリアラッカーを細い筆で塗り込むと剥がれ難くなります。主翼のロゴ文字も同様・・・ホームセンターで購入出来るカラーシールを切り抜いて貼り込んでいます。これ等のステンシル文字の作り方は、別ページで紹介していますので其方をご覧ください。(団塊世代のステンシル文字製作法)

● ロゴの作り方なんですが、最近流行りのコンピュータグラフィックでデザインして、色鮮やかにシールに転写して・・・なんて、ハイカラな事はやりませんよ。当工房が切り抜き文字のステンシルの作り方を掲載したら、我も我もと同じ様な作り方・・・ではなく、プロッターで切り抜いたり・・・写植印刷して切り抜いたりと、当工房よりもハイテクな技術を使って切り抜き文字を紹介してるんですが・・・。何故にワザワザ難しく難しくしてしまうんだろう・・・って思っちゃうんですがねえ・・・。

● 多分・・・ハイテクを使えば当工房よりももっと見栄えが良く成るんでしょうけど・・・。誰も真似出来ない様なモノを紹介しても、ハイテク機器自体を持って無いんだから、多くのモデラーさんは真似出来ません。ハイテク文字の切り抜きには、その領域に成るまでの金銭的ハイテク機器の取り揃えと、操作方法を学ばないと同じ物は作れないんですよ・・・。だから極めてアナログな方法で製作できるステンシルの作り方を紹介しました。

● 観てるだけええええ・・・のモデラーさんが、自宅で持ってるパソコン機器は、デスクトップの据え置き型パソコンとプリンターぐらいでしょ?・・・。このステンシル文字はこの二つで作図出来ます。お使いのパソコンに基本的に備わってる作図機能を起動して、プリントアウトするだけです。後は切り抜くだけで形紙は採れますし・・・。