TONYーSSG (飛燕・工房オリジナル・強風用スロープ専用機) Part-1
  
● 平成のラジコンブーム真っ盛りの頃に、依頼されて作った機体です。レシプロ仕様の大戦機は、無動力状態に陥っても操縦次第では滑空出来ます。要するに・・・ジェット戦闘機みたいに、エンジンストール・・・失速スパイラル・・・ご愁傷様~・・・が起き難いです。よって模型機でも動力機の場合、操縦次第では見事!着陸!回収成功!が成り立ちます。ならば・・・スロープグライダーとして再設計し直せば、高性能な飛翔体に化けるかも知れない・・・が!設計の第一コンセプトです。・・・だったんですが~・・・、オーナーさんにお渡ししたら・・・内部仕様を大改造されて、台風並みの風速条件下でしか飛べない機体に成ってしまいました。

● 当工房は闇雲に飛行機を作ってる訳じゃ無いんですがねえ・・・。オーナーさんの取り巻きさん達が固執したスケールマニアの場合、動力機の構造と一緒くたにしてしまうので、アドバイスがアドバイスに在らず・・・。飛行機の構造体というのは・・・その機体の全備重量によって構造の内容が変化します。本機は無動力のグライダー仕様機なのに、何故!ハイパーエンジンを搭載した動力飛行機と同じ強化構造に変更する必要が有ったのか・・・。オーナーさん自身がその事に気づいていないと、結果は最悪な事態に成るんですなあ・・・。要するに・・・全備重量の増加で動力機と変わらない翼面荷重に逆戻り・・・そら、風速10メートル域でも満足に飛べませんわなあ・・・。 
  
● 通常の模型飛行機は左右の主翼を別々に組んで、最後にカンザシ板を使って左右の主翼を結合します。此れは汎用性というキットメーカーの諸事情による処置なので、制限があるんです。ところがカスタム屋さんの場合・・・一品の製作なのでその制限も見境もありません。ワガママ一杯拘って作ります。本機の主翼は左右同時組み込みという荒業を使っています。よって、本来なら左右の主翼のリブ組みに装着する中央翼のベニヤリブ・・・最初から一体モノで作ってしまいます。画像では見えませんが、メインスパーの入る空間を挟む様にベニヤの補強板の中には、6mmのカーボンシャフトを上下に二本配置して封入してあります。この強化ユニットを正確に作る事から作業が始まります。
  
● この大戦機のカテゴリー・・・見た目の好い加減さを寛大に受け入れてくれるお仲間さん相手なら、細かいディティールには拘りません。飛んでナンボの空物ラジコンですので、飛ばなきゃ全く意味が在りません。よってよく似た主翼の形状を一台の治具で賄えるように、主翼形状をセミスケールとしました。翼端やら主翼後縁やら其れっぽく変更するので、正に好い加減なセミスケール設定です。よって、完全スケールに拘る動力機のモデラー諸氏は横に置いといて・・・治具台は共通・・・。主翼上反角も捻り下げ角度も共通。元々動力積んで満足に飛ぶ飛行機を、無動力設定で飛ばすんだからセミスケール機にするのは必須です。でも、当工房は其のフォルムが大きく崩れないんですなあ・・・。まあ、崩す所は大きく崩れ捲ってるんですけどね。まあ、人間の目ん玉は好い加減ですので、飛んでる姿で判断します。地上で品評するんだったら、プラモデルでも並べときましょうね。
  
● 主翼の一体型組立てのメリットは、捻じれや歪みが一目瞭然なので、プランクして拘束する前に治具台の調整が可能だからです。本機のスパンは1950mm・・・JRGA競技規則なら2メートルクラスとスケールクラスへのダブルエントリーが可能です。よって運搬の利便性を排除したので、運べる車両は限定されますが、分解翼構造が無い分組立ては楽でしたね。まあ、それでも複雑に見えるのは・・・そう見える様にデコレートしたからです。
  
● 今回はベニヤとバルサを使ってますが、初号機の大改造事件以降・・・スチレン混合構造が確立出来たので、5mmのスチレンと木目方向を変えて貼り合わせた3mmバルサシートのみで胴枠を作れる様になりました。主翼もスチレンスパー材とスチレンリブを多用して、バルサでプランク・・・。機体の生地完成重量が1キログラムを切れる仕様と進化しました。今回は初号機の部材で説明していますが、構造は殆ど変化しないのでそのつもりで創造して下さいね。
  
● 若干ピンボケとりますがご愛敬・・・。まるでエンジン搭載機の様相・・・。しかしながら、重量配分をかなり重視したので・・・主翼の重心位置から胴体の前後モーメントの配分は、画像の生地完成状態でも前が重い・・・。要するに重心が合わせ易い設計です。此れに尾翼が付くと今度は重心ピッタリ状態。此れに主翼合体で今度はテールヘビー状態。フィルムは同じ比重の被覆をすれば重心位置の変動はありません。しかし、機首ハッチ内部にメカ一式搭載でノーバラスト設計となります。いや、だったんですが~・・・オーナーさんの無意味な大改造で、テールヘビーと成ってしまい・・・今度は機首先端スピンナー内部に鉛のバラストが満載・・・。予定よりも1キロ以上重量が増える結果に・・・。何の為に極限肉抜きと材質配分したのか・・・訳が解らないですなあ・・・。
  
● 画像に映る携帯電話はムーバの時代・・・。此の機体の製作は平成16年くらいですかね。尾翼は複雑に見えますが、翼型のテーパーじゃ無いんです・・・。翼弦と翼厚だけをテーパー状にするフラット仕様です。所謂・・・抵抗板です。よって水平尾翼は揚力を生みません。実機っぽい構造ですけどね、見た目がそう見えてるだけで・・・此れがね?翼端まで同じ厚みだと、見た目がねえ・・・。如何にも実機みたいな尾翼っぽく手を抜くなら、こういった構造も有るんですよ。性能に悪影響は出ませんよ(笑)・・・。
  
● 本機のキャノピーは複雑です。5個のパーツブロック中3個がキャノピーとなります。パイロットからすれば、前方から後方まで360度周囲の視認性が大変良いので、空中戦では大変有利と成ります。今回は模型機ですので省略しても良かったんですが、当工房は其れ専用というのが嫌いですの他機種との互換を考えて、敢えてこの面倒臭い複雑なキャノピー木型を作りました。

● 取り敢えず・・・木型としての法則通りの作り方を遵守したんですが、こんな複雑形状のキャノピーは手持ちのバキューム成型器ではボコれない事が判明・・・。古巣のトムさんの会社に応援要請・・・。見事にボコってもらえました。この好い加減なキャノピーの木型なんですが、スピットファイアと形状が似ていたので、飛燕の方を少々弄って両機で使える様にしました。この木型には見えない小技も隠されています。
  
● 此方は主翼の下部、ラジエター前方に取り付ける整流カバーです。実機飛燕のエンジンは水冷式なので、主翼の後縁付近にデカくて横に長いラジエターパネルがあります。エンジンスケール機なら必要なパネルでしょうけど、スロープ機なら大きな空気抵抗に成るので何とか省略したかったんですけど・・・。その形状の主張が大き過ぎて、省略すると飛燕に見えなくなるので別の対処法が此れだったんですなあ・・・。ただですなあ、主翼下部の表面は上反角設定・・・木型側には下半角設定で木型を作らねば合いません・・・。原寸図面から別に三面図を作図し直して、上記キャノピー同様に分解して作って最後に合体・・・。まあ、複雑でしたなあ・・・。ただ、キャノピー同様に複数個在庫してるので、今度はスチレン混合機体で使用しましょう。
  
● ガッチガチのスケールモデラーさんなら、本機が耐えられない位の好い加減なスケールダウン設定なのかお解りの筈・・・。しかし、本来、動力仕様の飛行機を無動力仕様に設計し直すと、色々と弊害が出て来るんですなあ・・・。実機のスケールを其のままダウンしても、重心を合わせ辛くなるんです。よって実機よりもノーズモーメントが長くなりました。そうなると今度はテールモーメントが短くなります。じゃあ・・・比率で延ばせば好いやんか!簡単なこっちゃ!・・・とは成らんのですよ。後ろに延ばしたら完全スケール機と同じなので、再び重心設定で悩む羽目に・・・。

● よって、テールモーメントは其のままに尾翼を比率で大きく変更・・・。でも、ノーズモーメントが延びた割には違和感ないでしょ?。此処にもカラクリが有るんですなあ・・・。空力重心位置から機首方向を単純に延ばすと、胴体自体が細く見えるんですなあ・・・。で、どうしたか・・・。空力重心位置の胴体中心線の交点を斜め45度でカット・・・。そこでアウトラインを引き直すと画像みたいな胴体の形状に成るんですなあ・・・。人間の目ん玉は好い加減って言ったでしょ。

● 人間の目ん玉って、個人其々の判断基準が違うんですなあ・・・。一方向のみの延長だと明らかに形が変わったって判断するんですが、此れが上下にも延びたとなると、今度は判断が曖昧に成るんですなあ。そういうのをセミスケール設定と言うんですよ。大手メーカーさんの実機のスケールダウン機は全てセミスケール設定機です。だから広い操縦技術に対応出来るんですなあ・・・。完全スケールに近くなると、飛行技術には限定されたテクニシャンにしか対応しなく成るんです。本機は横の安定(ローリング軸)のみなら、ムサシノのスカイライト号と同様の自律安定性能を有しています。だからといって、初心者さんがホイホイとベテランフライヤーに化けられる機体とも言えません・・・。

● もし・・・本機・もしくは同様の大戦機シリーズを販売する事が有るとすれば、リモートIDを習得された個々のモデラーのみとなります。転売ヤーさん・リモートIDをお持ちで無いモデラーさんへの販売はしません。また、私的大改造を施して動力仕様機にするであろうモデラーさんへの販売も在りません。昨今の世界情勢を観れば一目瞭然・・・。自動操縦機もノーコンラジコン機も兵器と同じ状況しか成り得ません。今後の空物ラジコン機を保有するモデラー諸氏は、その存在を国家から監視される状況となりました。娯楽としてのあくまでも趣味的な平和利用のラジコン機は黙認されるでしょうけど、国家が危険と判断する様なラジコン機は排除される時代となりました。ルールとマナーがいよいよ重大な要素として確立される時代に成ったと言えます。(令和4年5月28日記載)