VEGA Ⅰ型 (No-11) 山本昇オリジナル設定機 Part-2

  
● フライングスタビライザーの作図を行います。本機のスタビライザーは完全対称の揚力尾翼であるが故、定盤の上で平べたに置いての組み立てが出来ません。まあ、昭和のジェダイマスターならカイモノを敷いて組む人もいるだろうし・・・平成のネット世代なら空中殺法で瞬間接着剤をチャッ!チャッ!と組む人もいるだろうし。レーザーカットのキットなら可能でしょうけどね、本機の場合は治具込みで作図しました。

● 大手のメーカーならレーザー加工のキット専用のレーザー加工の治具を別売りする機種も有ります。此れをアナログで作図しようとするんですが、何主不思議でも無い普通のことなんですよねえ・・・。画像みたいに作図出来てますから。水平尾翼のリブの作図を原寸で行ってリブを画くと、リブ間に空間が出来ます。本機の水平尾翼は上反角0度なので、そうなる様にリブ毎の治具台の高さでカットすれば良いんですなあ。此れで治具台の形紙も同時に作図完了です。
  
● まずは治具台の組立てです。スロット加工したので組立ては容易・・・。造作もなく組み上がりました。この上でスタビライザーの組み立てを行えば良いんですよ。過去の製作依頼で、大手のキットメーカーさんのグライダーキットと其の機体の主翼を正確に組む為の治具台のキットを送るから見積もりせよ!とメールがありました。其処には念押しの文面が・・・。
「このキットの主翼は治具台を正確に組まないと組めません。絶対に手抜きをしないで下さい。」と記載してあったんですが、ムカついたので法外な見積もりで返答しました(笑)・・・。よって製作依頼は来ませんでした。カスタム屋に何ちゅう要求して来るんだろう・・・。多分、文章だらけの当ホームページの製作記事を全く読まずにメールしてきたウッカリさんでしょうなあ・・・。まあ、お仲間のカスタム屋にも同じメールを送ったらしいが、同じ手法でお断り・・・。自分で組むのが面倒臭いからって、作らせる側への指示としては愚門レベルですなあ。
  
● 治具台の上で水平尾翼を組立てています。治具台が正確に組まれているので水平尾翼のリブ組みも正確です。ラジコン技術誌のヴェガ記事・・・印刷画像と図面とイラストだけではイマイチ解らなかった情報も、実際に組立てると見えて来るでしょう。構造的にはポピュラーなんですが、プランク無しでもこのテーパー比・・・フィルムを貼ったら捻るのが難しい位に頑丈に成ります。よって治具台を正確に組む羽目に成ったのでした。
  
● 治具台の効果は其れだけにあらず・・・。左右分割のスタビライザー内部にはパイプが固定されますが、このパイプのアライメントも正確に出せるんですなあ・・・。クランクユニットの取り付けが一時中断したのは、こういう理由が有ったんですよねえ。まあ、フライングスタビライザーを有するグライダーのキットなら在りがちな事ですが、キットの場合はこんな面倒臭くもクランクユニット別組みで胴体内部に内蔵できた機種は一機もありません。お客さんに正確に組ませるんだったら、此処までやれば可能になる証明でもあります。バルサキットなら実現可能じゃないかと思うんですけど・・・。トムさん!どうでっしゃろ?・・・。
  
● ヴェガの記事をお持ちのモデラーさんは、このクランクユニット付近の解説と図面をよく見て下さい。このクランクユニットの上にはスタビライザーの翼型と同じフィレットが付きます。さて・・・オリジナル構造ならばユニット前後にパネルが無いので、翼型のフィレットが付けられても被覆材の貼り代がありません。どうやってシルクを貼り込んだのか不思議に成るくらいです。よって被覆材の貼り込みの安定性と容易性を確保するために、新たにパネルを追加する改造を行いました。
  
● このフィレットの周囲のパネルが無い場合、被覆材の貼り込みが大変になります。其れは誰がやっても同じ事です。では何故記載して無いのかって?・・・。此れもトラップかも知れませんね。編集部を通してマニアの質問コーナーにでも投稿するのも一つのl手なんですが、その後誰も問い合わせなかったみたいですなあ・・・。図面が読めて、頭の中で立体透視図が出来るモデラーさんでも誰も変だと思わなかったんですかねえ。絹張塗装するもフィルムを貼るも見えなくなる場所ですし、内部構造の強化なので性能低下はありません。
  
● 山本オリジナルのヴェガと同じ位置に動翼の駆動サーボを取りつけるべくマウントの工作です。本来ならばこの二つのサーボ(画像左側エレベータサーボ・右側はエルロンサーボ)を胴体内部に搭載するんですが、このヴェガオリジナル機が製作された当時は昭和40年代の終わり(48年)です。当時、既に比例制御のプロポだったんですが、まだまだコンピュータプログラム付きでは無かったので、ミキシングの類は全て複雑リンケージによる機械式アナログで作動していました。あれから半世紀近く・・・21世紀初頭のプロポは当り前に電気ミキシングが掛けられるプロポに進化しました。

● よってエルロンサーボは主翼側へ移動したので、胴体内部はエレベータサーボのみの搭載です。其の為のマウントなんですが、当時、構造的に羽目殺しのリンケージだったんですが、今回はある程度消耗部品の交換が出来る様に、開いたスペースを活用します。更に令和4年6月から施行されるリモートID搭載の識別装置も搭載できる様に、スペース確保を行えるように改造します。
  
● オリジナルヴェガとはサーボのアクセスハッチの構造が違いますが、此方の方が作り易く安定しています。山本さんのオリジナル構造よりもメカニカルではありませんが、衝撃にも耐えられる様にノックピン方式から単純な四つ角小ビス締め方式に変更します。実は・・・この小ビス・・・昭和40年代は、誰でもホイホイ入手可能とはいきませんでした。まだホームセンター自体が存在していない時代・・・。小ビスなんて専門部品の扱いなので、工具屋さんと言われた専門職相手のプロショップに出向いて、量り売りやら数千本入った小箱単位で購入するしか方法がありませんでした。よって模型用品の改造部品を使うしか無かったんですなあ・・・。その方が確実性と現実味が強かったとも言えます。
  
● 胴体下部のプランク状況です。複雑な多角貼り込みなんですが、最終的には全てアール面となります。この作り方はガルモデルのキットに多く使われた構造です。胴体上部は最初から胴枠自体が丸く設定されているんですが、下部は多角の平面貼り工法です。此れはですなあ・・・ぶ~んガチャンを多く経験したモデラー程理解しています。上部はデザイン重視、下部は堅牢重視だからですよ。仕上がりはどちらも丸くなるんですが、内部構造は下部の方が頑丈です。着陸するのにワザワザ垂直尾翼を壊す様な背面状態で愛機を降ろす人っていないでしょ。
  
● 些細な事なんですが、胴体上部のメカハッチのライン・・・此れが歪だと完成した時の全体像がイメージとはかけ離れて来ます。もっとも神経を使って表現した箇所なんですよ。バルサキットを作っていて・・・パッケージの完成機と仕上がりが何か違うなあ・・・って感じた時は、削りが足らなかった場合と何処かで内部構造を間違った時です。要するに、一番重要な胴体のラインがメカハッチの中に在るので、大掛かりで大袈裟な構造にしたとも言えますなあ・・・。何で素直に胴体全体をプランクしないのか・・・。此処からまだまだ構造が複雑になるからです。組立ての工程まで綿密に決定した上で記事を書いてますしね。
  
● 胴体中途半端で今度は主翼の組立てだあ?・・・。此れも決定した組立ての段取りなんですなあ。主翼を組まないと、胴体側の取り付け部品の位置が決まらないんですなあ。因みに今回の製作記事・・・本来はキット製作をやってるメーカーさんの量産型試作機の組み立て手順と同じなんですなあ・・・。説明書を書くのに工程を模索するのに似ています。よって段取りが通常のキットよりも複雑なんです。でも、閲覧しているモデラーには期待させない様・・・本機の組み立てキットは販売しませんよ。出来るだけの部品表は有るんですが。
  
● 画像は主翼のリブ組み状況です。リブがダブルになっていますが、此処が本機の主翼の分割位置です。何故に隙間が有るのか?・・・。隙間は2mmなんですが、其れは組み立て手順の最後に判明します。此れも段取りの一部・・・。本機ヴェガの組み立てが大変難しく見えてますが、どんぶり勘定で組めないのが山本さんのトラップなんですなあ・・・。至れり尽くせりのセキュリテイ構造とも言えます。安易に手抜きで組めない様に成ってるんですなあ。「私のヴェガは今の君には組立てられないし飛ばせないよ。」とは、中学生の私に山本さんがくれた手紙に書いてありました。今思えば組めなくて良かったし飛ばせなくて良かったですなあ。ガッチガチの初心者なんだもの。知識先行型で技術の伴わない平成のモデラーさんよりも程度の低い初心者だったんですもんね。
  
● 本機の主翼の詳細を触りの部分だけご紹介・・・。胴体に対して取り付け角が2度。主翼の下面のみ上反角が付いて、捻り下げが2度付く・・・。其れも分割した外翼のみ・・・。もう複雑なんですよねえ・・・。主翼全体に捻り下げを付けると、分割部分のカンザシ構造が天文単位で複雑になるので外翼のみに成っています。カンザシパイプは直線構造でしか抜き差しが不可能です。よって外翼は捻った状態でのカンザシの固定が必要・・・。さあ!私の鼻の孔を明かしたいモデラー諸氏は、しっかりと理解して下さいね。
  
● 本機の主翼は外翼側にカンザシが固定されます。よって胴体側はカンザシ受けのパイプが胴体内部を貫通しません。だから複雑怪奇な分割構造になっているのですよ。左右の独立したカンザシが同一軸に配置されないと、左右の主翼の取り付け角が決まらないという恐ろしくシビアな構造とも言えますなあ・・・。更に昭和40年代のラジコンメカの時代背景が其のまま浮き彫りになり、其れを解決するための斬新な主翼の分割構造でもあるんです。そら!ラジコン技術誌の編集部も飛びつく内容でしょうなあ・・・。
  
● 外翼を捻った状態で作らないとカンザシの抜き差しが出来なくなります。よってプランクする際も捻り下げ設定の治具上で組まなければ成りません。そういった解説が製作記事には一切無いので、多くのモデラーが作る前から理解不能に陥り・・・追従したモデラーが極端に少ないのも頷けるんですなあ。主翼に捻り下げを入れる事は理解出来ても、捻った主翼の状態でカンザシをユニットを固定しなければ成りません。普通に考えたら主翼と胴体をカンザシで繋いだ状態で、プランクシートを貼り込め!って言ってる様なもの・・・。どんだけデッカイ工作スペースが必要なのか?・・・って考えるのも解るよなあ・・・。
  
● 全てはこの構造を実現するための回りくどい解説です。この構造を見て直ぐに応用を考えるのは、ジェットスケールのモデラーでしょうなあ・・・。胴体内部には動力と成るケロシン燃料のジェットエンジン・・・もしくはDFユニットが搭載される訳で、左右分割の主翼のカンザシが胴体内部を貫通すると搭載不可能に成ります。よって実機の様な構造が理想とはわかっていても、同じ様な強度を持った構造が作れないって諦めてしまう結果に成ります。そういった観点からみれば、応用する価値は充分にありますし賞賛も大きいと思いますなあ。
  
● 本機の主翼の翼端はオリジナル構造とは別路線です。オリジナルの翼端はスタビライザーの翼端と同じ状態を作り、プランクシートを貼り込んであります。本機の場合は、その翼端のリブ間を一個潰してバルサブロックを貼り込んであります。更に前後に分割してL型に貼り込む事で接着面を増やして強度を上げてあります。接着剤は瞬間よりも二液混ぜ混ぜのエポキシの方が遥かに強度があります。全てはスロープサイトの条件の違いって所でしょうか。
  
● 主翼の前縁は二重張りです。この前縁構造は加藤無線(MK)のF3A機のキットに多く使われていました。内側の前縁材でプランクシートを確実に接着させて、外側の前縁材でプランクシートの厚みの小口までも覆う貼り方です。此れで前縁を成形すると画像の様にすっきりとしたエッジが表現できます。先端のアールも自由自在・・・。こういった工作は個人の拘りの部分ですので、全てのモデラーに対してのごり押しではありません。
  
● 胴体側のインナーウィング内翼の工作です。画像の様な拘束治具に胴体を固定して各種部品の取り付けを行います。実は実機の場合も左右の主翼の結合面の細部を工作する場合は、強固な治具に胴体を固定しています。実機の場合の胴体への主翼の固定は、物凄く単純です。所謂圧着方式・・・。よって胴体の主翼取り付け面は驚くほど頑丈です。まあヴェガのこの主翼の固定構造は実機の構造を応用したのではないかと思われますなあ・・・。
  
● 山本さんのヴェガのテスト飛行模様で、中翼設定機であるが故の胴体重心付近は上手く掴めないとの記述があります。その後のデルタ機ではしっかりと指掛け用の孔が設けられています。よって本機には当工房の低翼機には当り前に装備される指掛け孔を本機にも採用します。この指掛け孔の在る無しで初飛行時の結果が左右される場合もあります。付けると飛行場でバカにされる事は無いですよ。一つの安全装備ですから・・・。
  
● 丸い胴体の側面に翼型のプランクを行うのは一筋縄では行かないという事を覚えておきましょう。更に前縁付近は逆アール・・・。プランクシートは凹ませる必要も出て来ます。よってバルサの材質を吟味しないと完全なる貼り込みが不可能です。因みに本機の前縁は、プランクシートには強度不足で使えないだろう・・・フカフカのソフトバルサを貼り込みました。このソフト系バルサでも逆アール込みだとある程度の強度を有して仕上がります。
  
● 外翼と内翼を結合しロックする為の機構を組立てています。この機構は山本氏オリジナル設計のアンドロメダⅣの主翼ロック機構の応用です。主翼側から延びた3mmのベニヤ板を胴体側の延長翼の内部に挿入しロックする構造です。多分・・・アンドロメダの機構を観て、現物を作って検証すらやらないモデラーが殆どの筈ですよねえ・・・。見るからに強度的に無理だろうって思っちゃいますし、組み込む以前の作る段階で二の足踏んでるモデラーが多いと思います。面倒臭いですもんねえ(笑)・・・。そんなんメーカーが開発すれば好い事だし、パーツとして販売されれば使っても好いかなあ~・・・って思ってるかな?。
  
● 此のロック機構は胴体側の延長翼内部で行います。デカい主翼の割にはロック機構が貧弱に見えますが、此れで充分なんですよ。シャーレ工法のレーシンググライダーってカンザシによる主翼二分割構造ですけど、主翼と胴体の結合ロック機能は何とビニールの粘着テープです。結合面を上下に目張りすれば完了です。抜ける事も無い・・・。じゃあ!本機もテープで目張りすれば・・・って考えるのはグローバルな脳みそを持った平成のネット依存のモデラーでしょうなあ。貼り込む被覆のフィルムによっては、粘着テープを剥がす時に剥がれる事も有ります。そうなると事後処理が難しく成りますなあ・・・。だったらロック機能を付けた方がプロっぽくてカッコ良いと思いますなあ・・・。まあ、人其々ですけどね。
  
● フィルム貼り込み後のロック機能はこんなにシンプル・・・。見た目もスッキリですがロックも確実です。何れ経年変化でベニヤ側の孔が甘くなる可能性もありますが、甘く成ったらエポキシで穴を塞いで開け直す事も出来ます。ベニヤは積層合板です。表面を一枚剥がして薄いカーボンシートを貼り込む補強も出来ますし、修理の仕方は青天井です。如何にも対応可能!。少しずつですが完成に近づきつつあります。(Part-3に続く)