ZANONIA 2023 (ガルモデル仕様替えオリジナル構造) Part-5

  
● 本機のラダーのリンケージはテグスワイヤーの両引きです。何故に片引きのピアノ線を使わないのかと言うとですなあ・・・重くなるから(笑)・・・。このテトラのフレキシブルロッド(商品名PAフレキ)の場合、画像左の様にアウターパイプと星形インナーパイプ、更にロッドアジャスターが溶接されたピアノ線ロッド付きでセットされています。何でまたこんなセットなのか、皆目見当がつかない人もいるんでしょうが、多分・・・ほぼ直線引きのリンケージで、軽くスムーズに動ける様にとの配慮かもしれませんなあ・・・。特に大型動力付き飛行機の為の・・・。グライダーならば、機首にモーター搭載のモグラ仕様ならばこのリンケージ構成が完璧とも言えるんですが、無動力仕様のグライダーには・・・特に本機の様に1メートル以上のロッド構成なら、テールヘビーに貢献してしまいますなあ・・・。

● よって、中画像みたいにビスを捻じ込んでアジャスターと連結させた方が軽量には成るんですが・・・。実はデメリットもあるんですなあ・・・。本機の様な団扇みたいなラダーに、片引きのピアノ線の芯無しフレキロッドだと、荷重に耐えられずにロッドが座屈する可能性も有るんですなあ・・・。よってもちッと小さめのラダーやエレベータの舵面位なら此のタイプでも大丈夫だとは思います。で!結論から言いますと、この星形インナーパイプを二本使って、其々そのパイプの中にテグスを通して両引きにした方が安全だとも言えるんです。両引きなので、舵面の風圧荷重も二本のワイヤーで役割分担・・・バックラッシュも無くニュートラルも確実に出せるので当工房のこのクラスの大型グライダーには必ず装備しています。

● 余談なんですが、このテトラのPAフレキのアウターパイプとインナーパイプの数が合いません・・・。圧倒的に黒いアウターパイプの本数が少ないんですよねえ・・・。工房倉庫の何処を探しても見当たらないので、冷静に成ってよくよく考えて・・・一つの可能性に辿り着きました。当工房のパンツのゴム掛けミランダにはⅠ型とⅡ型が存在し、更に翼型の違う4種類の機体が存在します。其の機体の主翼は胴体にパンツのゴムをたすき掛けにて固定する方法を採用しました。ゴム掛け固定って事は、胴体の主翼固定位置の前後に竹棒やらカーボンの棒材を差し込み固定するんですが、其の固定を胴体製作中にやるのか、フィルムを貼り込んでからやるのか・・・確実に固定するなら、胴体上部のプランク前に胴枠に接着してから上部のプランクをすれば、ゴムのテンションに負けて棒材が折れる悲劇には遭わなくなります。

● ところが、今度は被覆をする時に困るんですなあ・・・。特にフィルムの場合が・・・。で!本機ミランダはどう対処したのか・・・。先に胴体内部にこのフレキロッドのアウターパイプを接着固定し、フィルム貼り込み後に竹棒なりカーボンシャフトを通す構造にしたんです。よって、アウターパイプを大量に寸切りして機体に組み込んだのを忘れていました。ミランダはⅠ型とⅡ型更に翼型四種で合計八種類有るんですが、此れはお客さんの要望で翼型を選べる様にしたんですよねえ・・・。全部で40機位作ったかなあ・・・。だからアウターパイプの在庫が少なかったんですよねえ。此のアウターパイプを胴体内部に固定する時は、若干カーブさせて固定するとその中にシャフトを通す時、適度な挿入感があるので抜けてこなく成るんです。そういう小技も使ってましたねえ・・・。
 
● 胴体の主翼取り付け部分の部品加工です。形紙を作図して切り出し、バルサシートにトレースしてから切り出しました。胴体の主翼前縁部分が106mmありますので、直方の内部構造体の外面から左右振り分けで23mmです。厚さ23mmのバルサシートは特注するか自分で製材するかの話なので物理的に無理です。よって20mmと3mmの市販バルサを組み合わせて23mmシートを作りました。この部材は重心位置よりも機首側なので、ハード系の硬いバルサ(木型に用いるスーパーハードバルサ)を加工して作りました。

● スーパーハードバルサは市販の飛行機製作用バルサとは一線を画す素材なので、木村バルサ等に発注すると揃えてくれますがかなり高価です。多分・・・入手を躊躇うモデラーが殆どなので数が出ません。まあ・・・メーカーさんの開発部の木型製作等では重宝されますが、一般モデラーが購入したとしても、硬い材質故・・・糸鋸盤等の専門加工機が必要になります。厚みのある部材なので、削り出しに無用の箇所は肉抜きして代わりに鉛のミクロボール等を充填しても好いとは思いますよ。
 
● 此方は重心後部の部材です。後部カンザシの付近の胴体振り枠幅が其々13mmです。よって重心より後方なのでソフト系メディアムの素材を使いました。一番内側の部材は肉抜きを施し、まあ・・・気持ち程度の軽量化を図ってますが、殆どその効果は期待出来ません。むしろ、見た目のビジュアルを重視してる無駄とも言える加工でしょう。全てが内部に隠れるので、完成形からは見えなくなります。

● 此れがガルモデルのザノニアオリジナルキットならば・・・大変重要な部材と成ります。私の様な素人的ビジュアル重視の手抜き加工はしないで下さいね。本機の場合はあくまでも作り易くする為の私的改造だけですから・・・。ただ・・・何年も同じ機体を複製してると、最終的にはこういった私的改造でも、オリジナル仕様の機体完成形とは見劣りはしなくなります。むしろ、此方の方が基準が採り易いので組み立てが楽に成ります。
  
● 部材を組み込むと主翼の前縁付近で部材込み106mmとなります。この幅が後部の部材まで続くので部材外面は106mmのままに並行配置となります。要するに・・・なんでこういう私的改造を施したのかと言うと・・・主翼の分割カンザシと主翼側の取り付け面を直角にしたかったからです。ガルモデルの数あるスケール及びオリジナルデザインの機体キットにストレートテーパーの主翼が多かったのは、まあ・・・一条氏のモデラーに対する親切心でしょうな。

● 他メーカーのグラス完成スケール胴体の場合も、本機の様なフィレット付きが多かったでしょ?。此れは胴体取り付けのカンザシが正確に直角を出して取り付ける事を重視したからです。よってバルサのキットだって同じ事が言えるんですなあ・・・こうやって作ればグラスの綺麗な完成胴体と同じ外観にはできるんですから・・・。胴体からはみ出した部分は、思う存分逆アールで削り込めば良いんですよ。この部分を部品を組み込んでバルサプランクする方が難しいでしょうね。逆アールの削り出し?・・・彫刻刀があれば出来ますよ。小学校で版画板の削り出しに使ったアレです。

● 義務教育の9年間というのは、その時代において世の中の成り立ちと職種の基本を学びます。よって図工の時間に使う粘土は、焼き物職やら自動車航空機のモックアップ製作時にも使う材料・・・。真面目に楽しく使ってたら、将来の職業時に役立つかもしれません。其れと同じです。趣味の工作でも仕事の試作でも、この義務教育で学んだ初歩的な道具の使い方や其れから生み出される完成品の記憶は残ってる筈です。本機の様な機体加工にも躊躇なく使える技術です。
 
● 主翼のリブ材作図の前の一仕事・・・翼根側のフィレット部分の基準を作ります。此れが本機の主翼の翼型です。何ともぶ厚くて不細工な翼型に見えますが・・・、この翼型で今まで飛んでたんですよ。実機の五分の一のスケールサイズなので、実機ザノニアの最高速度、時速400キロを体感するには模型機ならば80キロ出ればスケールスピードによって実機みたいなスピードが体感できるんです。本機の速度記録会での最高スピードが時速82キロでしたので、まあ・・・ボーダーラインはクリアって所ですね。

● 実際の翼型は形紙の内側の実線ライン・・・。外側の翼型ラインは翼根側のダブルプランクシートのラインです。実機ザノニアのこの翼根側は複雑な翼型の集合体・・・。此れを簡素化するのにガルモデルの一条氏は、バルサシートの重ね張りで表現する手法を使いました。実際の所・・・この3mmバルサシートの重ね張りの効果で、分割する翼根側の強度は格段に上がってました。見た目は不細工な翼根側ですけどね、ちゃんと理由が有ったんですよねえ。
 
● 形紙からゲージと成るベニヤリブを作図してみました。この1,5mmのシナベニヤの翼型リブが胴体側に固定されます。ガルモデルオリジナルのザノニアキットでは、この胴体側のフィレット形成を止め、分割主翼の翼根側に全てのフィレット形状を取り付けた為に、胴体側のカーブラインに合わせてかなり複雑に翼根側を削り込む必要が在りました。この加工が大変難しく・・・製作するモデラー諸氏の技量の差が出てしまう結果と成った訳ですが・・・。本機の場合は、この複雑なフィレットラインを胴体側に戻す事によって、主翼側の工作を単純化する事にしました。

● 当ホームページの色んな製作記事に書いていますが、一条氏のキット化する機体は殆どがセミスケール設定機です。作る側のモデラーの負担を軽減する目的で、一条氏のオリジナルな自由な考察で、構造を省略したりデフォルメしたりしています。其れが作る側の広範囲の技量に沿う結果となりました。ラジコン飛行機は飛ばしてナンボのカテゴリーです。実機の完全再現をめざしたキットでは、作るモデラーが苦労してしまいます。実機みたいな流れるラインの胴体から主翼に流れる綺麗なラインを形成させるなら・・・、簡単なお話、サーマル工房みたいにグラス胴体にすれば良いんですよ。

● グラス胴体のグライダーは、昭和40年代から既に存在していました。国内のグライダーキットにもこのグラス胴体は当り前に採用されていたんですが・・・。作るモデラー側がその時代に乗り切れていなかったんですなあ・・・。実際の所、オールバルサキットに比べてグラス胴体を採用したキットは完成形は良いんですが、作る側の技量には最高の技術が求められ・・・失敗すると修復するのが、またまた最高難度の技術が要求されるんですなあ・・・。要するに、グラスファイバーの取り扱いに馴れたモデラーにしか修復できないので、一部のモデラーにしか普及しませんでしたし、このキット価格ってのも市販のオールバルサキットの二倍以上の値段はする訳ですよ。だったら飛ばして楽しむオールバルサのセミスケール機の方に軍配は上がりましたしねえ。

● 本機の場合は一条氏のコンセプトを残しつつ、当工房オリジナルのテイストを加えて構造を変えただけの何でもない機体です。本機に限らず・・・先代モデラー諸氏の製作された名機の復刻をやっとる訳ですが、多分・・・後に続くコピー機が殆どいないってのが、この複雑構造に有るんだろう箇所が見つかれば、迷わず改変・・・。本機ザノニアのキット仕様替え当工房オリジナル構造ってのも、時代の流れに沿って進化したとも言える訳ですよ。ガルモデルのザノニアが初めて世の中に出現したした時代に・・・多くのモデラーさんの工作室に専門的な加工工具の類なんて存在しませんよ。糸鋸盤にしかり、こんぴ~たあ仕掛けの自動加工機なんて夢のまた夢の時代・・・。ラジコン黎明期に誕生したザノニアの復刻版、本機ザノニアの製作記事は、今の時代なら受け入れてもらえる筈です。何故なら・・・その製作記事に関する質問メールの多い事・・・(笑)・・・。観てるだけだったモデラーさんのやる気の一部が表面化すると・・・こうなります。