🐸 Frosh-Mt)型 🐸🐸🐸 捻じり下げ付き主翼治具の組立 (Part-5)

 
● 本機(Frosh-Mt)のスパンは2760mmですので、当工房設計の(Lo-100)とあまり変わりません。そこで、この主翼組立治具を再設定して、フロッシュ用に仕様変更します。(Lo-100)の主翼構成なんですが、内翼は矩形・外翼は楕円翼の為、切り替わる繋ぎ目で主翼下面のみ上反角が入ります。主翼の上面は直線のままなので、リブ型が大変複雑でした。この治具に使用したアングル材を組み直してフロッシュ用に変更します。
          
● この木部材とアルミアングルの固定方法なんですが、先に両面テープで仮止めして位置を決めてから、更にアルミアングル側からタッピングビスで固定しました。今回は、このアングル材の木部材を一度取り去らって角度変更しなければ使えません。ところが接着固定した状態で、数年も経過すると粘着質の両面テープも表面が硬化してしまい、木部材と一体化していますので、中々スムーズには剥がれてくれません。

● こういう場合は、画像の様にアセトン(メチルエチルケトン)を接着面に流し込んで、両面テープの粘着性を再燃させて柔らかくし剥がします。ただし・・・ただ、隙間めがけてジャブジャブ流しても中々剥がれませんので、彫刻刀等ある程度厚みのある刃物をかち込んで隙間を作ってから流し込むと、意外と剥がし易くなります。
 
● このアセトンなんですが、中毒性はシンナーに比べれば低い溶剤なんですが、揮発性はシンナーの上を行きますので火気厳禁となります。けっして咥えタバコでの作業はしないで下さい。匂いがかなり独特で強烈ですので、換気が悪いと頭痛マックス状態ならば・・・必ずゲロ吐きますので、空気の流れの良い所で作業しましょう。画像の様に、ウエスの上で作業した方が良いですよ。
ABS素材の物に付着すると必ず溶けてしまいますので・・・。ウレタン系は侵しませんが、ラッカー系は簡単に侵しますのでご注意下さいね。ゴム系なんかはイチコロですよおおおお。
 
● アングル材と木部材のレストアが完了しました。今回の木部材は、画像の右側のフラットなモノを使用します。画像の様に、新しく両面テープを貼り直していきます。
          
● 治具定盤のセンター分けで、主翼の左右を組める様に治具を組立てますが、翼弦の関係上、前縁側は交差していますので、同時には組立てられません。しかしながら、アングル治具を正確に直線で設定し、更に後縁固定のアングル材に捻じり下げ設定を加えると、主翼全体は最初から捻じり下げの状態で部材が組み込まれていきますので、仕上がりも捻じり下げの付いた生地完成の主翼が出来上がります。
 
● アルミアングルを固定する台座を作ります。何時もの様に形紙を作図して、3mmベニヤにトレースします。片翼分の台座は4箇所必要なので、合計8個分・・・4枚重ねで切り出します。
           
● ベニヤの4枚重ねを糸鋸盤で切り出す時は中速回転を選択し、無理に押し切りをせず・・・鋸刃の切削スピードに合わせると、鋸刃が折れ難いです。急いで無理に材料を鋸刃に押しつけて切ろうとすると、必ず鋸刃が折れます。糸鋸用の鋸刃は、かなり硬い材質なので丈夫にも思えますが、細くて硬い鋸刃の性質は曲げ方向の強度がありませんので、荷重が限界を超えると折れ易く成ります。
 
● 組み立てには木工ボンドを使います。こういうベニヤ系はエポキシ系が良いとは思いますが、切り出す段階で若干きつめの溝加工をしています。勘合における嵌め合いは、かなりしっくりしていますので木工ボンドでも充分です。
 
● この治具はリブ組から捻じり下げプランクまでを行う治具ですので、この様に後縁側のアングル材には長孔を開けました。主翼の捻じり下げは、上下のメインスパーの翼中心線を基準に捻じれます。定盤中央に固定するメインスパー用のアングル材は、必ず定盤にしっかりと固定する事が必要です。
 
● 本機フロッシュの主翼の翼型は、ラダー設定機ながら半対称翼を採用しています。一応・・・グランドにおいてショックコードを使って上空飛行が出来る様にと、フックを付けられる様に専用パーツも入っています。しかし・・・半対称翼でラダー設定機?・・・平成のネット博士達から見れば・・・かなり邪道に思えるんでしょうなあ・・・。グライダーはフラットボトム翼は初心者用・半対称翼はベテラン用・・・なる固執した知識が当たり前ですからね。

● 昭和のラダー仕様の中型ソアラーには、この半対称翼型のラダー仕様機が沢山販売されています。主翼の上面だけが膨らんでいるフラットボトム翼とは違い、反対称翼型は翼の上下が膨らんでいるので吸い上げ効果は上下両方向に発生します。ただ、上面の方が膨らみが大きいので上昇力が強いってだけの翼型です。この効果を利用すれば、エレベータのダウン操作をしなくても機体は勝手に加速して前進します。機体は重力に沿って降下してるんですが、前進するので揚力が発生し上昇しようとします。

● 専門誌に掲載されている浅い角度の矢印で示した沈下ベクトルなんですが、角度が浅ければ浅い程揚力が大きく発生する事を示しています。スロープの場合は、吹上風が強ければ強い程機体を下から持ち上げてくれます。フラットボトム翼の機体が吹上風に翻弄される場合は、機体が軽いからではなく前進すればするほど上向きの揚力が大きく発生してしまうからです。結果的に頭上げが止まらず・・・無理やりエレベータダウン・・・。スピードは出ますが・・・出せば出すほど揚力が増大し・・・ピッチ方向の軸が安定しません。

● 一方半対称翼型の機体は上下方向に揚力が発生するので、浮きはフラットボトム翼よりも悪くなりますが、その分エレベータはニュートラルでも勝手に走り出します。走るラダー仕様機は、ラダーの操作レスポンスがかなり敏感に成りますので大変飛ばし易くなります。ただし・・・初心者がいきなりこのタイプを飛ばすと、スピードが出過ぎて操縦のミスが多く成り、減速させる方法が解らずパニックとなります。あくまでも、フラットボトム翼の機体に若干スピードが物足りなく成って来たフライヤー向きの設定機と言えるでしょう。

● よって、画像の様に半対称翼型の下面を固定する治具を作成する場合は、メインスパー固定のアングル材は定盤に平行配置・後縁材を固定する場合は翼型に沿った角度に設定する必要があります。台座のアングル固定面が傾けてあるのはこの為です。原寸図面から計測したところ、約4度でしたので、台座も4度傾斜する様に設定しました。
 
● 主翼のプランク材の製作を行います。ある程度・・・バルサキットを製作されたモデラーさんなら、此方の作り方の方が正確な主翼が出来る事を知っています。リブ組主翼の最初の工程は、メインスパーの所定の位置にリブを接着し、前縁材と後縁材を取り付けてからプランク材を貼り込むのがセオリーなんですが・・・。プランク材を貼ろうとしたら、メインスパーが湾曲して組み込まれてしまい、後縁材も湾曲してました・・・。なんて経験がありませんか?。

● この組み立て方法は、リブの勘合を行うメインスパーを必ず直線に出来る工作方法です。よって、このメインスパーを固定する為に主翼下面のプランク材を利用します。キット付属のプランク材は、木口が必ず直線だとは限りません。そこで、直線定規をガイドにしてこのメインスパーを貼り込みます。本機の主翼片翼分は1340mmあります。メインスパーの直線出しは至難の技ですので、全長2000mmの定規を使って貼り込みました。
 
● 実際に定規を当てて貼り込んでみると解りますが、繋ぎ貼りをしたプランク材は繋ぐ前に直線出しの加工と接着を行ったにも関わらず・・・定規を当てると僅かに湾曲しています。プランク材には余裕を見てありますので、メインスパーの直線出しを優先した組み立てを行う方が、その後の作業工程に支障が出ません。少々歪んでも、フィルムで修正すれば・・・って、場数を熟して行くと・・・自分が許せなくなりますよ(笑)・・・。
 
● 原寸図面から採寸しボールペンでリブの取り付け位置も記入したら、余分なプランク材も2000mmの定規で切り落とします。本機の主翼は、メインスパーと胴体の中心線が直角で交差するストレート・テーパーに成っています。よって、前縁側のプランク材も後縁側のプランク材もテーパー加工を行いました。更に後縁プランク材は、リブ材が3,5度斜めに交差しますので、プランク材には3,5度の角度を付けて記入してあります。
 
● 主翼組立の要と成るアングル材の取り付け位置の寸法治具です。向かって左側の画像は、捻じり下げの無いリブ組の角度ゲージです。このまま正確に寸法出しをすれば、捻じれの無い主翼が完成します。捻じり下げを入れない場合は、この治具台のままプランクまで行えば捻じり下げの無い主翼が正確に完成します。

● 今度は右側の画像です。翼端最終リブのゲージ・・・後縁側の寸法が左側のゲージよりも1mm高くなっています。主翼に捻じり下げを付ける作業は、必ず・・・メインスパー上を基準に主翼が捻じれます。後縁側が上がり・・・前縁側が下がる状態を捻じり下げを付けると言います。

● どうして主翼に捻じり下げを付けるのか・・・、簡単に言えば翼端失速を遅らせる事が出来るので、胴体側は失速して高度が保てない状態になっても、エルロンのある翼端側は捻じり下げ効果で、まだ失速の臨界角度に到達していません。よって、エルロンが効いていますのでロール軸の修正が出来ます。

● じゃあ、主翼を捻じってないとどうなるか・・・。胴体側の主翼が高度を保てない位の頭上げ角度に成り失速すると、同時に翼端側も失速します。よって、機体がどちらかに傾いた場合・・・エルロンが効かないので・・・翼端から地上に接触してグランドループに陥ります。ラジコン機では然程問題も起きませんが、これが大型旅客機で起きたら・・・即!大事故です。

●大型旅客機の主翼のテーパー比は、4対1とか5対1が多いので翼端側の翼弦は胴体側よりも遥かに短いです。空気中の大気密度と速度は、胴体側も翼端側も同じなので・・・胴体側の翼根よりも早く翼端側の空気の流れは剥離します。主翼を捻じって失速を遅らせなければ、臨界点を越えると・・・エルロンが効かずに大惨事・・・。ただですね・・・矩形翼・・・、翼根と翼端の翼弦寸法が同じならば・・・この捻じり下げを付けてもあまり効果は得られないのでは・・・と思いますよ。何でもかんでも捻じり下げ・・・。主翼を捻じっても、通常速度の上空飛行時はあまり影響はないですよ。グランドで着陸させる時に、大きく減速させて格好良い着陸を毎回やりたい人は別ですけどね・・・。それよりも・・・小型EDFもグライダーも胴体着陸でしょう?。大きくフレアーかけたら滑走できないから、余計に機体を壊しそうな気もするんですけど・・・。
           
● キット付属の原寸図面から、メインスパー後方から後縁材先端までの翼弦寸法を算出し形紙を作ります。其々・・・リブ三枚分の幅の形紙です。
 
● この形紙が其のまま本機のテーパー寸法となります。正確に寸法とテーパー角を合わせたら、各台座を小ビスで固定して行きます。ストレートなテーパー翼の組立・・・それも片翼900mmを越える寸法・・・、この主翼がフラットボトム(翼下面が平ら)なら、こんな複雑な治具なんか必要無いんですけどね。このアングル治具を、今後製作する2mバードオブタイムと4mKa-8にも使いますので、複雑なんですが・・・ちと!時間を掛けて作ってみました。
 
● アングル治具の直線を出す時は、画像の様に1000mm以上の定規を当てて・・・隙間が無くなればアングル材は直線です。先に両端の台座の高さ寸法を27mmで調整し、ビスを締め込んで固定しました。中二つの台座は、定規を当てて調整しています。画像の様な位置配置で翼下面のプランク材を固定したら準備完了です。いよいよ主翼の組立工程に入ります(Part-6に続く)