● 霧ヶ峰式(鷹号)の製作

● 昭和11年7月(霧ヶ峰グライダー倶楽部によって製作されたソアラーです。形状はセコンダリーにも見えますが、扱いは上級者クラスに属する性能を有しています。上級者用の機体だからアクロバットが出来る!と考えるのは、この機体のコンセプトを詳しく知れば誤りだったと気づくでしょう。上級クラスのパイロットが糸を引く様な滑空が出来る様に設計されています。本機はこの飛行能力を忠実に再現したいので、実機の完全スケールをやめ、模型用に再設定した内容にしていきます。


● アーリーバードはショルダータイプの主翼取り付けを採用しています。鷹号はパイロンを有する高翼機ですので、主翼取り付け位置のかさ上げが必要になりました。まずは比較的丈夫で軽量なパイロンを製作します。5mmのスチレンペーパーを三枚重ねてパイロンの土台を構成します。

● 厚さ5mmのスチレンペーパーを三枚重ねて接着しますが、パイロンの中をエルロンサーボのハーネスが通りますので、センター部材となるスチレンシートは一部を切り取った状態で接着固定します。

● 胴体はセンターキール構造なので、こういうパイロン部材の構造を挟めるタイプにしておけば、かならずセンター出しが上手に出来ます。前縁側にはバルサのブロックを接着し、丸く削ります。後縁側は大部形状が複雑になりますので、一部くり抜きプランク構造としました。

● スチレン製パイロンに2mmバルサを両面プランクします。セメダイン系の接着剤を使いました。右の画像は胴体側の支柱固定台座です。66ナイロン製のブロックを使います。

● 画像の所定の位置へ台座を組み込みました。ナイロン製台座には2,5mmの孔を開けて3mmビスを捻じ込みます。予定では支柱側にU字フックを設けて差し込んでビスで固定するのが一番軽量で確実です。ただの艤装ではなく実用で機能させる一番確実な取り付け方法だと思います。

● 定尺80mmのシートでは側板材の高さが足らないので、25mmのバルサを継ぎ足します。厚さ2mmしかないシートなんですが、普通に木工接着剤で継ぎ足しています。この季節ならば気温が高いので自然乾燥でも普通に硬化します。

● 今回の機体構造では主翼下部が完全に密閉空間となります。リンケージの類やハーネスの引き回し等がかなり難しくなりますので、側板にサービスハッチを設けました。リンケージ等が済んだら塞いでもハッチとして使っても、胴体の強度に然程の影響は見られません。

● 側板に付けられたビスは内部台座にねじ込まれています。此処まで出来ると後は一連のお決まりコースです。角胴だろうが丸胴だろうがメイン側板の加工が済めば胴体の製作は大変簡単です。ただし、この法則はキットを死ぬほど作った。または、自作機を飽きる程作ったモデラーさんにしか解りません。言い方を変えれば理解して貰えないっていう意味です。脳内製作のネット掲示板のモデラーさんには絶対理解して貰えないでしょうね。

● 胴体の底部、前部胴体底板には3mmバルサ、後部胴体底板には1,5mmバルサを貼り込んであります。新型アーリーバードの胴体内部構造体は、前部と後部の切り替え胴枠を二枚重ねとして、側板の厚み分の段差を設けてあります。この構造により後部胴体は部分プランクトラス構造が可能になるのです。

● 相変わらずのノーズブロックの大きさなんですが、ガルモデルのバルサキットを沢山作ったモデラー上がりだと、見た人なら解る筈です。大きく極端に側板を湾曲させなくても、充分なメカ搭載スペースが確保出来ているので面倒臭い工作構造にする必要がありません。ガルモデルのスケールグライダーには完全スケール機は一機もありません。全ての機体は飛ばし易く比較的工作し易い構造のセミスケール機ばかりです。

● 最近でも時々モデラーさんの製作ページで見かけるガルモデルのバルサグライダーの記事。機体紹介までは意気込みマックス、楽勝楽勝ムード満点なんですが、その内恨み節とも取れる文句のオンパレードになります。「3mmバルサの側板の内貼り材に3mmベニヤなんか貼ったら、どうやってあんな幅の大きく違う胴枠に沿わせられるのか?。このキットは欠陥品だと思います。」と力説してあります。写真沢山の小雑誌説明書に慣れてしまったモデラーさんには、一条さんの青刷り一枚図面の見方が出来なかったようですね。誰がやったって定盤の上で正確に側板の内貼り貼っちゃったら、きつい胴枠幅には沿わせられなくなります。

● 一条さんのバルサキットの青刷り図面の右上にお決まりの様に記述してある、重りとカイモノとぶら下げ重りの三点セット、側板となる3mmバルサとベニヤの接着には必ず30分以上の硬化時間を要するエポキシを使えと書いてあります。側板重心位置に指定された厚みのカイモノを入れ、後部側板には重りを載せる。ノーズ先端には糸付きの重りをぶら下げて、必ずテーブル状の工作台で作業せよと記入してありました。この工作方法を確実に実践したモデラーは、その後自作する機体でも同じ工作方法を実践した筈です。ガルモデルキットの図面をお持ちのモデラーさんは、自分で確認してみましょう。自作機の難関が一つ確実にクリアできます。要するに、側板材と内貼りベニヤは湾曲した状態で接着硬化させよ!って事です。これならスロットイン加工の差幅の大きい胴枠も難なく取り付けられます。直線平面で接着硬化させた側板材を苦労して曲げてたモデラーさん?。試してみましょう。

● 底板を貼る以前で約100gです。ちと軽過ぎましたね。もちっと重くせねばなりません。アーリーバードよりも厚めの材料を使う事になるでしょう。

● パイロンを胴体にセメダインで接着します。この時パイロンが胴体中心に確実に垂直に立つ事が重要になるのですが、元々がキール型フレームなので、センターのキール材は垂直です。これを挟む形でパイロンを取り付けますので、普通に接着してもゲージを付けて正確にといった手間が省けます。この、パイロンを両面側板から延長した胴体の上部ラインでプランクします。厚みは2mm、材質はメディアム系のソフトバルサです。パイロンの中ほどまでプランクするので、このパイロンの強度はかなり構造は簡素化されてますが、丈夫です。

● 胴体の全体的な形が見えてきました。胴体側板を力を入れて握ってみましたが、全然凹みませんしびくともしません。それでも重くならず、比較的軽量に仕上がってます。5mmのスチレンペーパーで内部構成された機体なんですが、本来ならば肉抜きしてもタカが知れてます。しかし、逆に言えばこれだけ肉抜きしても充分な強度が得られます。バルサとスチレンペーパーの組み合わせの愛称は抜群だと再認識しました。

● この分ならば萱場式の無尾翼グライダーの胴体も難なく作れるだろうと思います。製作記事はまた後日。

● パイロン後部を作ります。大型グライダー(Lo-100)の場合はバルサブロックを取り付け成形しましたが、小型グライダーはちょこっと軽量化。プランク式としました。パイロンの重心位置付近をつまんで持ち上げた所、尾翼無しでつり合いが採れてます。バルサキットの基本事項なんですが、尾翼付きの胴体の後縁付近を持ち上げてつり合いがとれたら、完全完成後は機首側バラスト無しでつり合いが採れると言われています。

● 後部胴体のトラス構造です。各胴枠の間に補助胴枠を付けますが、棒材のみなので裏打の三角板を取り付けて補強します。斜めのトラス棒には裏打は必要ありません。上部ストリング材はキールフレームに平行配置なんですが、下部ストリング材は斜め45度に傾いています。上部は三角板の一部に接着され、下部はストリング材と胴枠の角に二面接着なので強度を維持できます。

● トラス構造は一見ひ弱そうにも見えますが、かなり丈夫になります。建築するのに適正角度で配置する筋交いと同じ働きなので、翼面荷重が許す限りの範囲で補強をします。実機のスケールサイズでいけば、かなり太めの補強材なんですが、材質が軽量なので敢えてこの寸法で筋交い構造としました。

● 私のページへの質問メールの中でこういうトラス構造の機体製作において一番多いのは、フィルム仕上げの際強度を出すにはどうしたら良いのかという質問が来ます。フィルムは熱を加えて接着面のフィルムの接着剤を溶かしつつ、接着する側の面に貼り付ける方法です。接着する側の材質が弱いと確実に張り付いてくれません。

● ならば、材質を強固な状態に変化させつつ接着能力も向上させればフィルムは確実に張り付いてくれます。フィルムの接着面どうしがくっついて剥がれなくなった経験はありませんか。これと同じ状況を人為的に作り出せば良いのです。バルサ棒の表面をフィルムと似た状態にするには、クリアラッカーを使います。クリアラッカーをシンナーで希釈(薄める)しますが、刷毛塗り程度の濃さで調合します。一度塗り込んだら充分乾燥させ、乾いたらスポンジペーパーで毛羽取り程度に磨きます。これを最低でも三回繰り返すと、バルサの表面がクリアラッカーの層で丈夫になります。あとは、熱を加えてフィルムを貼れば表面のラッカーが溶けて接着され、温度が下がれば強固に接着された状態を維持できます。このやり方は、実は昭和40年代から存在します。フィルム自体の性能が今に比べて劣っていた時代の方法なんですが、こういうトラス構造みたいに接着面の少ない構造には確実に利用できます。

● 後部胴体はある意味丈夫な構造体の方が長持ちします。スチレン材と言っても組み合わせ次第ではベニヤ材に匹敵します。ベニヤは衝撃に耐えますが、限界があります。限界を越えたら崩壊し、その度合いでは修理不能になります。ここをスチレンとバルサの混合複合材料に変えるとある程度の衝撃は吸収してしまいます。まあ、空中衝突だったら壊れるでしょうね。

● パイロントップは主翼後載せ型としました。利用範囲の多様性が期待出来ます。本機は上反角4度の主翼構成でエルロン仕様機となりますが、この天板にカイモノを入れると上反角5度以上の主翼が取り付け可能です。胴体一本で初心者用とベテランのお遊び飛行機に出来る様に、上反角7度のエルロン無し主翼でラダー機となります。その為、新型アーリーバードは尾翼を大きくし、ラダー面積を最初からラダー仕様機に合わせて設計しました。「ラダー面積、大きいなあ。」ってメールくれたモデラーさん、これが理由ですよ。エルロン仕様ならばラダー連動の方が実機らしい旋回をしてくれますし、ラダー機からエルロン機への転換フライトへもスムーズに移行出来ます。尚、ラダー仕様からエルロン連動又は単独操作の場合は、ラダー仕様舵角を基準に半分位の舵角で充分です。

● 胴体の全体がようやく見えてきました。いよいよ主翼の作図に入ります。実機の鷹号は滑空速度が時速50キロと表記されていました。この機体は約6分の1スケールなので、時速10キロの遅いスピードが適正スケールスピードとなります。そこで、スピードを落としても飛べるフラットボトム翼(11%)を採用しました。

● ありゃ?どっかで見たぞ。この図面。っと気づいたモデラーさん。そうです。新型アーリーバードの図面です。今だからバラシますが、元々この新型アーリーバードの原型は、鷹号だったのです。鷹号のセミスケールから波及したオリジナルガル翼のグライダーです。正式なスケールの実機記録を持たないアーリーバードは、この鷹号の時代に存在していても可笑しくない機体をコンセプトに開発したグライダーです。昭和の大御所諸氏に享けるのも当たり前なんですよ。

● 久々の矩形翼です。厚みの違いこそありますが、コード(翼弦)は翼端まで同寸法。楽勝だって思っていたら、多分数ある楕円翼端の中でも最高に作り難い完全半円型翼端の製作が待っていました。多分、大いに悩んで製作になります・バルサブロック一発方式という荒業もありますが、これだけ主張している翼端ですので、それなりの工作構造にしないと閲覧中の大御所さん(ドイツ人)に、またまた御国なまりの強いドイツ語で叱られます。自衛隊時代からの付き合いなので、かれこれ40年弱になります。口うるさい親父が他界してある意味ほっとしていたら、もう一人いました。親父の趣味の戦車プラモのお仲間さんです。

● モデラーさんからメールをもらいました。リブ組治具を使わないで正確なリブ組をしたいそうです。そこで、まあ、それなりってレベルの多分正確の端っこくらいの工作方法で鷹号の主翼を組んでみたいと思います。ただ、勘違いはしないで下さいね。それなりですから。(Part-2に続く


















































































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