ANTARES-Ⅰ型 (No-19) 山本昇氏オリジナル設定機 Part-6
 
● 機首側の側板はカーブがきついので、貼り込んだヒノキの棒材に深さ1,5mmの切り溝を薄刃の鋸で入れました。貼り込んだストリング材は3×3mmのヒノキ棒です。1,5mm入れると言う事は、半分の深さまで切ると言う事です。鋸の幅は0,5mm程なんですが、約10mmの間隔で切るのでヒノキが鋸刃の溝に曲がる事が出来ます。この状態で拘束治具に固定しておくと・・・数時間後には画像の様に機首側の側板が湾曲します。
  
● 接着剤を塗って胴体を治具に拘束し、その後・・・治具上では組み込めない部材を更に作って組み込んでいます。実は・・・胴体のプランク等は画像中央の機械式リンケージ等の組み込みが終わらないと進めません。先にこのミキシングユニットを作成して、仮に組み込み・・・スタビライザーののコントロールロッド等の取り付けが終わってから、残りの胴体を組み立てます。胴体が決まらないと主翼の組み立てには進めないのです・・・。此れがワンピース主翼をダボピンとボルトで固定する飛行機の作業手順です。製作記事としては停滞気味なので、閲覧してもらえないかも・・・って恐怖感が先に立ち、工作手順を早まって主翼を先に組んでしまうと記事が途中で止まってるブログを多く見てしまいます。主翼を先に組んだ方が、如何にも閲覧者には見応えが在りますけどね・・・。本機に関してはレーザーキットでは無く、全て部品を自分で加工して取り付ける昭和の遺物と同じ製作手順で説明しています。昭和の遺物には、組み立て工程毎の詳しい小雑誌が有りません。自分の頭の中で何度もシュミレートして手順を決めないと・・・必ず途中で記事が止まりますよ。

● 本機の胴体尾の形状には三次曲面がありません。二次曲面までで組める単純な構造の胴体に山本さん自身が決定しました。この何次曲面とは、機体の三面図を書くと良く解りますよ。機体の側面図・上面図・正面図から見て全てアール面で構成された胴体を三次曲面で構成された胴体と言います。まずは本機の側面図・・・胴体上部は主翼の後部から尾翼までは直線です。胴体下面は一応アール面も入ってる様に見えますが、貼り込む部材は三角面なので平面貼りです。キャノピーは取り外して成型品を使うので、胴体の構造には加担しません。次に胴体の上面図・・・。此れは胴体の基本なんですが、真上から見た場合左右が同じ曲線の完全対称翼と同じ形状にしなければ成りません。此れは主翼の揚力と同じ原理だと思って下さい。左右に同じ湾曲度合いって事は、両翼のスパン方向翼端側に向かって揚力が発生します。よってどんな形状であろうとも、左右は対称の曲線を有する胴体を組まないと、飛行中に思わぬクセが出てしまいます。

● 最後に正面図・・・胴体を正面から見ると、アールを有するなら左右が対称に成っていなければクセが出ます。此れがどの図でも曲線を有していれば三次曲面の胴体と言う事に成ります。三次曲面を有した物体の代表格は球体です。どの方向から見ても直線が有りません。指向性を持った球状の物体なら鶏の卵でしょうね。どの方向から見ても直線は有りませんが、一つの方向は楕円形に成っています。この形状をバルサのシートで表現すると、内部構造体の細分化が難しくなるので・・・アンタレスの場合は、二次曲面までで構成した胴体にした!って記載が為されています。グラス製の胴体って三次曲面でしょ?・・・。此れと同じ曲面をバルサの構造体で作るのが難しいからオス型メス型を使って、グラスシートを積層するんです。山本さんのヴェガⅠ型(No-11)は、三次曲面を有するフォルムですけど、ヴェガⅡ型(No-13)・ヴェガⅢ型(No-14)は二次曲面までの胴体で構成されています。山本さんのアンドロメダシリーズの大型ソアラーの胴体も二次曲面までで構成されていますが、市販のグラス胴体機とは遜色ない仕上がりです。
  
● サーボマウント兼用の機械式ミキシングユニットのベース板を作ります。画像に見える用紙ですが、福島除染中三年目・・・いよいよ福島盆地内最後の大口現場である福島駅周辺の住宅地の除染に突入しました。で!専用の私だけの通勤車両も譲ってもらえたので、動きがかなり自由に成り・・・ラジコンは出来ませんが紙飛行機ならと町中の4号線沿いの大きな文房具店で購入した(芸能工作用紙)です。学年・・・組・・・ひらがなでなまえ・・・とあるので、小学生の図工や算数で使う10mmマスのグラフ用紙です。ケント紙みたいな感じですよ・・・。同じ感じのもっとデカいこの用紙の4倍くらいの印刷用紙は、OK模型の開発部でEZ治具の部品を作るために使ってましたね。と言う事は?・・・一般的では無いので、画材専門店やら本格的な製図用品の専門店なら入手できるかも知れませんよ。この用紙なら・・・大型グライダーの胴体側板の形紙も作れるんじゃないでしょうかねえ・・・。

● このページの上記画像に山本さんの機械式ミキシングユニットが載っていますが、フラッペロンサーボのスライドレールに2mmのピアノ線とカバン社製のパイプを使ったと記載されています。当時ならカバン社の専用パイプは入手可能だったかもしれませんが、さて・・・現在なら其れが可能かどうか不明です。何故日本製のパイプを使わず、舶来のパイプを使ったのか・・・当時は皆目見当が付きませんでした。でも改めて製作記事を読んでいて当時の事情が垣間見えて来ます。多分・・・この2mmのピアノ線にピッタリのパイプが国産品では無かった・・・と言うのが真相でしょうなあ・・・。

● 多分・・・ピアノ線は当時のラジコン機には当たり前の素材ですが、此れにガタ無く且つスムーズにスライドできるパイプが入手不能だった可能性も在ります。ピアノ線が直径2mmとして、ガタ無くスムーズに動くには内径2,1mmという特殊レベルのパイプが必要なんですが、そんなパイプが金属製でも樹脂製でも存在しません。其れが簡単に模型店では購入不可能なんですなあ・・・。特に樹脂製の場合は其の内径の寸法公差にはバラツキが大きく、内径2mmと言っても最大0,3mm程度は大きくなっています。長いパイプなら然程の影響は無くても、短い距離だとこの公差分があだに成ってしまう事も有るんですなあ・・・。其処で山本さんはインチ圏の舶来パイプの寸法公差に賭けたのかも知れませんなあ・・・。

● インチなら5/64というサイズが有るんですが、ミリ換算で約1,98mm・・・。この樹脂製パイプなら寸法公差でもしかしたら0,1mm程度の誤差を含むパイプがあるかもしれません。其処で舶来のパイプを使ったんじゃないでしょうかねえ・・・。このカバン社とは、当時はラジコンヘリコプターのメーカーとして有名でした。ドイツのメーカーなんですが、まだカルト産業やヒロボーがヘリコプターに参入する以前から、ラジコン技術誌の広告に載っていました。多分・・・このカバン社製のパイプとは、テールローターの駆動シャフト用か・・・ピッチコントロール用のリンケージロッドのガイドパイプの可能性もありますね。

● まあ・・・当時なら入手可能かもしれませんが、今の時代には其れすら困難・・・。機械式ミキシングなんか使う方が時代遅れなんですけどね・・・。入手困難だからって諦める必要は無いんですなあ・・・。じゃあ!カーボンシャフトとパイプで良いんじゃない?ってお考えのモデラーさんは、其れをお使い下さい。多分・・・カーボンシャフトの洗礼を浴びる事に成るでしょうなあ・・・。このカーボンシャフト・・・新品の時は滑りも良いんですが、摩耗が始まるとどんどん経たります・・・。よってガタが大きく成るんですなあ・・・。このフラッペロン駆動に何故にピアノ線と硬質樹脂パイプの組み合わせなのか?って所が重要なんですなあ・・・。同じ硬さのシャフトとパイプの場合、傷が入ると摩耗するんですなあ・・・。このスライドレールの場合は、シャフトが金属製・・・パイプが樹脂製なので成立するんですなあ・・・。

● 今回使用するレールはナイロン樹脂製のアングル材を加工します。4本のアングル材でベニヤ製のサーボマウントを保持して、サーボケースとアングル材の隙間を最小限にしてスライドさせる構造で作ります。構造が簡単な割には摩耗が少ないので、充分ユニットの部品として使える事が既に別機種で証明されていますので・・・。サーボを固定するベニヤのマウントと、レールを固定するベニヤのベース板は、元々は同じベニヤから切り出したもの・・・。此れが別のベニヤ同士なら使えない場合も在りますが、厚さが同じなので使う事が出来るんですなあ・・・。画像に見える長方形の孔の抜きベニヤでサーボマウントを作って組み込めば良いんです。
  
● 樹脂のアングル材を加工して、スライドするサーボを保持するレールを作っています。ベニヤ製のユニット用プレートは、胴体側に接着されて構造の補強材と成りますが、先の事を色々と考えて、この樹脂製のアングル材は取り外せる様に組み込みます。画像のレールはプレートの下面側・・・。プレートにディンプル加工を施して皿型のタッピングビスでレールを固定しています。ベニヤプレートは3mmのバカ孔で加工し・・・レール側の孔を2mmとしましたので、2,6mmのタッピングビスをレール側に固定出来ます。このメカプレートに開けたスライドサーボ用の長孔から抜き出たベニヤなんですが、元々がこの面の一部でした。よってベニヤとの厚みは同じです。
  
● 此の抜きベニヤを使ってスライドサーボのマウントを使えば、厚みが同じなので調整が大変楽です。画像で観ても解る様に・・・このスライド型コントロールサーボは三軸に働くガタ(遊び)を極力少なくせねば、その遊びが全て主翼後縁のフラッペロン動翼の遊びとして伝わり・・・フラッターの原因とも成り得てしまいます・・・。この遊びを減らす目的で、山本オリジナルのシャフトとパイプのスライドレールから、樹脂アングルによるレールに変更しました。

● 三軸のガタとはヨーイング軸・ピッチング軸・ローリング軸の発生するリンケージ構造上の遊びです。このフラッペロン操作用のサーボをスムーズにスライドさせるには、レールの配置内に僅かな遊びを作らなければ成りません。この遊びが大き過ぎるとガタと成り・・・遊びが小さ過ぎるとスライドするサーボの動きが渋く成ります。この構造の最大の救いは、サーボケースとレールの材質が似ているという事です。どちらも高熱には弱いのですが、常温の場合どちらも形状を完全に維持できる硬さを持っています。双方とも接する面が滑らかなので、摩擦が殆ど出ません。

● ヨー軸の遊びは、上下のレールの垂直面とサーボケースの両側面の間隔を狭くする事でガタを最小限に出来ます。ピッチ軸の遊びは、サーボを固定している前後のベニヤ製マウントで抑える事が出来・・・ロール軸の遊びは上下4本のレールの垂直面と水平面を適正な間隔にする事で抑える事が出来ます。調整がシビアなんですが・・・其れを少しでも簡素化する目的で、山本さんのメカニカルな構造からこの構造に変更しました。見栄えは若干落ちますが、この構造の方がアナログ機構大好きのラジ馬鹿さんにはエクスタシー満載でしょう・・・。メールでお断り・・・なんか必要無いので、どんどん複製して電気ミキシングしか知らない平成のネット物知り博士に見せびらかして自慢して下さい(笑)・・・。

● 平成ラジコンブームの便乗組と言われるネット物知り博士は、セロテープぐるぐる巻きのスチレン製ラジコン機に、これまたコントロールサーボを幅の広いセロテープで目張りして固定・・・遊びだらけの細いピアノ線でリンケージするので、各動翼は遊びだらけでガッタガタ状態・・・。此れをこんぴ~たあ搭載の送信機で調整する!って行為に出ますが、このリンケージのガタまでを取るこんぴ~たあプログラムは搭載していません。ならば昭和のアナログリンケージの遊びを極限まで減らす細工を施し・・・こんぴ~たあ搭載の送信機で細かく調整した方が確実でしょ?・・・。山本さんの時代でも、氏自身の技術で当時のラジメカを此処まで精度を上げてリンケージしていますので、この複製機でも其れに準ずる構造にしなければ、このアンタレスの複製を完全に行ったとは言えないのです。アウトラインを一切変更せず・・・各モーメントも翼型も変更しなければ、当時の山本さんのアンタレス其のまんまの飛行性能を再現し体感する事が出来ます。アンタレスを自分の飛行技術に合う様に改良するのはその後です。構造が難しくて面倒臭いから手抜きで作るのは、単に性能を落とすだけの改造に過ぎないので、改良した!とは言えません。ネット物知り博士の複製機の改良しました!・・・とは、その意味合いがちょこっと違うんですなあ・・・。
 
● 重心位置より機首側になりますので、このユニットはなるべく構造を大袈裟にして重くする必要が有るんです。よって画像の様にビスだらけのプレートに成っています。プレート自体は既に胴体内部に接着剤でガッチリと固定されています。しかし取り付けた部品は全て外せる構造にしなければ、今度は補強目的の有機溶剤による刷毛塗り塗装が出来なくなります。其の為にスライドサーボ用のレールの固定は、上下で単独して取り付け外しが出来る様にしています。よってビスだらけの大袈裟に見える構造に仕上がりました。

● 本機の様なフォルムは・・・テールヘビーに成り易いので、山本オリジナル機でも機首の先端に重心調整の鉛の塊を標準装備しています。フライングスタビライザーの場合は、どうしても機尾が重くなる傾向なんですが、だからと言って構造を簡素化して軽量にするにも限界が有るんです・・・。よって高価なラジメカを搭載する機首側の胴体の内部構造は、エポキシ溶剤を充填して内部強化を行う事が当たり前に成っているんです。リポバッテリーの衝撃防止の為の最低限のクッションさえも省略して裸搭載して・・・大観峰の斜面に頭からボコンボコンと無茶苦茶な着陸を見せるビジターのネット物知り博士を見る度に、御山の常連さん達はマイバッグの中の小型の消火器を握りしめています・・・。何時でも出動可能体制なので、本来は飛ばしてほしくないんですよねえ・・・神経が休まりませんから・・・。御山を大事にするモデラーさん程、受信機電源にリポバッテリーを使わず旧式のニッカドバッテリーを使います。スロープ大会において、機体側のリポバッテリーの使用はご遠慮下さいの一文は、発火し易いリポバッテリーは発火した場合は山火事も視野に入れなければ成りません。主催する側としては、責任が持てないので使用を制限するんですなあ・・・。其の辺の事情がネット物知り博士には理解できない様ですなあ・・・。まあ、普段は河川敷の広場で遊んでますしねえ・・・。発火しても大勢で消火作業出来るんでしょうけど・・・スロープの場合は、墜落現場まで行くのが難儀ですしねえ・・・発火して逃げ遅れたら持ち主さんの代わりにお山の守り神として伝説化される場合も在りますし・・・。
  
● 本機の胴体下部のプランク中です。中央画像の山本さんの製作記事によれば・・・区間毎に左右から貼り込むのではなく、どちらか一方を全面貼り込んでから成型し、もう片面を貼り込む手順です。本来・・・自作機を作る場合、同じ手順だと必ずどちらかに床面キール材がズレて接着されます。多分・・・昭和のダイカットのキットでも平成以降のレーザーキットでも同じ不具合が出ると予想します。この原因は・・・大概、胴体左右のアール面が歪んでいる場合が多いです。よってキール材も歪みます・・・。この状態で画像の面のプランクを行うと、結果的に胴体下部のキールの先端がズレて波打つ事に成ります。

● この不具合を防ぐ意味も込めて、今回胴体の組み立て治具を使った訳ですが・・・。胴体の中心軸を正確に出したい場合は、紹介した胴体のセンター出しの治具を自前で作るか、この左右の側板の寸法と形状をキッチリ左右対称にするかで解決します。平成・令和のレーザーキットをお持ちのモデラーさんでも、昭和の遺物であるダイカットのキットをお持ちのモデラーでも、または自作のモデラーさんでも・・・二枚側板構造の場合はキッチリと左右側板の寸法を合わせて、胴体後部から組み立てましょう。
 
● 当工房が組んでいる山本さん設計のアンタレスの構造は、一条さんのガルモデルのグライダーキットと胴体の内部構造が似ています。ただ・・・一条さんなら、山本さんのアンタレスをキット化した場合・・・もっと構造の強化をする必要があると思うでしょうから、もちっと頑強な胴体の内部構造と成るでしょう。今回、当工房の私的な改造例としてスライドレールを組み込んだメカプレートを、胴体の形状に合わせて側板に接着しましたが・・・多分、一条さんが設計したとしても同じ様な構造体にするだろうと思います。こうしないと・・・極端に肉抜きされた胴枠の補強が出来ないからです。

● 山本さんは自分の操縦技術に合わせてアンタレスの構造を作りました。同じ構造体で初心者さんが飛ばした場合・・・着陸時においてその着地の仕方によっては機体を壊すかもしれません・・・。実機も模型機も離陸時と飛行中は、操縦桿の余計な操作をしなければ其れなりに勝手に飛ぶんですが、この着陸の時だけはベテランさんと初心者さんのレベルの違いがはっきりと出て来ます。

● 本機には初心者さんには扱い難いフラップと、其れに連動したフラップの状態差で作動するスポイラーが装備されています。何とか飛行は出来ましたが、其れでもう神経はズタボロ状態ってのが、やっとエルロン機を飛ばせる様に成ったモデラーさんの今のレベルです。このフラップと連動したスポイラーが作動する状態になると、機体速度が目に見えて減速します。何処で作動させるかにも寄りますが、機体の減速が始まると途端に高度も大きく失います。馬鹿にされたくないとかなり背伸びしたフルスパンのレーシングを持ち込んだ、スロープ初入山の初心者さんの着陸は、投げた瞬間の機体の挙動に既にパニック状態・・・。何とか一周場周飛行を終えて着陸進入開始・・・。え?・・・まだ最終旋回の前からバタフライを作動させてしまったので、機体が急減速・・・。スピードが落ちれば自分にも降ろせると勘違いして方向定まらず・・・。結局スパイラル降下に陥り、斜面の深い谷底に墜落してしまいました。一緒に持参したQRPのロッキーと同じ感覚で、高価な舶来レーシングを投げた結果が此れです・・・。落ちたレーシングは見るも無残なバラバラ状態・・・。この辺が初心者さんのレーシングの操縦感覚を甘く見ている原因でもあるんですなあ・・・。

● ロッキーはフラットボトム系のゲッチンゲン翼なので、浮きはレーシングも敵わないです・・・。よって走らせるにはエレベータのダウン操作が必要です。一方レーシングの翼型は、極薄の半対称翼なので、主翼の下面も膨らんでいます。よって下向きの揚力も発生するので、その機体を浮かせるコンディションの風速なら・・・機体は何も操作する事無くどんどん加速します。更にダウン操作を加えると高度も下がりますが、速度も上がります。速度が上がれば更に揚力の増す半対称翼型なので、高度を維持するだけでなく上昇させる事も出来ます。レーシングは初心者さん用の軽量HLGとは、根本的にその仕様が違いますので・・・勘違いしてはいけません。HLGだけなら初心者だってバレて、馬鹿にされるからベテラン仕様のレーシングも持ち込むんでしょうけど、飛ばす自信が無かったら置いとくだけにした方が良いですよ。誰も初心者だって思いませんし、周りはレーシングだらけなので、誰も貴方に自前のレーシングを飛ばして見せろ!・・・なんて強要はしませんから・・・。このアンタレスも同様です。構造自体が軽量HLGと変わらない位にひ弱ですので、QRPのロッキーと同じくらいの強度を持った初心者機ではありません・・・。其の辺りを十分踏まえて製作記事を閲覧して下さい・・・。全備重量が200~300グラムの軽量HLGは、ある意味構造的にはかなり頑丈に出来ています。派手に頭から地面にぶつかっても、ゴム止めの主翼が外れる位で中々飛行不能には成りません。そういう感覚でスペースシャトル素材のレーシングを扱うからバラバラに成るんですよ(笑)・・・。
  
● 胴体下面のプランク中です。アンタレスの後部胴体下面は軽量グライダーと同じ様に平面なので、大変貼りこみ易く作業はどんどん進みます。機首側の胴体下部の仕上がり状態ですが、ソアラー特有のパイロットの搭乗席辺りが一番太く沈みますが、主翼の取り付け位置から徐々に浅く成り・・・主翼後縁辺りに成ると逆アールに成ります。見た目はアールだらけの三次曲面なんですけど、バルサシートの木目を横に貼ると捻る事が出来るので、画像の様な仕上がりに成るんです。軽量HLGの後部胴体だって木目は横向きに貼りこむでしょう?。初心者でもキットを作り続けていれば・・・こんな貼り方も普通に出来る様に成りますよ。平面貼り込みの要領でシートが捻じれているだけですから・・・。
 
● 胴体上面のアール状のプランクを行う前に、スタビライザー用の作動リンケージを組み込まなければ成りません。まずはエレベータサーボを所定の位置にビスで固定し、サーボホーンの高さに合わせて、最初の胴枠付近のロッドパイプの固定位置を探ります。画像ではスライドレールの取り付けの妨げに成らぬ様に、側板の内側に浮かせて固定しています。後部胴体側も胴枠全てに固定できる様に補助版を追加しています。基本的にこのフレキシブルパイプによるリンケージの場合・・・三所締めと呼ばれる三か所固定を使えば、ロッドが何であれ動翼の舵面にバックラッシュ等の遊びは出ません。

● 初心者さんの作ったHLGを見せてもらうと・・・フィルムを貼りこんだ後、胴体内部にパイプを通してサーボ側と胴体側面から出したパイプの二か所を瞬間接着剤で固定しています。誰がそんな手抜きを教えたのか?・・・それとも、キットの説明文を読み飛ばしたのか?・・・。二箇所のみの固定だと、胴体内部のパイプもピアノ線ロッドも宙ぶらりん状態です。よってサーボがニュートラル状態でも、舵面を持って動かすと平気で動いてしまいます。此れって胴体内部でパイプも金属ロッドも逃げ場が無いので湾曲して逃げているからです。しかし・・・三か所固定の場合は、逃げる場所が完全になくなるので舵面を持っても動翼の遊びは殆ど無く成ります。
 
● 本機の場合・・・このリンケージロッドは垂直尾翼と胴体内部に跨って内蔵されます。山本さんのアンタレスはこのリンケージが羽目殺し状態なので、経年変化によってアジャスターピンが折れた場合は胴体下部を破らなければなりません。本機の場合はこの区間のみをハッチにしますので、アジャスターピンの破損の場合は交換が出来る様に変更します。其の為には、画像に見える直前の胴枠の長孔部分のパイプは固定出来ないんです・・・。最初に三所締めの説明をしましたが、この直前のパイプを固定しないと遊びが出そうですけど、其の為に胴枠四箇所にパイプを固定しました。

● ガイドパイプは外径3mm・・・内径2mmです。IM産業のノイズレスパイプなんですが、購入したのは平成15年ですから未だに同製品が在るかどうかも解りません。主な使用目的は、受信機側のコード式アンテナを胴体内部に這わせる時のガイドパイプですかねえ・・・。他にも用途は有るんでしょうけど、5本セットで数百円だったので10パック程購入してあった工房内在庫品です。このパイプにテトラの1200mmもあるPAフレキの中芯であるピアノ線ロッド(直径1,6mm)を通して組み込みました。アジャスターホーン用のねじ部分が溶接してあるので、セットの値段は高価ですけど自分でやるよりも確実性は有りますね。よって指向性のある太いピアノ線なのでこういった使い方も可能です。

● どうやって取り付けたんですか?・・・。画像では後からの作業でしょう?・・・こんな狭い所に指が入らない・・・。ごもっともですなあ(笑)・・・。でも、ちょこっと頭を使えば良いんですなあ・・・。マイナスドライバーをアジャスターアームに差し込んで捻ってやれば、ピンは相方から抜けますよ。間隔が開いたらクランクホーンの孔に差し込めば良いんですなあ・・・。実はこのテトラのアジャスターピン・・・。ぴったりハマってガタが粗皆無なのは、サンワのサーボホーンです。JRの場合はサーボホーン側の孔が小さいので孔を開け直さないと入りません・・・。今回、少々慌てましたなあ・・・。あれ?・・・何処のサーボホーンを千切ってクランクに埋めたんだっけ・・・。もしJRだったら胴体の側板に孔を開けないと作業出来ないぞ。慌てましたなあ・・・。急いでゴミ袋の中を漁ってやっと見つけたサーボホーンの残骸・・・。其れと各メーカーのサーボホーンを見比べて、サンワのホーンだったので一安心・・・やれやれ・・・。後は付属の抜け止め用のシリコンゴムを、マイナスドライバーでズラして完了です。

● 本来ならば・・・組み込む前にキチンとパーツを準備してから作業すれば、今回みたいな緊張状態に晒されなくても済みました・・・。でもですなあ・・・既にJRプロポ(日本遠隔制御)は倒産して廃業したので、何故にJRのサーボなんか使って記事を書いてんの?って思われた方も多いのでは・・・。実はJRは廃業したんですが、其れまでこのJRプロポを愛したモデラー諸氏の為にと、代替わりのサービスショップが存在しているとの事・・・。よって今後の同社の新製品は望めませんが、現行機種のメンテナンスはこの会社が行うとの事・・・。だったらまだJRのサーボを使っても問題は無いんですよ。世の中の殆どのモデラーさんが2,4ギガヘルツ帯のプロポに移行したので、72メガヘルツ帯の空物ラジコンのバンドがより安全に使用できる様に成りました。ラジコンプロポの電波到達最大距離は1500メートル前後と言われてきました。要するに・・・お山の頂上にいる限り、そのエリアしか無かったらその他のエリアも存在しないので、バンドのガッチャントラブルは起きない事に成ります。誰かが意図的に同電波を入れて嫌がらせでもしない限り(笑)・・・。元々・・・JRプロポはサンワから分家したメーカーです。聞いた話では意見の違いが原因とも言われてますけど、モデラー自身にはどうでも良い世界です。まあ・・・昭和50年代の一時代の模型業界は、このメーカーが牽引してましたもんねえ・・・。無駄なデザインの無い送信機が当時の主流だったんですが、JRプロポの送信機は当時としては近未来型・・・如何にも実機のコクピットを思わせるデザインが、多くのモデラーを魅了しました。サーボの出力軸がギヤみたいなギザ山に成ったので、細かい調整が可能に成ったんですが、最初に其れをやったのもJRプロポだった気がします・・・。
 
● アンタレスの胴体を機首側から見るとこういうデザインなんですなあ・・・。全体的なフォルムは地上待機中も飛行中も見劣りしない近代グライダーに見えるんですがねえ・・・。構造的にはクラシカルな形状と近代のソアラーが融合した様な形です。ジャンルとしてはアクロバットグライダーに成るので、(Lo-100)や(FOX)みたいな機種に分類されるでしょう。要するに・・・実機で存在しても遜色ないデザインです。床がV字なのでパイロットは粗寝そべる感じで搭乗でしょうなあ・・・。ファントムのパイロットが昔言ってたんですが、例えば偵察任務中の飛行においては、椅子に座る感じよりも、深く寝そべる感じのコクピットの方が疲れないそうです。成る程!・・・解り易い例を挙げると・・・同じ時速200キロを超えるスピードで走行するクルマなら、ワゴンタイプよりもフォーミュラー・レーシングカーみたいな座り方の方が疲れないって事ですな。
  
● 主翼後縁側の補助胴枠です。胴体に傾斜させて取り付けるので、アール面は斜めに削らなければ成りません。よって削る前の胴体のプランクシートに隠れる胴枠の寸法で形紙を作りました。削り過ぎない様に木口をマジックで塗り潰し・・・後部が僅かにマジックの線が残る程度まで削ります。実は・・・こういった斜めに切り抜く能力をレーザーカットのマシーンは持っていません。レーザーカットにすればバルサキットは完璧だ!・・・って平成のラジコンブームの最中にネット物知り博士が断言してましたが、この加工・・・昭和のダイカット打ち抜きマシンにも不可能でした(笑)・・・。どんなに技術が進歩したって、人間の指には敵わない事も有るんですよ。
 
● この胴枠は20度以上傾くので、其れに合わせて2mmバルサでボックス型の治具を作りました。大袈裟に見えますが、そうでも無いんですよねえ・・・。このクラスのグライダーの胴体で、ワンピースの主翼を胴体に取り付ける場合、この傾斜角が一番主翼の取り付けには楽ですよ。胴体に貫通する竹棒を刺して主翼をパンツの平ゴムで縛り付ける時も、この傾斜角は当たり前にキットに使われてきました。まだテトラ(丹菊モデル)に社名変更する前の、ヒノデ電工の時代に発売された初期型のロビンにも使われていた傾斜角です。ソアラー系のスケールグライダーっぽいデザインのロビンにピッタリとハマった良いデザインでしたね。このボックス治具は、胴枠取付後は横にスライドさせれば簡単に抜けますし・・・。要するに、別機種の自作グライダーにも使える様に幅を少し大きく作ってあります。

● まだ主翼も完成していないのに、もう・・・アンタレスの胴体を使った次回の自作グライダーのデザイン構想も出来上がりました(笑)・・・。アンタレスはⅠ型表記に成っていますが、その後のⅡ型以降のアンタレスは、ラジコン技術誌購読を続けましたが見た事は有りません。多分・・・山本さん自身にも構想は有ったと思いますが、私も同じような構想が既に出来上がってしまいました。世の中に存在するメーカーのラジコングライダーのキットや、個人が作る自作のグライダーには、造った本人のコンセプトが必ず存在します。そのコンセプトを見抜く事が出来れば、訳の分からない改良と称した私的な改造はしない筈です。嘗ての平成のラジブーム中は、何とかして自分のホームページやブログの閲覧者数を上げる為に、手っ取り早く有名人を目論む、初心者モデラー諸氏の危ない改造例が多くネット上に溢れていましたね。

● 見るも無残な改造度合い・・・。此れじゃ~性能落ちるだろう・・・的な独り言を多くのモデラー諸氏は思われた筈・・・。ショルダー系のグライダーを自作する場合、主翼をフラットボトム翼にして、機首には3セルのブラシレスモーターを搭載・・・。フラットボトム翼なんだから、揚力は主翼の上面にしか発生しません。よって高出力で推力線のダウンスラスト設定を入れなければ、機体はぐんぐん上昇するんですけど、モーターがフルパワー状態なら機首を上に向けたまま上昇を続け、中々水平飛行に成りません。よってエレベータのダウントリムで調整しても機首上げが止まらないので、スティックもダウン・・・此れでやっと水平飛行します。問題は此処から・・・トリムはダウン一杯なので、モーターを切ってカッコ良く水平飛行に移れると思っていたら急降下・・・。慌ててエレベータアップで補正・・・。高度が下がったので再びパワーオン!・・・今度は機首上げが止まりません・・・。ネット物知り博士のモデラーさんは、最後までその原因が解りませんでした・・・。博士の筈なのに・・・。

● 大御所モデラーさんが、モーターのダウンスラストを5度位付けてみろ!ってアドバイスしたんですが、プロペラが下を向くのはカッコ悪いです。別の方法を探します・・・だそうです。簡単なお話・・・ダウンスラストの意味も解っていないネット物知り博士さんですからね・・・。其れ以上の事を大御所さんは言いませんでした。まあ・・・何年後か何十年後には理解するだろう…との事。其れまでは暗闇の黒猫探し・・・。最初から主翼に迎角を2度近く付けて胴体を設計していれば、飛行中の主翼は自身で一番空気抵抗に成らない姿勢に移行するので、機首は自然と下を向きます。要するに・・・主翼の迎角分が其のまま推力線のダウンスラストに成るんですから、どうしようもない機首上げの現象は起き難いんですけどね。まあ・・・博士の機体なら2セルで充分なんですけどねえ・・・。カッコ良くスピードに乗った飛行を夢見たんでしょうけど、知識の無さが招いた自爆って所でしょうか・・・。プロペラの下向きが嫌なら・・・別の言い方をすれば、弱性でも良いからフラットボトムじゃなくて半対称翼にすれば良かったのになあ・・・って思うんですけど・・・。どんな機種でもノーズ先端にモーターを付ければ高性能機に変身するって思い込んでる博士さんなんだもの・・・。真の博士に成れるその日まで、黒猫探し・・・続けて下さい。高速飛行できるモーターグライダーに、フラットボトム翼なんか使うスピード狂なんかいませんしねえ・・・。半対称翼は翼の下面も上面程では無いですけど膨らんでいます。よって下向きの揚力も発生します。此れならダウンスラストを入れる必要は無いかも知れませんね。何セル積むかにも寄るんですけど・・・。(Part-7に続く)