✈ Early-Bird Ⅲ型 (フライキャッチャー165・工房オリジナル機) Part-2
 
● バルサキットに挑戦した初心者さんからの質問なんですが、上反角の入った主翼のプランクシートが、中央で綺麗に沿わないけどどうしたら好いの?・・・だそうです。此れは三次元立体空間を創造した神様がやった事ですので、初心者モデラーさんが失敗するのは当たり前です。バルサキットには、そんな神様の啓示なんか記載しませんし・・・。

● フラットボトム翼の場合・・・翼の下面は平らです。よって、この平らな面に翼リブが垂直に立ってれば、プランクシートは画像みたいにカーブを描いて凹みません。此れは誰でも知ってますよ。ところが上反角が付くって事は、中央のリブは翼端側に傾くってことなので、プランクシートは湾曲してリブの形状に合わせて凹みます。因みに、ガル翼のアウターウィングの場合は下半角設定に成るので、今度は翼型に沿って湾曲して凸ります。

● 本機の場合の中央翼は上反角設定ですので、画像の様に湾曲して凹むんですが・・・此れを綺麗に成形するなら、左右の翼を繋ぐ前にプランクシートを被せて仮止めし・・・サンドホルダーでリブ面に沿ってプランクシートの端を削れば良いですよ。左右の翼を上反角設定で結束してからプランクシートを被せれば、元々成形して有るのでピッタリと沿わせる事が出来ます。メーカーの皆さんへ・・・こういった裏技的な工作手順も背伸びした初心者さんが確実に居るので・・・記載しておいた方が良いです。
 
● 画像はインナーウィングを左右繋ぐ為のベニヤのカンザシです。厚さが2mmあります。このカンザシにはピアノ線を埋め込みます。模型店で購入出来るロッドアジャスターのセットは、金属製のねじ切りロッド棒の先に樹脂製のアジャスターが付属しています。このアジャスターを必要分の長さで切って、このカンザシの溝にエポキシを使って埋め込みます。

● まずカンザシ板のどちらかの面にセロテープを貼って溝の底を作ります。この溝の中にエポキシを練り込み、その中にロッド棒を埋め込みます。はみ出したエポキシも、ヘラで綺麗に塗り広げてその上からセロテープを貼り込みます。このエポキシは化学反応で硬化しますので、目張り状態でも大丈夫です。余ったエポキシが硬化したら、カンザシ側も硬化しています。このセロテープの粘着質は・・・エポキシの溶剤とは融着しませんので、綺麗に剥がれます。最後にエポキシが硬化してガチガチに成ったら、サンドホルダーで削って段差を取りましょう。
 
● カンザシを取り付ける時は、細刃の鋸でリブ二枚分を跨ぐ幅2mmを切り取ります。この切り木口は少々ささくれていても良いですよ。ただし・・・カンザシの接着に、瞬間接着剤は使わないで下さいね。必ずエポキシを使いましょう。瞬間接着剤は作業性は大変良いのですが、衝撃には大変弱いです。飛行中の衝撃で外れてしまったら、修理の為には綺麗に貼り込んだフィルムを捲り・・・プランク材を切り取り・・・って具合の修復が出来ない位の複雑な本機の繋ぎ目です。確実にエポキシを使ってガッチリ固定しましょう。本機の主翼を1650mmのワンピース翼にしたのはその為です。

● 平成のラジコンブームが、航空法改正に伴い制限が掛けられる数年前の事・・・。もうブログ上ではネタ切れなのか、管理人さんが新しいモノ・・・高価で一般モデラ―にはおいそれと手が出せないモノ等、次々に掲載するんだが・・・とにかくコメント欄が空白のまま次の記事へ・・・ってのが頻発する中、当工房のあーりーさんⅠ型を複製したモデラーさんが、ガル翼の主翼を四分割にして記事を書いていた。四分割の主翼って事は、カンザシ結合が三か所・・・。軽量化の為にカーボンシャフトを採用!ってやってたんだが、この分割型主翼は確実に分解結合の為のユニットが増える分、ワンピースの主翼よりも重く成ります。此れを軽くする為には、主翼の構造自体から軽減せねばなりません。

● このあーりーさんⅠ型は、ノーバラスト対応機と言いまして・・・その時代に存在するあらゆるメカをチョイスして、ノーバラストで重心が合う様に設計されています。よって主翼はなるべく分解しない構造で構成してあります。其れを分解式にして、更にモーター積んでグランド機に・・・って、重さが1㎏近くに成ったら・・・そら浮きません。本来は600グラム前後の全備重量で、風速0メートルの落差の大きいスロープなら、サーマル上昇風だけでも飛ばせた機体を・・・何故に重くする必要が有ったのか・・・。改良したつもりが、単なる性能を落とす改造にしか成らないんだから、あんまり意味が無い訳ですよ。いよいよコンテンツが切れた果ての魔改造は・・・誰も真似しませんのでコメントのしようがない訳で・・・。其れが多くのモデラーに浸透していたラジコンブームの末期・・・。ブログのサービスが終わると共に、ブームに便乗したモデラーさんの俄かラジコンブログも消え去りました・・・。
 
● アウターウィング・・・エルロンサーボの搭載スペースを作ります。本機はリブキャップを付けるので、この補強用のサブリブは翼型と同じ寸法で、リブ間の内側に貼り込みます。楕円の孔はリードハーネス用です。サーボモーターの許容の厚みは12mm前後までなので、ウェイポイント(台湾製)の(W-150)辺りまでなら搭載可能です。
 
● 本機のエルロンサーボは、ハッチ側にマウントを組んで主翼に取り付ける為、ビス止め用の台座を作ります。画像では既に上面側のプランクが済んだ状態で台座が組み込まれていますが・・・。作業工程は先にビス止め用の台座をリブの四隅に貼り込んで、翼の上面から補強の角材がはみ出ている時は、翼型に沿って削ってからプランクシートを貼り込みます。作業手順としては、此方の方が楽だと思います。
 
● 本機のインナーウィングとアウターウィングの結合に伴う下半角設定のスペーサーリブを作ります。通常のスケール機のガル翼は、胴体側板の一番広い部分に設定されているので中翼機扱いに成るんですが・・・。本機アーリーバードは、胴体の上部・・・ショルダー(肩)の位置にインナーウィングが取り付きます。よって、外翼で上反角を入れるか・・・上反角無しの0度設定にするか・・・このテーパー角度のスペーサーリブで全てが決定します。

● 加工の仕方ですが・・・後縁側の薄い方をリブの下面として翼型に削ると、翼の上面は立体上で前縁から後縁まで厚みが変わって行きます。しかし、此れは・・・見た目の厚みの変化であり、基本的には削りを入れる前の断面がテーパー角度の部材の角度の変化はありません。この状態のままインナーウィングとアウターウィングの結合木口に貼り込めば、外翼の上反角設定が決まります。

● 基本的に・・・アウターウィングで上反角無しの0度設定にしたいのであれば、このスペーサーリブ二枚分の角度を、インナーウィングの片翼分の上反角設定にすれば上反角無しの主翼が組み上がります。もし・・・外翼で2度の上反角が欲しい場合は、インナーウィングのベニヤカンザシの片翼分の上反角に2度分を加算して、部材を切り出せば良いです。

●  ガル翼の上反角設定なんですが、ガルモデルの数あるガル翼のスケール機全て、外翼(アウターウィング)に2度の上反角が付けて有りました。実機の場合は上反角がありません。この設定は、操縦する側のレベルの範囲を広げ・・・中級者から上級者まで楽しめる様にしてありました。当工房のアーリバードは、中翼設定のスケール感よりも安定性を重視したので、ショルダー設定で設計しています。中翼のスケールグライダーよりもカッコ悪いですが・・・自律安定性はスケール機よりも遥かに優れているので、大変飛ばし易く成っています。

● ガル翼グライダーの利点なんですが、通常ストレートの主翼を持ったグライダー同様に、深いバンク角の旋回をするとアウターウィングは大きく傾きますが、360度以上の旋回を続けても高度を失わないという特徴が有ります。アウターウィングに比べ・・・インナーウィングのバンク角は浅くなる訳で、深いバンク角で在りながら翼型から作用する揚力の増大で、高度を下げずに水平旋回を何週でも続けられる訳です。ナチス全盛の時代・・・音も無く優雅に飛ぶ、この軍用グライダーは・・・はるか上空を旋回する姿は、連合軍から見れば鳥がクルリと廻っている様にしか見えない訳でして・・・。そういう野鳥に擬態できる隠密行動に、抜群の能力を発揮できたのだと思いますよ。
 
● スペーサーを貼り込む時は、プランクシートも全て貼り終えた状態となります。使用する接着剤はエポキシです。プランクシートの木口も覆う形で貼り込みましょう。このスペーサーは、インナーウィング・アウターウィングの両面に、其々一枚ずつ貼り込みます。此れを全て繋いでしまうと、オーナーさんに送る際・・・大型貨物便に成ってしまうので、敢えて3ピース翼で発送しました。
          
● 便宜上・・・胴体に組み込んでの説明なんですが、実際は定盤の上に主翼だけを固定して片翼ずつ接着します。結合面の翼型は、インナーアウターどちらも同じです。画像の様にクリップ二つでリブを挟み、エポキシを塗り込んで圧着します。両面とも完全なる平面で仕上がっていれば、隙間が出る事はありません。
 
● インナーウィングは結合する前に、パイロットのヘッドレストになる部分を予め作っておきます。Ⅰ型(初号機)は基本四角胴体・・・Ⅲ型(後期型)は六角胴体ですが、このヘッドレストの工作法はどちらも共通です。Ⅲ型機は色んな特別仕様が有りますが、このⅢ型の別仕様機は、新たにヘッドレストの部材を貼り込んでからカンザシで繋ぐ構造ですが・・・。Ⅲ型の初号機ではインナーウィングの結合後、プランクシートの上から部材を貼り込みヘッドレストを作りました。
          
● 画像でも解る様に・・・主翼の前縁側は円形、後縁側は六角形の為フィレットの構造が違います。更に主翼の胴体への固定は、前縁側がダボピン・・・後縁側はビス止めなので、少々構造が複雑なんですが根気の要る作業です。フィレットのプランクにも若干特殊な削り込みが必要なので、それ等の作業が面倒臭いと思ったモデラーには、組立てられないかも知れませんね(笑)・・・。
 
● スチレン製のキールフレーム材を切り取ります。キールフレームは組み立てる前に大きく肉抜きしているので、カッターナイフを軽く添えるだけで簡単に切れます。後は軽くサンドホルダーで仕上げます。この後縁側のスチレン製の胴枠には大きな荷重が掛かるので、主翼のビス止め台座を組み込んで補強します。バルサとベニヤで構成された胴体内部の頑丈な構造体にビス止めの台座を組み込むのではなく、ひ弱な構造体にその構造体を維持出来る強度が有れば良いので、画像のビス止め台座はオールバルサとPVC樹脂で良いのです。よって馬鹿みたいな重さの台座には成りません。

● PVC樹脂の角材をビス止め用の長ナットとして使うんですが・・・、金属のビスには金属のナットが通常なんですが、同等の締め具合を実現するなら、厚めのナイロン材に長めのビス孔を作れば良いのですよ。ビスは頭から先端まで全ネジを切って有りますので、長いネジ穴にしてやれば・・・其れがナイロンだろうが木材だろうが、締め込んだ時の強度は金属ナットと大差無いんです。
 
● 主翼の後縁側のビス止めは、このフィレットの内部でビス止めが始まります。よって画像の様なガイドパイプが無いと、フィレットの構造体の内部にこぼれてしまうと取り出しが難しく成ります。ガイドパイプが有ると、パイプの中心にビス孔が有るのでこぼれてしまう心配がありません。ガイドパイプの内径は、3mmビスのナベ頭よりも僅かに大きいのでスムーズに納める事が出来ます。尚!・・・主翼の下面側にビスを刺した状態で、ゴム製のブッシュ(ゴム製のOリング)を入れておくと、ビスを完全に緩めても、主翼から外れて紛失する事もありません。
 
● 主翼前縁側のピンダボと胴体側のピン受けを組み込みます。まずは一番奥の三角材を前縁側に画像の様に貼り込んで、平面の状態に戻します。その上にPVC樹脂材の横に有る2mmのベニヤをエポキシで貼り込みます。この部材は必ずエポキシを使って下さいね。瞬間接着剤は飛行中でも大きな荷重と、天気の状態の悪化による湿度の上昇時は、外れる危険性があります。瞬間接着剤は溶剤の化学反応で、高温状態に成りながら水分蒸発で硬化します。よって湿気による大気中の水分が高まると、荷重の掛かる箇所は外れやすく成ります。
 
● 角型のピンダボを受けるベニヤを前縁側のスチレン胴枠に貼り込みますが、瞬間接着剤は使えません。強度が必要なのでセメダインかエポキシを使います。この際・・・スチレン側をサンドペーパーで荒らしておくと接着力が増します。しかし・・・此れで完成じゃ無いですよ。このままではフィルムが貼り込めませんので、ピン受けのベニヤパネルの周囲にも貼り込みを行います。
          
● コクピット後方にピンダボ受けのベニヤが見えますが、周囲は同じ厚さの2mmのバルサを貼り込んでいます。此れで見た目・・・スチレン材は全てバルサで覆った事に成りますので、被覆はフィルムに限らず紙張り(模型専用の和紙)や絹張りも可能に成りました。このⅢ型は何れバルサキットに成るんですが、そのキット内容は部品関係も構造も一部変更に成ります。此方の仕様はこれまで通りのカスタム仕様です。オーナーさんの要望通り・・・全体的なサイズは変わりませんが、内容が色々と変化するでしょう。

● 画像中のクリップで挟んでいる部分は、発送する際分解が必要なので接着してありません。接着する際は記事中で述べた様に翼型同士のベタ貼りです。ただし・・・其れだけでは強度不足ですので、継ぎ目の両側は幅広のリブキャップを使っていますが、このキャップ面に沿って広範囲にマイクログラスを塗布する補強を行います。(Part-3に続く)