VEGA-Ⅱ型(No-13) 山本昇氏のオリジナル設計機 Part-2
          
● ヴェガⅡ型の原寸図面の作成中です。胴体の全長が禁断の1350mm・・・。ヴェガシリーズでは最大級ですなあ・・・。ただですなあ・・・主翼の幅が1220mmしか無いんですなあ・・・。だから何処となく近代ジェット戦闘機のモーメントデータと被るんですよねえ・・・。よってガチンコ無動力設定のスロープグライダー(YF-22 ライトニングⅡ)も飛びが約束されるんですなあ・・・。

● 記事を書く度に起きるメールによる嫌がらせ・・・誹謗中傷・・・切なる悩み・・・飛行機製作の依頼・・・と様々な要望が届きます。まあ・・・今回みたいな原寸大図面の作成に関しても、普通に当たり前に質問が来たりしてます。メールの内容としては、全長1メートルを遥かに超える胴体の設計をする時に、どうやったらアールを含むラインが引けるのか?・・・。って類が一番多いんですなあ・・・。市販されている30センチの雲形セットを、私のアナログ作図法を利用して二倍に拡大し同じ物を作ったモデラーさんが、胴体全長が1500mmのグライダーを自作する場合・・・拡大して全長60センチに成った雲形定規で描こうとしたけど寸法的に足らないとの事・・・。

● 実機ならいざ知らず・・・模型飛行機ってのは、ある意味自由設定なんですなあ・・・。F3Aのスタント機の胴体のライン・・・半分以上は直線ですねん。あ!知らなかったですか~・・・。まあ・・・平たく言うと、飛行機の胴体の基本構造ってのは、上面から見たら左右対称にしないと、ヨーィング軸にクセが出てしまうんですなあ・・・。だから胴体の中心線を基準に、胴枠自体が左右対称になってます。こういった知識は誰でもご存知ですわねえ?・・・。でも・・・バルサキットの胴体にしかり・・・自作を極めたモデラーさんの自由設定の飛行機ってのは、なるべく構造を簡単にしたいので胴体に直線のラインを入れてます。その方が治具に拘束するのも楽でしょ(笑)・・・。

● さて・・・どうやったら、直線とアールの混在したラインがスムーズに引けるのか・・・。そら!極々簡単なんですなあ・・・。雲形定規は周囲の全てを色んなアールのラインで構成する必要は無いんです・・・。画像は自作の全長800mmで仕上げたデルタ翼機のリブ型なんですが、作図する時に・・・全てのラインを緩やかなアール面にするのが面倒臭く成って、リブの後縁側の40%を直線で作図してあります。ネットの博士にはどう映るかなあ・・・如何にも手抜きの翼型っぽく映ってるかな?・・・。エアフォイルの翼型集にある数々の翼型には、作図すると・・・あれ?・・・ってな不思議な翼型もあるんですなあ・・・。後縁側の翼型の数値が、均等に小さく成ってるんで、試しに引いてみたら直線で仕上がりました。要するに・・・見本みたいな翼型にも使われてるんですなあ・・・。フラットボトム翼って、翼の下面が直線でしょう?。半対称翼型や完全対称翼型でも一部では使われてるって事ですなあ・・・。其れでボーダーラインの性能は有してる訳で・・・。だから!基本が完全対称の胴体ラインに直線を入れても何ら悪影響は起きない訳ですなあ・・・。左右対称なんだもの・・・。揚力は胴体の左右のアール面に均等に発生するんですなあ・・・。よって、左右対称の胴体なら癖は出ないんですなあ・・・。ネット物知り博士の皆さん・・・ご理解頂けましたかね(笑)・・・。
          
● 胴体の側面形を簡素化する時にも使えるんですよ・・・。この翼型定規と直線定規は、画像の範囲でピタリと一致してます。こうやって使うと拡大した胴体の直線を含むアールのラインを1メートルを越えて引く事が可能なんですなあ・・・。このヴェガのⅡ型は、そのアウトラインをなるべく直線的なラインで構成されています。だから何処となく近代ジェット戦闘機風に仕上がってるんですね。

● 主翼の胴体と接する最大翼弦で700ミリを越えてるんで、此れでも一応デルタ翼に分類されるんですなあ・・・。比率的に見て・・・(F-104=スターファイター)と然程変わらないテーパー形状なんですわねえ・・・。よって主翼の捻じり下げは必要なんですが、構造が単純なので治具に固定すれば簡単に捻じれた状態で仕上がってくれます。こういう形状の主翼は、部分プランク構造でありながら・・・不必要な捻じれが有った場合・・・フィルムを貼って捻じれば良いワ!って思ってたら・・・さあ!捻じるでええええ・・・って時に、捻じってフィルムのシワを取って・・・って、あれ?何で元に戻っちまうんだあ?・・・って結果に・・・。まだまだ修行が足りませんなあ・・・ネット物知り博士(笑)・・・。彼らのブログを閲覧してるけど、コメントしないで観てるだけえええええ・・・の大御所さん達・・・教えてやって下さいよ~・・・。その内腹痛起こしてネット上で暴れ回る前に・・・。ただし、聞く耳持った博士限定ですけどね?・・・。
          
● 実際に・・・拡大すると、如何にこのヴェガⅡ型がデカいか実感しますなあ・・・。サイズ的には昭和の、まだグローエンジンのピストンヘッドにトサカが付いてる時代の、40クラスのF3Aスタント機のサイズみたい・・・。其れが無動力のグライダーだから、機首部分が細いってだけです。実はですなあ・・・今はまだ胴体の側面図だけなので、本来の胴体上下のアール面と平面の境のラインが引けません。

● 他の二機に関しては、詳細な折り込み図面が有るんですが・・・本機に関しては5センチ四方のイラスト三面図しかありません。さらにこのイラストの胴体側面図には、アウトラインのみしか記載してないんですなあ・・・。さて・・・どうしたら境のラインが引けるのか・・・。私は専門の学校なんぞで勉強しておりません・・・実は航空自衛隊の教育課程でも教わっていません。全ては部隊配属後・・・戦闘機の外面パネルが外れた状態で、内部を見て気が着きました・・・。
          
● 航空機は羽目殺しのパネルはリベットで固定してあるので、通常の整備ではその内部を見る事は出来ません。しかし・・・飛行後の定期的な整備をする場合や構造体のクラック(ひび割れ)等を見つける為の、ビス止めされたアクセスパネルが存在しています。このパネルの中を整備員が見渡し・・・不具合が見つかれば各種の配管や配線を取り除き、私達の板金修理班が作業します。よって部品が全て外れると・・・頭ごと・・・もしくは上半身を機体内部に無理矢理ねじこんで?・・・修理をするんですが・・・。

● この時は機体のアウトラインを、リアルタイムで内側から見れる訳で・・・機体の平面部分とアール面の境には、縦通材(ストリング材)が、胴体を前方から後方迄を走っています。模型飛行機で言う所の、3mm角やら5mm角の棒材の事です。要するに・・・このストリング材が何処に取り付けられるかは・・・胴体の幅が決定しないとアール面が決まらないので解りません。よって、胴体側面図に適当にアール面と平面側板パネルの境界のラインを入れてしまうと・・・極端なお話、胴体の上下面で構成されるアール面が波打って完成してしまう最悪な結果と成ります。早い話が・・・胴枠の断面図を作図するには、胴体の上面図の幅を決定してアールを決めないと・・・基準の境界線は入れられないって事ですよ・・・。その胴枠を半丸にするのか・・・楕円にするのか…決めないと成りません・・・。幸いイラスト三面図には正面図が描かれているので、まあ・・・半丸に近いアウトラインなのでアールが決まれば、境界のラインは引けそうですね。
 
● 左はヴェガⅢ型の胴枠断面図・・・右はヴェガⅠ型の断面図です。Ⅲ型は上下ともアール面で構成され1,5mmのバルサシートを湾曲させて貼り込む仕様です。一方・・・Ⅰ型では上面のみシートの湾曲で貼り込み、下面は平面の厚めのシートを貼り込んで角を落とし・・・更に別の平面シートを貼り込んで多角面にしてから、今度は全体をアール面に削って仕上げます。どちらの胴枠にもストリング材のスロット溝が刻まれている訳ですが、図面上の胴体の幅とアールの形状が決まらないと、境界線が引けませんし・・・ストリング材をはめ込む溝が作れないんですなあ・・・。

● この面倒臭さはモデラーが飛行機を自作する時には必ず乗り越えないと成らない試練というか、壁みたいなモンなんですよ。まあ・・・胴体の断面形が内直角の箱型なら、何の苦労も要らない訳ですが・・・最初から此れを狙った簡素化構造のバルサキットの事をプロフィール設定機って呼ぶんですなあ・・・。初心者モデラーさんが、自分のブログでも閲覧者向上の為にやってるでしょう?。一生懸命にCADで図面を書いて・・・箱型の胴体の軽量ハンドランチグライダーを設計して、製作記事書いてるじゃないですか・・・。CADが使えるんなら、胴枠断面がアール状の機体なんか直ぐに作図出来るんだけどなあ・・・。データー打ち込めば、立体の3D画像で飛行機をグルグル廻せるし・・・。全体像を確認しながら流れる様な曲線のグライダーなんか、いとも簡単に描いちゃうでしょ?・・・。何でやらんのかなあ・・・。ちょっと不思議なブログですねん・・・。そっちの方がお褒めの良いね!・・・やらパチパチ・・・は、多いと思うんだが・・・。
          
● 原寸大にしてみると・・・やっぱりデカいですなあ・・・。主翼なんか半分しか図面に収まりませんでした。それにしても・・・水平尾翼のデカい事(笑)・・・。此れでもフライングスタビライザーなんですが・・・。原寸大の水平尾翼は、最大翼弦275mm、最大翼厚8%・・・。22mmしか有りません。まるでレーシングの主翼ですなあ(笑)・・・。
          
● 今回・・・この後部胴体の分割構造に関して、内部的な改造を行いリンケージの簡素化を行います。テールヘビーに成ってしまう危険性も有るんですが、他の構造体の軽減に努めれば失敗工作レベルは免れるでしょう・・・。改良レベルに成るかどうか心配なので・・・上記の表現にしておきます。画像中に尾翼側からロッドアジャスターが見えてますが、このアジャスターの先は右側の胴体内部のサブリンクと結合される筈です・・・。左側にアクセスパネルが設けてありますので、其処でジョイントする構造でしょう・・・。

● この構造は当時のメカとも関連するので、こういったリンケージに成ってる筈です。エレベータのサーボはもっと前方主翼の前縁付近に搭載されていると思うんですが、多分・・・この間接的なリンケージでは摩耗に寄るスタビライザーのガタの原因にも成るでしょう。現在は当時に比べて、サーボ本体も堅牢且つ軽量に成りました。よってヒノキの棒でジョイントのカンザシを作っておられますが、当工房はボックス構造のカンザシに変更の予定です。

● このボックスジョイントにする意味なんですが・・・画像の胴枠のくり抜き具合から、当時ではサーボのサイズで難しかったダイレクトリンケージなんですが、せっかくボックスなんですからミニサーボ位は収まる様な感じがします。間接のリンクを使わないので、ガタや遊びと言ったリンケージの不備が無くなるかもしれません。エル型のホーンを使わずとも・・・テグスワイヤーによる両引きにすれば、アイ型(直線のやじろべえ型のホーン)が使えると思います。このフライングスタビライザーは通常のエレベータ方式の様な上下の舵角を必要としません。サーボに付属するホーンに直接リンケージし・・・倍の長さのアイ型ホーンで連動して舵角が減ったとしても動きは充分です。角度換算で上下に2~3度動くだけでも、機体はシャープな反応を示します。
          
● アウトライン確認用の縮小三面図には水平尾翼胴体側面描き入れた主翼と水平尾翼なんですが、この原寸図面にはまだ記載していません。縮小図面は機体の全体像を把握する為に作成しました。今回の原寸図面は、此処から実寸で部材を取る為に作成しています。よって作図した正確な翼型でないと資料に成らないからです。正式な翼型を作成したら・・・其れを形紙にして胴体側面に書き入れます。よって役目が済めば・・・今度は塩ビ板にトレースして雲形定規としての役目があります。
          
● 当工房のワイルドボアと大きさの比較をしてみました。全長は僅かに長い物の・・・同形状の垂直尾翼は更にデカかったですね。ますますこのⅡ型機の完成が楽しみに成って来ました。胴体の側面積がデカいって事は・・・ナイフエッジ状態を長く維持できますので、スロープのパッシングレースでは最大の威力を発揮できるでしょう。どういう効果なのか・・・レーシング機はパッシングレースには強い機種とされていますが、唯一の欠点が胴体が細い為長時間の意図的なナイフエッジ状態が出来ないのです。・・・此処まで書けば、パッシングレース中のターンにおいての状態には限界が有る!とお解かり頂けたかと(笑)・・・。

● 通常のレースにおいて・・・パイロットは機体の操縦に夢中ですので、ターン位置の正確な把握が出来ません。ターンが近い事を知らせる助手の「用意!・・・。」の合図でその後のタイミングを計る訳ですが、助手の「ターン!・・・。」の合図で、二つの状態をやらないと旋回できません。しかし・・・助手の「用意!・・・。」の合図で、ナイフエッジ状態に移行しておけば、次の「ターン!・・・。」の時は一つの操作で旋回できます。よって、こういったバルサの機体にも少なからず優位な状況を作り出せる結果と成ります。競技のカテゴリーに、バルサ機クラスが存在していれば・・・独壇場かもしれません・・・。
 
● 胴体側面図の下に引いている直線について、質問がありましたのでお答えしましょう・・・。通常は胴体側面図の真ん中位に引いてある推力線なんですが、私も動力機を設計する時はエンジンシャフトの中心を基準に機体の側面の形状を決めて行きます。グライダーでも主翼二分割構造の場合は、主翼の迎角を決める為に胴体の側板に基準線を引いてる訳ですが・・・。このアンダーラインも同じ様な意味があります。

● ただ・・・其れだけじゃ無いんです・・・。こういった中翼設定の機体で、主翼の一部・・・もしくは全部が合体している場合、迎角と胴体を貫通している主翼の左右の上反角を正確に設定する必要があります。このアンダーラインは、治具を置く為の定盤の位置の基準を示しています。定盤から各機体の胴枠の寸法を正確に算出してカイモノを作る為です。上記の機体には既に主翼の迎角2度が着けられた状態なんですが、この状態を維持する為のカイモノを敷いて・・・胴体を固定せねば成りません。

● 胴体が固定出来たら今度は主翼に2度の捻じり下げを着けるんですが、この位置を基準にして翼端を固定する為の拘束治具を作って主翼を捻じりながらプランクを行うと、捻じり下げの着いた主翼が完成します。そういった基準を決める為のアンダーラインなのです。

● 因みに・・・胴体の基準線よりも上部の範囲が広いと、ラダーによる旋回の場合・・・素早い反応でバンクさせ易いと言われています。パイロンの付いたプロペラ式のエアーボートの場合・・・エンジンの推力線を基準に、上部のラダー面積が大きいと水面で綺麗にバンクして旋回できます。飛行機でも同じ事が言えるんですが、軽量ハンドランチグライダーの主翼の上反角設定って、やりすぎじゃねえかって位に上反角を付けてますが・・・。ラダーを切っても自律安定性能が良過ぎて反応が遅れるでしょう・・・。だから各メーカーさんも・・・自作モデラーさんも・・・同じ様な形状のデザインに成ってしまいます。ラダーの取り付け位置って・・・推力線よりもかなり上方に、成ってるでしょう・・・。此れはですねえ・・・自律安定性を良くし過ぎて、必要な時に必要なラダーによる旋回をやり易い様にする為です。だから・・・主翼に馬鹿みたいな強めの上反角なんか要れる必要なんて無いんですよ・・・。

● 安定が良過ぎて・・・大きくラダーを切らないと旋回出来ないでしょう?・・・。此の時の飛行姿勢って、かなりのバンク角に成ってると思うんですが・・・。バンクの角度が大きい程、飛行機の沈下速度は早く成ります。よってクルクル飛行は出来ますけど・・・、長時間滞空は望めません。軽量サーマルグライダーのベテランさんほど、愛機の上反角は少なめです。旋回中にもサーマルを掴むには・・・なるべく機体に深いバンク角度を与えない事です。(Part-3へ続く)