VEGA-Ⅲ型(No-14) 山本昇氏オリジナル設計機 Part-1
 
● 比較的にスロープグライダーでは敬遠される形状のデルタ型無尾翼機です。水平尾翼が無いので無尾翼って言われてるんですが・・・、見えないだけで水平尾翼に相当する場所は存在しています。F-14トムキャットを例に挙げれば大変解り易いんですが、主翼を拡げると水平尾翼の付いた普通の飛行機なんですが、この主翼を後退させると水平尾翼と一体になったデルタ型無尾翼機に変身します。ね?見えないだけで、水平尾翼があるでしょ?(笑)・・・。

● 模型業界の有名な大御所諸氏が書き記された著書が沢山あるんですが、普通の尾翼付きの飛行物体は主翼の平均翼弦の前縁から33%位置に重心が有る!って記載してるんで、其れはモデラーの皆さんご承知でしょうけど・・・。ところが!この無尾翼と呼ばれる水平尾翼が単独で装備されてない飛行物体の場合は、平均翼弦の前縁から25%に重心が有る!の記載で迷ってしまいます。実は見えないだけで・・・水平尾翼はちゃんと有る!ってのが、無尾翼って呼ばれる飛行物体です。平均翼弦の前縁から75%が主翼・・・残りの25%が水平尾翼って扱いです。

● 当工房の記事では再三登場するこの無尾翼機の概念なんですが、主翼をどんどん後退させると重心位置もどんどん後方に下がります。よってノーズモーメントとテールモーメントが胴体全長の半々くらいの位置で重心が吊り合います。ところがテールモーメントが短くなればなるほど飛行機の直進性(ヨー軸)の安定が悪くなるので、水平尾翼と垂直尾翼を大きく設定しないと成りません。ところが此処で問題に成った・・・。主翼は胴体の一番太い所で保持するので強度は確保できる・・・。しかしながら水平尾翼は主翼のスラストラインから外さないと後流をまともに受けて効きが悪くなるので、胴体よりも上に移動した・・・。しかし此処でも問題発生・・・。テールモーメントが短くなった分、水平尾翼の面積が主翼並みに大きくなったけど、垂直尾翼の根元に配置した訳だが果たして強度は充分なのか疑問に成った・・・。

● で!よくよく考えてみた・・・。主翼と一部重なってる水平尾翼って揚力的に無駄じゃん!・・・。こんなデカい水平尾翼じゃ音速出したら強度不足で吹っ飛ぶかもしれないし・・・いっその事一体化すれば良いんじゃねえか?・・・って開発者が考えて誕生したのがこの無尾翼って所じゃないんだろうか・・・。よって主翼後縁に位置する動翼の動きで多くのモデラーが疑問に思ってるでしょ?。この部分を水平尾翼の扱いにすると、エレベータの動きは解るけどエレボンとしてならロール軸の運動法則は主翼のエルロンとは逆に成るのに何故無尾翼機はそうならないのか・・・。此れが主翼のフラッペロンと仮定するなら、ピッチ軸が逆の動きに成るのに・・・って迷うでしょうなあ・・・。じゃあ!どう解決すれば良いのか・・・。単純に言える事は、深く考えなければ良いんですってえ・・・。トムキャットが主翼を拡げた時のロール軸のコントロールは、フラップダウンとスポイラーアップを水平尾翼のエレボンと連動させた相反エルロンを使用し、機敏な運動を実現しています。

● 主翼を後退させてデルタ翼モードに成ると、今度はエレボンのみの動きに切り替わり高速飛行を可能にしています。まあ・・・トムキャットの作戦行動をシュミレートするならば、空母からの発艦時は主翼を転回して高迎角フルパワーで離陸し・・・戦闘空域への移動はデルタモードでアフターバーナー・・・。戦闘地帯の空中戦時は再び主翼を転回して機敏な運動性を確保・・・。戦闘が終わったら敵の追っ手を振り切る為に再びデルタモードで一目散に逃げる・・・。空母に着艦する時は再び主翼を転回してフルフラップダウンで高迎角減速させながら着陸・・・。

● 本機はそういう発想で誕生した機体ではありませんが、空気抵抗を極力減らしたデザインですので・・・強風域ならば向かう所敵無し・・・。でもないかな?・・・。スロープ競技会の名物であるパッシング競技・・・。このコンコルド型の縦に長いデルタ翼機の泣き所・・・ピッチ軸の反応が若干鈍い・・・。よって着陸時の減速中に落とし過ぎると反応が鈍い・・・。よってリカバリーが遅れるので操縦が難しく成ります。よって通常の飛行には細心の注意を払い、ピッチ軸の操作時は先読みをする操作が必要に成るでしょうね。という機体の性格上・・・ラジコン初心者さんにはとってもウケる形状ながら、ラジコン飛行機の入門用とは言えません。巷で売られてるトイラジサイズのデルタ戦闘機のラジコン機・・・初心者さんにも飛ばせます!ってのは嘘っぱちですよ~ん。ただし!デルタ機入門のモデラ―には良いかもね・・・。その違いは覚えておきましょう。しかしこのヴェガは無動力・・・。推進力は意図的なエレベータのダウン操作です。常に谷底に向かって機首を下げつつ機速を上げないと満足に飛ばせません。推進装置の付いたトイラジのデルタ戦闘機とは操縦感覚が違うので、デルタ機入門のモデラーさん用とも言えないかなあ・・・。
 
● こんな飛行見たら・・・初心者モデラーが一発で勘違いするだろうなあ・・・。カッコ良いし、何としても手元に置きたいだろうし・・・お仲間掲示板に画像を掲載すれば、誰も初心者だって馬鹿にはしないだろうし・・・。まあ・・・ね。そういう画像掲載が事故の元だったりするんですなあ・・・。自分で飛ばせなくても作れれば其れだけでも、お仲間掲示板では有名人・・・。ラジコンブーム真っ盛りの時代には・・・大勢飛行場に居ましたよ・・・。「うおおおおおおお!凄いですねえええええ!・・・。」レベルの初心者さん達が・・・。

● 自分では飛ばせないからベテランフライヤーに懇願して飛ばして貰って、ご本人さんはとにかくデジカメでパシャパシャ!・・・。最後は飛行機持ってにっこり笑って・・・。其処からが問題なんだなあ・・・。お仲間掲示板には飛行している画像と自分手持ちの愛機の画像・・・。まるで自分で飛ばしましたよ!って言わんばかりの満面の笑顔・・・。文章は全く無い・・・。此れが彼らのフェイクな手法・・・。画像だけ載せてりゃ、周りが勝手にコメントして行くし・・・何も答えなかったら、周りが勝手に思い込むって寸法・・・。飛行機作れて飛ばせる有名人の出来上がり~・・・。ネット上のフェイクは、手っ取り早く有名人を目論む人物で溢れとる・・・。誰もズブのど素人なんて思わないんだろうなあ・・・。
 
● こういう機首部分の工作のまとめ方ってのが、玄人モデラーさんだって直ぐ解るでしょう・・・。バルサのムク材を貼り込んでるんだろうって思っちゃいますよねえ・・・。其れが素人モデラーさんの見解です(笑)・・・。果たしてそうなんでしょうかねえ・・・。前縁のカーブした造り・・・流れる様なライン・・・。蓋を開けたら(;゚Д゚)するでしょうなあ・・・。
 
● 本機のリブ型は山本さん考察の自作翼型です。無尾翼機の場合は、テールモーメント・アームが短いので風圧中心の移動の少ない翼型が理想なんですなあ・・・。よってエアロフォイル(翼型)の本に該当する翼型が見つからなかったので、自分で自作した!・・・のだそうです。最大矢高2%・最大矢高位置40%・翼厚8%のレーシングみたいな薄い翼型・・・。如何にもスピードが出そうな雰囲気ですなあ・・・。

● 最大翼弦のリブでも全長700mm弱・・・此れってエレボン動翼の分は含まれていません・・・。よってリブ組みに必要な工作台が限界を越えた場合の組立方法が第2図・・・。あれ?・・・高テーパー比なのに捻じり下げ付けないんですかあ?ってネット物知り博士に馬鹿にした口調で言われそうですなあ(笑)・・・。此の主翼構造・・・捻じらなくても最終的な完成形では後縁がちゃんと捻じり下がっとるんですなあ・・・。一条氏ガルモデル販売の萱場式A3-1の記事をお持ちのモデラーさんなら、そのカラクリにお気付きの筈・・・。こんな高テーパー比のリブ組み・・・捻じる方が難しいので捻じりません。さて・・・何処で捻じっとるのか?。ネット物知り博士は自分で検証しないから解らない・・・。
 
● 胴体は普通の二枚側板で構成されてます・・・。当工房みたいなセンターキール型の一枚側板構造ではありません。よって二枚側板の面に必要な孔を正確に開けて、胴体内部で左右の主翼を胴枠と共に合体!・・・造りが大きく成るので其れなりの限りなく平面に近い定盤が必要なんですが・・・。木製の製図板というのが当時は有ったんですが、其れが捻じれも反りも無い定盤代わりでしたね。今も有るんだろうか・・・。もし入手困難ならば、ラワンの集成材を両面シナ合板で挟んだ、厚さ25mm程度のランバーコアという合板があります。サブロク(900×1800mm)でも1万円以上するかもしれませんが、この合板が今の所定盤として使える市販品で一番入手可能な木材ですね。シナ合板なので家具製造の木工所に行けば取り扱ってたりします。表面処理すればウレタン塗装も出来るんですが、身近に有るとすれば・・・イベント広場のモニターを収めてる木製ボックスに使われてたりします。
 
● 胴体の上下面がアール状のプランク面の場合・・・胴枠間毎にバルサプランクしてフィルムを貼り込んだら、波打ってたって経験は有りませんか?・・・。その解決策がこの二枚のイラストの中に有りますよ。胴枠の前後・・・側板材の上付近・・・3×3mmのバルサ棒が貼り込んであるでしょう?・・・。此れは側板補助材と言って側板上部と下部の小口に貼り込んで段付加工しています。よってこの段付け面がストッパーとなり、アール面のプランクシートの波うちを防ぎます。在るのと無いのとでは仕上がりの度合いが大きく変化するので、付けることをお勧めします。尚・・・強制ではありません!。
 
● 昭和40年代のプロポには、現在みたいな電気ミキシングやらコンピ~たあなんか付いていませんでした。でも・・・ちゃんと機械的なミキシングでリンクを作ってた時代です・・・。こういう製作記事を観ながら更に自分なりの考察で、別の構造のスライドサーボリンクを自作するモデラーは、当時は星の数ほど居ましたねえ・・・。要するに閲覧モデラーの選択肢の幅を広げてくれてたとも言えるんですなあ・・・。博士!こういったクラシカルな構造体を、現在のコンピ~たあ制御の加工機で正確に作って、自分のブログにアップすれば、昭和の大御所さんも挙って閲覧してくれると思うんですが・・・如何なもんでしょうなあ・・・。絶対に手抜き厳禁で!。
 
● 当工房の低翼系グライダーには必ず装備してる指掛けの凹み・・・此処から来てるんですなあ・・・。空気抵抗に成る!ってネット物知り博士に散々馬鹿にされたんだけど・・・。この機体の飛行画像見て、空気抵抗に成ってる様に見えるかな?・・・。其れよりも確実に機体を掴めて、初速確保の為に力一杯投げられるんなら・・・無いよりも在った方が良い指掛け孔って思うんだが。この孔・・・凹んでるだけで空気の抜ける所が全く無い・・・最初から空気は充満してます。のに!どうやったら空気抵抗に成るんだろう。

● 上記の画像で示された本機のリブ型・・・不思議に思ったでしょう・・・。翼の上面のみ段付け加工が在ったんで、リブキャップを省略した造りなんだろうなあ・・・とは誰でも創造するんだが、下面には段付けが無いので全面プランクなのか?って思ったモデラーさん・・・予想は外れましたなあ・・・。此の機体・・・多分ネット物知り博士なら絶対不自然だって思うだろう、主翼下面のプランクが無い!・・・。胴体着陸じゃフィルムが直ぐに破れるだろう・・・。その通りいいいいい!。しかしながら、この機体サイズでこの構造で全備重量800グラム・・・。当時としては空野彦吉さんの自作機並みの仕上がりなんですなあ・・・。ラジコンメカの総重量が2チャンネル分でも300グラム弱・・・。差し引いても機体本体に使える材料の重量は、フィルム分を引いて450グラム前後しかない・・・。如何に軽量設計なのか・・・当時としては、驚異的なんだぜい?・・・。

● 更に更に・・・何故にエレボン動翼がリブ組みのスケルトンなのか・・・。軽量化ってだけじゃ無いんだなあ・・・。主翼本体は捻じるのが難しいから、捻じりの無い正確な構造で作った・・・。しかし・・・捻じり下げは無尾翼機には絶対に必要不可欠なので、リブ組みのエレボン動翼を捻じった・・・。そら捻じり易いわなあ(笑)・・・。当工房の(NV-01型)のエレボン動翼もリブ組みです。主翼本体は捻じりの入ってない専用治具で正確に作って・・・このリブ組み動翼で捻じり下げ・・・。どうだ!ネット物知り博士!見切り発車で下らん事捲し立てるんじゃねえ!もちっと頭を使えよ!一流の大学で航空工学専攻したって言ってたじゃないか!。学の無いアンタには解らないだろうって?・・・。金持ち両親のスネかじってキャバクラ通いばっかりやってるから、肝心要の知識を習得し損なってるんじゃないのかい(笑)・・・。ホント!日本の将来が心配だ~・・・。
          
● もう!この図面観ただけで、エクスタシー・・・。脳汁出捲ってます。飛びが約束された図面ってのは気持ちが良いですなあ・・・。昭和の遺物をオークションで安く落札して得意気に成ってる平成生まれの若いモデラー諸君!。バルサキットの木部品の惨状見て落胆しとるんじゃろうなあ・・・。だがな~・・・。カスタム職人にとって落札した腐れ捲りのキット一式よりも、付属の原寸図面が手に入っただけでも落札した甲斐が在った様なもの・・・。必ず飛ぶって保証が付いてるんだから・・・。卸し立てホヤホヤの木部材使った方が確実だろ?・・・。昭和の遺物ってのはこうやって価値を見出すんだぜい?・・・。
          
● 本機ヴェガⅢ型のリブ型なんですが、何か違和感に気づきませんか?。上下面の湾曲したアール面とおもいきや・・・何と主桁より後縁の先端まで直線です。不思議な翼型でしょう?・・・。まるで手抜き・・・じゃ無いんですなあ・・・。此の直線のお陰でリブ組みが正確に出来るんですなあ・・・。山本さん!流石~!・・・。
          
● リブの下面を定盤にピタリと密着させてリブ組みしてます。メインスパーを定盤の端っこに合わせれば、別に主翼全体を載せる必要が無いんですなあ・・・。その為のアイデアとも言えるのですよ。因みに・・・翼の下面の一部が直線に成ったら悪影響が出るんじゃないか?ってお考えのネット物知り博士の皆さん・・・。貴方のスチレン板一枚の主翼よりも性能は良いんじゃないですか(笑)・・・。作図するのは面倒臭いんですが、実際に自分で作って検証してみれば?・・・。
 
● この主翼は当工房の製品であるリンディ(T 尾翼)のものです。此方は主翼の上面がメインスパーより後縁まで直線です。博士の言う悪影響が出るのか・・・。出ないんだなあ・・・(笑)。この設定にしたのは、初心者さんから質問が有ったからです。部分プランクの主翼にフィルムを貼ったら、プランクの無い面が凹んでしまうんですが、どういう貼り方をしたら凹まないんですか?。」・・・。実は・・・超一流のコンテストフライヤーさんが貼っても凹むんですなあ・・・。フィルムの特性だからねえ・・・。しょうがないんですよねえ・・・。理由は簡単!フィルムはスパン側に収縮するんですが、同時に翼弦方向にも収縮し・・・なるべく平面に成ろうとします。

● 主翼を全面プランクしたらこの凹みが無くなるのは当たり前なんですが、こういう軽量化の為の部分プランクの主翼は凹んで当たり前なんですなあ・・・。だったら!直線にしちゃえば良いんじゃね?。って事で、こういう翼型に・・・。メインスパーから前縁側はアール面でプランクするのでフィルムは翼型に沿います・・・。メインスパーから後縁までは直線なので所謂平面・・・。フィルムを貼っても収縮させたら、リブ間は凹みません・・・。理に適ってるでしょ?。主翼全体が翼型に沿ってる訳だから、悪影響なんか出る訳が無い!・・・むしろ高性能!なんですなあ・・・。此れも発想の転換・・・。ヴェガの翼型の下面が直線なのは何でだろう・・・の疑問の先の応用が此れなんです・・・。
          
● 主翼を捻じらず・・・エレボン動翼を捻じる・・・の治具です。後縁側の高さが手前と奥とで違ってるでしょ?。前縁側(ヒンジライン)は高さが同じですよ。よって動翼のリブを組立てる時に、この治具の上で捻じった状態で接着硬化させると・・・捻じり下がった動翼が完成します。此れを左右対称で作るから左右の動翼が同じ捻じれ度合いに成るんですなあ・・・。
          
● ヴェガⅢ型のデータを元に・・・国産スペースシャトルの想像図を参考にデザインした(NV-01)の試作一号機です。実に安定した飛行ですなあ・・・。飛行場所は熊本県俵山(扇坂スロープサイト)です。   (Part-2に続く)