Alexander Schleicher K8 (FLAIR製) ほぼベニヤの大型スケールグライダー Part-2
   
● キット指定の胴体のプランク面と言えば、此処だけなんですなあ・・・。それも1,5mmのカバベニヤを単板で成形して貼り込むのみ・・・。後はスケルトンのままです。で!・・・その硬性の程は・・・多角形の胴体をベニヤだけで構成すると、ズシリと重さは有るものの頑丈ですなあ・・・と実感するばかり也・・・。問題は被覆に有るんだが、何を貼っても好さそうなんですがねえ・・・。ちと!構造上不明な点も有るので解説文を読み解くんだが、その行は一切記載してありません。誰でも疑問に思うであろう胴体の被覆・・・。
   
● イラストを見て下さい・・・。本機の現在の胴体はイラストみたいに、側板上部の角には丸棒が接着されています。この丸棒と胴枠には此れだけの隙間が有るんだが、本機の解説を其のまま鵜呑みにするならば、被覆材は胴枠からは浮いたまま貼り込む事に成るんだが・・・。此れでは胴体の強度は得られません・・・。色々と読み解くんだけど、何処にも記載してない。仮に丸棒を削って胴枠の角と面一にしたとしても、このベニヤの胴枠の厚みは2mm位しか無いので、確実な被覆の接着面とは言えません。この胴体のサイズなら、胴枠の小口はキャップを付けて幅5mm以上は必要に成ります。よって1,5mmのバルサを幅5mmの短冊に加工して、全面貼り込みました。カバベニヤのプランク面の下の構造体にも漏れなく貼り込んでいます。
   
● 胴体のこの面のプランクは、キットには指示してありません。この面は本人が一人で投げる時・・・もしくは助手が投げる際、利き手でしっかりと持てる位置に成ります。本機にはエアロトーイング用の機首先端のレリーズフックと胴体下部には曳航用のレリーズフックが付けて有るので、扱いとしてはグランドにおけるサーマル飛行がメインの仕様の様です。しかし当工房の主は山岳スロープ派ですので、レリーズフックの類は使いません。一応曳航用のフックは装備する予定ですが、ほぼスロープ仕様ですので使う事は無いでしょうなあ・・・。1,5mmのバルサシートを三枚、木目の方向を変えて貼り込んでいます。画像は短冊張りの二層目です。この上にもう一層プランクする予定です。この三層目の表面に一工夫・・・指が掛かり易く、力を入れて投げられる表面の形状に工夫を入れる予定です。
   
● 本機のラダーはキット指定で付属している縒り線のワイヤーを両引きで使います。ただ・・・キットの場合は尾翼側はパイプを通して機外に出すリンケージなので、被覆前に取り付けないと後から入れる事が出来ません。しかし・・・此れでは被覆の際に大変難しくなるので、此方もオリジナルの構造で細工を施します。胴体後部にPVC樹脂の角棒を固定して、ピアノ線とホーンをビス止めしていますが、此れはワイヤーの取り付けにおいて・・・張り線の調節の際のホーンのニュートラルを出し易くする為です。
   
● グラス製ノーズコーンの取り付けを行います。グラスカバーに覆われる部分には棒材を入れたり、接合面を段差加工したりと細かい加工が必要です。此れにはマニュアルが無いので現物合わせです。何度も被せながら、細かく調整していきます。接着には二液練り練りの30分硬化以上が良いんですが、強度を上げたい人は、ポリ樹脂を裏側に盛り付ける事をお勧めします。ホームセンターに置いてあるグラスマットを購入して、細かく解してウール状にします。此れを胴枠とグラスカバーの接合面に絡めて、水溶性状態のポリ樹脂を吸わせていきます。一度にやると流れて全然関係ない所に溜まってしまうので、何度も分けて作業するのが良いと思いますよ。元々が削る必要の無い所ですので、十数分もすれば硬化が始まりますので、垂れない程度に硬化したら、再度ポリ樹脂を混合して作業を続けます。
   
● このグラスカバーの裏面にもエポキシを盛り付けて補強します。見えない部分ですし、グラスカバーの外側は色塗装するので透けて見える事はありません。キット付属のこの半円状の細いベニヤは、グラスカバーの縁に貼り込む枠となります。斜めに削るので数ミリほどズラして接着します。後は画像の様に斜めに削って仕上げますが、何度も合わせてみてスムーズに収まるまで削ります。
   
● エポキシ接着剤がはみ出ても何の支障も有りませんので、盛り過ぎるくらいの調子で派手に接着しましょう。ただ一つ注意する点なんですが、この縁は必ず平面が必要です。細い枠なので適当に削っても好さそうなもんですが・・・、此れを平面のシートと考えて、全体を平面にするつもりで作業しましょう。エポキシがガッツリ硬化していますので、番数の低い目の細かいサンドペーパーでは削れません。目の粗い(60番くらい)のサンドホルダーで、少しずつ削って平面に仕上げましょう。
   
● キャノピーの枠の工作に移行します。キット付属の枠の部材なんですが、部品番号(216)のキャノピー後部のパネル材が反り返って使い物に成らないので、断面寸法(5×15mm)のバルサの棒材を集成材としてパネルを作り、部品を切り出しました。キットの解説では枠の小口にキャノピーを貼り込む指示なんですが、この方法を使うには全ての機体の部品を組み終えた最後出ないと、正確な接着が出来ません(経験上・・・)。其処でキャノピーの枠本体も形状を維持しつつ、取り付けの方法を変更します。
   
● キャノピー枠をコクピットに固定するためのブラケットを作ります。まずはコクピット後部パネルの傾斜角度を測り、ブラケットの上部がコクピットの底部フレームと平行に成る角度で加工して、タッピングビスで固定します。キャノピーの枠にはコのブラケットが入るピッタリのスリットを開けておきます。この孔で重要なのは上下の寸法では無く、左右の寸法です。此処にガタが有ると、キャノピーが胴体の側面に沿わなくなります。
   
● ブラケットの周囲はキャノピー枠の内側からバルサとベニヤの部材で全て覆ってしまいます。此れでキャノピーの枠は左右にズレなくなります。今度は枠前方の固定なんですが、キットの指示では細いベニヤの枠に、細いピンを打って固定する仕様なんですが、本機はせっかく強固なグラスカバーが付いているので、そのカバー全体を利用するピンに変更します。こんなキャノピー枠の固定なんか見た事無いって人が殆どでしょうなあ・・・。でも、よく似た方法で胴体や主翼にサービスハッチを付けてると思うんですがねえ・・・。特に超軽量のハンドランチグライダーなら・・・。
   
● キャノピーを二方向で固定する段付けの部材を取り付けています。嘗て・・・OK模型のパイロットブランドのバルサキットや、EZブランドの完成機のキャノピーには、真空成型のコクピットが付属していました。このコクピットには段付け加工が施されていたので、この段差にピッタリと収まるキャノピーを加工すれば、コクピット付近が奇麗に仕上がっていました。当工房のオリジナル機種の殆どは、この段付けを採用しています。キャノピーの二方向を接着するので、経年変化を起こしても枠からキャノピーが剥がれたりしません。
   
● キャノピー枠の前方を大きく繰り抜き、一段下げる奥行きを作ると、グラスカバーの内枠を利用したピンの代わりが出来ます。こんな固定方法なんか・・・って、軽量ハンドランチグライダーの機首メカのハッチの作り方と同じだと思うんですがねえ・・・。その大型機版ですよ。一段下げたので、計器盤のパネル艤装まで作れました。インパネの造りはラジコン技術誌に記載されていたスケールモデラーさんの記事からの抜粋です。
   
● このインパネ艤装のカラクリなんですが・・・、二枚の薄いカバベニヤの間に透明なポリカーボネイトのシートが挟んであります。ラジコン技術誌の製作記事では、大戦機のコクピット内部の艤装だったのですが、キャノピーをスライドして開けると基盤が剥き出しに成るんですが、この計器盤にはガラスの板が挟まってると思えるような仕上がりが実現できます。で!本当の所はどうなのか・・・。計器盤の目盛りを書き入れる所までは本機と共通なんですが、このモデラーさんの計器盤にはガラスなんぞ挟まってませんでした。クリアのポリウレタン樹脂を筆先で垂らして、薄い皮膜を付けて硬化させただけです(笑)・・・。右側のコクピットは、海外のモデラーさんの本機と同型機の作品・・・。パイロットを載せる前提なので、グラスカバーの奥にインパネを取り付けています。計器盤の表面・・・一段下げて目盛りを書き入れて、クリアのポリウレタン塗料の仕上げです。まあ、世界中のモデラーが当たり前に使ってる技術なので、かなりポピュラーなんですがねえ・・・。本機はある意味・・・手抜きです。
   
● キャノピーシートの切り抜きを行います。国産品キット舶来品キット問わず・・・、キャノピーの成型品は縁付きの状態でキットに収まっています。此れには理由が在りまして・・・ご丁寧に周囲を綺麗に寸法カットしてあるキャノピーの場合、そのキットをどういう状態で保管するかにも寄りますが、変形し易いデメリットが有るんです。ですからOK模型のEZ完成機の場合は、周囲を綺麗にカットした後・・・成型品のコクピットにしっかりと粘着テープで固定してあったでしょ?・・・。縁付きの場合は必ず縁がキット箱の底に密着するので、形状が変形し難いメリットが有ったんですなあ・・・。縁を綺麗に寸法カット・・・お客様の為ですよ~・・・って、平成のラジコンブームでワンサカ増殖した俄かメーカーさんのキット・・・キャノピーの扱いが好い加減なんだもの・・・。さて!・・・どの位の量の変形キャノピーの交換に追われたのか・・・。俄かメーカーなんだもの、大手メーカーのノウハウなんか無いでしょうなあ・・・。
   
● キャノピーの塗装を行います。半透明の色付きシートを真空成型する場合は必要無いんですが、無色透明のシートの場合は裏側に塗装するのが基本です。画像の塗料は耐熱のランプカラーと言います。白熱電球の外側に色付けすると、電球の色を変化させる事が出来ます。主に・・・モデラー諸氏お住いの繁華街地区にあるぼったくりバーの呼び込み看板の縁にキラキラ点滅してるでしょ?・・・あれですよ(笑)・・・。電球の表面は高熱に成るんですが、この塗料は耐熱なので溶けたり変色したりし難いです。ただですなあ・・・このスモーク塗装なんですが、コクピット内部の艤装を完璧に凝って作っても・・・色が濃いとせっかくの中身が全く見えないって事態にも成ります。飛行中は確かに透けてるので見栄えは良いんですけどね・・・中身の粗が見えないので(笑)・・・。
   
● キャノピー枠はビスを使ってコクピットに固定します。枠も綺麗に塗装して調整が済んだら・・・いよいよキャノピーの接着です。接着剤はセメダインスーパーを使いました。キャノピーの枠に使用した塗料はラッカー・・・。キャノピーは塩化ビニール製の成形品・・・二つの材質と相性抜群なのがセメダインです。瞬間接着剤はABSの成形品同士なら相性は良いですが、片方が塗料面の場合は衝撃で塗膜が剥がれる場合も在ります。
   
● 水平尾翼の取り付けには6mmのナイロンボルトが付属していました。このまま使うと長過ぎるので、短く加工して使える様に、ナイロンボルトの指示なのだろうと解釈しました。ところがですなあ・・・、本機の製作記事を続けていると、世界中から質問が来るんですよねえ・・・。英語圏なんだから説明文の内容は良く理解出来てる筈なんですが、航空の専門用語が解らないモデラーさんと、文章の矛盾に気が付いて意見を求めて来るモデラーさんが後を絶ちません。画像の解説を見てもイマイチ判らないというか・・・曖昧なので信用しても良いのか?・・・という点。水平尾翼の取り付け角は(+1,5度)と記載してあるんですが、此れは何を基準に(+1,5度)なのかが解らない・・・。

● 主翼の取り付け角が決まってしまうと、水平尾翼も決まってしまうのが普通なんですが・・・。本機の水平尾翼の取り付け位置は、モデラーの工作手順で其々仕上がりが違って来るんですなあ・・・。国産の飛行機のキットは二枚側板を主に採用してるんですが、水平尾翼の取り付け位置は最初から正確な角度で側板を裁断して決定してあります。だから基本性能が一律化するんですがねえ・・・。本機の場合はその基準を作ってないので、全て解説イラストを見ながら現物合わせの加工に成ります。此れではモデラー毎の組み立ての誤差を含む取り付け角が(+1,5度)なので、実際には2,5度だったり・・・0,5度だったりするんですよねえ・・・。よって飛行機の性能が一定化しないので、評価が大きく割れる結果と成ります。重心は解説通りに合わせてあるのに、機首上げが止まらないとか・・・水平尾翼がニュートラルなのに機体が沈むとか・・・要するに、水平尾翼の取り付け角が機体毎に違ってるんですなあ・・・。

● 仮に・・・この舶来品のライセンスを西の大国が貰って大量生産したのならば、解説文のオリジナルから省略したのがキット付属の説明書という事態もあり得る訳ですなあ・・・。こんな大型機のキットにしては、詰めの甘さが目立つキットなのでホントにリチャードさんが書いたの?って信じられないんですけどねえ・・・。やはり原寸三面図はキットに付属させるべきかも知れませんなあ・・・。ただ・・・今の時代は、メーカーにこっそり量産して勝手にネット販売する輩が横行する時代・・・。この水平尾翼の取り付け付近と主翼の取り付け付近だけでも原寸図をキットに付属させて欲しいですね。
   
● 水平尾翼にはガイドパイプを挿入して、取付ボルトの締め過ぎによる変形を防いでいます。キット付属のコの字連結のパーツをエレベータに使ってたら、多くのモデラーさんは胴体内のロッドアジャスターとの結合作業で苦労したでしょうなあ・・・。私はシュミレートしただけで、俺の指は入らねえ・・・と悟りました。よってリンケージの変更をした訳です。垂直尾翼と水平尾翼の交差する空間は、本機の場合は不要に成ったので木部パーツを追加して塞ぐ予定です。
   
● 胴体下部の機首側に取り付けるダンパー式のスキッドの工作です。多分・・・スロープでは殆ど機能しませんが、せっかくパーツが有るので組み込んでみました。このダンパー式のスキッドは、グランドにおいてのサーマル飛行後の着陸の際、多大なる効果が期待できるでしょう。機体の全備重量が最大6キログラムにもなる本機ですので、その着陸時の衝撃にもある程度は耐えうる構造です。スキッド自体はアール治具に拘束した状態で4枚積層した完成品を加工して取り付けます。ただし・・・このグラスカバーにすんなり挿入できませんので、スキッド側とグラス側は其々成型してから必要寸法分を差し込みます。画像に見える黒い物体は、キット付属の硬質スポンジです。此れがクッションとなり、積層ベニヤのスキッドにダンパー効果をもたらします。
   
● このスポンジはスキッドに挟みこむだけの様な解説のみで、何かしらの方法で固定する様な指示が有りませんでした。本機の場合はそのスポンジの脱落を防止する目的で、皿を作って皿のタッピングビスで固定する方法を採用しています。スポンジ本体をベニヤに圧着するのではなく、タッピングビス自体がベニヤのスキッドに固定される構造なので、スポンジを取り付ける時は、ベニヤのスキッドに押し付けた状態でビスを締め込みます。タイヤハウス前方に見えるスキッドは後部です。長い溝を切って頭の大きいトラスタッピングビスを取り付け、少々隙間を設けて締め込みます。ベニヤのスキッドに凹みの荷重が掛かると、この板の後部が僅かに前後移動しますので其れに対応する為です。スロープの着陸では必要無いので、完全に締め付けても良いでしょう。尚・・・胴体下部とスポンジの固定された面は、圧着した状態のみで固定はしません。
   
● 降着装置の一つである車輪の取り付けです。スキッドだけでも良いんでしょうけどね・・・其れは地面と接触した時のショックの吸収だけで、その後は地面を転がり滑走しなくてはなりません。其れがグライダーの宿命でもある・・・。急停止程、機体に大きな荷重が掛かり何処かが破損する原因にも成るんですよねえ・・・。軽量なハンドランチグライダーなんか、この大型グライダーに比べれば・・・強度の点では比較に成らないほど頑丈です。超軽量なので気づかないだけなんですが、この軽量機と同じ素材を使う大型グライダーなので、無理な急停止は大きく破損する原因にも成るんです。

● キットの解説で行けば、この部品のみでタイヤを胴体に固定するんですが、このタイヤに挿入するシャフト・・・其れを胴体に固定する穴がガバガバなので、確実な固定が出来ないと判断しました。抜け止めするには溶接しか無いんですが、タイヤの羽目殺しってのが気に入らないんですなあ・・・。で!50mmの長ビスを加工してシャフト代わりにします。此れならビスの頭とナットでシャフトの抜け止めに成るからです。
   
● 長ビスの中には、タイヤハウス内部でタイヤ本体を中心に維持出来る様に、自己欽定型のナイロン封入ナットをねじ込みました。金属の板ベラは胴体側面にタッピングビスで固定します。尚・・・衝撃によるタイヤハウス内でのシャフトの不意な移動を防ぐために、半円を削りシャフトを埋め込んでいます。更にこのタイヤのハブは樹脂製・・・自重6キログラムに長期間耐えられる筈が無い・・・。何れ摩耗して偏心揺れを起こしタイヤ自体が破損する危険性があります。其処で孔を開けなおし、金属のスリーブを入れて補強しています。
(Part-3に続く)