✈ RindyーⅡ (regular stabilizer) 軽量グライダー Part-1 (2) (3)
  
 ※ 本機は大御所さんのワガママな要求から生まれた飛行機です。模型業界なら禁じ手と言われる、個人からの要望なので本来なら断るんですけどね(笑)・・・。日本の模型業界には、量産する為の治具の工法には独占権が在り、特許申請も出来るんですが・・・飛行機の構造自体には独占販売が出来ない暗黙のルールが有るんです。

 ※ このルールなんですが、日本に最初にラジコン飛行機をアメリカから持ち込んだ、老舗のメーカー(カルト産業の沖氏・加藤無線(MK)の昌弘氏他が、そのアメリカ製のラジコン機を元に、日本独自の技術で国産のラジコン飛行機を販売・・・この際、日本国内にラジコン模型が普及する様に独占販売をしませんでした。

 ※ この暗黙とも言える寛大なるルールによって、日本国内に沢山のラジコンメーカーが誕生しました。ただ・・・面白い事実も有るんですよねえ・・・。生粋のラジコンオンリーで誕生したメーカーさんは、多分昭和のモデラーなら誰もが知ってる個人運営の模型屋さんが起業した小規模メーカーが大多数を占めてます。プロポ販売の大手は、副業としての側面が有るんですなあ・・・。代表的なのはフタバ電子工業・・・。このフタバ電子・・・トヨタをはじめとする自動車メーカーに、スピードメーターやタコメーターを供給しているメーカーさんです。

 ※ 別業種なんですが、老舗のパチスロメーカーの山佐は、万人受けするパチスロ機種を多く販売しています。日本国中のパチンコ店の何処に行っても、この山佐の機種は置いてあります。この山佐の母体は、岡山県の大型作業船サルベージや台船クレーン等をゼネコンにリースする会社なんですよねえ・・・。よってパチスロリールのカバーガラスに有機ELビジョンで演出をさせる技術を最初に採用したのも山佐なんですが、此れも作業船のインパネの表示システムをパチスロ機に応用した技術・・・。常にアミューズメント業界の先端をリードする会社なんですが・・・実は別業種だったりします。

 ※ さて・・・話を戻してっと・・・。グライダーの大御所さんは、レーシンググライダーが大好きなんですが、ラジコングライダーを普及させる目的で軽量HLGにも触手を伸ばしました。ところが!・・・バルサキットは作るんですが、あまり複雑な飛行機は面倒臭がりなので好みません。簡単に作れて良く飛ぶグライダーを好みます。で!・・・QRPのHLG・ロッキーを買い占めて作っては飛ばしながら、次のロッキーを作る・・・という一人量産作業を始めて楽しむ案配・・・。ところがORPが廃業する事態に成って、ロッキーのキットが入手出来なく成りました。

 ※ するとこの大御所さん・・・当工房にロッキーの複製を依頼・・・。当工房としては、ライセンス契約も無しに作れる訳が無いと一度は断ったんですが・・・。だったら独自開発で同性能・・・もしくはそれ以上の飛行機を・・・との熱いごり押しで誕生したのが当工房のリンディです。名前の由来はQRPがロッキーなんだから、このごり押し開発機の責任を取ってもらう為に、ハンドルネームのリンデンさんからリンディと成りました。全ては大御所さんのワガママから始まった本機・・・。其の初号機です。
 
● 本機リンディは生地完成の7部組みとして誕生しました。大御所さんが、其処から先は自分で組むからとの事・・・。よって部品は此れだけです。マイクログラスも必要最小限しか入れてありません。この時代の傾向として・・・主翼の軽量化により構造を省略して、マイクログラスで広範囲に補強するという、何とも手間の掛かる風潮が何故か流行しました。本機はその風潮を真っ向から打ち崩し、昭和のラジコン機の王道に無理矢理戻しました。

● ただ・・・主翼に関しては、内部構造から外皮まで全てバルサです。ただ・・・生地完成機なので内部まで見えませんが、内翼の矩形翼・・・一件ひ弱そうに見えますが、購入された全国のモデラーさんの共通のご意見・・・。捻じろうとしても捻じれない・・・。どういう構造なのかと、自分勝手に憶測を語り自分のブログで紹介していました。最大翼厚6,5%のゲッチンゲン翼・・・捻じれない構造が話題と成りました。
 
● 昭和のラジコン飛行機は、その機体に搭載するラジコンメカが大変高価な時代でした。現在の様にタバコ2個分で、小型のアナログサーボなら一個買える時代ではありませんでした。よって、その高価なラジコンメカを保護する構造の飛行機本体は、かなり頑丈に作られていました。高価なラジコンメカの最大の敵が、機体の空中分解・・・そして操縦ミスによる墜落事故・・・。現在みたいなスチレン製のひ弱な機体に、小型のメカを積んで人に当てても大丈夫!・・・なんて、ネット販売の主が吹聴しながら販売するなんて行為・・・絶対有り得ない時代でしたしねえ・・・。人に当てたら大惨事!・・・が、当たり前の時代でしたので、飛行場のエリアルールは相当厳しかったですよ。
 
● 主翼は4分割構造です。二段上反角(ポリへドラル)を採用しました。まあ・・・当時の軽量HLGの大半がポリへドラル設定でしたけどね・・・。矩形の内翼とテーパーの外翼・・・翼型は薄いけどエポキシで接着します。この結合面のリブなんですが、最初から上反角設定が入る様に、断面が三角形のエルロン材から切り出しています。よって主翼下部の方が上部よりも肉厚が有ります。

● 誰が言い出したのか解らないんですが、この内翼と外翼の上反角は強ければ強いほど良く飛ぶ!って間違った情報が日本中に飛び交い・・・メーカーのバルサキットの主翼を自分で改造してまで、上反角を馬鹿みたいに付ける行為が流行ってしまいました。個人の自作機にはこの上反角を45度以上も付けた機体も見受けられたんですが・・・確かに上反角がきついと自律安定性はとにかくよく成るんですが、今度はラダーを打っても反応がとにかく遅い・・・。緊急回避なんて絶対無理でしょうなあ・・・。風に流されてコントロール不能になった機体が、その暴走に気づかないギャラリーめがけて飛んで行っても・・・どうする事も出来ないでしょう・・・。どけ!って言ったろう!って人に当ててから言ったって遅いと思うけどなあ・・・。航空力学の知識の無いネット物知り博士が改造しちゃうと、こういう危険な飛行機に成っちゃうんですがねえ・・・。

● もう一つ・・・上反角を極端に着けた場合のデメリット・・・。主翼の投影面積は、適正上反角の機体よりも同じ主翼面積なら大変小さく成ります。よって同じ全備重量なら、データ上の翼面荷重は同じですが、実際の飛行に関しては適正上反角の飛行機よりも浮きが悪く成ります。本機の場合の上反角はこの結合部で10度です。初心者モデラーさんみたいにラダーのバッタ打ちでアクロバットでもやってるんか?みたいな飛ばし方は、グランドサーマルでは間違いです。なるべく機体のバンク角を浅く採って機体沈下を少なくして、熱上昇風(サーマル)を探して滞空を続けるのが正しい飛ばし方・・・。其れには必要以上の上反角は必要無いのです・・・。
 
● 主翼中央部もエポキシで結合・・・。本機は此処もカンザシは使いません。画像みたいに翼端を持っても1500mm近いスパンの主翼・・・折れないんですよ。振り回したって・・・。何故なら本機の主翼・・・全体で38グラムだからです。メカ込み全備重量で200グラムを切ったモデラーさんも居る位ですしね。春先のお天気ポッカポカの日に、少し強めに投げるだけでサーマル掴んで30分以上飛んでいた!って情報が入って来てましたしね。
 
● お次は平成以降のモデラーさんのお決まりのコース(笑)・・・。マイクログラスで結合部の補強を行います。画像の溶剤はサノファクトリ―で購入したエポキシの溶剤・・・。ポリ樹脂とはまた少し性質は違いますが、まあ・・・作業手順は同じです。実はこの溶剤・・・平成18年位に数本購入した最後の生き残りです。其処で追加発注の為に令和元年・・・電話してみたら、既に取り扱いが終わっていました。理由は・・・まあ危険物の扱いなので、ネット販売と言えども危険物取り扱いの資格が無いと販売出来なくなったとの事・・・。要するに購入する側が資格は有っても、販売する側に無いから取り扱いを止めざるを得なく成ったんだそうですなあ。まあ・・・ラジコンブームが衰退した理由は、ネットショップの乱売にも有った訳だから、良心的なショップも一括りってのが、世の中のルール改正・・・。で!現在の当工房・・・グラスの溶剤は、ポリ樹脂に変更しました。このポリ樹脂・・・配合が難しいです。素人向きじゃ無いですなあ・・・。主剤と硬化剤が100対1なので、スポイトとグラム量りは必需品ですしね。
 
● 各部継ぎ目のグラス塗布はこの範囲で充分です。馬鹿みたいに広範囲に貼り込むから、軽量フィルムを貼ろうとしても空気が抜けません。グラスを貼らないと綺麗に貼れるフィルムなのに、どうして貼れないのかってメールを貰った事があります。君はクルマの窓ガラスにフィルム貼ってるじゃん!って、メールに添付された画像に愛機と一緒に写った車を観たんですが・・・。

● 空気の抜け道が無い窓ガラスと、このマイクログラスの塗布面は同じ状態です。バルサ材の表面には細かい空気の抜け穴が沢山空いています。此れをガラスクロスとポリ樹脂で完全に塞いで硬化させちゃったから、空気の抜け道が無くなっちゃいました。よってフィルムを貼ろうとしても、空気が残ると抜かない限りフィルムに残ります。その部分はフィルムが貼れて無いんだもの・・・荷重が掛かり耐えきれなく成ると、他の部分が破損し易く成るんですなあ・・・。

● こういう場合はフィルムを違うタイプに変更するか、このグラス塗布面のみ残してバルサ生地面のみフィルムを貼って・・・グラス面は塗装すれば良いんですよ。マイクログラスを機体全体に貼って、全面塗装仕上げとした高級ラジコン機も有る位だし・・・。一度でもグラス塗布面の塗装仕上げを経験したら、貴方の世界は大きく開けて来るでしょうなあ・・・。飛行機の塗装仕上げに自信が無い場合は、ブラシレス動力のエアボート(プロップボート)でも、バルサとベニヤで組んで作ってみれば良いんですよ。船体をマイクログラス全面貼り込みで、ウレタン塗装仕上げなら海でも走行可能に成ります。カスタム屋さんのウレタン塗装鏡面仕上げというハイクオリティな仕上げは、こういった別分野の技術の応用でもあるんです。
 
● エポキシ溶剤の配合が適正なら、丸24時間後なら完全に硬化している筈です。ガチガチに成ったグラス表面の凸凹は、まず50番位の粗めのサンドペーパーで削り落としてから、今度は番数を120位に落として削り・・・最後はスポンジペーパーで仕上げます。グラス面のフィルム貼りの手順ですが、このグラス塗布面を避けてバルサ生地面でフィルムを押さえ・・・最後に空気を抜く様に指の腹を併用して、フィルムを貼りましょう。オラカバフィルムにはドライタイプの他に、ストライプ用のウェットタイプも有るんですが、此方は看板屋さんで言う所の外部用カッティングシートの事なので、ドライフィルムよりも薄くて良く伸びるし馴染むタイプです。後はラインがズレない様に、アイロンで圧着して貼り込みます。そういったフィルムを応用するのも一つの手だと思います。
 
● 本機の主翼が単純なフラットボトム翼(主翼の下面が平ら)なら、画像みたいな処置は必要無いんですが・・・。本機の主翼はゲッチンゲン翼型なので、主翼の下面がえぐれて凹んでます。此方の翼型の方が浮きが良くは成るんですがねえ・・・。要するに初心者さん達が挙って購入したQRPのロッキーなんですが・・・、フィルムの持つ特性に対応しきれなくて、貼り込みに大変苦労してたみたい(笑)・・・。
 
● 私達・・・百戦錬磨のモデラ―でも、このゲッチンゲン翼みたいにえぐれた翼型のフィルム貼りには、物凄く神経を使います。翼の上面は、そらもう!ルンルン気分で貼れるんですがねえ・・・。だから初心者さんが、初めて作った高性能機のロッキーの最後の難関の被覆工程・・・そら!悩んで当たり前ですよ。私だって初心者の頃、同じ場面で慌てたんだから・・・。もう半世紀も前ですけどね・・・。フィルムは確かに貼り易く成ったんですが、収縮して貼り込むって技術は昔も今も同じですからね。如何に綺麗に貼るか・・・のレベルが現在の私です。

● フィルムの絶対に避けられない特性とは・・・、収縮すると最短距離で平面に成ろうとするんですなあ・・・。よってゲッチンゲンみたいに翼型が凹んでると、必要以上のアイロンの熱を加えると、リブの小口からフィルムが剥がれてしまうんですなあ・・・。どんなに食い付きの良いフィルムでも同じです。そして剥がれて縮んだフィルムは、二度と延びませんしねえ・・・。よって主翼のフィルムは浮いた状態・・・何の変哲も無いフラットボトム翼に成っちゃうんですなあ・・・。で!初心者さんはアイロンを最強ダニパンチ状態まで高温にして、アイロン当てたらフィルムに孔が開いちゃいました。そら!フィルムが不良品だって勘違いして、メーカーに文句たらたら言ってしまう・・・。色好い応答(無償でフィルムを貰う・・・)が無かったら、今度は事実歪曲でお仲間掲示板に、メーカーの悪口三昧・・・が関の山でしょうなあ・・・。
 
● このゲッチンゲン翼型にフィルムを貼り込む際の手順なんですが、後縁側の切り代分のフィルムを大きく採るのが最初の手順です。フィルムの位置決めをする為のアイロンの先っぽで貼り込むスポット貼りの時は、この凹んだ翼の下面から先に軽くアイロンを当てて固定します。次にプランク面を全体的にアイロンを当てて緩みを取りながら、圧着して貼り込んでしまいます。

● 次は後縁側をスポット貼り・・・抜き面のフィルムが収縮しない様に、後縁材全面を貼り込みます。この時点では抜き面のフィルムは弛んだままで良いですよ。さて・・・フィルムを貼る前にこの翼型の下面にはクリアラッカーを刷毛塗しました。このクリアラッカーは、塗布面が厚ければ厚いほどフィルムの接着剤の食い付きが良く成るんです。よって画像の様に吸着するんですなあ・・・。さあ!抜き面のフィルムのたるみを取る作業ですが、お手持ちのヘアードライヤーを温風状態にして、この弛んだフィルムに当てて下さい・・・。徐々に収縮が始まる筈です。面倒臭いからって、決してアイロンは使わない事です。せっかく吸着した接着剤が溶けて、フィルムが剥がれたら最後、もう元には戻せません・・・。此れが昭和の時代からモデラーの多くが苦汁を味わった、ゲッチンゲン翼のフィルム張りの失敗例です。

● 一応説明はしましたが・・・初心者さんは注意してても、必ずやり過ぎて失敗します。私のせいにしたく成るでしょうけどね・・・。此れは経験を積むしか無いんですよねえ・・・。ある意味、ウレタン塗装の鏡面仕上げよりも難しいかなあ・・・。リブの小口にクリアラッカーの刷毛塗りって作業は、昭和のフィルムって現在のオラカバフィルムやソラーフィルムよりも、アイロン貼りの際の吸着が弱かったって性質も有るので、まあ・・・仲間同士の口コミで入手した技術でも有る・・・。何度もやってる内にコツが掴めれば、より良い被覆が出来る様に自然と覚えて行くんです。
 
● 此方の質問も多いかなあ・・・。左の画像は下側が主翼の上面です。リブ間のフィルムが凹んでるでしょう。ちゃんと緩みも完全に取った主翼なのに、何故かリブ間が凹んでしまう・・・。そら!初心者さんなら大パニックでしょうなあ・・・。こんな状態の飛行機をお仲間飛行場に持って行ったら皆に馬鹿にされる・・・って恐怖感はマックス状態・・・。で!当工房に助けを求めて来るんですなあ・・・。言っときますけど、百戦錬磨の大御所が貼っても同じ状態に成るんですから、初心者さんが慌てる必要は無いですよ。

● 右の画像の主翼・・・同じ様に抜き面の有る主翼なんだけど、上面のリブ間が凹んで無いでしょう。此れは当工房が上手に貼ったからでは無いんですなあ・・・。同じ翼型を使えば初心者さんだって貼れるんですよ。リブ間が凹まない翼型を使ったから・・・。その件は、別機種の製作記事で詳しく紹介します。

● ああ!・・・言い忘れた・・・。多分、ゲッチンゲン翼型のロッキーの主翼・・・初心者さんのパニックの種がもう一つ残ってましたなあ・・・。綺麗にシワ無くピンとフィルムが貼れた主翼・・・上面はリブ間が凹むのは説明しましたが、今度は翼の下面のリブ間が膨らんでるのは何故?・・・。此れも翼上面の逆の現象・・・。フィルムは最短距離で平面に成ろうとするので、こう成るんですなあ。

● だから!・・・言いたくは無いんですけどね・・・。有名なメーカーだから・・・。何の為にゲッチンゲン翼なんか使ったのかって所なんだが・・・。リブの小口は確かに高性能のゲッチンゲン翼型なんだが、リブ間の抜き面は逆カンバ―の翼型に成ってるんで浮きは悪い事に成るんだが・・・。このゲッチンゲンを軽量グライダーに使うんだったら、翼上下面の抜き面の中心付近にサブスパーを一本入れれば、上記のリブ間の凹みと膨らみは軽減するので性能は良く成るんですがねえ・・・。このサブスパーの件・・・大御所さんは理解してくれませんでした。普通に考えれば解る事・・・。サブスパーが駄目なら、リブの枚数を現在の四倍に増やしてリブ間を詰めれば、直ぐに解決するんですけどね(笑)・・・。その分主翼はかなり重く成るんですが・・・。(Part-2に続く)