✈ Rindy-Ⅱ (High stabilizer) スケール胴体ケストレル Part-1 (2) (3)

  
● リンディ・シリーズの最新作!・・・と言っても、誕生して数年経過した機体ですけど・・・。当初は胴体と尾翼セットのみで量産しました。何故胴体だけなのか・・・。大手メーカーの、このクラスの軽量グライダーなんですが、初心者さんからベテランさん迄満遍なく誰もが作って飛ばしています。ところが・・・操縦の上手な人・・・下手な人・・・其々初心者と上級者には両方いるんですよねえ・・・。ベテランだから絶対壊さないとは限らない・・・。

● 競技会において指定店着陸が演目に入ると・・・定点めがけて急降下!・・・前部胴体をクラッシュさせても、上位を狙う危ない人まで出る始末・・・。勝利に執着する人ほど機体を大事に扱いません・・・。要するに・・・主翼を壊して胴体だけが残る状況から、胴体を破壊して主翼だけが残るという状況に変わって来ました・・・。其れなら胴体だけ販売しても良い筈なんですが、レーザーカットのバルサキットと言うのは、シートの合わせ取りの手法を使うので、別々のシートに主翼と胴体の部品を分ける事をしません。主翼か胴体のどちらかが壊れて修理不能に成っても、新たに一機分のセットを購入するしか方法が無いんです・・・。

● オマケに・・・何処のメーカーさんも、(High stabilizer=T型尾翼)なんて、テールヘビーに成る様な複雑構造なんかキット化しませんよ。このクラスなら、構造を簡素化して軽量化しないと・・・誰が作ってもテールヘビーに成って重心を合わせる為に・・・機首にバラストを積み込む羽目に成るんです。本機は長年の経験から生まれた機体です。T型尾翼なんですが・・・テールヘビーに成りません・・・。成らない構造で作っているからです。胴体と水平尾翼のみの生地完成なので、10機単位で量産してますが・・・累計は現在までに150本以上の胴体セットを販売しました。其れだけ主翼だけ残ったモデラーが多かったとも言えるんですなあ(笑)・・・。
 
● 本機の主翼の翼型は、邪道とも言える発想の転換から生まれました。一応綺麗な翼型では有るんですが・・・最大翼厚は6%ですし・・・。こういった抜き面の有る主翼の泣き所は、リブとリブの間の抜き面は・・・どんなに高性能な翼型を使っても、歪な状態にしか成りません。此れがフィルムの特性なので、初心者が貼ってもベテランが貼っても歪に成るんです。

● ところが・・・この翼型は、初心者でもベテランでも・・・全面バルサプランクと同じ状態を、抜き面の主翼で表現できる優れた翼型なんですなあ・・・。全ては発想の転換・・・一部邪道なので、モデラー全体から見れば好き嫌いの分かれる翼型ですね。良く観て下さいね?・・・。上下でスパー溝の位置が前後にズレているでしょう・・・。下面はフラットなので抜き面が有っても、フィルムが凹む事は無いんですが、上面なら抜き面が凹むのが当たり前なのに・・・この上面は凹まないんですよねえ・・・。

● カラクリは意外と簡単ですよ。上面のスパー位置までがプランクする面です。其処から後縁材までが抜き面なんですが、此処も直線なんですなあ・・・。直線の面が構造体に成ると・・・平面でしょう?・・・。平面にフィルムを貼り込むんだもの・・・凹む要素が無いんですなあ・・・。こういう翼型を層流翼って言うんですが、実物の大戦機で多く使われた手法なんですよねえ・・・。前線基地に複雑な加工重機なんて持ち込めないでしょう・・・。

● 被弾して主翼に大穴が開いてしまった場合・・・リブが完全なアール曲面だったら、アルミをアール状に湾曲させる鋼鉄製の三本ロール折り曲げ機を持ち込む必要があります。(航空自衛隊の整備基地の我が工房には有りましたよ。くそ重たい三本ロールの折り曲げ機が・・・。ですが・・・この翼型が一部直線なら・・・平面のアルミ板を形状を整えて、リベットで貼り込めば良いだけの事・・・。前線基地の整備としては大変楽に成るんですなあ・・・。連合軍のムスタングの主翼も層流翼・・・。アメリカ人の発想は、模型業界でも面白いって思ってたんですが、戦時中でもその発想が物量作戦に充分応用されたんですなあ・・・。
 
● リブ間が凹まないと言う事は、翼全体が全面プランク状態と同じなので・・・リブ間の抜き面も揚力を充分発生させる事が出来る主翼に成るんです。あくまでも邪道なんですけどね?・・・。どんなに高性能な翼型のリブを使っても、リブ間の抜き面が凹んでしまったら、お世辞にも高性能な主翼とは言えなく成るんですよねえ・・・。だったら邪道な翼型の方が、性能は上って事に成るんですなあ・・・。QRPのロッキーは、高性能なゲッチンゲン翼型を採用してましたが、高性能な特性はリブのみで・・・リブ間の場合、主翼上面は凹み・・・主翼下面は膨らんでいます。その形状はゲッチンゲン翼型が裏返しになった状態・・・。信じられない人は、ご自分のロッキーの主翼を、孔が開く程舐める様に眺めて下さいね。果たして完全なるゲッチンゲン翼型の主翼に成ってるかどうか・・・。

● 上記のロッキーの主翼・・・リブ間のカンバ―が裏返しって事は、浮きはあまり良くないって事です。もし!ゲッチンゲンの能力を最大限に引き出したかったら、全面をプランクすれば完全なる高性能なゲッチンゲン翼になります・・・。しかし全面プランクにした分、全備重量が確実に大きく増えますので、翼面荷重の数値も上がり・・・グランドの滞空競技においては、上位入賞は難しく成るでしょうねえ・・・。尚・・・模型機の翼面荷重とは・・・100平方センチメートル(10×10センチ)が受け持つ機体の重さを表しています。この数値が少なければ機体は軽く・・・数値が大きければ機体は重いと言う事ですので、動力機ならばグローエンジンやブラシレスモーターのサイズが決められますし・・・、翼面荷重の数値を最初に設定すると、機体のサイズと使用する材料の吟味・・・構造などの設計に必要な諸元が全て決められます。取り敢えず機体を完成させてから、推力装置のサイズを決めようとするから推力不足で飛行機が飛びませんでしたああああ・・・って事態にも遭遇するんですよ。まあ・・・バルサキットやら自作機やらと自分で作ってると、最終的にはこの翼面荷重が諸元の中で一番重要な数値だって理解出来ます。
  
● 本来・・・このケストレルバージョンは、同クラスの機体が主翼のみ生き残った場合・・・その使い回しの為に、胴体と尾翼のみのセットとして量産し販売していました。元々・・・ハンドランチ系の軽量バルサキットのグライダーキットには、T型尾翼は有りませんでした。理由はただ一つ・・・テールヘビーに成り易いからです。軽量構造の水平尾翼を、胴体の最後尾に取り付けるのも難しい軽量グライダーなのに、垂直尾翼の上に取り付けてリンケージをどう配線させるのか?・・・等、かなり複雑に成るんです。

● よって!・・・垂直尾翼は頑丈に作らなければ成らない・・・後部胴体も丈夫に作らなければ成らない・・・水平尾翼もガタ無く動く様に頑丈にしなければ・・・等々、とにかく重く成るんです。よってテールヘビーには成るわ・・・初心者なら難しくて組めなくてぶん投げた後は、お仲間掲示板で酷評するわ・・・と散々な結果が見えてるので、最初から作りません(メーカーの気持ちも解るなあ・・・)。ただ・・・当工房の主は、メーカー時代の前からのモデラーなので、ガルモデルのオリジナルグライダーには精通しています。ガルモデルのグライダーには、T型尾翼の機種も数機在りましたし・・・一条氏のオリジナル機構も覚えています。今回のT型尾翼の作動機構も、色々とやってたらこういう構造に行き着いただけなんですなあ・・・。其れは胴体の組立てで詳しく・・・。
  
● 最大翼厚6%の主翼です・・・。薄い割には生地完成状態でも丈夫です。プランクシートの段違い構造が功を奏していると思われます。本機は私が飛ばす専用機なので、フィルムの貼り込み行程まで記載する予定です。その為に、四国のヨシオカモデルに直接フィルムを発注しました。ネットのオークションサイトに出品されているオラカバフィルムの多くは、あまり信用しない方が良いですよ。料金先渡しでしょう?・・・送られて来たフィルムが、経年変化でボロボロ状態(顔料の粘着力が大変弱い状態)なので、裏紙剥がすと、顔料がボロボロと剥がれ落ちて来ます。確実を優先するなら定価購入のヨシオカモデルに発注するのが一番ですよ。
  
● ベニヤのカンザシにエポキシを満遍なく塗り込んで、片方の主翼に差し込んで、はみ出たエポキシは綺麗に取り除き硬化させます。確実に左右の主翼を結合させるなら、カンザシの埋め込みは二回に分けた方が確実です。硬化したらもう片方のカンザシにもエポキシを塗り倒し、接着する翼面にもエポキシを盛り・・・左右の主翼を結合します。エポキシがはみ出す位なら、確実に全面に接着剤が行き渡っています。この状態をマチ針で固定して硬化させましょう。

● 本機の前縁は二層です。プランク材の前小口も接着剤を塗り込んで、3mmバルサの外側前縁材を貼り込みます。前縁材の二層構造は、元々がF3Aスタント機の構造です。加藤無線(MK)のF3Aのキットは、殆どのクラスがこの二層前縁です。此れが一層前縁だと、削り過ぎてプランクシートに孔が開く場合もありますが、この二層前縁の場合・・・削り過ぎて孔が開く事が有りません。もう一つのメリットなんですが、一層前縁の場合・・・接着した筈のプランクシートが、削ってる最中に浮き上がる場合が有ります。接着剤の塗り込みの甘かった部分が浮き上がってしまうんですなあ・・・。しかし・・・二層前縁は、プランクシートの前小口も一緒に接着剤を塗り込むので、剥がれてしまうという悲劇は起き辛いです。二層前縁の方が綺麗に削れるというメリットも追加しておきましょう・・・。
 
● 初期型Rindy-regはⅡ型なんですが、この機体の前にリンディの元に成ったⅠ型が存在します。今回のT型尾翼機は、このⅠ型をモデルに製作します。Ⅰ型から全ての胴体の長さは同寸法です。よって、重心位置からのノーズモーメントとテールモーメントも共通です。材料配分も殆ど同じ・・・機体構造の97%を各種厚みと材質のバルサのシートで構成しています。まあ・・・ハッキリ言えば、1,5mm・2mm・3mmのバルサシートしか使っていませんし、スパーの棒材も全てバルサなんですが、自作の幅切りカッターを使って切り出しています。じゃあ・・・5mmの角材はどうしてんの?・・・。2mmと3mmを貼り合わせて、幅切り5mmのカッターで落とせば5×5mmの棒材は出来ますよ。
  
● 平成のラジコンブームから参入した昭和生まれのモデラーさんと、平成生まれの若きモデラーさんが、揃いも揃ってQRPのロッキーを大改造!・・・。T型尾翼やら・・・V型尾翼やら・・・自分のブログで製作記事を書きながら・・・。ところが、どちらも完成せずに記事がフリーズ・・・。何やら別記事が数か月続いたと思ったら、何時の間にやら別機種の製作記事に変わってたりします。ロッキーの大改造記事は、どうなっちゃったんですかァ~・・・。って思ってる人は沢山居た筈・・・。多分記事を観ながら僕も私も・・・が楽しみにしていたんだろうに・・・。

● 多分・・・V型尾翼はキット付属の水平尾翼を半分に切ってV型に配置して・・・。T型尾翼は垂直尾翼に水平尾翼を載せて・・・って感じだったんだろうけど・・・。此れはどちらも間違いですよ。V型尾翼は面積が足らずに投げたらスパイラル降下・・・。要するにヨー軸の効果が足らないんですなあ・・・。T型尾翼の場合は垂直尾翼の強度不足・・・。多分、水平尾翼を動かしたら、垂直尾翼も捻じれ捲るでしょうなあ・・・。

● 画像の垂直安定板の最終的な厚みは、6,5mmです。画像はその中芯材の2mmバルサ・・・。其処に何やら二本の溝が切って有るでしょう・・・。この溝の幅は2mmです。この溝の中に外直径2mmのパイプが埋まります。パイプの中を通るのは、テグスのワイヤー・・・。この機構はテグスワイヤー二本で、垂直安定板の上部に載せるフライングスタビライザーの作動をコントロールします。両引きなのでピッチ軸のガタが出ません。その為の構造なんですよ。
  
● 垂直安定板の二本の支柱の中に、テグスワイヤーのガイドパイプが内蔵されて、先端から覗いています。この垂直安定板は抜き面が有るのでひ弱に見えますが、生地完成の状態でも捻じれない程の強度を持っていますので、被覆はフィルムで充分なんです。この垂直安定板もガイドパイプ以外は全てバルサです。言い換えるなら・・・ノイズレスのガイドパイプを埋め込む事で、構造強化の一役を担っている側面も有るんですよねえ・・・。此れもテールヘビー対策・・・。
  
● この垂直安定板(バーチカル)の上部には、PVC樹脂のブロック材がはめ込まれます。実は・・・このブロック材が、T型尾翼の作動を確実に行う肝とも言えます。なるべく重量増加を防ぎ、極力軽量に仕上げる為の一番強固な部品とも言えるんですなあ・・・。当工房の大型ソアラー(スパン3600mm)のアンブリエルも、本機と同じT型尾翼です。フライングスタビライザーの可動軸受けにはPVC樹脂製のOK模型のパーツである、ノーズギヤの可動ブラケットを加工して使っています。 
● T型尾翼のフライングスタビライザーを確実に作動させる為には、其れを支える可動軸をガタ無く動かす機構が必要に成ります。OK模型のノーズギヤ可動のブラケットは、正に好都合なサイズだったので、大型グライダーに使えました。ところが・・・今回の軽量グライダーには、こんなゴツいパーツは使えません・・・。もっと小さくて軽量なパーツが必要でした。其処で考えたのが、同じ材質の角材でした。機構はほぼ同じなんですがねえ・・・。
  
● ベニヤパーツは全て1,5mmのカバベニヤです。此れを組み合わせてブラケットを造り、バルサで補強しています。可動軸には両側から短い2mmのビスで両面固定します。長ビスで貫通孔を開けてしまうと、ガタの原因に成ります。バルサで可動体のアームの肉厚を確保・・・。IM産業の外直径3mmのノイズレスパイプの内径は、丁度2mmですので2mmビスのガイドパイプとして組み込んでいます。上記の画像のアンブリエルの可動体と機能は同じなんですが、大変軽量に仕上がりますし・・・垂直安定板から可動体が外せる仕様に成っています。フィルムを貼ったり・・・テグスの調整をしたりと何かと複雑なのも、T型尾翼ならではなんですよねえ・・・。
 
● こういったT型尾翼専用の可動体のセットを、大手のメーカーさんがインジェクション成型の樹脂製で販売してくれたら、自作モデラーが飛び付いて購入するでしょう・・・。多分・・・メーカーの開発部が考えもしなかった様な、新しく斬新な応用をするかも知れません・・・。作りたいモデラーは、メーカーの手助けが無くても何とかして作るだろう・・・って考えだから、普及しないのかもしれませんなあ・・・。モデラーが増えなきゃ模型業界の未来の展望はありません。昭和の時代には、メーカー側の勢いが凄かった・・・色んな自作パーツが目白押しでしたなあ・・・。だからモデラー側も、其れに答えられました。中華の職人を下請けに、空中分解確定機や左側の主翼を二枚セットした組めない完成機やら・・・こんな挑戦状・・・誰も受けたがりませんよ。なんか、日本の模型業界は進む方向を間違えたんじゃないか?って心配になるんですけど・・・。
  
● 5mmのスチレンペーパーを二枚重ねてラダーの組立治具を作りました。小型の軽量グライダーですので構造は超簡素化しました。量産するには大変便利ですよ。機体によっては垂直尾翼が四枚必要って機種もありますので、こういった簡単に出来る内部拘束治具は持っておくと大変便利です。要らなく成ったらバラせば良いですしね。両面テープで数か所でくっ付いているだけですし。
  
● 貼り込んだフィルムはオラカバのライトです。このフライングスタビの可動体は、アームの幅を大きく採り・・・垂直安定板とのクリアランスを0,5mmと詰める事により得られたメリットは、ロール軸とヨー軸のガタを最小に出来た事・・・。尚・・・ピッチ軸のガタはテグスワイヤーの両引きでほぼ皆無です。全備重量が270グラムの軽量ラジコングライダーなんですが、この尾翼構造が軽量に仕上がったので・・・受信機用電源のバッテリーの容量選択と前後移動で、余分なバラストも要りませんでした。
  
● 本機にも他のリンディ同様に、ショックコード用の曳航フックを四個並べて取り付けています。使用方法は(Rindy-reg)の項をご覧ください・・・。このT型尾翼の水平尾翼は、レギュラー型の水平尾翼の位置とは違い・・・主翼の後流を受けませんので、エレベータ操作時の利きがとても良いです。フライング式のスタビライザーですので、水平尾翼の取り付け角度を変更するのと同じですので、上下の作動角は其々5度以内・・・。後縁側の先端で5mm以内の動きと覚えておきましょう。通常のエレベータの最大作動角・・・上下に20度も動かすと機体は暴れて操縦不能に成ります。(Part-2に続く)