✈ 霧ヶ峰式 鷹号 (セミスケール設定・工房オリジナル機) Part-2

 
● 本機に採用した翼型は(Gottingen477=ゲッチンゲン477)です。ゲッチンゲンと言えば、翼の下面がえぐれた大変浮きの良い翼型を連想する人が多いと思います。しかし・・・代表的な翼型の中には、フラットボトム翼(翼型の下面が直線)も有り・・・一条氏がガルモデルの製品である各種グライダーに採用した、ラムロッドと座標が酷使しているので使いました。

● 作図が簡単な上に最大翼厚が10%なので、ある意味走る翼型に属します。スロープソアリングは、機体の上部も下部も見ながら飛ばせる面白いカテゴリーです。常に愛機のお腹を観ながら飛ばすグランド・サーマル飛行ではありません。よってスロープサイトの有効範囲一杯を使って遊べるので、進入性の良い走る翼型の方が飛ばすのに楽だったりします。
 
● 本機の主翼は治具を使わずに、ある程度の正確なリブ組みとプランクを行う一般的なモデラーの工作方法を使います。本機は生地完成状態でオーナーさんにお渡しするんですが・・・、梱包箱を小さくする為に、通常通りの主翼二分割で構造体を造り、カンザシを埋め込んで左右の主翼を結合・・・ワンピースの主翼と成ります。更に・・・エルロンサーボが左右の主翼に振り分け搭載されるので、リードハーネスが通し易い構造も採用しました。多分・・・大手メーカーも使わない構造でしょうね。
 
● 下面プランクの一部が全面抜けています。リブに抜いた孔は、リードハーネスを通す為です。この構造は、生地完成の主翼にリードハーネスを通し易くする為です。プランクが切れてたら、主翼が捻じれ易く成るじゃないか!って思うのは見切り発言ですよ。本機のエルロンはフルタイプじゃ無いです。翼端エルロンです。よって翼根から翼端サーボの搭載位置まで抜けるだけで、残りはプランクしてしまいますので、フィルム等で被覆してしまえば、主翼が強度不足で飛行中に捻じれる事態には成りません。
 
● 本機の翼端は完全なる半円ですので、既存の翼型に沿った翼端の形状ではありません。実機鷹号は翼の上面に下半角が付きますが、模型機では翼の下面に上反角を付ける構造にしました。翼端手前のリブのピッチよりも間隔が広いので、補助リブも入れなければなりません。見た目は簡単そうですけどね、意外と複雑な構造なので部品取りの加工が複雑です。
 
● 当工房の機体の特徴なんですが、翼端先端にまで到達するメインスパーを採用しています。翼端リブに大きなムクのブロック材を貼り込む楕円翼よりも・・・リブ組した方が軽量に、且つ・・・丈夫に成るからです。仮に、着陸失敗で翼端を地面で叩いても、壊れるのは翼端のみ・・・。主翼の後縁やエルロン迄破壊する自滅の事態には成りません。後縁を引き裂かれた主翼・・・修理する気に成りますか?・・・。何とか元の形状に戻せても、多分荷重強度は元には戻りませんので、飛行中に破損して墜落するでしょう。
 
● この楕円の翼端のリブ組み構造なんですが、この翼端の楕円の形状が何であれ・・・一度でも自分の考察で構造体を組み上げる事が出来ると、色んな構造での楕円の翼端が出来上がります。当工房の構造もその一つに過ぎません。翼端の下面は上反角付きのフラットボトムですが、上面は翼型に沿った仕上がりになります。
 
● 楕円の翼端に貼り込んだ厚い楕円の部材を、翼型に削る手順です。本機の主翼は翼根から翼端まで、同じ翼弦長の矩形翼です。よってメインスパーに平行に定規を置くと隙間が見えません。ですが・・・楕円の部材は翼型では無いので、画像中央の二枚積層リブには隙間が出てます。この隙間を無くすには、楕円の部材を翼型に削れば良いんですよ。此れだけは現物合わせなので、少しずつ粗目のサンドペーパーをホルダーに着けて削って行きます。何度も定規を充てて確かめながら削りましょう。
 
● 楕円の翼端の中には補助リブを取り付けました。この補助リブの削りも基本的には翼端部材の時と同じです。今度は翼端部材と二枚積層のリブが基準ですので、補助リブを少しずつ削って仕上げます。翼の中央側に設けた凹んだスペースですが、この位置にリードハーネスのコネクタが内蔵されます。
 
● この位置に取り付けたリブは厚みが10mm有ります。一部をコの字型に切り取ってPVC樹脂のブロックを埋め込みます。胴体側板の内側にも同じブロックを埋め込みましたが、この間に支柱を這わせて主翼を保持する支柱を取り付けます。その支柱の両端に取り付けるアジャスターのブラケットを其々取り付ける台座と成ります。
 
● 私の模型歴がまだ一桁年代だった頃・・・ラジコン技術誌に自作の飛行機を定期的に連載していたモデラーさんの記事を観ていて、おもしろい事を発見してしまいました。このモデラー毎の特徴を掴める様に成ったら、知らず知らずの内に自分自身の自作模型にも特徴が有る事に気づきました。

● 誰でも最初は誰かの真似から始まります。最初から自分自身独自開発のラジコン模型ってのは存在しません。世の中の知られたF3Aの世界チャンピオンと呼ばれる大御所さん達も、最初は誰かの真似から始まるんです。その後・・・一通りの技術と知識が身に着くと、自分では気づかない内に誰もが納得する独自路線が身に着きます。ただし・・・其れは周りのモデラーが気付いているだけで、実はご本人は他人から言われて気づく場合が多い様です。

● 私の飛行機の構造を独特だと評する大御所は多いんですけどね・・・私は実物機の世界の構造修理をやっていたので、模型機と実物機の構造の類似点と其々独特の異なる点の両方が解るんです。よって模型機に有効な実物機の構造もありますので、それらを模型機に応用しているだけです。其れが周りのモデラーから見れば独特に見えてるだけですよ。

● 模型機のバルサキットは、部品点数を多く作ると人件費を含む生産のコストが上昇します。部品点数を減らすと生産コストが下がるので、価格は安くなりますが・・・今度は組み立てる技術のレベルを選ぶので、万人向けの汎用性が無くなり数が出ません。所謂人気が無いバルサキットに成るんです。部品を減らす分、作れるモデラーにとっては自分独自の技術を盛り込めるカスタム感覚の面白いキットには成るんですが、そういうモデラーはホンの僅かしかいません。大手メーカーさんのバルサキットは、常に購入者のレベルに合わせた内容のキットを販売するので、多くのモデラーからの支持が得られます。

● 大手メーカーのバルサキットにケチをつけて、お仲間掲示板で悪口三昧吠えてるモデラーってのは、多分購入したキットの基本的なコンセプトも解らないど素人さんでしょう・・・。大した知識も持たないのに、性能向上の為に改良したのに上手く飛ばなくなった・・・と文句を言ってますが、其れは改良したのではなく・・・独自のデザインに変更する為に単なる改造したに過ぎないので、その性能が丁半博打に成るんですよ。メーカーの指示通りに完成させていれば、誰もが認める高性能機に成った筈・・・。其れでも気に入らないのであれば、自分で材料を刻んだ自作機を作れば良い・・・。
 
● ホームセンターでも購入可能なPVC樹脂の角棒を加工して、胴体と主翼の間を繋ぐ支柱のブラケットを作ります。アルミ板の加工が出来る人は、部品を切り出して折り曲げれば同じ物は出来ます。どちらも部品取りは面倒臭いのですが、任意の角度が必要なので市販品が有っても使えません。
 
● ブラケットの取り付けはこの状態・・・。実物の鷹号とは支柱の使い方がの意味合いが少し違います。実機の場合は飛行中に主翼の下面に掛かる、主翼を持ち上げようとする風圧に耐えられる様に支柱を入れて補強しています。主翼が下がるのを防ぐ意味では無いのです。模型機の場合は、主翼はワンピースですし・・・別組みのパイロン上部の天板にビス止め固定されますので、バンザイ防止と言う実機とは少し違って、パイロンがヨー軸方向に捻じれない様にする為の補強です。
 
● どこかで見た様な白い樹脂パーツ・・・。OK模型のフレキシブルロッドの星型のインナーパイプです。支柱板は中心にヒノキ棒を挟んだバルサとヒノキで構成されています。先端には星型のインナーパイプ・・・。このパイプには、直径2mmの長ビスを捻じ込んで、頭を飛ばして寸切り加工しました。
 
● パイプを埋め込んだ中芯の両面に1,5mmのバルサを貼り込んで、周りの角を落として滑らかな翼型で成形すると・・・支柱っぽくなりました。この模型機用の支柱・・・実機程の強固な支柱では有りませんが立派に機能します。こういう細い支柱は、圧縮すると簡単に湾曲するんですが・・・引き延ばそうとしても延びずに踏ん張ります。主翼が頑丈なので、ヨー軸に荷重が掛かると胴体と一体になったパイロンには、ヨー軸方向の捻じり荷重が入ります。この捻じる荷重をパイロンの前後に配置した二本の支柱で踏ん張ってもらいます。引っ張りたくても支柱は延びませんので、もう一方の支柱にも圧縮の荷重は掛かりません。双方の支柱が其々いい仕事をするので、パイロンの捻じり荷重が粗皆無に成るんですよ。
 
● オーナーさんにはこの分解度合いで発送しました。胴体内部のスチレン構造体には、何の驚きも見せない大御所ですしね。既に初号機のコメートの構造で,馴れておられました。見た目以上に胴体が頑丈なのは、流石にびっくりしてましたが・・・。今後のこのスチレン構造体の行く末ですが、本格的なスタントグライダーにも使ってみたいですし・・・スパン4000mmの大型グライダーの胴体や、一部動翼の内部構造体にも使ってみたいと思います。
 
● その後3週間ほどしてから、オーナー氏よりメカ積み生地完成状態の画像が送られて来ました。エルロンのホーンが主翼上面からリンケージしてありますが、此れは当工房からの指示です。主翼と胴体を繋ぐ二本の支柱と、エルロン操作のロッドが翼の下面では干渉しますので、上面でのリンケージをお願いしました。ただし・・・サーボの搭載は、翼下面から行います。
 
● 被覆にはヴィンテージフィルムを使われたようですね。何処となくレトロっぽい雰囲気を醸し出す絹目調のフィルムですので、昭和の当たり前の絹張り塗装仕上げの雰囲気が楽しめるフィルムです。リンケージロッドが付けて有るので、既にメカの搭載も終え・・・この広大なお庭で、何度となくの滑空テスト・・・。初飛行はお仲間さんと大観峰で行うとの事。(Part-3に続く)