✈ NV-02 (Hex) 劇中架空戦闘機の模型化 Part-1 (2) (3) (4)

  
● 本機はローランドエメリッヒ監督作品である(インディペンデンスデイ)の続編であるリサージェンス編で登場した戦闘機を模型化しました。模型化と言っても実物が存在してる訳でも無いんですよ。コンピュータグラフィックで描かれた架空戦闘機ですから・・・。ただ・・・模型化して飛ばすには、其れなりのセミスケール設定にしないと満足に飛ばないと思いました(笑)・・・。

● 本編においてのこの戦闘機は、重力制御の核融合エンジンを浮上に使い、出力は然程大きくないスクラムジェットエンジンを搭載したハイブリット戦闘機として登場します。インパルスエンジンと言われる通常の内燃焼機関のスクラムジェットは、大気圏内飛行用・・・重力制御の核融合エンジンはVTOL浮上を含む宇宙空間飛行用・・・よいった扱いなのかもしれませんね。

● 重力制御が出来るって事は、戦闘機の全備重量をゼロに出来るので・・・推進用のエンジンは、馬鹿みたいな出力は必要無いって事ですよ。機体のデザインを観ても・・・かなりスリムなボディですし、インテークが主翼の下面に横に長く小さいですし・・・令和の現在、研究開発されているスクラムジェットエンジンは、特別な燃焼室を必要としない構造が物凄く単純なエンジンにも関わらず、現在の軸流式ターボジェットエンジンの10数倍の出力が出せるエンジンとして期待されています。ですから・・・この劇中に登場する戦闘機のインパルスエンジンは、中規模な出力のスクラムエンジンだと想像できます。

● ただし・・・本機は無動力設定の強風用スロープグライダーです。風速10メートル域で、劇中戦闘機の挙動が実現できるだろうコンセプトで設計しました。よって重心さえ合えば・・・普通に飛ばせる飛行物体になります。さて・・・この劇中の各戦闘機の設計に当たり・・・特別な三面図も無ければ、動画サイトに世界中のモデラーが造ったであろう手抜きバリバリのラジコン機は無いものかとネット検索するも・・・令和の現在で真面な機体は見つけられず・・・。一機だけ段ボール紙で作ったプッシャー機のみ見つけましたが、他の作品は未だ見つかりません。
 
● 本機製作を始めるにつき・・・資料をどう集めるのか・・・。此れが最大の難点でした。飛行中の画像を何度も観ながら、静止画にして細部を舐め回し・・・取り敢えずスケッチを数枚・・・。見えてきたら閃きました!・・・。量産していたNVシリーズのNo-2仕様の機体に酷似していたので、其のまま流用・・・。デルタ具合も主翼の縦横比も似ていたので、セミスケール設定だし・・・重心も合わせ易いしと悪い所が見つからないので、其のまま原寸図面を引きました。

● 1996年に映画化されたインデペンデンス・デイ(ID4)に登場した地球侵略のエイリアンは、1950年代のロズウェル事件を元に作られました。エイリアンの特徴は、昆虫種族が知性を持ちヒューマノイド化した様な外見・・・更にバイオスーツが無いと環境に適応出来ない点が挙げられます。地球をエイリアン種族の環境にテラフォーミングしないと侵略が出来ない所がネック・・・。その為には、地球人類の抹殺無くしては実現できないので、強力な軍事兵器で攻撃して来ます。

● 続編のリサージェンスでは、個別の艦隊の旗艦が登場しますが・・・その大ボスがエイリアンの女性であると共に、地球上の生物である蜂の習性を有したエイリアン種族です。所謂・・・女王バチを軸とした働きバチの集団が、巨大なコロニーを形成して、宇宙を侵略して廻っている言う事ですなあ・・・。よって惑星の資源を取り尽くしてしまえば、もうその星に用は無いので次の侵略に向かいます。此れは彼らの自然な生存本能なんですが、自分たちの種族の生存を最優先とし・・・その他の種族は犠牲にするという行為が、今回の侵略の敗因とも言えます。科学技術が同等なら勝敗は物量次第・・・。ただ・・・相手が原始的生物の場合、必ずしも勝利するとは限らないんですなあ・・・。アメリカとベトナムの戦争みたいに、ハイテク使っても・・・ベトナムの地理的状況の下では、ローテクの長期に渡る抵抗勢力の方が勝る場合も有る・・・。
 
● 静止画像を見る限り・・・この戦闘機は主翼に上反角が付いています。デルタの無尾翼に上反角設定なんて、あまり聞かない所なんですが・・・。考え様によっては物凄く自律安定の良い無尾翼機に成りそうな気配です。ただ・・・ロール軸の制御は、上反角による自律安定が優先するので、アクロバットには不向きとも言えます。主翼後部のエレボンだけではアクロ飛行は難しいかも知れません。

● デルタ機に限らず・・・この様な半対称翼型や、完全対称の翼型の場合・・・上反角設定に入れ方を間違う初心者が、平成のラジコンブームの時代には沢山居ました。基本…クラークYに代表されるフラットボトム翼の場合、翼型の下面が直線なので翼下面を基準にカンザシを入れて上反角設定を行います。ところが、翼の下面も膨らんだ翼型には、この翼下面を基準とした上反角設定が出来ません。下面を基準に上反角を付けた半対称・完全対称翼の場合・・・額面上の主翼の迎角が増える計算に成るので、胴体が異常とも言える位に下を向く結果と成るので、機体を操作しても機首上げが難しく成るでしょうなあ・・・。

● 半対称翼型の場合・・・その翼弦の基本線は翼の内部に有ります。よって本機の主翼の上反角設定は、画像の様な翼の最大厚に対応出来る幅の広いエルロン材から切り出します。俄かには信じられないでしょうけど・・・主翼の前方図面を引いてみると、画像の様なテーパー材が図面上に見えて来る筈ですよ。
          
● 然程の上反角は無い様に見えますけど・・・立派に上反角が付いています。主翼上面から見える挟んだテーパー材が、前後の幅が中心付近よりも広いので、正確に付いてる様に見えませんが・・・此れが正解です。フラットボトム翼でも主翼の上面は、こう成りますよ。

● 映画の設定が蜂をモデルにしたからでしょうか・・・このエイリアンの技術を元に設計された戦闘機のデザインは、六角形を基準に作られています。その形状が当工房のNVシリーズに酷似していたので、其のまま使ったんですけどね。さて・・・何処まで似るでしょうかねえ・・・。実は作ってる本人も楽しみなんですなあ・・・。既に性能の良さは(NV-01型)で立証された主翼を使ってるんで・・・。まったく未知数の主翼ではありません・・・。ある程度の飛びが約束された状況での、機体製作程楽しい事はありません。
 
● 画像に見える蛇腹のホースは、エアコンのドレーンパイプです。全長200mmのパイプで9グラムしかありません。内部直径は18mm強なので、リードハーネスが楽々通せます。本機の胴体も六角形・・・。全てがヘキサゴンで構成された機体デザインと言うのも面白いですね。其れをスチレンとバルサの混合構造で作るというのも面白い・・・。言っておきますが、本機製作には糸鋸盤は使いません。材料のカットと成形には全てカッターナイフを使います。要するに・・・特殊加工重機が要らない設計なんです。
 
● 自由設計とは言っても・・・製作途中の私でさえ、内蔵するドレーンのホースを観て・・・何処となく未来的な構造を予感する事があります。通常なら油圧液が詰まる配管でも、当工房の作風ならテグスワイヤーやら電源線が通っている場合が多いです。特にDF模型を作る場合、後部胴体の大半はダクトユニットなので、残った胴枠の空間にテグスの両引きリンケージを通して、フライングスタビライザーを作動させるのは当たり前です。今回は無動力のグライダーなので、劇中戦闘機みたいなスクラムエンジンは搭載しません。よって!インテークもエグゾーストも省略しました。その結果がスリムなデザインにも貢献しています。其れでも・・・駐機の見た目や飛行中の見た目は、劇中戦闘機とイメージが重なります。

● 初期型の一号機は、画像の機体よりも、もっとシンプルでした。ハッキリ言って人様に見せられるモノではありませんでした。テスト飛行も俵山や大観峰といったメジャーサイトを外し、夜峰山で行いました。斜角は平尾台以上大観峰以下・・・。大観峰の最大リフトアップは、展望所の先の垂直な絶壁ですが、覗き込まないと地上が見えない程なので大変危険です。平尾台は逆に斜角はお手頃なんですが、カルスト台地なので草に隠れた岩だらけ状態です。ロストした機体を回収するのも一苦労。双方のサイトの良い所を両方持ってるのが、夜峰山なんです。拾いに行けるし滑落しても途中で止まれるし・・・ただ難点が・・・。西風専用と言う点と後ろに廻して着陸が出来ません。遥か谷底からサイトの稜線に沿って上昇させる着陸しか出来ませんしねえ・・・。初心者対応じゃ無い所が難点・・・。
 
● 本機のコクピットの工作も基本的には(NV-01型)と同じです。機首側胴体と主翼側胴体を別々に作って後から合体です。本機の場合は、キールフレームをスチレン材で構成しました。厚さ5mmのスチレン材で六角胴枠を形成させると、内部を大きく抜いても頑丈なのは解っていましたから・・・。
 
● 本機の機首側胴体ですが、今の状態ではまだ不格好ですなあ・・・。しかし・・・此れがすべて完成すると、中々のカッコいい飛行物体に変身するんですなあ・・・。此れって原寸の三面図やイラストだけじゃ解らないんですよ。フィルムを貼ってメカ積んで、強風のスロープでぶん投げて初めて解るんですけどね。もう既に試作型が飛んでるので、本機は二機目なんですなあ・・・。色々と肉付けして作ってるんですけど、飛ぶのがすでに解った状態からのドレスアップなので作るのが楽しいんですよねえ。
 
● この劇中戦闘機はインナー側のメインウィングとアウター側のサブウィングがあるんですが、このインナー側の翼にはスクラムジェットのスラスタベクタリング機能と共に、動翼も一部描かれています。ところがアウター側のサブウィングには、その動翼らしきものが見えません。大気圏内飛行(主に空中戦)を行う場合、機体が機敏に動いていますので・・・多分アウター側のウィングも何かしらの動翼が無いと、機敏なロール軸には対応出来ません。今考えられるのは、翼全体を動かすフライングエルロン機能でしょうね。現実世界の戦闘機と比べてみて、この劇中戦闘機のサイズはフランスのラファールやミラージュ2000よりも小型です。アウターウィングのスケールサイズは、(F-18=ホーネット)のフライングスタビライザーとほぼ同じです。

● ならばフライングスタビライザーで全翼のエルロンを搭載すれば良いのです。過去の数十年に及ぶラジコン業界において・・・個人モデラーさんの多くが、この主翼自体の迎角変更によるロール軸制御を試みて来ました。ただ・・・どの機構も常に直面するのが、可動軸のガタによるフラッターの発生です。当工房でも色んなサーマル系グライダーの主翼に、この迎角変更ロール軸制御機能を取り付けましたが、何時もガタとの戦いでした。

● スパン1800mmのグライダーならば、片翼分のスパンは900mm以内です。翼端側から150mm前後・上下に5度も動けば充分エルロンとして機能します。ただ・・・リンケージが問題なんですなあ・・・。一番確実なのはハイトルクサーボの出力軸を直接太いパイプ毎回転させれば良いんですが、このハイトルクサーボ自体が大き過ぎて翼内に納まりません。よってソアラータイプではスパン4000mm近い大型機なら使えますが、小型HLGに搭載は不可能です。別のリンケージを模索している矢先に、本機製作を思い立ちました。ただ・・・今の所はまだ不完全な搭載ですけどね。
 
● アウターウィングの全翼稼働を行う機構は此れだけです。PVC樹脂のブロックとビニール製のパイプ(グレー色)は、アウターウィングに装着します。外径6mmのカーボンパイプは、主翼側に固定します。その内側を可動軸となる4mmのカーボンシャフトが回転します。この4mmのカーボンシャフトは、アウターウィングに内蔵された樹脂ブロックに差し込まれビスで固定です。あまり見かけない構造でしょ?・・・まあ、見方によっては無駄機構って言われるんですけどね?(笑)・・・。

● でもですね・・・よく考えて観て下さいね・・・。フライングスタビライザーのシャフトが長ければ長いほど、フライングスタビライザーのガタは減る事に成るんですよ。要するに・・・通常なら4mmのカーボンシャフトがカンザシで、外径6mmのカーボンパイプがスタビに埋め込まれる簡単構造なんですが・・・。本機の構造では、この6mmパイプがカンザシに成るんです。よってビニール製のパイプがカンザシ受けのパイプです。カンザシは長い方がガタは少なく成るんですが、この機構・・・インナーシャフト(4mm)とアウターパイプ(ビニール製)がフライングスタビに内蔵されるので、ガタは殆ど出なく成るんですなあ・・・。この複雑な回転機構をベアリング無しでやる為の工夫なんです。
 
● 此れがアウターウィングの中芯材です。5mmのスチレン材の形状が其のまま最終の形状に成ります。シャフトの取り付け位置は、このアウターウィングの前後が吊り合う位置です。要するにアウターウィングが完成形に成っても、ニュートラルで吊り合うと・・・、サーボトルクに余計な荷重を与えなく成るんです。実機がよく使ってるでしょう!・・・ヒンジラインを中心に動翼の反対側に設けるマスバランサーという機能・・・。動翼がマスバランサーの重りで重量が軽減されると、実機ならパイロットが助かり・・・模型機なら搭載サーボが助かります。
 
● 翼型は両端のみ・・・。翼型形成は数本入れる高さの違うスパー材のみです。好い加減な構造に見えますが、小型機の全面プランクの主翼なんて、此れで充分なんですなあ・・・。当工房の(F-20=タイガーシャーク)は、70mmDFユニット・4セルリポで飛んでますけど、主翼の最大厚は6%の半対称翼型です。構造は・・・このまんま(笑)・・・。造りが簡単!捻じれない!・・・そして極めて軽量!・・・ただ一つの難点は、タイヤが納まり難い(笑)・・・。市販のタイヤじゃ無理なので、ホイルを自作してタイヤは硬質スポンジをボール盤に取り付けて削り出しました・・・。
 
● カーボンシャフトのユニットは、この翼型の棒材に埋め込まれています。そしてこの翼型の棒材は、インナーウィングの翼端に接着固定されます。此れがフライング全翼エルロンの機構です。構造を簡素化し・・・動きはベアリング無しなので渋い部類ですが、その渋さが回転軸のガタを軽減しているんです。更に軸を中心に前縁側と後縁側の重さが吊り合っていて・・・比較的軽いアウターウィングとなれば、テグスワイヤーの両引きでサーボの出力のガタも皆無・・・フラッターの発生を極力抑える機構の完成です。
 
● インナーウィングに取り付けるとこんな感じです。然程大きく主張していない位のアウターウィングですね。この状態で捻じり下げが2度付けて有るんですが、此れでニュートラルです。(NV-01型)よりも翼面荷重が大きく成りますので、どちらかと言えば強風コンディション用の機体です。このカスタム量産も可能なセミオーダー機・・・どれほどの暴れっぷりを見せるのか・・・今から楽しみですなあ・・・。還暦オヤジのお遊び機にピッタリの一品です。(Part-2に続く)