VEGA Ⅰ型 (NO-11) 山本昇氏オリジナル設定機 Part-1 (令和4年改定版製作記事)
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 ● 私が中学生の頃、ラジコンを始めて間もなく本屋で買ったラジコン技術誌に掲載された本機の製作記事が、今の私の人生を決めてくれました。長い長いラジコン模型とのお付き合い・・・まさか、業界まで経験して自分の工房を開くなんて、人生とは不思議なもんですなあ・・・。当時はラジコンを始めて間もない頃・・・所謂ガチの初心者でした。そう!・・・初心者程、ベテラン仕様の機体を欲しがります。しかしながら平成のラジコンブームに蔓延した恐ろしい事態に成る事無く・・・年月を重ねた先に・・・自分で作ってしまえる程の製作技術が身に着くとは・・・。何でも同じなんですけどね、続ける事が大事なんですよ。現に形に成ってますから・・・。
  
 ● まずは本誌掲載の図面から自作用の図面のデータを拾い集め、1/5の図面を作成します。そんなまわりくどい作図なんて要らんだろう!ってのが、閲覧しているモデラーの大半でしょうけどね、このラジコン技術の掲載図面・・・胴体の全長は実寸で198mmです。本機の機体全長は1150mm・・・更に言うなら、この掲載図面はコピーした時に色んな設定がズレた状態でコピーされてますので、其のまま実寸大に拡大すると色んな所の寸法は設定が狂ったまま作図する事に成るんです。よって、その事に気づかず機体が完成・・・さあ!飛ばすぞ!っと、投げた瞬間の最初の挙動に戸惑う羽目になります。そう!・・・山本さんの紙面によるフライトの模様とはかけ離れた飛びをしてしまう・・・といったギャップに陥るんですなあ・・・。

● 其れを防ぐには、まず実寸拡大し易い縮小図面を正確に作成する事が大事なんです。まずはこの掲載図面の機体全長198mmを(1,031倍)して1mm方眼紙に表記し易くする為に、全長230mmに拡大します。本機の実寸全長は1150mmなので、この新たに作成した縮小図面を5倍に拡大すれば良いんですなあ・・・。だからある程度は正確に記載していく必要があるんです。当工房が持っている2500機分の航空機のモーメントデータ・・・この縮小図面が平たく言えば2500枚在るって事ですよ。この縮小図面は実機と模型機の図面なんですが、全てが模型飛行機用の設定で引き直したデータです。実機を其のまま縮小しても、まあ色んな弊害が出てしまい、図面を書いてる時に「多分、重心合わねえし、飛ばねえだろうなあ・・・。」って事まで見えて来る飛翔体は、迷わず模型機設定に変更・・・。完成した機体をメジャーでも持ち出されて計測されない限り、バレる事も無いセミスケール度合いって所ですね。
  
 ● どんな飛行機の製作記事においても・・・機体の組み立てに必要なデータは凡そ記事に付属のイラストや文章に書き記してあります。まずは製作者の頭の中を正確に読み解く事が必要です。斜め読みで読み飛ばすと、肝心要な要点が見抜けなくなります。キットを製作する場合、最近は組立てマニュアルを詳しく記載した小雑誌が付いて来ます。これ等を熟読してから組立てに入ると、接着剤を塗る前に自分の誤りに気づけるので・・・責任転換のキットメーカーさんの悪口を、お仲間さんの掲示板に書かなくても良くなりますよ(笑)・・・。
  
 ● さあ!次の作業です。新たに書き記した縮小図面からデータを拾って、今度は実寸大の図面を引いて行きます。当工房にはこの縮小図面が2500機種分有るんですが、実寸拡大図面は数百枚程度しかありません。何故なら実際に作った機体が300機前後だからですよ。長年模型作ってるとですねえ・・・判って来る事も有るんですが、全然形状の違う飛行機でも、モーメントデータを調べると共通だったりするんです。よって作らなくてもその飛翔体の使用目的で素性が見えて来るんですよねえ・・・。よって実機のセミスケール設定の場合は、拡大するサイズもマチマチなので、作りたい時に作るを優先してデータだけ保存しているんです。其れ全てがアナログデータですので、ネット上からハッキングされる心配も無い・・・。当ホームページの理念である、アナログ全開!とは文字通りのアナログです。まあ・・・ネット普及以前の高度成長期の資料保存と同じって事ですかね。縮小図面はファイルして本棚に・・・実寸図面は筒状に丸めて保管するって奴です(笑)・・・。
  
 ● 原寸図面から主翼の翼型の作図を行います。山本さんの解説では比例コンパスを使った作図方法が記載されてます。当工房も比例コンパスを使って作図していたんですが・・・ある日、其れを止めました。要らなくなったからです。もっとアナログなんですが、その方が自分にとって扱い易いって判断したからなんですけどね。多分・・・比例コンパスが出現する以前の作図法に戻ったって事ですなあ。義務教育で習った幾何学の法則を使えば簡単なんですなあ・・・。ただし、比例コンパスを使った方が簡素化できるって類なので、使うか使わないかは個人次第・・・。そんなクラシカルな手順でも、正確な翼型って引けちゃいますから・・・。
  
● 当工房の機体製作の場合、まずは作図した部品は全て形紙状態にします。要するに作図した部品を直接材料に糊で貼り付けて切り出すって手順を使いません。用紙の裏に厚手のケント紙等を貼り付けてから切り出します。此れなら資料として長く保存できますしね。注意するのはこの翼型って奴は、実際に組立てる場合はプランクするバルサ等シートの厚みを差し引いた寸法にしなければ、指定された翼型には成らないのです。作図した翼型に直接プランクしてしまうと・・・その高性能は翼型は、別の丁半博打の様な翼型に変化してしまうのです。平成の狂信的な便乗組モデラー諸氏の自作飛行機・・・不思議な翼型が多かったですなあ・・・。ご本人だけでなく、その取り巻きのお仲間さん達も気づいていませんでしたなあ・・・。大した知識も持たずに、大手メーカーさんのキットを大改造!。ご本人は改良したって思ってるけど、明らかな性能低下でしたしねえ・・・。何でそうなっちゃったのか、ご本人自身が解らない・・・。説明書の読み飛ばし以前の問題なんですが、知識も乏しい技術も乏しいと最悪、こんな状況に成ってしまうんですなあ・・・。
  
 ● 此方は胴枠の作図です。掲載図面と自分で作図した原寸図面とを照らし合わせて、抜けてる箇所が無いように正確に作図して形紙を取ります。部品の中には10mm厚のバルサを使った物も有るんですが、傾斜させて取りつける10mm胴枠の場合、図面通りに抜いてしまうとやり直し(作り直す羽目の意味)になるので注意が必要です。多分、平成のラジブーム中に、本機に挑戦して返り討ちになったモデラーも居るんじゃないですかねえ。垂直尾翼内部の胴枠には傾斜させて組み込む部品も有るんですなあ。よって垂直に溝切しちゃうと部品が取り付けられなく成るんです。そういうトラップみたいな胴枠もあるんですなあ。
  
 ● ベニヤ胴枠は3mmベニヤにトレース・・・厚さ5mmの胴枠は2mmと3mmのバルサを別々に切り抜いて積層、10mmの場合は2mmバルサの5枚積層です。中央画像と右端奥の部材は傾斜して取りつけるので、其々貼り合わせの段階で上下にズラして貼り込みます。実はですねえ・・・そういう一文の記載が記事には無いので、図面を読めないモデラーさんには解らない・・・。山本さんの記事がある程度の模型歴を持ったモデラー向けなので、まあ便乗組の俄かラジコンモデラーには見抜けなかったんでしょうなあ・・・。まあ、糸鋸使えば10mmバルサなんか楽勝だ!って思っていたら、この部材で苦労するんですなあ・・・。もし!、天下のOK模型が本機のキットを作った場合、やっぱ積層部品にするでしょうなあ・・・。レーザー加工するでしょうから・・・。
  
 ● 傾斜角度は実寸で5,5mm・・・。ズラしただけではストリング材は入らないので、傾斜角をボールペンで書き記して細い組ヤスリで成形して溝を作っていきます。二枚貼り合わせの胴枠は5mm厚ですが、画像に見える段差はプランクシートの厚み分です。5mm厚のバルサシートで切り出して、プランクシート分の段差を作るのも一つの方法ですが、貼り合わせた方が工作手順としては早いと思いますよ。カッターナイフで切り出せますからね。
  
● 機首に動力装置を搭載する場合は、其れほど気にする必要も無い工作法です。無動力機の機種の場合・・・側板のカーブがきつくなる傾向に在ります。嘗てのガルモデルのキットで、多くのモデラーさん達が苦しんでいた胴体側板の正式な工作手順です。画像に見える短い部材は胴体機首部分の内張り材なんですが、多くのモデラーさんはこの内張りシートを限りなく平面の定盤で正確に接着していたので、その後の作業が難しく成ってしまいました。内張り材の貼り込みには2時間硬化のエポキシを使い、画像の様に湾曲させて接着を行います。すると側板材は画像の様に湾曲した状態で仕上がります。此れがガルモデルのキットの正式な工作方法です。嘗てのザノニアのキットで機首先端の胴枠と主翼取り付けの胴枠幅・・・2倍近い差を絞る工程・・・どうやったらこんなに絞れるんかいナ!・・・っと途方に暮れたモデラー諸氏・・・こうすれば良かったんですなあ・・・。

● 側板の外側に添え木を当ててゴムバンドで絞る?・・・。まあ、其れも一つの方法ですなあ。硬化中に瞬間接着剤をドボドボ流して促進スプレーでダメ押し・・・も一つの方法。ところがスロープサイトの着陸アプローチで、激しく頭から地面とゴツン!・・・。回収したら機首先端が朝顔状態になって激しく損傷・・・。綺麗に仕上げた愛機の処女飛行後がラスト飛行になったモデラーさんも多いのでは?・・・。ガルモデルのキットに付属していた原寸大の図面には必ず記載してありましたよ、上記の製作手順が・・・。ネット上の個人モデラーの製作記事を観ていて、玄人さんでも間違った工作法で最後は力技・・・。問題なのは後に続く新参モデラーまで右へ習うんだもの・・・、オークションで手に入れたガルモデルのキット製作記事で大いに悩み捲ってましたなあ・・・。もう!文句タラタラでしたもんねえ(笑)・・・。
  
● 見慣れた部材の取り付けです。此れ全て3mm角のヒノキの棒材・・・。いよいよ胴体の組み立てです。湾曲させた側板の支障に成らない様に、機首部分のヒノキ材には切り込みを入れてあります。この左右の側板は部材追加後も必ず同寸法であり、左右対称でなければなりません。取りつける胴枠も特別な加工以外は、必ず左右対称である事。更に勘合する溝は、無理矢理はめ込むのではなく・・・甘過ぎず、きつ過ぎずを心掛けましょう。
  
● 胴体内部の胴枠毎に治具を取り付け、胴体の中心軸を強制的に出しています。この状態で胴枠を接着するんですが、接着剤には2時間硬化のエポキシを使いました。この内部胴枠の各種勘合溝は、甘過ぎずきつ過ぎず丁度良いはめ具合で接着剤を塗り込むと、画像の様に治具状態で暫く置いておけば中心軸を保ったまま正確に仕上がります。画像では省略しましたが、外側板から胴枠数か所の位置にはゴムバンドと専用当て板で接着剤が硬化するまで固定しました。
  
● 現在最後尾の胴枠兼垂直尾翼の支柱ははめ込んであるのみで、接着はしておりません。前方に見える同形状の胴枠は接着してあります。問題は画像の傾斜させた胴枠・・・。この10mm厚の胴枠はまだ仮固定中・・・。此処が山本さんの最初のトラップ的構造です。この傾斜した胴枠と最後部の胴枠間にはフライングスタビライザーのクランクユニットが取り付けられます。要するに・・・このクランクユニットを作らないと接着出来ないんですなあ・・・。よって作業が止まる(笑)・・・。
  
● 山本さんオリジナルのクランクユニットは、真鍮板とピアノ線を組み合わせて半田付けする構造・・・。さて!半田付けするとして、この真鍮製クランクの板に垂直にピアノ線を固定して、更に二本のシャフトを寸分の狂いも無く平行に配置して固定するのに、どんな治具を作ったのか・・・。そういった表記が無いんですなあ。此れも山本さんのトラップなのかも知れませんなあ・・・。ネット世代の技術の伴っていない知識先行型のモデラーさんには作れません。

● ただ・・・あれから半世紀近く経過してるんだが、ネット世代にはお馴染みのカーボンシャフトとカバベニヤを組み合わせればいとも簡単に作れるんですなあ・・・。画像の物体は、仮に山本オリジナルの素材を使ったとしても、この治具を使えば粗正確なクランクユニットを作る事が出来ます。この治具の肝は、この積層された木材にカーボンパイプを正確に垂直に立てる事。此を作る事が第一条件ですなあ・・・。多分、山本さんも同じ事考えたんじゃないだろうか。ただし、半田付けという高温溶着に耐えうる治具なら、木材じゃ無理でしょうなあ・・・。正確に切り出されたキューブ状の鉄の塊とか、ジュラコンとか・・・そういう素材で作った方が半永久的に使える治具に成るでしょう。
  
● クランク本体は1,5mmと2mmのカバベニヤを組み合わせて厚さ5mmとしています。シャフト二本は4mmのカーボン製・・・。この治具にシャフトを刺してクランク板を定盤面に固定した上で、エポキシをシャフトに塗り込み回しながら所定の位置で硬化させています。よって二本のシャフトはクランク板に垂直に立ち、更にシャフト同士は並行配置。しかし此のままではリンケージアジャスト不可能なので、厚さ2mmのサーボホーンを改造してクランク板に埋め込み接着・・・。
  
● クランクユニットを垂直尾翼の中に埋め込み固定する為の軸受けを作ります。ユニットのシャフトを保持するパイプは、長ければ長い程ガタが減って安定します。よって保持板には延長パイプを埋め込みました。さあ!山本さんのトラップを一つクリアしましたよ。まあ、ネット世代にとってはもっとスマートに、新世紀らしい素材と構造を期待したんだろうけど・・・3Dプリンター辺りを使ってとか?・・・。そないな超ハイカラな機械が要りまっかいナ~・・・。軸受けシャフト付近は厚さ5mmも有るんですよ。シャフトがキッチリハマる孔を開ければ其れだけでシャフトは安定します。1mmの真鍮板よりは確実でしょ?・・・。21世紀の素材と20世紀のキット素材を組み合わせれば、追従可能な古株モデラーは確実に増えます。コンピ~たあに不慣れな高齢ジェダイマスターにも作れるし・・・。
  
● 原寸図面から部品の形紙をを作ります。その形紙で部品を切り出し組み立てて行きます。本機の垂直尾翼はスタビライザー取り付け部よりも上は、次第に細く薄くなる構造です。よって削りも含めた部品取りが必要となります。過去・・・平成のラジブーム頂点辺りで、オールデコパネ仕様の手抜きヴェガを何処かのブログで見ました。主翼のサーボを埋め込んでのスタビライザーエレボン構造・・・。リンケージは細いピアノ線によるゼット曲げクランク・・・機首先端に剥き出しのブラシレスモーター・・・。主翼はもちろんデコパネなのでフラットな一枚板・・・。さて!・・・動画が無いので果たして飛んだのかどうか・・・。
  
● 垂直尾翼先端が細くなるとはこういう構造です。この構造を垂直尾翼後縁では形成しなければなりません。デコパネみたいな一枚板のバル組構造なら、然程構造的には難しくないんですが・・・。垂直尾翼の途中から先端に向けては次第に細くなる構造、更に後縁45度近い傾斜角です。3mm~5mmのバルサ板から切り出す方が、その後の加工が難しくなるんですなあ・・・。よって、テーパー素材の後縁材から切り出します。この指示も山本さんの記事には記載されていません。
  
● 見るからに複雑怪奇(笑)・・・。よくもまあ、こんな構造組めますねえ~・・・とはお仲間さんの弁。此の機体を組む前に、そらもう途方も無い永い年月を掛けて検証しましたからねえ・・・。半世紀近くも・・・。山本さんの構造的トラップはこの機だけにあらず・・・。私の知る限り全ての機種を今後作ってみろ!と言われたら、まあ造作もなく作れるでしょうなあ。山本さんの自作機がラジコン技術誌に多く掲載されたのは、その工作度合いが当時のラジコン世界では編集部のみならず、多くのモデラーから指示されたからでしょう。ただ、読み物としては大変面白く、追従するかどうかは個人の力量次第・・・。バルサ材市販キャノピーは手に入るけど、その他の部品は技術の差がモデラーを選ぶ訳で・・・。さて!令和の21世紀初頭の現在、どの位のヴェガ製作挑戦者が現れるか・・・期待しています。ただし、改良と称した手抜きだけはしないで下さいね。性能が丁半博打に成ります。(Part-2へ続く