Alexander Schleicher K8 (FLAIR製) 構造体はほぼベニヤの大型スケールグライダー Part-1
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● 舶来製の大型グライダーキットのご紹介です。まず・・・このキットの箱の状態、ズシリと重い・・・が第一印象・・・。ベテランさんならこんなの飛ぶんか???でしょうな。其れが全くの初心者さんなら、所狭しと詰め込まれた部品の数々・・・値段の割にはキットの箱も重いし、何だか得した気分!・・・と言うのが実感でしょうなあ・・・。キットの内容が重けりゃ高い・・・軽けりゃ安い・・・が、ラジコン飛行機入門者の最初の実感・・・。大きい廿楽なのに馬鹿みたいに軽いは何だか損した気分でも、小さい廿楽が馬鹿みたいに重かったら、そりゃあ得した気分に成るでしょうなあ・・・。ベテランさんなら・・・こういう騙しみたいなテクニックは通用しませんけどねえ(笑)・・・。

● この舶来のキット・・・平成のラジコンブームに乗じて、日本国内に大量に入ってきたみたいですなあ・・・。ただ問題が有るんですなあ・・・。キットの造り方の粗い事・・・。おまけにレーザー加工品ではありません・・・。言い換えればひと昔前のダイカット打ち抜きのキットです。更に設計したのはアメリカ人かヨーロッパのモデラーさんみたいなんですが、キットの製造代行をしたのが誰かの問題・・・。この粗さと好い加減さは明らかに西の大国・・・。手の抜き所が余りにも素人臭いんですなあ・・・。ラジコンメーカーの下請けと言うよりも、その他の業種の木工職人が片手間に加工した雰囲気がプンプンするですけどねえ・・・。

● 此の棒材部品・・・この状態でキットにまとめて入ってました。どれが何処の部品なのかも判らない・・・。一応刻印の打てる材料には部品番号が打ってあるものの・・・。その他の細い部品が何処の部品なのかが解らない・・・。私は実物機の航空業界にいたのでインチ表示には何の抵抗も無いんですけど、ミリ表記に成れた日本人には・・・其れも初心者には何が何だか・・・まるで拷問みたいなキットですなあ・・・。お仲間掲示板で見せびらかして、いざ!自分のブログで製作記事をば!・・・って、何時まで経っても記事が進まない・・・。ってのが本機だけじゃ無いんですよねえ・・・。この(Flair)のバルサキット全般に起きてるのが実態です。部品の造りが粗いので,加工と修正・・・もしくは別途購入の別材料で作り直さないと組めませ~ん・・・が頻発するんですなあ・・・。過去に製作代行しましたが、無茶苦茶なんだもの・・・。ベストセラー機種の再販品が、この粗いキット部品で蘇ったとしても粗悪品なんだもの・・・質流れ街道をグルグル巡ってるだけで、まったく形になりません。

● もちっと本気で材料刻んでキットを作れ!と言いたいですなあ・・・。左の主翼の材料は殆どがハードバルサ・・・右の主翼は半分がフカフカのソフトバルサ・・・。構造の硬性も重さも違うので左右のバランスなんか無視したキット内容なんだもの・・・。製作代行で此れが出ると辛いよ~・・・。見積もり通りに事が運ばなくなるし・・・。持ち出し持ち出しの連続で赤字出捲るしねえ・・・。本機が製作代行なら・・・ホント!大赤字確定でしたなあ・・・。
   
● ホームセンターや工具専門店に行くと、金属製の定規は販売されています。この定規の裏面にはインチをミリに換算する一覧表が記載されています。この一覧表を基に、そのバラバラの棒材をミリ数で測り、その数値をインチで換算し・・・機体構造の何処に使う物なのかを探しましょう。棒材の断面はインチ寸法でも長さはミリ表示の棒材も有りますし、短く切って数本分の合わせ取り部品もあります。まずは其れが何処に組み込まれる部品なのかを組み立て解説書を見ながらマスキングテープや輪ゴム等でまとめて行きます。この(Flair)のキットなんですが、出所がイマイチなんですよねえ・・・。ホントにヨーロッパの舶来品なんだろうかと・・・。

● 例えば西の大国の人物がヨーロッパやアメリカに出向いて、現地の国民を雇用せずに、全て自国で安く作らせてヨーロッパ諸国のブランド品として販売している可能性もある。過去の例を見てみれば・・・グランドサーマルグライダーの名機である(バードオブタイム)は良質のバルサを使って正確に部品取りされていたので誰でも楽に組み立てられたんですが、一時代に形を潜めたかと思ったら、今度は(Flair)というメーカーから再販されていました。ところがその部品の材質は粗悪品ばかり也・・・割れてるし、折れてるし、湾曲している、捻じれてる・・・使える部品が殆ど無い印象・・・。スパンが3メートルを超えるバードのキットだったんですが、殆どの部材を木村バルサのベニヤと良質の二枚組バルサに交換したので大赤字確定・・・。此れをキットの粗悪な部材のまま組み立ててる平成生まれのモデラーが、自分のブログで思いっ切りぶ~垂れる気持ちもわかる気がしますなあ・・・。そういう経緯があるもんで・・・今回の(K8)のキット・・・最初から覚悟して組み立てに入りました。大御所さんから終活にと貰ったキットなんですがねえ・・・。大御所さん自身も箱を開けてフリーズした一人なんですなあ・・・。「田原君なら組めるやろ!・・・。君が製作記事を書いたら大勢のモデラーが助かるバイ!・・・。」だそうです(笑)・・・。

● 技術も知識もお前よりも俺の方が上だ!って思ってる人なら、迷わず本機を購入して製作記事を書いて下さいな!・・・。キットの組み立て手順は、組立てるモデラー毎の数だけ存在します。キットを安く落札してお仲間掲示板で自慢したは良いけど・・・組み立てられずに途方に暮れてる平成生まれの初心者のネット物知り博士が、その気に成って組み立て記事を書ける様にしてあげましょう。選択肢は多い方が追従するモデラーには好都合ですから・・・。
   
● 本機のシート部材は、シート毎に纏められてダイカットで型抜きされた状態でキットに入っています。まずは・・・具品表を見ながら打てる刻印は全て手書きで入れてしまいましょう。そして・・・修正が必要な部品と私的組み立て手順に従い、部品をシートから抜き取ります。ただ・・・ダイカットの抜きが甘い部品は無理やり抜かずに、カッターナイフ等で切れ目を入れてから抜いた方が部品を壊さずに済みますよ。
   
● 画像はカンザシ受けのパイプを内蔵する翼近付近のリブです。左端の4枚のリブは、二枚ずつ貼り合わせて左右其々の主翼の同じ位置に組み込みますが・・・抜いた方向がすべて同じです。画像をよく見ると同じ方向に反り返っているのが解ります。此れを貼り合わせるとどうなるのか・・・左右其々対称的に湾曲したリブの取り付けには成らず、同じ方向に湾曲したリブ配置と成るので組み立てが難しくなるんです。こういう左右対称の部品を使うときは、ダイカットの型抜きも左右対称に作るのが普通です。何故ならベニヤ板は積層の合板なので、必ず反り返るからです。

● 日本国内のメーカーならば昭和の時代から、このベニヤ板の性質を熟知しているので・・・左右対称の部品の場合、ダイカットの抜き型も左右対称に作るか・・・ベニヤの反り返る面を見極めて、シートの両面から部品を打ち抜くのが基本なんですけどねえ・・・。模型業界なら航空力学と共に使う材料の性質も見極めて使うので、画像の様なポカ的ミスは起きません。まあ・・・モデラー諸氏のネット販売に特化した俄かメーカーなら起こる可能性も有ろうかとは思いますが・・・。とにかく修正しない事には使えないので、リブに切り込みを入れて直線に成る様にクリップで拘束して接着しています。こういった短期間の在庫でも起こるであろうベニヤ材の不具合を予想できないって事は、部品加工の作業員は模型飛行機の事なんか全く知らない、別業種の職人だろうと思われます。

● まあ・・・平成の時代にラジコンブームに乗じて溢れかえった日本国内の俄かメーカーさんですけど、このベニヤの性質はレーザー加工でも起きてしまいます。湿度を徹底して管理できる倉庫でもない限り、自宅の押し入れみたいな在庫品保管では、上記の不具合は起き易い環境と言えます。其れよりもシート木材の性質を見極めて、ベニヤの両面からレーザー加工なり・・・ダイカットの打ち抜きをすれば、左右対称に反り返るので修復はし易くなります。「検品コストが上がるから出来ない!・・・。」って言ってる様な、俄かメーカーの主催者なら飽きられるのも早いかなあ・・・。そういう細かい所まで気を配る俄かメーカーなら、その方針を後世まで維持出来るなら・・・何れは口コミで拡がり、日本国内の老舗の個人メーカーとして名を残せるかもしれませんなあ・・・。
   
● まずは胴体の組み立てから進行します。本機の胴体の構造は見事なまでのベニヤオンリーの部品で構成されています。更に・・・前部胴体は3mmベニヤの二枚積層胴枠で構成され、後部胴体は2,5mmの単層ベニヤで構成し、構造的に重量的なバランスと強度を維持させる様ですね。よって作るのが大変面倒臭い印象を与えてしまいます。この機首先端からコクピット後方重心位置付近までのベニヤの積層胴枠なんですが、ムクの部分を多く残して治具とする為に、上下を逆さまに定盤上で組み立てる前提で解説されています。よって組み立て後に切り落とす積層ベニヤには、一部のみしかダイカットの抜きが行われていません。
   
● 胴体の組み立て後に切り取る前提には、よく切れる鋸刃が必要なんですが・・・切り取る際に鋸刃の向きを少しでも間違えると、修正が大変難しく成るのは解っています。糸鋸盤をお持ちなら、治具としての能力を最小限残しつつ中身を抜き取る事をお勧めします。本機に使用されているベニヤなんですが、合板としては最低の材質です。ラワン積層ベニヤの一種なんですが、中芯材が大変脆い材質なので太刃のカッターナイフを二~三回なぞるだけで切り落とせる柔らかいベニヤです。まあ・・・その脆さを利用すればこういった改造が可能なんですよねえ・・・。少し大きめに切り落としてから、粗目のサンドホルダーで奇麗に削り落とせますから・・・。
   
● 此の部材は前部胴体と後部胴体のジョイント付近・・・。組立て図面にも解説文にも詳細が記載されていないのだが、此れはダイカットの寸法取りのミスだと思われる。両サイドに振り分けてみたのだが、3mmの内部側板のベニヤ一枚分程の隙間が出来ている。せっかくのスロットインなのに、この寸法間違いに気付ける初心者モデラーは居ないかも知れませんなあ・・・。其れが当たり前だって思ったら、その後の部材の取り付け時にやっぱり不具合が連鎖する訳で・・・。多分、原因も解らなくなるだろうと思います。ならば・・・修正する方が良いでしょうなあ・・・。もう一度抜いたシートにはめ戻して、瞬間接着剤の高粘度(OKボンドならHW)タイプで、促進剤を使わずに自然硬化させて・・・硬化後に加工し直した寸法で再度組立てた方が良いでしょう。ほんの些細な修復なんですけどね・・・後々考え込む事に成るんで・・・。
   
● 胴体の部材は必ず定盤の上で組み立てましょう。なるべくなら・・・歪んだり反ったり捻じれていない、限りなく平面に近い定盤で組み立てた方が良いでしょう。もし・・・入手可能なら、木工所に出向いて、ランバーコア(ラワンの集成材を3mmのシナベニヤで挟んだ合板で工作台を作ってもらって下さい。厚みは20mm以上のランバーコアで定盤台の天板を作り、80mm以上の幅のコアで枠を組んでもらってビス止めすれば、ほぼ平面の定盤が出来ます。ただ・・・このランバーコア・・・サブロクサイズ(900×1800mm)でも1万円くらいはするんですが、枠組み付きならほぼ捻じれないので・・・多分、数十年は使えますなあ・・・。使用者が棺桶に入ったとしても生き残るくらいですから・・・。いっその事・・・コアの定盤を棺桶の床板にしてもらえば、思い残すこと無く、一緒にあの世へ行けるかもしれませんなあ・・・。ただし!幅は450~500mm位の定盤にしましょう・・・でないと、窯に入らないかも知れませんし・・・。三途の川を定盤片手に渡るのも良いかも・・・。浮き代わりにも成りますし・・・ね。
   
● 胴体のブロック毎に組み立てて、嵌め合いを確認しながら接着剤を塗って結合していきます。一番手前のコクピット付近の胴枠は、解説書表示のピッチ寸法に合わせて定盤に鉛筆で位置を作図して、固定のブラケットを介してビス止めしていきます。あくまでも定盤が基準ですので、スケベ心を出して改良と称する私的改造はしない方が良いでしょうなあ・・・。お前と同じ定盤治具ってのが気に入らねえ・・・俺は別の方法で・・・。って言ったって、解説書には定盤を使う様に指示されてますしねえ・・・。此処は解説書通りに作業を進めるしか方法は無いでしょう・・・。
   
● この主翼後部から機首先端までを貫く、ゴッツイベニヤ製のスキッドの構造体が、本機の胴体の構造強化に大いに役立っています。本機の胴体の全長はラダー板込みで1800mmにも成ります。オールベニヤの部材なので重さもヘビー級です。よって、頑丈な構造体にするには此れまたゴッツイストリング材(縦通材)が何本も取り付けられるんですがねえ・・・。バルサ製の軽量グライダーのキットしか作った事の無い初心者モデラーには、荷が遥かに重い異次元の飛行機ですもんねえ・・・。そら!安く購入出来ても・・・送られてきた本機の箱を開けてフリーズする気持ち・・・お察しします。其れよりも・・・梱包されてきた外箱のズシリとした重さで、期待感マックス!安い買い物した!ってルンルン気分で箱を開けて固まってるんだろうなあ(笑)・・・。全部横文字だし・・・インチだし・・・。安いからって手を出したんだもの・・・諦めて、もう一度質流れ街道に送り出す勇気も必要かと・・・。数千円にしか成らないとは思いますけど・・・。

● 左から二枚目の画像の中央付近・・・。シャコマンの両隣の胴枠に注目!・・・。一見するとスキッドの底辺位置とその前後の胴枠のライン上から見て寸法や角度が可笑しいんじゃないかって勘違いするんですが、実はこの角度で良いんですなあ・・・。こういう箇所は丸囲みでピントマークを付けて注釈するとかして欲しい所・・・。国産キットなら必ず何かしらの指示は記載するでしょうなあ・・・。此処には屑ベニヤを使ってラインの延長をせよ!と、解説してませんが・・・完成した機体には装着した状態で描かれています。そういう所が記載漏れと言うんですけどね。舶来キットは其れが当たり前なので、国産キットと比較して最もらしいクレームをお仲間掲示板にぶ~垂れるのは・・・舶来品に対するご自分の認識不足を露見してる様なもんですなあ・・・。
   
● 本機の完成胴体・・・全体を被覆してあるので、中身の状況を知らずに購入して後からフリーズしちゃう初心者さん多数(笑)・・・。そりゃあねえ・・・どんなに安い国産のHLGのキットだって、バルサの二枚側板構造なのに、本機のキットは粗・・・外皮プランク面が無いんだもの・・・。絶対!入れ忘れてるって思うでしょうなあ・・・。でも解説書にも何も指示してないし・・・。だからホントに組めるんだろうか・・・って自信無くしちゃうんだよなあ・・・。だから、キットの構造自体が大袈裟な構造なんですなあ・・・。本機に多数這ってるバルサのストリング棒材・・・もちっと材質吟味か、構造の煮詰めが必要だったかもしれませんなあ・・・。

● 画像のストリング材はミリ換算で(5×11mm)有るんだが・・・材質がハード系のバルサなので殆ど曲がりません。後部胴体は直線でも良いんだけど、コクピット付近からアールがきつく成って来ます。更に、幅11mmの方を湾曲させろ!って無茶なァ(笑)・・・。初心者さんなら悩むでしょうなあ・・・。結局、画像の様な切り込みを入れれば苦も無く曲がるし、切り込みの溝は接着剤を流し込めば補強は出来るんですけどね。本機は1グラムでも軽量化に努めるシビアさはありません。重心よりも機首側なんだから、思いっ切り接着剤を盛り付けて良いですよ。もし!・・・当工房がキット化し、同じような部材を作るなら・・・ハードバルサの(5×3mm)を積層するでしょうなあ・・・。そうすればきついアールにも対応出来ますし、削り落とす部材も減らせますしね。
   
● 何故に私がそう思ったかと言えば、画像はコクピットサイドのフレーム材の工作なんですが、1,5mmのカバベニヤを4枚積層しています。その方がアールが表現し易いからなんですが・・・何故にストリング材もこの方法にしなかったのか・・・。不思議なんですよねえ・・・。仮に、この機体を西の大国がライセンス生産したとしても、疑問に思わなかったのかなあ・・・。えらく曲げ難い材料使うんだなあ・・・って。コストを下げるのに人件費はケチっても、材料までケチると利ザヤは上がるけど・・・購入して組み立てる方が困る図式が成り立ってしまうんですなあ・・・。こういう好い加減さを昭和の国内メーカーは改善したから、世界のブランドとまで呼ばれる様に成ったのに・・・。もちっと材料の精密さが欲しいですなあ・・・。図面は完璧なんだけどなあ・・・入ってる材料が好い加減なんだもの・・・。台湾製とスペイン製のバルサキットを、西の大国は見習うべきですなあ・・・。
   
● 主翼の下面の翼型に沿った胴体側の部材の取り付け画像です。国産機ではまずお目に掛かれない面白い工作手順ですなあ・・・。でも!・・・此れが一番狂いの出難い工作手順でもある・・・。何故なら、主翼の迎角を正確に出せる構造だから・・・。其れには主翼取り付け部の構造の強化がネックとなるので、小型の機体と細身の胴体には組み込み難いってデメリットもある・・・。大型機でコクピットよりも前方機首側にしかメカを搭載しないので、可能に成ったとも言える工作手順ですなあ・・・。
   
● 部品番号(204)(205)のバルサの角材は、先に取り付けた翼型のベニヤ部材の外側に貼り込みます。エポキシでガッチリと貼り込んで、胴体のラインに沿って斜めに削り込む必要があります。更に主翼の上反角に合わせて斜角も必要なので、外寸法を基準に内側を斜めに削る必要もあります。ただ・・・本機の主翼には前縁側にピン打ちが要りません。胴体側の台座に鬼目を四箇所埋め込んで、ボルト4本で固定する構造です。
   
● 胴体の主翼前縁側のフレームは、コクピット側の胴枠と平面に成る様にアングル材をガイドにして取り付けます。よって翼型に成型した部材もフレーム側は傾斜を付けて削っておきましょう。さあ!今度はメカプレートの加工と組み込みです。胴体が完全に完成してからでは組み込めないので、今の内に作って組み込むための台座も取り付けてしまいます。本機に使用するエレベータのリンケージなんですが、水平尾翼が脱着型の為・・・ロッドが胴体の中で安定しない事が判明・・・。此処のリンケージに関しても、製作者側はもちっと煮詰める必要があったのではないかと思うんですがねえ・・・。

● 本機の水平尾翼は左右一体型です。エレベータも左右分割で作りますが、左右のエレベータは太いピアノ線をコの字型のクランクで結束して、真ん中に溶接された金属ホーンを胴体側のアジャスターと繋いでから、水平尾翼を胴体にビス止めする組み立て方法なんですが・・・。多分、女性の細い指でも手こずるだろうと予想されました。よってリンケージの変更を行う為・・・根本的なエレベータのリンケージ自体を変更します。
   
● 従来のリンケージだと・・・コクピット側のサーボはヨー軸にロータリー・・・エレベータ側はピッチ軸にロータリーなので、リンケージロッドの棒材は上下左右に複雑な移動を行う事に成ります。キット指定のロッド棒材は、長さ1000mmのバルサの角材の前後にねじ切りのピアノ線とアジャスターを取り付ける指示だったんですが、胴体内部の何処かの胴枠に振れ止めの処置をしないと、バルサのロッド棒材がサーボのトルクとエレベータの舵面の風圧に負けて湾曲してしまう危険性もあります。このロッド棒材を直線だけの動きに変更出来れば誤動作は起き難く成ります。其の為の仕様の変更です。胴枠の何処かに振れ止めを付けたとしても、余計な荷重が掛かり難いのでロッドの棒材もスムーズに動く筈です。
   
● 昭和40年代の古いラジコン技術誌のカラー写真を見ると、先人の作るハイクラスの模型機のリンケージは芸術の域に達しています。ラジコン初心者の時代には、其れが素晴らしいものなのか・・・在り来たりの何でもない普通のモノなのか判断が付きません。其れは当たり前の事なんです。エイリアンクラスと呼ばれる、ラジコンに全く興味の無い人から見れば、此れが何?・・・です。初心者の洗礼を浴びて挫折した人には解りませんが、其れでもめげずに上を目指した人のみが実感できる事なのです。今のリンケージでは全くお目に掛る機会は無く成りましたが・・・此れが昭和の基本的なリンケージロッド・・・。F3A世界選手権の優勝機でも当たり前に使われた基本的なリンケージロッドの作り方です。
   
● 水平尾翼の構造がキットの解説とは違っているのに気づかれましたか・・・。キット指示の解説を見ていて、不審に思う箇所が有ったので、ベニヤ部材と解説文を照らし合わせる事丸一日・・・。最終的に分かった事なんですが、キットのままの構造では、左右結合のジョイント部分に大きな荷重が加わると・・・いとも簡単に水平尾翼は中心から折れる事が判明・・・。構造を見れば一発で解りますよ。左右の水平尾翼は、単純な構造と部材のみで左右を結合・・・下手したら振り回しただけで折れるかも知れませんなあ・・・。よって!キットのダイカットシートの抜き残骸を利用して部材を切り出し、結合部分の強化を行います。
   
● キット付属の堅木(83)は幅が8mm・・・。この堅木が中芯ベニヤの両面に接着されるのだが、幅8mmの堅木に6mmの貫通孔を開ける事自体が難しい・・・。画像では片面のリブのみ貼り込んでから、定盤上で穴あけ作業を行っているんだが、解説では完全対称翼型の水平尾翼に仕上げてから孔を開ける様な指示・・・。この状態で6mmの孔を開けるって事は、解説通りなら・・・ほぼ左右の結合面はプランクシートの皮一枚で、辛うじて繋がってるだけって事に成る訳ですなあ・・・。そら!衝撃一発で折れるでしょうなあ・・・。よって、内部のベニヤベースから、ジョイント部分を改造しとるんですよ。ベースに細い溝を切り・・・ピアノ線をエポキシで埋め込んでから、抜き残骸のシートから部品を切り出し、ピアノ線を覆う様にエポキシで接着しました。此れで、まず!水平尾翼は結合部からは折れなくなりました。

● このベニヤベースの水平尾翼の作り方・・・当工房はスチレンベースで組んでます。ただ・・・構造が理解できた人ならば、お手持ちの屑バルサ(厚さ3mm程度)で、リブを代用しても良いと思いますよ。ベースがベニヤ材なので強度は維持していますし、バルサリブの方がプランクする段階でも接着が楽に成りますし・・・お好きな改造をされても、大きな不具合は出ません。ただ・・・ベースをベニヤから薄いバルサに変更すると、ジョイント部分の強度が著しく低下するかも知れませんので、やめた方が良いでしょう・・・。
   
● 此れは水平尾翼の翼端バルサのブロックです。よく見ると小口が凹んでます・・・。キットメーカーの箱詰めの段階で起きた不具合では無いですよ。キットの箱詰めの場合は、こういった細かい傷も出ない様に慎重にレイアウトしますから・・・。もし、其れがオークションの落札品ならば、出品した側の不手際です。多分出品者も気づいていません。さて!…こんな場合・・・貴方ならどうしますか?。出品者にクレーム付けて返品しますか?・・・。欠けてるのなら其れも有りでしょうけど・・・凹んでるだけなら、水分を含ませるだけで、時間が経つと画像みたいに元通り・・・。此れがバルサ材の特筆すべき復元力なんですなあ・・・。知ってると得する豆知識ってとこかな・・・。
   
● 本機のエレベータとラダーのヒンジなんですが、パンチングで型抜きされた部品を、寸法通りにカットして其々溶接して作れと解説してあるんですが、こんなの多分作れる初心者モデラーは皆無でしょうなあ・・・。だったらテープヒンジで?・・・もしくは蝶番ヒンジを埋め込んでセンターヒンジに・・・って本機の構造が拒んでいるんですなあ・・・。まあ・・・実機っぽく作れるのは良いとして、其れが完全に再現できるモデラーは国内にホンの一握りでしょうなあ・・・。もちっと現実的な構造に変更するにしても、キットのままの部品構成では改造も限られてくる訳で・・・。

● 更に・・・この板ベラの金属ヒンジ・・・軟鉄の割ピン差し込んで固定せよ!・・・との指示。此処まで来たら、もう・・・玄人しか組み立て不可能でしょうなあ・・・。だって、完全スケール機を自作するベテランモデラーの領域なんだもの・・・。何で市販のホーンやヒンジが使える様にキットを構成しなかったのか・・・。ネット普及後の時代なんだから、世界中のメーカーを見て回れば、どれだけアクセサリーパーツが充実しているか見て取れるんだが・・・。何でも自社製品で賄おうとするから、組立てるモデラーを選んでしまう事に成る・・・。其れが一つの安全策には成るんだが・・・其れでも此れはちょっと頂けない構造ではあるんですなあ・・・。
   
● 一応金属製の板ベラは改造してラダー側とエレベータ側のみ使うとして、垂直尾翼側と水平尾翼側にはPVC樹脂の角材から切り出したブラケットを使う事にしました。尚・・・この樹脂製のブラケットにはタップで3mmのねじ山を作って、3mmビスがねじ込める様にしました。軟鉄の割ピンと3mmのビス・・・どちらが汎用能力が高いかは別として、実機と同じ様に取り外せる様にしたかったので、この方法を採用した次第です・・・。
   
● 垂直尾翼と水平尾翼がごっちゃに成ってますが、動翼側の板ベラの取り付け状況と、固定尾翼側のヒンジライン上のブラケットの固定状況・・・更に、ヒンジラインに取り付ける前縁材とヒンジ脱着の3mmビスが取り付けられる様に、アクセストンネルを設けた状況です。この構造は所謂苦肉の策でこうなったとも言えますなあ・・・。模型機なんだから、もっとヒンジラインは市販のパーツが活かせる構造が欲しかったですなあ・・・。メーカー毎の特色を出すのも良いんだが、こういったブラケット等をインジェクションの成型品で大量に作ってコストを下げて、各種の大型スケール機に付属パーツとして入れた方が汎用性が向上した可能性も在りますなあ・・・。
   
● まあ・・・仕上がりとしては、こんな案配になるんだが・・・。実機と同じ様な構造を持ちながら、実機よりも組み立ては簡単です。こんなに大きな舵面なんですが、ヒンジは二個で充分保持できますし・・・。まだ翼端の削りは行っていませんが、綺麗に削って仕上げて被覆すれば、実機らしい外見と共に実機のヒンジラインの構造を再発見する事にもなるので、次回作にも応用が可能でしょう。多分・・・実機の場合は、ブラケット付近の小さいパネルを外して、ボルトのピンを抜いて動翼を横にスライドさせて外すとか・・・ブラケットに固定されたピンの上下の分割ブラケットをバラして動翼を外すとか・・・模型機のサイズでは工作不可能な構造かも知れませんね。(Part-2に続く)